本人訴訟で行政訴訟をやっている。
行政訴訟というのは裁判費用はほとんど要らない。
地裁段階で、訴えの額、たとえば
「100万円が違法な支出だから職員は県に返せ」 という訴訟でも
「10億円を違法に支出して県に損害を与えたから関係者は県に返還せよ」という訴訟でも、
「情報を非公開にしたことは違法だから、非公開処分を取り消し、公開せよ」という公金に関係のない訴訟でも、
裁判所(国)に出すのは「収入印紙 13000円」だけ。あとは、やり取りに必要な切手代を提訴時に数千円裁判所に預けることになっているが、これは使った実費だけで、判決言い渡しのあとで、残りは帰ってくる。
弁護士を頼むと、通常は、着手金や弁護料がいるから何件も何十件も、なんてことは、市民運動では到底できない。
私の場合は自分でやっているからたくさんできるだけ。
といっても、何の教育も受けたわけではないので、私は、裁判を続けながら、裁判の中で勉強した。訴訟件数のまだ少ない早い段階で地裁で勝ったり、高裁で逆転勝訴したり、最高裁に出かけたり(弁護士でも最高裁に行くこと=呼ばれること=はまったくないとか、数回だけとかが通常だそう)、そんなことで楽しく進められたからやってこれたのかもしれない。
その行政訴訟の中でも、一番長くかかった、岐阜地裁で約8年、裁判長も3代目の人、弁論や協議期日も45回ほどの事件が「カラ渡船」の住民訴訟。
この訴訟を進める中で、いろんな「裁判や法律」の勉強をさせてもらった。 というか、しなければならなかった。
その住民訴訟が昨年決着。
こちらの勝ちで、被告らが控訴、その控訴審判決が明後日14日に名古屋高裁である。
地裁段階からこちら原告の方針は決まっているので、特に慌てることはない。
岐阜地裁の判決は、住民訴訟の1年ルールを越えて4年間分すべてを返還対象とした。高裁判決が、これを変更せずにごく一部の損害額の認定における減額程度ならともかく、1年ルールに限定した返還額の認定への変更であれば、こちらとしては上告する
私たちの基本線は次のようだ。
県営渡船の委託事業について、県の職員と請け負った市町、船頭らが実際には仕事をする意志も事実もないまま、毎年、漫然と委託料を授受していたのは「談合」だから、そういう場合の損害は1年に限定されない、だから県の損害は全部返すべき、というもの。
昨日、裁判所の記者クラブに関連資料を送ったので、ブログもここでその訴訟の関連情報を整理する。
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ここのところ6位、7位、8位あたり
2007.5.31 ◆今日はカラ渡船の判決。訴状も
2007.5.31 ◆海津のカラ渡船・委託料の住民訴訟、勝った!それも大部分が認められた。速報
2007.6.1 ◆判決の報道から
2007.9.29 ◆海津と県職員は控訴。控訴審が開かれた。適正な渡船の例
2008.1.25 ◆こちらは控訴審でも和解を断り続けた
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《3月11日に 名古屋 地・高裁 司法記者クラブ に送った手紙》
2008年3月14日(金)1時10分
名古屋高裁民事2部判決言渡
平成19年(行コ)25号県営渡船委託料損害賠償請求控訴事件
原審原告・被控訴人 寺町知正
くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
携帯 ・・・
いつもお世話になります。標記のとおり判決の言い渡しがあります。
関連資料を司法記者クラブ宛に送付いたします。
原審岐阜地裁判決
控訴人の控訴状・控訴理由書 (2者分あり)
被控訴人の答弁書、準備書面(1) 証拠説明書(1)、甲第106、107号証
(書証として被控訴人作成にかかる双方の主張整理と原判決の対比表あり)
判決等の新聞記事の写し
《争点の事業の経過》
岐阜県及び愛知県は、単独あるいは共同で県営(舞料)渡船事業を行っています。しかし、この多く(岐阜市の「小紅の渡」を除く)は、殆ど利用のない実態です。
それにもかかわらず周年全日執務したとして多額の委託料等が支出され続けて来ました(総額方式)。
1999年度からは運行実績に応じて支払う契約に変わりました(実績方式)。
“カラ”業務というしかないにもかかわらず、常時勤務したとして虚偽の業務報告をなし、県もこれを黙認してきたと判断されます。業務報告が事実と異なるように故意、秘密裏に粉飾されていたわけですから、極めて悪質であり、同時にこれらを県民が知ることは困難で、正当な理由がありますので、1999年6月から過去4年分と1999年の予算分約2200万円について住民監査請求、住民訴訟としました。
《岐阜地裁》
その後、一部の額を変更し、2266万5138円としました。
裁判官による現場検証も行われました。県民ネットの進めている訴訟では最も長期で、弁論や準備期日は地裁で計47回に及びました。
2007年5月31日の岐阜地裁判決は、基本的に原告の言い分をほぼ認めました。
《名古屋高裁》
その後、被告ら(岐阜県職員ら、海津市、海津の船頭ら)の控訴がありました。
◆平成19年(行コ)25号 県営渡船委託料損害賠償請求控訴事件
高裁における第一回法廷のあと、2回目の準備期日(民事2部の受命裁判官も裁判長も交替していました)において、控訴人海津市ら代理人から「和解はどうか」、という話がありました。こちらは本人訴訟なのですが、被告側(=控訴人)代理人が「弁護士同士ならいろいろと話ができるんですが、そうじゃないので」と付言して。
最後の終結予定として組まれた法廷においてさえ裁判長から、盛んにこちら被控訴人原告側に和解してはどうかと、持ちかけてきました。裁判長は、「てらまちさん、和解の可能性があると思うから言うんですよ、判決になったら地裁のとおりとは限りませんよ」、とまで。
(結審後の廊下で、代理人が「上告してからでも和解はありますから」と説明していました)
私は、本人訴訟で40数件の行政訴訟を行ってきましたが、こんな裁判長の口調は初めてです。
すると、判決で逆転負けは無いにしろ、岐阜地裁の返還命令額の減額修正はあり得るかも知れないと思わざるを得ない、そんな心境です。
岐阜地裁でも2度の和解の話が出ましたが、こちらは、本件は談合と同じ悪意によって生じた損害の返還を求めるものであるから、住民訴訟の基本の1年ルール(原則・支出から1年間が対象)を超えて認定されるべきケースなので、それが認められるまで最高裁まで争う、と和解を断りました。
岐阜地裁原判決が1年ルールを越えてすべてを返還対象としたことは画期的です。加えて、判示の「知事が損害賠償請求権の行使を怠ることは違法である」という認定(地裁判決文57ページ(3))は、控訴審で争わないので今は確定しています。こちらとしてはそれ自体でも画期的だと評価しています。
高裁においても、同じ理由を述べて和解を断わりました。
よって、来る高裁判決が、岐阜地裁原判決の1年ルールを越えてすべてを返還対象としたことを変更せずにごく一部の損害額の認定における減額程度ならともかく、1年ルールに限定した返還額の認定への変更であれば、こちらとしては上告することになります。
◆平成11年(行ウ)16号 県営渡船委託料損害賠償請求事件
◇原告 岐阜県民ネットワーク運営委員10名
◇被告 梶原拓、歴代大垣土木事務所長の個人5人、渡船組合長2人、海津市長
◇提訴日 1999年8月25日
◇請求額 金2258万円
◇公開訴訟と同時に提訴。01年5月、渡船組合長側から和解の申し出があったので、裁判長が双方に額を示したが原告は和解を拒否した。その後、審理が続行されている中、04年12月、裁判所がさらに高額の額を示して和解を双方に求めたが、原告は拒否した。2005年7月15日には裁判官による現場検証も行われた。2006年10月2日結審。
◆ 平成19年(行コ)25号 県営渡船委託料損害賠償請求控訴事件
《同時提訴の関連訴訟の経過》
最高裁で新しい判決が出て、新聞各紙1面トップ、NHKの昼のニュースでも全国に放送された情報公開訴訟は
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元に戻って、本件住民訴訟の経過などの整理のデータ
控訴審でこちらが作成、提出した「第一審の原告・被告・判決」の論点整理表
印刷用 ⇒ A3版をA4版に縮小してPDF版にした印刷用 A4版3枚 168KB
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(訴訟の概要や経過部分だけ、ここに再掲。比較表は上記リンク先をどうぞ)
平成19年(行コ)25号 県営渡船委託料損害賠償請求控訴事件
岐阜地裁平成11年(行ウ)16号県営渡船委託料損害賠償請求事件の争点整理表の要点を抜粋し、2007年5月31日言渡しの判決の要点も加味した比較表を作成したもの。
下記のうち、(請求)については、2007年5月31日岐阜地裁言渡しの判決に記載された「第1 請求」部分を引用し、(事案の概要)及び(前提事実) は第一審で裁判所が作成、原告被告も同意している争点整理表から引用した。
比較表は、争点整理表の争点の項目の順に、それぞれ原告被告の主張として記載されている各主張を要約し、各争点に対応する第一審判決を要約した(各文末の括弧内は判決文中の所在を示す)。
・・(途中略)・・
(事案の概要) 本件は,岐阜県(以下「県」という。)の住民である選定者らが,原告らを選定当事者として,地方自治法(平成14年法律代4号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号及び法243条の2第1項4号に基づいて、県営渡船(日原及び森下渡船)の業務委託に関し,下記の各行為が違法であると主張して,被告らに対し,損害賠償,賠償命令ないし不当利得の返還を求めている事案である。
(前提事実) (1)当事者等
ア 選定者らは、県の住民である。
イ 被告梶原は、平成7年ないし平成11年当時,岐阜県知事の職にあった者である。
ウ 被告伊藤は平成7年度の,同内田は平成8年度の,同大杉は平成9年度の,同渡辺武彦は平成10年度の,同渡辺建蔵は平成11年度の。それぞれ岐阜県大垣土木事務所長(以下「土木事務所長」という。)の職にあった者である。
エ 被告福島は、平成7年ないし平成11年当時,後記渡船場日原渡船(日原渡船組合)の,同瀬古は,平成7年ないし平成11年当時、後記渡船場森下渡船(森下渡船組合)の代表者(組合長)の職にあった者である。
オ 日原渡船及び森下漬船組合は,権利能力なき社団である。
カ 岐阜県海津郡海津町(以下「旧海津町」という。)は,平成17年3月28日,合併により,岐阜県海津市となった(顕著な事実)。これにより、被告海津市は,旧海津町の地位を承継した。
(2)渡船越立業務の委託
ア 県は、県道津島海津線の一部として,旧海津町日原地内の長良川において日原渡船を,県道津島立田海津線の一部として,同市森下地内の長良川において森下渡船を,それぞれ運営している。
イ 県は、被告海津市に対し,上記各渡船の越立業務を委託し,同海津市は,日原津船の越立業務を日原渡船組合に,森下渡船の越立業務を森下渡船組合に,それぞれ委託している。
ウ 土木事務所長は、被告海津市との間で渡船の越立業務の業務委託契約を締結する権限及び契約履行状況についての検査・監督権限を有している。
(3) 委託料の支出
ア 県と海津市は,渡船越立業務委託契約における委託料の支払につき,平成10年度までは年間総額方式(運行実績にかかわらず1年間の委託料を定めて半期毎に前払いする方式)を採用していたが,平成11年度は勤務実績方式(固定経費を除いて運行実績に応じて船頭の日当を支払い、年度末に精算する方式)を採用した。
イ 県は、被告海津市に対し,日原濃船の委託料として,平成7年度に277万8500円,平成8年度に280万2000円,平成9年度に290万0500円及び平成10年度に262万0250円をそれぞれ支払った。
また、県は、被告海津市に対し,森下渡船の委託料として,平成7年度に277万8500円,平成8年度に280万2000円、平成9年度に290万0500円及び平成10年度に172万4500円をそれぞれ支払った。
ウ 県は、被告海津市に対し,平成11年度の日原渡船の委託料として56万3017円を,同年度の森下獲船の委託料として74万1371円をそれぞれ支払った。
エ 県は、被告海津市に対し,平成11年度に「船頭は常駐せず」と記載された看板の工事費として8万4000円を支払った(以下、上記アないしウの支出と併せて「本件各地支出」という)。
(4)住民監査請求等
ア 選定者らは,平成11年6月21日,岐阜県監査委員に対し,本件各支出について住民監査請求をしたが、同監査委員は、同年8月19日付けで平成10年6月21日以前の支出に関する部分及び被告海津市関係者に対する請求を却下し、その余の請求を棄却し,そのころ,選定者らに対し,その旨通知した。
イ 選定者らは,平成11年8月25日,本件訴えを提起し,原告らを選定当事者に選定した。
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