出ると、旧知の女性だった。
アンダーグラウンドな世界を生きてきた彼女。
おそらくシャブでも喰ってるのだろう、支離滅裂である。
ひたすら話を聞いてあげるしかなかった。
彼女と知り合ったのはもう20年前。
新入社員だった私は特別出来が悪く、仕事はなーんにもこなせやしない。
諸先輩や出入り先の罵倒と侮蔑に直面し、
日々、自己嫌悪の中でうなだれていた。
そんな折り、仕事絡みで彼女に会った。
ある犯罪をよく知るためにようやく探し当てた、っていうのが正確なのだが。
彼女を通じ、友人ができた。
もちろん世間的に言えばロクデナシばかりである。
欠損していない指の方が少ない通称ヤギさんとか、
地肌になぜかいろんな絵が描いてあるタローとか、
娑婆と塀の中を行き来しながらも、
組織の人にもなりきれない落ちこぼれヤローばかりであった。
そんな彼らは私になぜか優しかった。
仕事をやめることばかりを考えていた私に、
「頑張れよ」とか「石の上にも三年だ」と励ましてくれた。
今になって思えば、「お前らこそ、頑張れよ」って話なんだけどね。
そしていつの間にか音信不通に。
「あんたは一生懸命だから、いつか花が咲くよ」と、
勇気付けてくれたヤギさんもタローも、彼女も、
すうっと消えてしまったのだ。
それが二年前に、ひょんなことで彼女と再会。
「俺がこんなことを続けてられるのも、アンタたちのお陰だ」
そう言うと、彼女は泣いた。
当時のヤツらは死んだのだという。
ヤギさんは殺され、タローは自殺。
「私だけが生きてるんよ」。嗚咽は続いた。
そんな彼女が電話を掛けてきたのだ。
多分もう限界なんだろう。だけど、会うのも頑強に拒む。
彼女は最後に「まだまだこれからだからね」と言って、電話を切った。
元気な私を覚えておいて―。私にはそんなメッセージに聞こえた。
もちろんそのつもりだ。
20年前の彼女はいつも笑っている。ヤギさんやタローと一緒に。
ホント、みんなそれぞれのフィールドでがんばっているのですね。
ころパパの言葉のおかげで自分を保ち今もがんばれているのは、きっと彼女も私も一緒ですね。
同士(?)としては、ここはなんとかふんばってほしいですね。私もふんばるから。
そのルックスは、高校生と間違われるサンデーままの極北にありますけどね(笑)
ただ、心を許せる仲ではありました。