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郷土教育全国協議会(郷土全協)

“土着の思想と行動を!”をキャッチフレーズにした「郷土教育」の今を伝えます。

私の少年時代ー6(盆綱)

2021年05月14日 | 日記

24軒の家で一つの集落を形成していた私たちの地域ですが、地形的には北側の台地から一段下がった盆地風な場所に在ります。
田園が広がった中央部には小川が流れ、行き着く先は坂東太郎(利根川)です。

どこの家も三世代から四世代の大家族でした。
農業を営む上で必要な形だったのでしょう…。
因みに我が家は9人家族、子ども心にも活気を感じて育ちました。
おそらく様々な刺激を家の中にいても感じていたのでしょう。

こんな小さな集落でも、2年に一度くらいの割合で新盆を迎える家がありました。
この時に活躍するのが子どもたちでした。
盆綱を引いて廻るからです。

この綱は、藁で編み上げられた長さ20m程のものです。
手に持つ部分は機械で編んだ3本の縄だけを使って編みますが、次第にそこに少しずつ藁が加えられます。
すると、段々太くなり最大直径20㎝程になります。
そして、少しずつ細くなり、最後は縄だけになります。

詳しい話は聞いたことがなく正確には分かりませんが、私は、これを竜か大蛇だと思っていました。
藁の先が突き出た太い部分は、まさに威厳ある竜の姿を想像させたからです。

8月のお盆の期間、夜になり盆提灯に灯が燈る頃、盆綱を引いて中を巡り歩きます。
綱を持つ手と反対側の手には、ロウソクの灯が燈る提灯を持ちます。
提灯にはそれぞれの家紋が付いています。
そして、新盆の家と流れ盆(新盆の次の年をそう呼んでいました。)の家には、庭の中まで入って弔います。

綱を引く時は掛け声を合わせます。
「わーっしょい! ほーらい!」「わーっしょい! ほーらい!」
とゆっくり引きます。
少し速く引く時は、「わーっしょいしょい、 わっしょいしょい、負けるは残念だ!」
と、掛け声が変わります。
何故こんな掛け声なのかは分かりませんが、先輩たちの指示された通りに大声でやっていました。

新盆などの家に入ると、必ず庭の中央付近に柱が立てられ、そこに盆提灯がぶら下がっています。
その柱の周りを私たちは、「なんまいだ、なんまいだ!」と言いながら何回か廻ります。

しかし、その前にやることがあります。
引いてきた綱を尻尾から順に丸く巻いていきます。
「なーんまいだ、なんまいだ!」と言いながら、これを全員で手際よく巻くのです。
ちょうど蛇がとぐろを巻くように…。

一通りの行為が終わると、その家の方からスイカや麦茶がいただけます。
これが、何とも言えず美味しいのです。
これらをいただくために、汗を流しながら引いて来たのですから…。

3日間が過ぎると綱はボロボロになりますが、これを作るために私たちは一連の作業を1週間前から始めます。
まず、中の家から藁を少しづついただきに歩きます。
縄を供出してくれる家もありました。
集まった藁を川の水に浸けて柔らかくしておきます。

準備万端整えてから、3人の大人の方に依頼して綱を編み始めます。
編む場所は、の中心地にある桜の木を使います。
桜が二股に分かれた枝を利用するのです。
紙芝居と同様に、盆綱もこの桜の木の下から始まったのです。

この盆綱も、私が中学に進む頃にはなくなってしまいました。
しかし、不思議には思いませんでした。
新盆の家がなくなる、つまりその後はの中で亡くなる人がいなくなったからです。
ちょうど世代交代が終わる頃だったのでしょう。

 

-S.S-


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