ドイツとトランプの対立は結構根深いみたいですね。
ドイツはオバマびいきでクリントンを応援しトランプを批判してきた(現代ビジネス 2016.11.25 川口マーン恵美)し、
トランプは貿易不均衡を問題視し、イギリスに肩入れしEUを懐疑する(Newsweek日本版 トランプ政権が貿易不均衡でドイツに宣戦布告、狙いはEU潰しか 2017年2月3日(金)19時10分 ハロルド・ジェームズ(米プリンストン大学教授、欧州論))。トランプも何もドイツが憎くてやっている訳でもないんでしょうが、貿易不均衡は長年アメリカが言ってきたことで、落とし所を探っていかないと、アメリカとドイツが本格的に対立に向かっていき、自由主義国の連携を引き出して、中国に向かいたい(自由主義国が連携して、国際ルールを中国に守らせていくことを想定しています)筆者にとっては、不味い展開になっていきます。そういう訳で調査し考察していきます。
安倍首相はドイツと連携して自由貿易を推進する姿勢を見せました(産経ニュース2017.3.21 01:17「安倍首相とメルケル独首相、自由貿易の推進で一致 北朝鮮の核・ミサイル開発「新たな段階の脅威」として日米欧で連携強化」)。産業構造・置かれた立場など似たところも多いドイツに共感するところも多いのだと思います。
ドイツはEUの中で群を抜く経済力を持つ国ですが、欧州のリーダーではありません。これは歴史的経緯から来ています(常識的な事柄ですが、「現代ドイツ政治」(ミネルヴァ書房 第7章 EUとドイツ 板橋拓己)を参照しています)。日本がアジアにおいて発言権を取り戻していくことが重要であるのと同じく、ドイツもヨーロッパにおいて発言権を取り戻していくことが重要だと思います。そのためには、味方であるところの(そして牽制する勢力の筆頭でもある)イギリスやアメリカを説得していくことが必要でしょう。ドイツが発言力を必ずしも求めていない可能性もあります(英エコノミスト誌は2013年6月に「嫌々ながらの覇権国(reluctant Hegemon)」という特集を組んでいます「現代ドイツ政治」190p)。ですが、そうだとしても、力には責任も伴います。ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は「ドイツの力よりも、ドイツが何もしないことをより懸念し始めている」と2011年にベルリンで述べたそうです(現代ドイル政治190p)。日本もドゥテルテとかいう人に何か微妙に煽られていますよねwそれはともかく、日本やドイツが発言力をあまり求めないのは、一方で戦犯国としてレッテルを貼られており、発言力を求める動きに強烈なマイナスの力の作用があるのも一因ですから(賽の河原で石を積むようなことは誰もやりたくありません)(国連で敵国条項もありますね)、この辺の改善も必要かと思います。ハノーバー宣言でiotで日独連携するようですが、経済でやる気なのは良し、でもそろそろ得意の工業(とドイツは貿易)偏重の姿勢を改め(この辺が潰されたら、我々は死んでしまいますから、必死で守ろうとするのは勘弁してほしいと思います)、もっと広い視野で力に見合った責任を引き受けていく時が来たのでしょう。
貿易不均衡は自由貿易を基調に考えるなら、容易に解消はされませんし、また無理やり解消されるべきではないと考えます。消費者が良いものを買うのが経済の基本であり、割り当てなどで強制的に均衡させることは社会主義で衰退が待っているからです。中国が自由貿易を言っていることを軽視すべきではありません。つまりみんなで衰退するという選択肢も有りません。日本はアメリカの良いもの(兵器ですが)を買えばいいと筆者は思っています(アメリカの兵器のクオリティが高いのは明らかですし、中国の軍事拡大に対抗して破綻(日本が中国に降ること)を防ぐ必要も有ります)が、ドイツがどうすべきかは自分のことですから、ドイツ自身が考えればいいでしょう。ここではEUとドイツについて考察していきます。
ギリシアの債務問題で、ドイツはギリシアが財政緊縮することを求めました。無駄使いするなというドイツ国民の声に押されてそう言ったと理解していますが、一見正論のこの意見も重大な事実を見落としています。ギリシアが緊縮してしまえば、ドイツのものが売れなくなるだろうということです。更に重要なことは、一方が貿易で勝ち続ける構造は永遠ではないということでしょう。ドイツはアメリカに対して大きく貿易黒字を計上しているようですが、アメリカからいずれ買うものが無くなるかもしれませんし(ドイツや日本が自らの強みを手放せないのと同様、アメリカも自身の強みは手放せないでしょう)、アメリカが破綻すれば、投資した分がパーになります。ドイツは自国の需要不足を外国(特にアメリカ)に頼っているところがあるでしょう。だから、少子化対策に本気でなかったのかもしれませんが、持続可能な世界を構築することも考えるべきだと思います。ギリシアは重要な顧客であり、ドイツ人は破綻してまで買ってほしくなかったのかもしれませんが、そうだとすると、ドイツの企業は儲けられなかったでしょうし、結局尻拭いはEUが行ったようです。ドイツは需要不足の問題を真剣に考えるべきでしょう(日本は比較的貿易依存していません)。
ただし、
ドイツが需要不足を解消したところで、アメリカからの輸入が必ずしも増えるとは限らないところに、経済の難しさがあります。消費者は安くて良い製品を買うからです。アメリカが輸出を増やして貿易不均衡を解消していくなら、弱い産業を強くするのも大切ですが、手っとり早いのは、強い産業が儲けることだと思います。アメリカが強いのは知的財産とかITとかその辺ですから、その辺でアメリカが儲けられるように、フォローするのがいいと思います。自国内の環境整備もやるべきでしょうが、巨大市場で他国の市場を荒らしながら自国産業育成に励んで知的財産で非協力的かつ情報統制をしかつ企業に対する規制も思うがままの専制国家のあの国の扉をみんなでこじあけるのがベストな気は筆者します(日本企業をターゲットにした差別的対応に怒る気持ちが無いと言えば嘘になります)。それだけのことをしているから、しょうがない。悪者にされがちのアメリカ(誰かが一生懸命裏でコソコソ煽っているかもしれませんよね)ですが、あれだけ独創的で世界に貢献しながら(ITなどイノベーションを多くおこしてきた国です)、マネタイズに苦しんでいるところがあるでしょう。みんなインターネットを便利に使いながら、大してお金を払っていないんですから、ちょっと同情できるところがあります。
内需の拡大には少子化対策と移民政策が重要になってくることは否めないと思います。移民政策は受け入れ国のルールを守らない移民によって国家の統合を破壊していく可能性もありますから、マイナス面を見つめる必要があると思います。多文化主義を言うのは易いですが、多文化主義で移民を増やすと、政治権利を与えることに繋がり、他国に利益を誘導する政治家の登場に繋がりますから、上手くいかないだろうと思います。イスラム系移民が増えるのはいいとしても、そのイスラム系の政治家がイスラムに不当に有利な政策を行わないとも限りません。イギリスではイスラム系のロンドン市長が誕生しました。恐らくロンドンのため、力の限り働かれているものだと思いますが、国政となると疑問はあるでしょう。ロンドン市長として実績を残すと、国政へという声が高まる可能性も有ります。移民に改宗を迫るべきとは思いませんが、原住者以上に、国に忠誠を誓い、移住元の国に利益誘導しないように、ある程度同化してもらう必要はあるでしょう。それをしない移民政策に未来はないと思います。トランプはドイツ系ですがドイツに利益誘導する気配もありません。アメリカだから出来ることでもあるかもしれませんが、多分化主義とか何とかそんな美名で誤魔化さず、移民は移民先のルールに従う、政治は自国の国益を追求するという原則を見直す必要があると思います。
後、貿易黒字は通貨高を招くでしょう。日本は既に貿易黒字は縮小しています。だから、通貨高も落ち着いているのだと思います。ドイツの場合、EU統合で明らかに儲けています(ユーロ貨幣が導入された2002年あたりから経常収支の黒字がドンドン伸びています。2004年からの東方拡大が加速させたのだと思います)(日本の場合、特定アジアは反日ですし、特定アジアは日本が育てたところもあって、工業など日本同様の産業が育っていっていますから、アジア版EUを日本が創ろうと思っても、特定アジアが首を縦にふらないと思います。共通通貨が為替を抑えて質の高い日本の輸出産業が圧倒するというシナリオでは、特定アジアの企業が潰れてしまうからです。日本支配を連中が到底我慢するとは思えません。仮に上手く行くとしても、アメリカが貿易を閉じてしまう可能性もあります)。貿易黒字が増えれば、通貨高を招き、輸出の伸びにストップがかかるようになっていますが、ユーロの誕生により、通貨高にならず、ドイツ企業がやりたい放題になっているでしょう。ただ、これにストップをかけるのは容易ではありません。ユーロが通貨高にならないのは、産業が強くない国が足をひっぱっているからだからと思います。イギリスは離脱するそうですし、フランスもその動きを見せていますが、実はあまり関係ないと思います。イギリスやフランスは比較的強く自国の産業もあるからです。
ドイツ企業は東欧で生産しているといいます。これが決定的でしょう。仕事が無いよりはある方がマシですから、東欧はドイツ企業が伸びても受け入れるでしょう。だから、東欧はドイツから離れませんし、東欧がドイツから離れなければ、通貨高にもならないという構造になっていないでしょうか?アメリカがドイツの独り勝ちを防ぐ手段はそれほどはない気がします(現時点で筆者には思いつきません)が、ウクライナとかを独立させて、更に東方拡大をさせていくなら、もうこれは○○の所業としか言えません。ともあれ、ドイツの覇権はある程度認めて、合意できる点で譲歩を引き出す方が生産的な気がします。できないことを試みても仕方ないでしょうから。
日本/アジアに関して言えば、アメリカは早急に日本と組んで中国を外した多国間交渉をするべきだと思います。中国企業は今はそれほど強くありませんが、我々の技術が移転されるなら、間違いなく容易に強い中国企業がキャッチアップするでしょう。そうなった時に、中国はドイツが東方拡大したように東南アジアに拡大する可能性があります。元が強くなり過ぎるのを防ぐためです。今なら、中国企業はそれほどは強くありません。欧米日本が技術移転しないなら、キャッチアップがあるとしても遠い先の未来になります。だから、中国に技術移転しないことが決定的に重要です。そして、中国に技術移転されるぐらいなら(東南アジア支配されるぐらいなら)、日本やアメリカの企業が東南アジアをある程度育てて、入り込む余地をなくしていくべきだと思います。
アメリカには中南米との共通通貨で通貨安誘導するという選択肢もあります。ただ、取り残されるラストベルトの反対で、政治的に実現はしないと思います。ドイツの工場が東欧に移転しているように、アメリカの企業が中南米に移転するという問題もあります。
日本は(ドイツがそうであるように)恐らく東南アジアへの進出にそれほど反対はないのではないかと思います。通貨安も歓迎するでしょう。日本を止めても中国が出るだけですから、アメリカは日本と一緒になって進出する方向性がいいと思います。アメリカ大陸ではアメリカが独壇場ですが、アジアではアメリカに容易に従わない中国がいるので、アメリカが望んだ方向にすんなりは動かないでしょう。中国がドイツみたいになるのを防ぐのが大切です。それは抑止が難しい力であるからです。アメリカも一緒に動くならば、日本のことをそれほど警戒しても仕方がないと思います。日本とアメリカの間には戦後もいろいろ軋轢があったでしょう。しかし、互いの利益のためには、その辺の事情は水に流せると思います。