上念司/飛鳥新社
前巻では、明の国内の銅が掘りつくされたことと日明間の公式な貿易の停止から銅銭の輸入が途絶え、日本全体の貨幣量が減ってデフレ経済に陥った室町時代のことが語られた。本巻では、安土桃山時代になり、銅の代わりに銀が銭貨として使われるようになり、貨幣量の増加で明の経済は潤い、日本は大量の銀を世界に供給するようになる中で、「日本国内の決済手段がどうなっていくのか」という話と「銀の一大産地ということで西欧諸国に目を付けられる(実は日本は大ピンチであった)」という話が語られる。
信長が登場した頃の日本国内では、西は銀、東は永楽銭、甲斐は金・・と各地で決済手段がバラバラであった。信長はこの問題に着手するも志半ばで世を去り、秀吉の代になって、高額決済には金貨銀貨を使いつつ、年貢や少額貨幣には米を「物品貨幣」として使うことを容認した。秀吉の時代はこれでよかったが、ここで米が残ったことで、江戸時代に米の価値が徐々に下がり、幕府を苦しめることになったようだ。
ただ、全国的な統一基準による検地をおこなったことで、同じ価値の土地であれば国替えが出来るようになったことは、土地にしがみついた「一所懸命」の武家の在り方を変えていくことになるのだな。「おんな城主直虎」を見ていた時、意図的に隠した農地が登場したが、そういうことをやっていると、国替えされた時に損をすることになるのだな・・・な~んてことを思った。
戦国時代の大河ドラマは語りつくされたように見えても、先般の「麒麟がくる」みたいに新しい視点は色々ある。いずれこういう経済面にスポットを当てた戦国ドラマを見てみたい気がする。
また世界有数の銀の産地になったことで、実は諸外国から狙われていたのだという話、けっこうやばい。伴天連追放令はそういう流れの中で出ているのだな。私はキリスト教の学校で育ったから、そういう暗黒面を見て来なかっただけに、かなりショックであった。