「国宝 阿修羅展」
@東京国立博物館 平成館
2009年3月31日~2009年6月7日
和銅3年(710年)に創建された、奈良県奈良市内にある法相宗大本山興福寺が
2010年、創建1300年を迎えることを記念して開催されている「国宝 阿修羅展」
興福寺の文化財の内、国宝に指定されている、阿修羅像、八部衆像、十大弟子像
発見された鎮壇具、重要文化財の、薬王・薬上菩薩立像、四天王立像などを展示。
見た印象では、どちらかというと 「興福寺展」と呼んだ方が正しいかも知れないけど、
興福寺創建1300年記念と小さく添えて、「国宝 阿修羅展」と名付けたのが上手い。
入場制限があるほどの人気ぶり。日傘や水や椅子など 細やかな気遣いもあるとか。
右回りに拝観する礼儀を守れば、像の周りを正面から背後まで何度も回るのは自由。
個人的には、弥勒菩薩像のように、見ていると心が凪いでくるような像ではないのに
いつまでも見飽きることがなく、それどころか魅了されてしまうのは何故なのだろうか。
後に回ると、正面の凛々しい顔は見えず、捻じ曲げたように背き合う2つの顔が、ある。
憎む、愛する、蔑む、崇める、闘う、悔やむ、人間の中に生まれてしまう相反する感情。
まるで自分が何かに引き裂かれるような姿で、一方は左を、一方は右を、向いている。
葛藤を隠して、超越しようと 真直ぐ前を見据える強さが、人を捉えて離さないのだろう。
第1会場と第2会場の合間に、この展覧会の図録が自由に拝見できるコーナーがある。
亀井勝一郎氏の「古代知識階級の形成」に、印象的な文を見つけた。 「阿修羅像とは
阿修羅劇の表現にちがいない。仏師は天平という時代のなかに、それを見たのでは」