隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1025.償い

2009年09月14日 | サスペンス
償い
読了日 2009/09/14
著 者 矢口敦子
出版社 幻冬舎
形 態 文庫
ページ数 450
発行日 2003/06/15
ISBN 4-344-40377-0

 

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総は館山市に在住の末妹が、自分で読んで面白かった本を、3冊ほど選んで貸してくれた。その中の1冊だ。
この著者については、良く知らないのだが、東京創元社の推理文庫にある「家族の行方」が気になっていて、いつか読もうと思っていたので、タイミングが良かった。
著者についてインターネットで検索してみると、それほど売れている作家さんではないようだが、2001年に発表された本作品がヒットしたようだ。

ストーリーは三人称で記述されるが、主として一人の男の視点を中心にして描かれていく。短いプロローグとエピローグに挟まれ、本章は九つに分けられてそれぞれにタイトルがついて進行する。
前の本を読み終わらないうちに手にした本書の最初のほうを少し読むと、ごく自然に物語りに入り込んでいくように読み進められ、面白そうだという感触で期待が高まる。

 

 

プロローグで、男がホームレスとして埼玉県の光市(架空の街か)へ流れ着いたということ、日高英介という名であることなどがわかる。そして、街を徘徊しているなかで、突如火災に出くわす。
火事の第一発見者となった彼は、警察署に連行されて発見に至った事情聴取を受ける。
事情聴取に当たったのは、光署刑事一課の山岸徹男と名乗る刑事だった。取調室で行われた事情聴取はまるで、容疑者に対する取調べさながらのものだった。が、一晩留置所で過ごした翌朝、日高は釈放されたが、山岸に「一緒に現場に行かないか」と誘われる。
誘い込まれるような発端から、ストーリーの進行と共に、僅かずつではあるが複雑な様相を垣間見せるようになる。そして、なんとホームレスの日高は、山岸刑事から囮捜査に似た依頼を受けるのだった。

暇つぶしに訪れた図書館で出会った少年は中学生、日高が前に見たことのあるような少年の名前を聞いて、驚く。草薙真人と名乗る少年は2歳の頃、女の子と間違われて変質者に誘拐されたのだ。
当時まだ現役の医師だった日高は、誘拐現場に居合わせたことから、誘拐犯を追跡して幸運にも子供を助け出すことが出来たのだ。
もちろん2歳だった子供が自分を覚えていることなど無いだろうと日高は、少年と時々図書館で顔を合わせて話をするようになる。そして、ホームレスとしての日高の周辺で、殺人事件が発生する、といった形でストーリーは展開するのだが・・・。

 

 

ろいろと、日高の周辺には事件がつづいて、日高自身にも思いがけない災難が降りかかったりと、複雑な様相を示すようになるのだが、結末ではほろりとさせるような場面もあって、なんとなく一件落着という具合ではあるものの、ちょっとすっきりしない感じが残ってしまったのは何故だろう?
物語としては結構紆余曲折もあって、単純ではないのだが、共感覚などについても、それが物語を形成している一部なのだから、もう少し掘り下げられなかったかというような思いもある。
本書が多くの読者の支持を得たから、売れたのだろうが、僕の中ではいまいち割り切れないような感じが残ったのは、少し残念な気もする。
僕には、元医師であった日高英介が、ホームレスとなるに至った経緯や原因の方が、興味を惹かれる所だ。

少し苦情が多くなってしまったが、それほど期待が大きかったということだろう。

 

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