観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「空き家」「住宅」「金利差」「相続」「農業」を考察する予定(未定)。

職務給がもたらす高い初任給

2023-09-29 20:18:20 | 厚生労働
まず終身雇用年功序列制はピラミッド型の人口構成を前提とする途上国型制度ですから、これは持続不可能です。現に若い人に負担がかかり過ぎていて、少子化の原因にもなっており(労働者に社会保険料の負担が重くのしかかります)、高齢者に偏在する金融資産は眠ったままになっています(何時死ぬか分かりませんので、持ち家ありの厚生年金でもなければ、上手く貯蓄を取り崩すことは出来ません)。従って、終身雇用年功序列制と相性のいい職能給も廃止の方向に向かうできでしょう。結論として(同一労働同一賃金をむねとする)職務給しかない訳ですが、これは一定の労働分配率下で、年功的賃金の増加を抑制できますので、その分初任給の上昇をもたらすと考えられます(実際に職務給の欧米の初任給は日本より高いです)。

職務給は職務内容を明快にしなければなりませんから、人によらず、一定の品質の仕事を保ち易いとも言えそうで、日本に馴染まないとは私は思いません。

日本企業、蓄える賃上げ力 経常利益4~6月最高の31兆円(日経 2023年9月28日)

2024年卒の大卒求人倍率は1.71倍で、コロナ禍前水準に戻っています。建設業、流通業等、有効求人倍率が高い業界は改革まったなしだと思います。人件費を上げるか、DX化(設備投資)か効率を考えて、早急に対応しなければなりません。

賃上げ・設備投資の原資は価格転嫁、融資、投資等の手法が考えられますが、融資、投資は結局儲からないと持続可能ではないので、価格転嫁といった儲けるスキームの話は避けて通れません。価格転嫁して減収になるなら、過当競争の可能性が高く、弥縫策は問題を長引かせるだけでしょう。

賃上げ余力のある企業を煽って賃上げを求めていきたいところですが、現役労働者で構成される労組主体の賃上げだと初任給が上がらず、中高年の給与が高い年功序列制が温存されるような気もします。この問題点は経営者の視点で若い労働者のコスパが良くなり、中高年が不要な人材になることだと思います。

(金を稼ぐ力に差が出にくい)普通の業界では職務給でいいと思うんですよね。スポーツ選手や芸能人なんかは能力主義というか、本来の意味での職能給だと言えるかもしれませんが、いずれにせよ、日本の大勢は少子高齢化の影響を受けざるを得ず、年功序列終身雇用は持続可能でありません。

公務員に限って言えば、職務給にして、初任給を上げて、なだらかな賃金上昇で高齢者の賃金は抑えめにすることは簡単です。政府がそうすればいいからです。高い初任給で新卒を奪われるのが嫌であれば、民間もそれに倣うでしょう。気を付けないといけないのは、初任給を上げた上で、年功賃金/職能給を温存したまま、中高年の給与まで上げないことです。それをやると公務員天国の増税路線、民間部門の縮小で共産主義路線まっしぐらですから。

民間部門の評価は難しいですが、業界ごとに適正な労働分配率があって、初任給で評価すれば、間違いないでしょう。職務給ですから、同一労働同一賃金で非正規は実質的に禁じるべきかと思います(短時間勤務の待遇の問題はあると思いますが、長時間勤務の正規と基本的に変わらない非正規は社会保険も含め、同一給与同一待遇にしていくべきでしょう)。

では頑張る人が報われないのかと言えば、そうではないでしょう。職務給でも(賃金を支払って)繁忙期に働いてもらうことは可能だと思いますし、業界によって、職務が明確になっていれば、技能をつけることで、ステップアップすることも可能なはずです。

欧米風の職務給にすれば、(価格転嫁で)物価が高くなって、生活が苦しくなるかと言われれば、そうではありません。実質賃金が上がっていないのは、日本だけなのですから。

実は2020年4月から正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差が禁止されています(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」厚生労働省)。政府は既にジョブ型雇用に誘導しているとは言えますが、公務員もそうしているか、民間が政府が誘導する方向に動いているかは検証の必要があるかもしれません。

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