隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0454.子盗り

2003年11月16日 | サスペンス

 

子盗り
読 了 日 2003/11/16
著  者 海月ルイ
出 版 社 文藝春秋
形  態 単行本
ページ数 289
発 行 日 2002/05/30
ISBN 4-16-320960-3

 

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19回サントリーミステリー大賞・読者賞をW受賞した作品。
この本を読み終わったときに感じたことは、「あゝ、良かった」という安堵感である。
どうも僕は、蚤の心臓と言おうか、気が弱いくせにサスペンス・ミステリーを好んで読むのはどういうことなのか? 気が弱いからこそ、そうしたサスペンスな状況に感情移入してしまうのか?
「あゝ、良かった」というのは物語がよかったということでなく、(もちろん物語も良かったことには違いないのだけれど)この場合の良かったというのは、冒頭から終盤まで、主人公たちに感情移入をし、不安感を持続させてきたことから開放されたことに対する安堵感なのである。
ある種の、女性にとって子供ができないというのは、深刻な悩みである、というテーマが取り入れられた小説はいくつか読んできたが、そうした悩みを持ったことのない僕としては、本書を読んだ後でも、実感として理解できないところだ。

 

 

タイトルが示すように、この物語は、代々林業を営む旧家の資産家の息子と結婚して、13年間子供に恵まれない女性が、夫と共謀して妊娠を偽装した上で、産院から他人の子供を盗むという話が主題である。
そうなるに至る背景には、古い慣習や、親戚づきあいや、しきたりに縛られた旧家に、嫁入りしたということがある。そうした環境の中で、子供は跡取りという大事な役目を担うから、嫁にとって必須条件となる。
物語は、そうして子供を盗った女、放蕩息子の夫と、姑に可愛い娘を取られた女、そして、食欲が勝り会社勤めもままならず、援助交際を続け、父親のわからない子供を宿した女、全く環境も立場も違う三人の女の思惑が交錯する、というストーリーが展開していくのである。

 

 

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