Twitter/Xに、私より頭いい No Pain No Gain って人を見つけました。
その方(NPNGさん)が、宗教法人法81条1項1号「法令に違反」に民法不法行為を含まない、ってマニアックな論点を、とても分かりやすく書いている。
その方と面識をいただいて、さらにわかりやすい資料をいただいた。それをペライチにして、世人に理解していただこうかなと思って、以下を作成しました。
表現の正確性等より、コンパクトさと分かりやすさを優先しています。
1 前提
2022年10月、岸田首相は、宗教法人法81条1項1号「法令に違反」に民法不法行為を含むかにつき、オウム高裁決定(「法令」とは刑法等の禁止規範・命令規範を指し、民法を含まない-A説)を踏襲するかに見えた。
しかし、同月19日、一夜にして、「組織性・悪質性・継続性があれば民法不法行為も『法令』に入り得る」(B説)と解釈変更した。
この方針変更に基づき、政府は7回の質問権行使後、翌2023年10月、解散命令を裁判所に請求した。
しかし、岸田首相の突如の解釈変更から1年半経っても、解散請求裁判で、文科省はいまだ「法令」を特定できていない。
それは「法令」と「違反」を同時に満たせないという以下のジレンマに陥っているからである。
2 2種類の不法行為
不法行為(例えば交通事故)には2種類ある。
①法令に違反する場合
例:刑法199条の殺人罪
②不文の秩序(公序良俗、社会的相当性)に違反する場合
例:不貞行為
家庭連合の場合、裁判の集積から②(社会的相当性違反)の行為はあるといえるが、この場合は「法令」に違反しているわけではない。
では、さらに民法不法行為を①「法令」違反(B説)といえるか。
3 不法行為を定める民法709条は「違反」できない
結論から言うと、民法不法行為は「法令に違反」といえず、B説(民法を含む)は成り立ち得ない。A説(民法を含まない)を取らざるを得ない。
なぜなら、不法行為を定める民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めるところ、709条の「違反」として賠償責任が生じるのではない。むしろ、709条を「適用」して賠償しているからである。
実際、法律家は、裁判文書で「709条違反の損害賠償請求」とは絶対に書かない。「709条に基づく損害賠償請求」と書く。
709条に違反しているのではなく、「適用」しているのである。
そして、敗訴判決の賠償責任をすべて果たしてきた家庭連合に、709条の違反はない。
そのため、「法令」を「民法709条」と特定すると、「違反」したという要件を満たさない。
4 平成9年7月11日最高裁判例
この最高裁判例は、不法行為は「禁止・命令規範」ではないと解釈したものと解されている。
以下に判示された枢要部分を引用。
「我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は…将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではない。(中略)我が国においては…将来の同様の行為を抑止することは、刑事上又は行政上の制裁にゆだねられている」
以上