穴 | ||
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読 了 日 | 2008/02/16 | |
著 者 | 仁木悦子 | |
出 版 社 | 講談社 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 220 | |
発 行 日 | 1979/08/15 | |
書肆番号 | 0193-361381-2253(0) |
終話だけが昭和37年と初期の作品となっている他は、主として昭和40年代初めの作品を集めた短編集である。 著者の作品のところでたびたび書いてきたが、僕は年齢は違うものの著者のミステリーデビュー作から著者とほぼ同年代を歩んできた。その割りに読んだ作品の数が少なかったのは、著者に対する僕の評価が誤っていたというほかはない。
そうした反省から、わが国の女流ミステリ作家の先駆けである偉大な著者を見直し、折に触れては探して読むように心がけている。
本書は初出一覧に書いたように6篇からなる短編集だが、それぞれ趣きの異なった内容の作品を集めている。著者の短編には子供を主人公とした、あるいは子供の視線で語られる作品が数あるが、ここでは、最初の表題ともなっている「穴」と、「誘拐者たち」が子供たちを主人公としており、最後の「ウサギと豚と人間と」は主人公とはいえないが、知恵遅れ(この言葉は差別用語になるのか?)、今で言う発達障害を持つ児童の福祉施設を舞台としたストーリーで、そこの子供たちの様子が生き生きと描かれている。
この作品は昭和37年という、かなり昔の作品だが、登場人物による児童福祉法へのちょっとした批判などもあり、自身も障害を持つ著者ならではの視点と感じて、無関係ではない (知的障害者の息子を持つ) 僕も、共感を覚えた。
「明るい闇」は、眼の不自由な男が行きつけの飲食店で他の客にコートを間違えて持っていかれるということが発端となるストーリーで、ちょっとした安楽椅子探偵模様の描写もあり、面白い。 安楽椅子探偵といえば、「幽霊と月夜」はこの時代らしく、手紙でのやりとりが事件を解明に導くというようなところもあり、サラ・コードウェル女史の「かくてアドニスは殺された」(140.参照)を連想させて、興味を引かれる。
# | タイトル | 紙誌名 | 発行月・号 |
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1 | 穴 | 別冊小説現代 | 昭和42年4月 |
2 | 明るい闇 | 小説現代 | 昭和43年8月 |
3 | 山のふところに | 推理界 | 昭和43年9月 |
4 | 幽霊と月夜 | 推理界 | 昭和42年9月 |
5 | 誘拐者たち | 小説現代 | 昭和44年3月 |
6 | ウサギと豚と人間と | 宝石 | 昭和37年2月 |
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