スケッチブック 〜写真で綴るスローライフな日々2

写真を撮りながら、日々の暮らしや旅先で感じたことを書いています。
2016年からは撮った写真をイラスト化しています。

スローミュージック SELECTION Vo.56

2008年07月01日 | スローミュージック
Bare/Annei Lennox

巷ではディーバと呼ばれる女性シンガーが溢れています。歌姫と訳されたりして女性ヴォーカリストは猫も杓子も歌姫に祭り上げプロモーションされている気がします。僕は音楽評論家ではないので、誰がどうなのか言える立場ではありませんが、アニー・レノックスは正真正銘の歌姫だと思っています。ユーリズ・ミックス時代のアニーのイメージと言えば、アヴァンギャルドなサウンド、攻撃的な歌詞、ソウルフルな歌唱力、ハイセンスなファッション、ユニ・セックスなルックス・・・まるでその時代の女性をリードするような存在でした。グループ解散後(再結成は1999年のみ)ファーストアルバム「DIVA」(ディーバ)で1992年にソロ・デビュー。1995年には全曲カバーソングの「MEDUSA」(メデューサ)をリリースし、ソロ3作目が2003年発売の「Bare」(素顔)です。「素顔」は意訳であってジャケットのアニーは素顔ではありません。もっとアルバムコンセプトに近づけた表現を模索するなら、「今の私、ありのままの気持ち」と翻訳したくなります。結婚、出産を経験し、子供達に影響を受けて人生が変わったとする彼女も離婚という生活環境の変化の中、どん底の心境でこのアルバムの歌詞を全部書いています。当時49歳。もう若くはありません。孤独だったと語るインタビューでは、ネガティブな内面を表現することにより、気持ちを浄化させることで結果的に希望につなげたいとする意欲を見せています。歌詞を読むとリスナーに心情がストレートに伝わってきます。「・・そして苦しみが訪れる。言わなかったすべて。言えなかったすべて・・」(苦しみの時)「思ってもみなかった。あなたを自由にするため私が代償を払うなんて。」(オネストリー)「あなたは誰かの居間に座り、見知らぬ人の食卓につく。すべては消え去るの。新たな始まりみたいに。」(消去)「けれどあなたは私を縛り続ける。キャンセルされた飛行機みたいに。闇の中を走る空っぽの列車みたいに。みなし児みたいに。ボロ靴の片割れみたいに。」(ロンリネス)「わかっているわ。私はそんなに強くなれない。何ひとつうまくいかなかった。何ひとつ。神様・・・・」(祈り)アルバムを聴くと、鳥肌が立つほど切ないアニーの声が重く響いてきます。ピュアな女性の傷ついた心をエモーショナルに歌い上げるアニーは、この時一人の孤独な女性でもあるのです。僕が思うに、男は勝手に母や妻や恋人に向かって母性愛を求めがちです。世の女性が、すべて優しくて何でも許してくれる愛情溢れた存在だと勘違いしているのです。本当の女性の素顔とは、ごく普通の寂しい心を持ち合わせているただの人であって、温もりが欲しくて人の心に触れたがっているのだと思います。ディーバ(歌姫)と知って、歌が上手い高飛車な女だとか歌唱力のある美人の歌手ぐらいしか想像できない人達には「アニー・レノックスを聴け!」と僕は言いたいです。

素顔
コメント
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