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「怖い絵展」兵庫県立美術館 2017.07.27.

2017年08月11日 02時40分58秒 | 安らぎを求めて、美術博物館へ




          企画物としてはヒット? 夏休み親子で鑑賞!


          




夏の定番の涼しさは、怖い物語ですね。
私は、子供心に「四谷怪談」「牡丹燈籠」「耳なし芳一」などの話で怖がった物ですが、今の子供たちは、伝統怪談噺はたぶん知らないでしょうね・・・



映画も昔は「恐怖映画」とか「スリラー映画」って言っており、今みたいにオカルト、ホラーなんて言葉なかったですもんね・・・



そんな子供の頃から怖い物好きの成長しない私は、この絵画展は飛びつきました。
場所は、阪神電車「岩屋」駅より海に向かって徒歩10分くらいでしょうか、この10分間が、夏場は・・・暑くて辛い!・・・・













会場には、夏休みの自由研究?なのか、子供たちが大勢いましたね・・・しきりに、絵の解説板をメモしていましたね・・・あっち行ったり、こっちうろうろと、うっとしいでしたが、まぁ、宿題なので仕方ないでしょう・・・でも、やらされている感じゃなくて、興味深い物だけをメモすればいいのでしょうにね・・



この展は、もともとドイツ文学者の中野京子氏が2007年に発表した「怖い絵」が元なんですね・・・今年で10年目という事らしいです。




この展の目玉となるメインの絵がひと際、哀しみと刹那さを感じさせる一番の感動作品?・・・・であります。












欲深い大人たちによって、政略結婚、そして王位継承に引っ張り出されたレディ・ジェーン、女王即位9日目に反対派のメアリ派により囚われ、1554年2月に夫と共にロンドン塔で処刑されました。
わずか16歳の少女の末路の姿でありました。





















目隠しをされたレディ・ジェーンが、司祭の導きにより前の首切り台をまさぐっている様子が描かれています。



取り乱す事無く司祭の導きに沿って処刑されようとする少女・・・胸が締め付けられるますよね









台の前に藁が散在しているのは、処刑の時の出血を吸い取る役目を果たしているという。
藁が多少赤く染まっているのが、印象的で先に逝った?夫の血?・・かもしれません。
純白の衣装をまとった少女と残酷な事が行われる対比が、この絵の本性なんでしょうね。








左には、二人の侍女が泣き崩れている。






右手の男は、処刑人である。






右手に斧を持って、これで首を切り落とすのであろう。
そして、この男の腰にはナイフがあり、音声ガイドの話では、スパっと一気に首を切り落とせない時に、このナイフでゴリゴリと切断をする為の物だそうであります。


          



日本刀みたいに一発で切り落とせないのでしょうか・・・想像するだけで惨い!
人を助ける宗教者、司祭が自ら処刑の手助けをする・・・・カトリックとプロテスタントの争い・・・キリスト教って異教徒を認めず、すぐ排除しようとする傲慢さが嫌いですね・・・・宗教裁判、魔女狩りなんて神を利用した強欲な人間の思い付きなんでしょうけどね。



まぁ、日本でも武器を持った坊さん、お金や権力を持った坊さんがえらそうに飲み食い、女欲とむちゃくちゃをしていた時代に信長の怒りが爆発、比叡山焼き討ちにした歴史がありましたね。



古今東西、集団で権力を持つと、悲しいかな人間の欲の性にみまわれるんでしょうね。
宗教は、少ない人数でひっそりと、民の為にお祈り願うのが本来の筋のような気がします。





作者のポール・ドラローシュは、より恐怖と悲劇を強調する為に演出をしております。






屋外よりも室内の狭い空間が、リアルな恐怖を生み出しているそうであります。
実際は・・・・・






















黒い服のはずが純白なドレスにして少女の哀れみを装い、周りの人間よりも小さな身体で描いてあります。









舞台演出のように、照明も上からの光で主人公の少女をクローズアップさせ、特に断頭台をまさぐる手が一段と明るくしてあるんですね。
処刑人も哀れな目で少女を見ている様子も、運命のはかなさを醸し出しているんですね。





この絵のいきさつですが、1928年7月1日のテムズ川の氾濫で、多くの作品と共に行方知れずになっていたのが、発見される事となったそうです。



しかし、ターナーなど多数の重要作品の修復が優先され、この絵は後まわしになり忘れさられてしまいます。



そして、1959年には破壊された価値の無い絵と断定されてしまい、絵は丸められて無造作に置かれることになったそうです。



その後、1973年に再発見され、ロンドン・ナショナル・ギャラリーに戻って来たそうで、今やこの館の人気の絵となり、観客がこの絵の為に大勢観に来るそうであります。



この絵の展示は、美術館最後の「第6章 歴史」にあります。



          




処刑と言えば、この人の処刑も衝撃的だったでしょうね。
王侯貴族の世界しか知らないとはいえ、贅沢三昧で民衆がパンも口にできなかった恨みが悲劇を招いたんですね・・でも、刹那さを感じてしまいます。



ギロチンで首を切られ、その首を自身の脚を広げた又の間に見せしめにさらされたなんかは、残酷な気もします。






「残酷の4段階」
1750~51年 ウィリアム・ホーガス作


          



「残酷の第1段階」
自分の楽しみの為に犬の肛門に矢を突っ込むトム少年。(図録より)


          



「残酷の第2段階」
トム少年は大人になって辻馬車の馭者(ぎょしゃ)になる。
馬車代をけちる代議士3人がトムの馬車に乗ったが為に、馬車が横転し馬が脚を折ってしまう。
怒ったトムは、代議士に文句を言うのではなく、ケガをした馬をなぐり眼をえぐる。(図録より)


          



「残酷の完成」
馭者を辞め強盗になったトムは、自分で物を盗るだけでなく、愛人にも雇い主の物を盗らせていた。
罪を悔いるようになった女を疎んで墓場で殺したのがトムの運の尽きである。(図録より)
女性の首が、ざっくりと大きく割れているのが印象的。


          



「残酷の報酬」
死刑に処せられたトムの死体は、当時の制度に基づき、外科医の為の解剖講義に供せられる。
この講義は見せしめの為に公開されるのが常だったが、ここでトムは生前の動物や他人への仕打ちの仕返しを受けている。(図録より)


          



男の性と云うか、オスの本能で、かわいい、放漫な胸の女性の虜になり、食べられてしまうと云うマン・イーター・・・騙されてはいけないと思いながら、ついつい心を許して餌食になってしまう・・・・



若い人ならずとも、高齢者の婚活で騙され、毒を盛られて遺産を盗られてしまうという事件が多いでしたよね。



男はいくつになっても、悲しいかな、やすらぎと本能をごっちゃにしてしまう生き物なんですね。







甘美な歌声で船乗りたちを魅了し、海に引きづりこむと云う海の魔女セイレーン。
オデュッセウスだけが、セイレーンの歌声を聴きたくて耳栓をしないで、身体を船につないで頑張った。



セイレーン、半人魚の姿が海から上がると人間の姿に変わり、必死に船乗りたちを攻撃する。



耳栓をしているとはいえ、船員の恐怖におののいている姿の絵なのでしょうね。
ちなみに、セイレーンは、警報のサイレンの語源だそうです。


          




セイレーンは、半人魚か半鳥と云われていたそうで、こちらは鷹鷲のような鋭い爪を持っている。


このベッキー似の女性、口や羽、爪に血のりがついて、お食事中だったんでしょうか・・?
美女と野獣と云うか、一体化した生き物は、謎めいていて興味がそそがれますよね。
おっさんと野獣だったら、誰も見ないでしょう・・・ね



          



酒を飲まして、杖を振り下ろすと動物に変えてしまう魔女キルケー
足元の豚は、キルケーに変えられた男たちの姿である。


鏡の中には、オデュッセウスの姿が・・・
先に部下たちをこの島に偵察にやったが、豚に変えられてしまった。


オディュセウスは、解毒剤を呑んでいたので、キルケーの魔術にはかからなかった。
・・・・・部下は、無駄死に・・・?


そして、なぜかキルケーと恋仲になるとか・・・・?
そこで、部下たちは突っ込む・・・「なんでやねん・・・」っと・・・








この絵の驚きは、えっ、セザンヌってこんな絵も描くの?っと言う事でしょうか?
二人で押さえつけて、今まさに刃物で殺すとする瞬間である。


何を言いたいのか、意味不明である。
若い頃は、暴力的な絵も描いたらしい・・


イメージのギャップが、「怖い絵」なのかもしれません。



          



貧困にあえぐ母娘、練炭自殺をはかり、娘は先に逝ったのか?母親は、哀願するように壁に張られた聖母子を見つめている。


娘と共に導いてもらう為に・・・・
この画家も自殺をしている、宗教画家として描きたいのが、センチな風俗画小品ばかりを求められたとかで・・・?








この一枚の絵で、ドラマのクライマックスが描かれている。
赤子の所有権をめぐって、ソロモン王の裁きが下される。


王は、この赤子を真っ二つに切り裂いて、各々女性に分け与えよっとお裁きが下り、刑吏がまさに子供を引き裂こうとしている。


左の女は、半分でもいいから貰おうと布を広げて待っている。
右の女性が、やめて欲しいと哀願、子供はいらないから、子供の命だけは助けて欲しいと必死で手振り身振りで訴える。


それを見た、ソロモンは刑吏に待ったをかけやめさせる。
そして、「どちらが本当の母親かが、わかった!」っと言ったそうである。







西洋版三途の川。
古代ギリシャ人は、太陽が沈む西の彼方の地下に冥界が存在すると思われていた。


冥界に行く途中のこの世とあの世を結ぶ川が5本あり、死者がこの川までたどり着くと、船に乗って渡るのである。


しかし、船賃が要り、払えないとこのほとりでずーっとさまよう事になるらしい。
地獄の沙汰も金次第・・・・昔、日本でも棺の中に沢山の寛永通宝をひもに通して遺体に握らせて葬ったものでした。







「第7の圏谷(たに)の第2の円は自殺者の森で、自殺者たちはひね曲がった樹木に変えられている。ダンテがウェルギリウスの指示で棘のある大樹の枝を折ると、その自殺者は自らの身の上を語り始める。彼は皇帝フェデリーゴ2世の家臣、ピエール・デルフ・ヴィーニャだった。(図録より)」




          



生贄にされた女性を三日月の兜をかぶり、ヤギの頭蓋骨を身にまとった悪魔が味わう。
苦痛に顔が歪む女性、その上で骸骨の天使が見ている。




          



線路に横たわっている骸骨は死神で、この場所を通る列車に大事故を起こさせるのである。







「戦争の惨禍」エッチング集
一組の男女が衣服のはがれた死体の山を前に口元を覆う。
耐えがたい腐敗臭が立ち込めている。(図録より)








これ見よがしに切り刻まれ、木の枝にくくられ、串刺しにされた亡骸が、強靭な精神力によって描きとめられる。画家は弄ばれた人間の肉体だけでなく、戦場においていともたやすく鈍磨する無用な人間理性を見つめている(図録より)





的当て遊戯のようにして人間が撃ち殺されようとしている。表情を失った銃を構える男。画面の奥からこちらを見つめる黒い目をした男。彼らは、はたして今まだ人間と呼べるに足る存在たりえているのか(図録より)



          



神より二人の天使が使わされたが、欲の塊の人間たちが言い寄って来る。
それを助けてもてなしたのが、ロト老人。


神は怒り、このソドムの町に硫黄の雨を降らせた。
助かったのは、ロトと娘二人であった。


神の使いの天使は、容赦なく神の命令通りに動く兵隊のような物。
ソドムの町を空中から見下ろすカンジは、攻撃前の偵察機みたいなもの・・・?







権力保持の為に力を注いできたクレオパトラ、しかし、命運尽きたと自殺を図る。
ミルク風呂など美容にも研究したが、自殺の時も死にざまを考え、コブラを選んだ。
ただし、そこまでに至るに数々の実験的奴隷で効果を試したという。







前代未聞、墓から掘り起こして裁判をするという異様な光景。
しかも、白骨化した教皇の亡骸で、何も語らない、一方的な裁判である。


当時の教皇は、言いも悪いも幾多の政権争いに巻き込まれ、殺し合いが行われていた。
裁判も形だけで結果は決まっている。
この白骨化した教皇も、毒殺されたそうである。






この他、まだまだ面白い物があるので、行って見てください。
吉田羊の音声ガイドが便利で解説板以外の情報やエピソードもあるので、利用してみるといいでしょう。


私は、字の小さい解説板を読むのに苦労するので、いつも音声ガイドを使っています。
また、重たいですが図録の解説も面白いので、興味のある方は買われてみてはいかがでしょうか?




          


          


          


          


          


          


          


          


          


          


          


          



          「兵庫県立美術館」HP






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