観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「空き家」「住宅」「相続」「農業」を考察する予定(未定)。

北方領土問題と対露戦略

2024-05-15 18:24:41 | 外交安全保障
北方領土問題ですが、(サンフランシスコ講和条約を前提とする)これまでの枠組みでは限界があると考えます。日本は千島列島・南樺太の権利、権限及び請求権を放棄しているからです。やれることは、北方四島が北海道の属島なのか、千島列島の一部の南千島かの神学論争をロシアとの間で繰り広げることでしかありませんから。だからと言って、法的論争を無視するのは、現状の国際秩序を守るという戦後日本の正しい立場にそぐいませんし、現状の国際秩序を破壊してロシア(や中国)に対抗する力が日本にある訳でもありません。

まず神学論争を上手に戦うという意味では、歴史が重要になると思います。アイヌが日本固有の民族であるという事実を尊重し、北方四島が如何に北海道の属島であったかを強調する訳です。その副産物として、サンフランシスコ講和条約の部分的改訂も視野に入ってくるかもしれません。南樺太や千島列島はアイヌの領域だったからです。ロシアは勿論嫌がるでしょうが、サンフランシスコ講和条約はロシアとの間に結んでいませんから、ロシア人が手出しが出来る話では無いんです。ロシア人の嫌がることをやって、安全保障環境が悪化しないかですが、ロシアはウクライナに精一杯でそんな余裕は無く、どの道、ロシアは中国に阿って、日本を挑発する仕事を止めないでしょう。日本が南樺太や千島列島を要求しようがしまいが、これまで通りな訳です。これまでは中国に対抗するため、ロシアを動かすという考え方もありましたが、ロシアが寧ろ中国を煽っていることは見ての通りで、東が安全と見たから、ロシアが心置きなくウクライナに集中出来ており、その環境がロシアに戦争を決断させる一因になったと残念ながら見ることも出来ます。日本が北方領土の奪還に本気だとロシアに思わせることが出来れば、ロシアへの牽制としては十分でしょう。領土奪還を目的とした出兵(終結してない戦争の再開/停戦の破棄)は、国際司法に従わない不法国家に対しては、合法ではないかと私は考えますが、勿論、ロシアへ出兵することは、核戦争のリスクがあるのであって、専守防衛の理念・体制を前提として良いと考えます。それで出来ることには限界もありますが、主張すべきは主張してしまおうという訳です。ロシアの極東進出は中国との潜在的な軋轢要因です。中国人の多くはロシアに対して領土を返して欲しいと考えており、北方領土返還要求で中国世論に間接的に日本が訴えかければ、ロシア(や中国)の独裁者を牽制することが可能で、戦争の抑止力になり得ると考えます。その際に重要なことは、少数民族の国家を無理に樹立しようと考えないことです。それはアイヌ独立論でブーメランにもなりかねませんし、コストも高くなり過ぎ、中国世論に響きません。また、少数民族の国家の樹立をロシアは移民の強制で対抗することが出来ます。今、アイヌや日本人が北方領土にいなくても、そこは(それなりに力がある日本が)(歴史的経緯を盾に)日本の領土だと主張してしまわないといけないということですが、これは力の信奉国家に効くという訳です。

この際、ロシアのウクライナ侵略を前提に対露戦略を再考しておくと、欧州正面で言えば、ウクライナ防衛で勿論良いと思います。ウクライナにはロシアに対抗して国を守る力があると思うからです。そして、欧州は自分達の国を守るため、ウクライナをどう防衛するかを真剣に考えるべきでしょう。問題は何処までが欧州正面なのかですが、ウクライナとコーカサス諸国は隣接していないので、真剣に守ろうとすれば、NATO加盟国であるトルコの動向が鍵になってきます。

最後に中央アジアですが、地政学的に西側諸国が戦力を投射できる地域ではなく、地域の多数派民族を擁護するという形になるでしょう。主にテュルク系で、ここでもトルコの動向はやはり重要かもしれませんが、勿論、民族主義を煽るという訳にはいかず(民族統一が戦争の理念になったら、今の国際秩序は守れませんから)、現状維持志向で牽制を試みるということになると思います。ですから、中央アジア諸国+モンゴルが、ロシア(や中国)に対して要求を強めるという形がいいのではないかと思います。守ってやるから、こっちにつけとは言えませんが、今要求しないで、ロシアに何時要求するのだろうか?という疑問が無くもありません。ウクライナを攻めたロシアが中央アジア諸国を攻めないという保証がありませんし、ロシアが(中央アジアの)少数民族を虐待し、中央アジア諸国に不当な圧力をかけていることも事実ではないかと思います(ロシアが怖いので我慢しているのでしょう)。ただここで(一帯一路を謳う)中国は要注意です。(テュルク系の)ウイグル問題を抱えているので、この方面は特に我々に協力的になるはずがなく、中国世論の共感を得ることも困難ではないかと思われるからです。こうしてロシアを牽制すれば、ウクライナの勝利に寄与しますし、北方領土が帰ってき易くなるという訳です。

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