スケッチブック 〜写真で綴るスローライフな日々2

写真を撮りながら、日々の暮らしや旅先で感じたことを書いています。
2016年からは撮った写真をイラスト化しています。

スローミュージック SELECTION Vo.100

2013年12月22日 | スローミュージック
BGM/YELLOW MAGIC ORCHESTRA

記念すべき100回目のスローミュージックはYMOのBGMにしました。かなり悩んだのですがどうしてもこのアルバムについて書きたいことがあります。自称チルドレンの僕としては無視できない作品であり、人生を大きく変えてしまったと言っても過言ではないくらい衝撃を受けたことを告白しておきます。細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一の三人が揃うと摩訶不思議で近未来的な音楽ができてしまうのですから、若かった僕はもう夢中になって聴き入っていました。リリースは1981年。日本は元気だったのです。僕の中でもこのアルバムを起点にYMOのイメージががらりと変わりましたが、世間も最高傑作の声が高いことからもこの作品のビフォア・アフターはテクノ界のみならず音楽作りに変革をもたらしたのは大納得です。全10曲それぞれがその後の方向性を示すような音が詰まっていて、数々の評価が既に出尽くしていると思うので、素人の僕が解説することは何もありません。(だから書くことが何もない?)考えてみれば30年以上も前に発表されたのに、今でもたまに聴いてしまう魅力とは何だろうと自問自答しているのです。当時は画期的だったとか、ちょうど感受性が高かったからとか、いくらでも理由は思い付きますけど、音楽そのものに何か秘密がありそうです。どれも好きだけど特に取り上げるならB面の1曲目「CUE」と3曲目「CAMOFLAGE」。どの曲にも言えますが、メロディー。リズム。ハーモニー。どれもユニークで何ものにも似ていない。あまりにも凝ったレコーディングのためか音と音の妙が幾重にも入り組んでいて、耳の傾け方を変えると表情を変えてしまう奥深さがあります。音楽にコンピュータを使うことが当たり前になった今でもシンセ音の味わいは色褪せていないと思います。ドラムは、生演奏と打ち込み、ウエットとドライ、などが緻密に計算されているようで奇妙なグルーヴ感に酔いしれて今に至っています。(俗な言い方ならブッ飛んだ!)全体のトーンとして独特な暗さを持つことは、発売直後に同時に聴いたクラスメート達も同じ意見でした。世の中は、経済的に力強さがあった時代。ナイーブでどこか影のあるものは、クールで神秘性が高く人の心を惹き付けたものです。今現在、こんなにワクワクドキドキするアルバムが現れるなんて期待している人はいるのでしょうか?僕は想像できません。

BGM
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スローミュージック SELECTION Vo.99

2013年09月08日 | スローミュージック
Last Century Modern/TOWA TEI

このアルバムがリリースされたのは、その名の通り世紀末の1999年でした。あれから随分経ちました。発売と同時に買って今も飽きることなく聴いています。テイ・トウワの制作したもので気に入らなかったものはないくらい僕は大ファンなのですが、このアルバムを聴いた時の感動は忘れ難く、いまだに色褪せないエヴァーグリーンな作品です。ソロデビューのタイトルが「Technova」だったこともあってテクノの申し子のようなイメージが強く、その後の活動の音を聴いて彼が日本のテクノポップを背負っていくのだろうと僕は確信していました。そんな中で「Last Century Modern」はテイ・トウワの才能がいかに多彩でオリジナリティ高いものか思い知るきっかけになった重要な作品です。今更、彼の音楽がアイデア豊富で引き出しが多いなんて言ってもしょうがないことだけど、これまでのテクノサウンドがデジタル音源中心で無味乾燥な音造りであると定義されているような時代に、生楽器を気前よく使用してアコースティックな要素で構成された1曲目「Last Century Modern」で度肝を抜かれたと思いきや、6曲目の「CHATER」のようなキッチュなピコピコものがあったりと幅広い内容に狂喜乱舞したものです。とにかく実験的であるけれど、それでいてどこかノスタルジックな感じもして、新しいのか古いのかと問われたら間違いなく新しいと答えるけど、とても耳に馴染みやすい音ばかりなので驚くのです。ヨーロピアンな匂い。それも路地裏的でマニア受けしそうなメロディ。セクシーな声のヴォーカルとコーラスの数々。10曲目「Let Me Now」はCharaをフューチャーした名曲です。テクノが情緒を受け入れた!と当時は感心したものです。どれもハイセンスなファッションが似合いそうな超お洒落なナンバーばかりです。(狙っていたんだろうけど。)リズム的には、4曲目の「Butterfly」に注目したいところです。ドラムンベースは大方味付けが濃くなるクリエイターが多いのですが、さすがテイ・トウワ。いい匙加減で調えてくれています。「世紀末モダン」ってタイトリング、良かったんじゃないかな。決して刹那的なイメージはありません。モダンってどれも古いものと新しいものが共存してるって思いません?

Last Century Modern
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スローミュージック SELECTION Vo.98

2013年04月21日 | スローミュージック
DIAL"S"FOR SONNY/SONNY CLARK

古いレコードを聴きたくなったのは、このアルバム「DIAL"S"FOR SONNY」を買ったお店、エバーグリーンハウスの店主の同級生の方からメールで連絡があったからです。そもそも購入のきっかけはエバーグリーンハウスをたたむ時に店主の中島さんに最後の一枚記念にお勧めを買うと切り出したら、「Cool Struttin」はあまりに有名で知っていると思うけど、これも同じくらいいいアルバムだと紹介してくれたのです。何度も取り上げたいと思いながらやり過ごしてきた作品でした。1957年に録音されたジャズなので「Cool Struttin」の少し前になります。ソニー・クラークに多大な思い入れがある人は、きっと全盛時のジャズ喫茶入り浸りJBLのスピーカーとマッキントッシュのアンプリファイアーを愛しているでしょう。日本では人気がありますが、母国アメリカでは知名度が低いことでも有名です。調べて分かりましたが、ソニー・クラークはヘロイン中毒者で、わずか32歳で他界しています。ケニー・ドリューの後任、ダイナ・ワシントンの歌伴など務めることもあり、ブルーノートと契約して数々のレコーディングに参加することから早くから才能は認められていたものの、薬物のことでキャバレー・カードが発行してもらえず、ライブ活動よりスタジオ・レコーディングに活躍の場を求めたジャズマンだったようです。僕が好きなピアノリーダーのモダンジャズなら、オスカー・ピーターソン、ビル・エヴァンス、ジョン・ルイス・・・と枚挙に暇がありませんがソニー・クラークも良いピアニストだと思います。このアルバムはソニー・クラークのセンスの良いピアノにウイルバー・ウエアのベース、ルイス・ヘイズのドラムスといったトリオとアート・ファーマーのトランペット、ハンク・モブレーのテナー、カーティス・フィルターのトロンボーンの三管を組み合わせたブルーノートお得意の構成で、ジャズの王道と言ってはなんですが、聴き易くてジャズらしいジャズだなあと思って聴いていました。誰かが目立つこともなく、かといって没個性でつまらないなんてこともありません。50年代のジャズは僕に縁があるようで、このアルバムも当たりでした。しかし、プロデューサーのアルフレッド・ライオンには脱帽しますね。企画力で成功した感じがします。4曲目の「Sonny's Mood」がお気に入り。ブラボー。

ダイヤル・S・フォー・ソニー
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スローミュージック SELECTION Vo.97

2013年02月05日 | スローミュージック
Life Flows Slowly/sphontik

ずっと思い続けていたことです。日本人が作るラウンジ系の音楽はセンスが良いと思うのです。僕が日本人だから、何かしらの精神システムか遺伝子の配列が共鳴しやすくなっていて、心地よいと感じるのかも知れませんが。でもひいきなしに聴いてみてもメイド・イン・ジャパンのラウンジ・ミュージックは世界中の人に聴いてもらいたいものが増えました。例によって中古CDショップでジャケ買いした「Life Flows Slowly」は昨年から大のお気に入りです。写真がいいですね。フランスパンがいっぱいで・・・?よく見たらバスタブにフランスパンをたくさん浮かべて人が浸かっているような演出です。さて、ミュージシャンはスフォンティックこと安田健児氏という人物のソロプロジェクト。(ソロプロ多いな。)ジャンルを述べることは相応ではないと思うのでエレクトロニカとだけ記しておきましょう。打ち込みは当然としてもアコースティックな楽器も多用しています。多分。というのはクレジットには参加ミュージシャンや録音された楽器のことなど記載されていないからです。何とも表現し難い音楽なんですねえ。大好きです。「日常にほんの少し嬉しくなるような小さな発見を。」これがこのアルバムのコンセプトだとは聴いた人の多くが理解できるでしょう。僕も的確な言葉だなと思いました。個性的なリズムパターンではあるけど、トーンが揃っていてどのナンバーも気持ちを落ち着かせてくれます。クリエイティヴな側面を含めてオリジナリティが際立っていて、似た音楽を探すなんて野暮なことは考えたくありません。ファンシーなリズム。ノスタルジックな響き。遠くまで写り込んだ風景写真を眺めるような感覚。またはサイレント映画を流しながら強い酒を飲んでいるような恍惚・・・。2曲目のタイトル曲「Life Flows Slowly」はペンギンの群れが田舎街を歩いているようで印象が湧いて可愛い。5曲目の「Some Steps In The Moonlight」は最初に聴いてハートを持っていかれました。ミニマルの傑作だと思うんだけどなあ。スマホにしてからイヤフォンで音楽を聴く機会が増えました。朝、出勤しながらこのアルバムを聴いてみたら、見慣れた景色が変わって見えました。2012年リリース。

Life flows slowly

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スローミュージック SELECTION Vo.96

2012年08月27日 | スローミュージック
INTRODUCING THE HARDLINE ACCORDING TO TERENCE TRENT D'ARBY

1987年にこのアルバムがリリースされた時は、本当に驚きました。まさに衝撃的だったと思います。テレンス・トレント・ダービーとは呼ばず、T.T.D.といつもは呼んでいます。もっと評価されると思ったんですけどねえ。鳴り物入りでデビューを飾りながらも、二枚目「N.F.N.F」(魚でも肉でもないT.T.D.だ)と三枚目「SYMPHONY OR DAMN」(調和か破滅か)の出来がマニアック過ぎて支持する人が限られ、四枚目「VIBRATOR」(バイブレーター)では知る人ぞ知るミュージシャンになってしまいました。僕はずっと聴き続けていましたけど。しかし、さすがに五枚目の「WILD CARD」は気付きませんでした。だって改名してるんですから。サナンダ・マイトルーヤと名乗っておきながら、T.T.D.の方も書いちゃう人ですが。(どっちやねん!)買ってしばらく経っていますが、最近その「WILD CARD」を聴いていたら、久しぶりにデビュー作も聴きたくなりました。何度聴いたか分からないほど大好きなアルバムです。耳に馴染んだサウンドを聴けば若し頃の自分の思い出と重なってしまいます。「イントロダクティング・ザ・ハードライン・アコーディング・トゥ・テレンス・トレント・ダービー」はアルバムタイトルと名前がつながってしまっています。彼の凄い所は歌が上手いことです。歌手は当たり前かもしれませんが、抜きん出て素晴らしいと僕は思います。ジェームズ・ブラウンの再来とまで言われました。ソウル、ブルーズ、ゴスペル、ファンク・・・黒人音楽の要素は多分に取り入れられていますが、ジャンルはT.T.D.と言ってもいいです。彼の音楽は彼自身で他の音楽とは違うような気がします。いい作品を作るんだけどなあ。ビッグマウスや悪態のエピソードは数知れず、ナルシズムに包まれた音楽を理解してくれる人は少なかったみたいです。シングルカットされた3曲目「Wising Well」を聴けばその才能のレベルは高いと確信できます。独特なリズムとセンスの良いアレンジ。惚れましたねえ。5曲目「Dance Little Sister」は一番のお気に入りで思わず身体が動き出すノリノリのナンバーです。ベースライン、ホーン・アンサンブル、コーラス、が絶妙のバランスで絡み合い、力強いメロディラインに沿って抜群の歌唱力のT.T.D.がシャウトします。名作ですね。9曲目の「As Yet Untitled」なんか神々しくて胸にグサリと刺さるものがあります。デビューアルバムでアカペラですよ。これほど堂々と声を出しながら、微細な歯車を噛み合わせなければならない時計の修理にように精密に歌うこともできるなんて彼は天才です。

T.T.D.
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スローミュージック SELECTION Vo.95

2012年07月15日 | スローミュージック
The Nightfly/DONALD FAGEN

いろんな意味でこのアルバムは絶賛され続けました。ロック史の金字塔とまで言われた名盤中の名盤を今一度聴き直してみたいと思います。1982年は実に多様な音楽が溢れていて、世界中のラジオ放送局のディスク・ジョッキー達はターン・テーブルを回すことにやっきになっていた時代でした。このアルバムを聴くか否かで、僕の音楽を聴く耳の感受性が変わってしまったことは当時から確信していることです。身体はビリビリに感電し、脳天が吹き飛び、目が覚めたような気がしました。それくらいインパクトのある音楽だったのです。ドナルド・フェイゲンに参ってしまうと彼の本来のグループであるスティーリー・ダンが気になって遡って聴くようになり、結局スティーリー・ダンのファンになりました。緻密な録音や凝ったアレンジが良かったのは言うまでもないことですが、それより乾いたサウンドにシニカルな歌詞が僕には新鮮に聴こえたし、アメリカ大陸独特の匂いを感じるメロディーとリズムは、洗練されたブルージーな響きと重なって抵抗も無く身体に入り込んできました。全8曲すべて傑作ぞろいで、今まで何度聴いたのかわかりません。ジャケットの写真もインパクトがありましたねえ。真似して自画像写真を撮っていた友人までいました。カッコいいからしょうがない。白人の手によるブルーズ。それが僕の第一印象でした。フェイゲンの声は鼓膜にくっつくとぺたりと吸着するような粘着性を持っていて、オーソドックスではあるけれどバックコーラスのハーモニーは危険な誘惑に満ちています。オルガン。ハーモニカ。ホーンセッション。ソリッド・ギター。どれも渋くて背筋を蛇に舐められているようです。ドナルド・フェイゲンの音楽的センスは最高です。5曲目の「ニュー・フロンティア」のイントロが始まると、反射的に僕の心はティーン・エイジャーに戻り、たくましさをまだ持ち合わせていないひ弱だった自分を思い出します。タイトル曲の6曲目「ナイト・フライ」の歌詞にもあるように孤独なディスク・ジョッキーが哀愁たっぷりにマイクに向かい深夜の静寂に怖れるシーンを思い浮かべてみたりして。だけど、あの頃は光り輝く何かを信じていた時期でもありました。このアルバムは、アメリカが活気に満ちた50年代後半から60年代にかけて、東北部の普通の若者が抱いていたはずのファンタジーがテーマなのだとドナルド・フェイゲンは語っています。僕はそのファンタジーに触れて感化された若者だったのかもね。やっぱり「ナイト・フライ」は傑作だ。

ナイトフライ
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スローミュージック SELECTION Vo.94

2012年04月19日 | スローミュージック
OOOOOh! Norma/NORMA BENGELL

風変わりなタイトルにセクシーなジャケット写真。ノルマ・ベンゲルの名を知る人は余程の映画マニアでしょう。実はこの人、ブラジルの女優です。しかし、出演した映画はわずか4本。公開順に1962年に2本、63年に1本、80年に1本です。ですからそれほど有名でもありませんし、何しろブラジル映画ですから、配給先も限られます。日本ではほとんどその存在は知られていないでしょう。僕だって観ていません。そのノルマ・ベンゲルが映画デビュー前に歌手として1959年にアルバムを出しています。これがそのアルバムです。アナログ盤はプレミアムが付いて高値で取引されているそうですが、CD盤が2002年にブラジルでイリシューされて、輸入盤を購入しました。あれから10年、僕の愛聴盤となりました。初期のボサ・ノヴァという位置付けになるかと思いますが、お色気ジャズ・ヴォーカル部門と紹介した方が分かり易いでしょう。情報では水着写真を無断で使用したと騒いでレコード・デビューの権利を得た経緯からも本物の歌手ではないのですが、聴いてびっくり。決して悪くありません。確かにムードを重視した甘ったるい声なので、歌唱テクニックがあるとは思えません。だけど、味があるんです。声も出ているし、本業の歌手だと間違える人も多いのではないかな。僕もそうでした。ラテンのリズム感もばっちりです。(当たり前か)この時代のブラジル音楽特有のストリングスをかぶせるアレンジも多く、癖のあるポルトガル語の発音と重なり、エキゾチックでセクシーなナンバーが目白押しです。2曲目「This can't be love」5曲目「エウ・プレシーゾ・ジ・ヴォセ」はトム・ジョビンの作品、9曲目「オー・バ・ラ・ラー」はジョアノ・ジルベルトの作品でボサ・ノヴァのファンにとっても貴重な音源となっています。それにCD盤はリマスタリングされているので音質がとても良いことも特筆しておきましょう。激しいビートや複雑なアンサンブルの音楽も中身が詰まっていていいけれど、耳も全身も疲れない程よい音符と甘い歌声に浸るのも音楽の楽しみ方です。古いから駄目。なんて言わずに、食わず嫌いの方も是非ノルマ・ベンゲルの歌を聴いてみて欲しいですね。しかし、ブラジルとは言え1959年にこのジャケット写真は物議の一つも出たでしょうに。

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スローミュージック SELECTION Vo.93

2011年12月19日 | スローミュージック
遠くは近い-リプライズ-/yanokami

ジャケットのイラストが可愛いだけでなく、何かセンスを感じるアルバムだな。と思って店頭の新譜試聴コーナーで聴いてみて、即決で購入しました。yanokamiとは矢野顕子とレイ・ハラカミのコラボレーションのユニット名です。発表されたアルバムはわずかで「遠くは近い」がセカンドになり、そのインストゥルメンタル盤としてエンジニアZAkのリミックダウンしたのが、この「遠くは近い-リプライズ-」です。ですからアッコちゃんの歌は挿入されていません。残念ながら。でもレイ・ハラカミのサウンドをたっぷり楽しめる作品になっています。この文章を書くために、何度も繰り返し聴きました。まだ鼓膜に音のかけらが残っている状態でレイ・ハラカミのことを調べてみたら、今年、40歳の若さで亡くなったことを知りショックでした。だから最後の作品になったのかと後から気付くことになり、今までその活躍に触れなかったことが悔やまれます。まだ一枚しか聴いてないけどその才能は高いと確信しました。ジャンルで分けるなら、いわゆるエレクトロニカです。それもかなり緩い感じの曲調が目白押しです。シンプルな音源を使い、アンサンブルも複雑ではないけれど、心に響く優しい音楽です。人柄なんでしょうかね。曲は矢野顕子オリジナル以外に、荒井由実時代のユーミン、オフコース、ローリング・ストーンズ、坂本龍一&デイヴィッド・シルビアンと知る人ぞ知るミュージシャンのカバーで占められ、好きな人にはたまらない選曲です。しかし、そこはレイ・ハラカミとZAkですからね。初めて聴いたら曲を聴き分けられる人はあまりいないでしょう。ユーミンの「曇り空」は3曲目、「瞳を閉じて」は7曲目。オフコースの「YES YES YES」が6曲目に収められています。ポップなところがあるけれど、どこか落ち着きを持ち合わせていて、高原で見る景色のように、澄んだ音の数々が緻密に散りばめられていて心が和みます。そう、おとぎ話の中に入り込んだ感じ・・・それも遠い国の。「遠くは近い」のタイトルの意味をまだ理解していないけれど、しばらく聴き続けるだろうなあ。と予感しています。2011年は本当に惜しい人が亡くなります。

遠くは近い riprise
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スローミュージック SELECTION Vo.92

2011年10月24日 | スローミュージック
COLGEN WORLD/鈴木宏昌トリオ

鈴木宏昌はジャズピアニストです。プレイヤーとしても数々のライブやスタジオを経験していながら、コンポーザーやアレンジャーとしても活躍する才能豊かな人だったみたいです。そうです。もう他界していません。そのことを知ったのは数年前で、あるライブハウスで歌っていた女性ジャズ・ヴォーカリストからでした。(共演したこともあったそうです。名前は忘れた。)僕の母方のお婆ちゃんは、僕が生まれる前にこの世の人ではなく鈴木姓でした。その弟さんは書道家で、割合近所に住んでいて、子供頃はよく母に連れられて習字を教えてもらっていたけど、僕は言うこと聞かないやんちゃな子供だったので、よく雷を落とされました。鈴木家には他に東京で税理士?をやっている人がいるとか、ジャズピアニストがいると母が口にしていました。ほら、「タモリの今夜も最高」でピアノを弾いている人・・・ヒノテルの弟と一緒に演奏してるみたい・・・。音楽ファンの僕はその人が鈴木宏昌だと後々知りました。そしてアルバム「COLGEN WORLD」がCD化された時にはすぐ買いました。だって遠い親戚にジャズピアニストがいるなんて誇らしいじゃないですか。ピアノ鈴木宏昌、ベース稲葉国光、ドラムス日野元彦のメンバーが集い、アコースティックでアグレッシブなコンボジャズを熱演しています。全6曲の中、プロローグとエピローグは1分にも満たないピアノソロ演奏なので、実質4曲だと思っていいです。その中身は非常に濃いので損した気分にはなりません。1976年、鈴木宏昌36歳の録音ですから、当時のフュージョン指向(エレクトロニックの導入)があるジャズ界だったにもかかわらず、モダンジャズの基本であるトリオ構成でアコースティック楽器を演奏し、全曲の作曲と編曲を手掛けてオリジナル・リーダーアルバムを完成させたところにセンスの良さを感じました。トリオなら僕はビル・エバンス、オスカー・ピーターソンが好きなんですが、それらに比べれば躍動的でチック・コリア風な感じもします。三人のテクニックは素晴らしいです。3曲目の「LOVE」は、シックで落ち着きがあり、ピアノの調べがセンチメンタルです。(枯れ葉よりいいかも。)ライナーノーツには、珍しく本人のコメントもありました。もう一つ。コルゲン鈴木(彼の愛称)氏の作品にはアニメ「海のトリトン」の主題歌がありました!アニメソングの五指に入れてもいいくらい大好きな歌だったので、それを見つけた時は感動でした。今度カラオケで歌ってやる。

コルゲン・ワールド(紙ジャケット仕様)
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スローミュージック SELECTION Vo.91

2011年10月02日 | スローミュージック
TIDE/ANTONIO CARLOS JOBIM

ブラジルの音楽を少しでも興味をお持ちなら、アントニオ・カルロス・ジョビンの名を避けて通るわけにはいかないでしょう。その大御所の、これまた代表作で有名な「潮流」を聴き直しています。ジョアン・ジルベルトと共にボサノヴァを創出した男として、彼は数多くのブラジル音楽のコンポーザーとしても音楽史に光り輝く功績を残してくれました。リオの国際空港がアントニオ・カルロス・ジョビン空港という名に変更されたのも、国民に広く愛されている証拠とも言えます。このアルバムは、「波」「潮流」「ストーン・フラワー」と3部続くインストゥルメンタル・シリーズの2作目で1970年に録音されました。今では何度もリイシューされ、ボーナストラック、紙ジャケット、デジタルリマスタリングなどいっぱいあります。トム・ジョビン(長いので愛称で書きます。)と言えば、ピアノとギターの印象があります。ボーカルも味があって大好きですけど、改めてストリングスを付けたアレンジでトム・ジョビンの音楽に触れてみると、不透明な世界経済や納得のいかない政治・行政の世の中に安らぎを与えてくれる精神安定剤のような作用があります。えー話がおかしくならないように元に戻します。僕はイパネマの娘という曲が大好きで、このアルバムも収録曲を確かめて購入したものです。アルバムのアレンジをデオダートが担当し、ミュージシャンの中にはベースにロン・カーター、フルートにはジョー・ファレルとエルメート・パスコアールを起用し、ジャズ色の傾倒がみられ、当時でいうフュージョンやクロスオーバー的な位置づけの作品に仕上がっています。トム・ジョビンのリーダーアルバムですけど、ストリングスのアレンジ、フルートやサックスの木管楽器とのアンサンブルなど聴き所が多く、トム・ジョビンの演奏だけではない魅力に満ちたアルバムです。イージーリスニングなんだから、適当に聞き流せばいいや。と思わず、じっくり聴いてみてください。意外な発見があるやも知れませんよ。3曲目の「テーマ・ジャズ」6曲目「潮流」なんかどこかで聴いて聴いてますね絶対に。僕自身の好みは5曲目の「リメンバー」。一番フュージョンぽいナンバーです。パーカッションの響きがエキゾチックな感じでいいですね。

潮流+4

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