世の中がベートーベンの「第9交響曲合唱付き」ばかりが耳に響いてくると、おおむね世の中に背をむけたくなるのが私の性格。世の中の「大半の人がこうだ」というときというのは、世の中が危うくなりかけている時でもある、というのが私の尊敬する先達の言葉だったと記憶している。
私はいつも「第9」ではなく、大晦日の日を静かに過ごすためにフォーレの「レクイエム」を聴くことが多い。昔はヴェルディのレクイエムも聴いていたが、あまり派手派手しいので今は遠慮している。ただしこの曲も思い出深い曲であり、じっくり聴くと心が現われる部分が多くある。むろんモーツアルトの「レクイエム」もいいが、こちらは特定の日を限定しないで、聴くことにしている。
今年はいつものとおりフォーレの「レクイエム」とした。ロバート・ショウ指揮、アトランタ交響楽団と合唱団、およびソプラノはジュディス・ブレンゲン、バスはジェイムス・モリス、録音は1985年となっている。
今年も社会の病理によって多くの人が亡くなった。障害者支援施設県立「津久井やまゆり園」において19名の殺人と26名の傷害事件。過労死や労働現場での死、貧困に基づく自殺死・孤独死等々。さらに自然災害による死。
これらに思いをはせながら‥。