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E・コッカーと戯れる浪費派リーマンのゆるい生活

真夜中の電話

2006-07-07 00:54:33 | 日記・エッセイ・コラム

先日、未明に携帯電話が鳴った。224807864

出ると、旧知の女性だった。

アンダーグラウンドな世界を生きてきた彼女。

おそらくシャブでも喰ってるのだろう、支離滅裂である。

ひたすら話を聞いてあげるしかなかった。

彼女と知り合ったのはもう20年前。

新入社員だった私は特別出来が悪く、仕事はなーんにもこなせやしない。

諸先輩や出入り先の罵倒と侮蔑に直面し、

日々、自己嫌悪の中でうなだれていた。

そんな折り、仕事絡みで彼女に会った。

ある犯罪をよく知るためにようやく探し当てた、っていうのが正確なのだが。

彼女を通じ、友人ができた。

もちろん世間的に言えばロクデナシばかりである。

欠損していない指の方が少ない通称ヤギさんとか、

地肌になぜかいろんな絵が描いてあるタローとか、

娑婆と塀の中を行き来しながらも、

組織の人にもなりきれない落ちこぼれヤローばかりであった。

そんな彼らは私になぜか優しかった。

仕事をやめることばかりを考えていた私に、

「頑張れよ」とか「石の上にも三年だ」と励ましてくれた。

今になって思えば、「お前らこそ、頑張れよ」って話なんだけどね。

そしていつの間にか音信不通に。

「あんたは一生懸命だから、いつか花が咲くよ」と、

勇気付けてくれたヤギさんもタローも、彼女も、

すうっと消えてしまったのだ。

それが二年前に、ひょんなことで彼女と再会。

「俺がこんなことを続けてられるのも、アンタたちのお陰だ」

そう言うと、彼女は泣いた。

当時のヤツらは死んだのだという。

ヤギさんは殺され、タローは自殺。

「私だけが生きてるんよ」。嗚咽は続いた。

そんな彼女が電話を掛けてきたのだ。

多分もう限界なんだろう。だけど、会うのも頑強に拒む。

彼女は最後に「まだまだこれからだからね」と言って、電話を切った。

元気な私を覚えておいて―。私にはそんなメッセージに聞こえた。

もちろんそのつもりだ。

20年前の彼女はいつも笑っている。ヤギさんやタローと一緒に。