蝦夷山桜(Cherry blossom) Prunus spp. 優れた美人
驚奇喜異者、無遠大之識、苦節独行者、非恒久之操。
奇に驚き異を喜ぶ者は、遠大の識無く、苦節独行の者には、恒久の操に非ず。
「遠大なる見識、恒久なる節操」
珍しい物事に驚いたり、変ったことを喜んだりする人には、
遠い先まで見通す様な大きな見識は具わっていないし、
また、身を苦しめ操を高くして、自分だけ一人で進む人には、
いつまでも続く本当の志があるとは言えない。
蝦夷山桜(Cherry blossom) Prunus spp. 優れた美人
驚奇喜異者、無遠大之識、苦節独行者、非恒久之操。
奇に驚き異を喜ぶ者は、遠大の識無く、苦節独行の者には、恒久の操に非ず。
「遠大なる見識、恒久なる節操」
珍しい物事に驚いたり、変ったことを喜んだりする人には、
遠い先まで見通す様な大きな見識は具わっていないし、
また、身を苦しめ操を高くして、自分だけ一人で進む人には、
いつまでも続く本当の志があるとは言えない。
覚人之詐、不形於言。
受人之侮、不動於色。
此中有無窮意味、亦有無窮受用。
人の詐を覚るも、言に形わさず。
人の侮りを受くるも、色を動かさず。
此の中に無窮の意味有り、亦無窮の受用有り。
「他人に動かされない心」
他人が自分を騙していることを知ったとしても、言葉に出さず、
また、他人が自分を馬鹿にしているような場合でも、顔色を変えたりしない。
この様な態度の中に、言い尽くせない深い意味があり、
また、計り知れない働きがある。
蝦夷紫躑躅(Ezo-murasaki-tsutsuji) Rhododendron dauricum
片想いの恋 情熱
念頭昏散処、要知提醒。
念頭喫緊時、要知放下。
不燃恐去昏昏之病、又来憧憧之擾矣。
念頭、昏散の処は、提醒を知るを要す。
念頭、喫緊の時は、放下を知るを要す。
然らざれば、恐らくは昏々の病を去くも、
又、憧々の擾れを来かん。
「心の制御の仕方」
気持ちがぼんやりしたり、
気が外に散って正しい判断が出来ないような状態の時は、
心を呼び覚まさせることが必要である。
また、差し迫った大事なことを考えて、
多分、ぼんやりした悪い状態は直せても、
また気持ちが揺れ動いて落ち着かない乱れた状態を引き起こすことになるであろう。
当恕火慾水正騰沸処、明明知得、又明明犯着。
知的是誰、犯的又是誰。
此処能猛然転念、邪魔便為真君矣。
恕火慾水の正に騰沸する処に当たりて、
明々に知得し、又明々に犯着す。
知るところのものは是れ誰ぞ、犯すところのものは又是れ誰ぞ。
此の処、能く猛然として念を転ぜば、邪魔も便ち真君と為ん。
「我を見つめるもう一つの目」
人間と云うものは火のような激しい怒りと、
氷のような大きな欲望が盛り上がり沸き立とうとする所で、
自分の心に物事を明らかに知りながら、
また一方では明らかに犯してしまうものである。
この時、その明らかに知る者は誰であろうか。
また明らかに犯す者は誰であろうか。
この知りもし、犯しもする者が誰かと云うことを直ちに思い返し見極めたなら、
それまでは悪魔のようなものであった者も、
それがそのまま本来の心になってしまうであろう。
衰颯的景象、就在盛満中、発生的機緘、即在零落内。
故君子、居安宜操一心以慮患、処変当堅百忍以図成。
衰颯の景象は、就ち盛満の中に在り、発生の機緘は、即ち零落の内に在り。
故に君子は、安きに居りては宜しく一心を操りて、
以って患を慮るべく、変に処りては当に百忍を堅くして以って成るを図るべし。
「安きにおりて驕らず、逆境にもめげず」
物事が衰える兆候は、盛んで満ち足りている中にあり、
新しい芽生えの働きは、草木の葉が枯れ凋んだ状態の中に既に伏在している。
だから君子たる者は、心配のない状況にある時には、
本心を堅く守って、一旦事が起こった場合のことを考えておき、
不時の災難に遭遇した時には、忍耐に忍耐を重ねて、
難を逃れ、事が成就することを計るべきである。
行者大蒜(victory onion) Allium victorialis subsp. platyphyllum 深い悲しみ
公平正論不可犯手。
一犯則貽羞万世。
権門私竇不可着脚。
一着則点汚終身。
公平正論には、手を犯すべからず。
一たび犯さば則ち羞を万世に貽す。
権門私竇には、脚を着くべからず。
一たび着かば即ち汚れを終身に点ず。
「正義を犯さず、権門に近づかず」
公平な意見や正当な議論に対しては、反対をしては行けない。
もしちょっとでも反対すると、その恥を後々まで残すことになる。
権力のある家や自分の利益ばかり計っている人々の所には、
足を踏み入れてはならない。
もしもちょっとでも足を踏み入れると、
その消すことのできない汚れを生涯持つことになる。
老来疾病、都是壮時招的。衰後罪糵、都是盛時作的。
故持盈履満、君子尤兢兢焉。
老来の疾病は、都て是れ壮時に招くところのものなり。
衰後の罪糵は、都て是れ盛時に作れるところのものなり。
故に、盈を持ち満を履むには、君士尤も兢々たり。
「満ち足りている時の心がけ」
身が老いてからの病気は、
すべて若い時に摂生しなかったことによって招いたものである。
また、地位が衰えてから出て来る罪状は、
すべて勢力があった時にその原因を作ったものである。
だから、高い地位にあって勢力が盛んな時には、
君子は自分の行為を最も恐れ慎重にしなければ行けない。
クロッカス(Crocus) Crocus spp. 青春の喜び 切望
以幻迹言、無論功名富貴、即肢体亦属委形。
以真境言、無論父母兄弟、即万物皆吾一体。
人能看得破、認得真、纔可任天下之負担、亦可脱世間之韁銷。
幻迹を以って言わば、功名富貴を論ずる無く、
即ち肢体もまた委形に属す。
真境を以って言わば、父母兄弟を論ずる無く、
即ち万物は皆吾と一体なり。
人は、能く看得て破り、認めて得て真ならば、
纔に天下の負担に任うべく、亦世間の韁銷を脱すべし。
「天地は同根、万物は一体」
幻のような現実の世界について言うなら、
人間が望むような功名富貴などは言うまでもなく、
この肉体でさえも天から預かった仮のものである。
一方、真実の世界から言うなら、
血縁関係にある父母兄弟は言うまでもなく、
何の関係もないと思われる万物も、
すべて自分と同じものである。
人は、この現実世界は仮りものであることを見過し、
真実の世界こそは本当のものであると確信ができたなら、
そこではじめて天下の大事をその身に荷担することができ、
また俗世間の名利に拘束されることから脱することができる。