遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

山ぎは少し明かりて

2024年04月02日 10時30分50秒 | 読書

           山ぎは少し明かりて      辻堂ゆめ(著)2023年11月発行

  辻堂氏の著作、初めて読みました。

  さまざまな思いがズッシリ心にのしかかって来たような、、、味わい深かったです。

  三姉妹と、母娘三世代の女性たち、それぞれが懸命に生きる姿が描かれていて、

  時代背景の違いとともに、母と娘の関係の微妙な行き違い、難しさも共感でき、

  涙する場面も。

  ミステリーが得意分野の作家さんと思いこんでおり、認識不足でした。

  昭和の時代から現在まで、ダム反対闘争(故郷の村がダム湖に沈む)など

  厳しい現実も含め、働く女性の目線から見る社会の変化を知ることができ、

  幅広い世代が読んで、それぞれに味わい方がある小説と思います。

  また、祖母の佳代さんの故郷への純なる愛着の強さに、迫力と凄まじさをも感じ、

  果たして、自分はそこまで故郷を大事に思っているか?と省みたりも。

  読み応えのある一冊でした。

     わがまま母

— 以下、好書好日より転記  —

山ぎは少し明かりて」書評 

  ありふれた村という唯一の故郷

    評者: 澤田瞳子 / 朝⽇新聞掲載:2024年02月17日

山ぎは少し明かりて」 [著]辻堂ゆめ

 故郷という言葉の重みを深く胸に刻みつけながら、最後のページを閉じた。
 令和から昭和へ。ゆるやかにさかのぼる各時代を生きる本作の主人公3人の故郷観は、見事に異なる。令和を生きる大学生・都は、そもそも故郷なるものをよく理解できない。その母にして、定年直前のキャリアウーマン・雅枝は、生まれ育った故郷を不便で何もない地と憎悪し、町での生活を望む。それだけに、2人の物語の後に描かれる、雅枝の母の郷里への激しい愛情に、読者は憧憬(しょうけい)とともに一抹の恐ろしさすら抱くかもしれない。
 彼女たちの故郷たる瑞ノ瀬は、高度成長期さなかにダム建設地に選ばれ、村民の長年の反対運動の甲斐(かい)なく水の底に沈んだ。肥沃(ひよく)な土地と美しい渓流に恵まれた、山間の小さな村。かつて日本国内に数えられぬほど存在した、ひどくありふれた――しかしそこに暮らす人々にとってはかけがえのない、唯一の故郷だ。
 3人の女は、もうない、あるいはダムの底に沈まんとする瑞ノ瀬の姿を通じ、それぞれの生に向き合う。その果てに彼女たちが対峙(たいじ)する光景は、瑞ノ瀬への思いを反映して多様だ。しかし故郷はその違いすらを抱きしめて、ただ在り続ける。その事実に我々はつい、自らの故郷の姿を思い起こしてしまうだろう。なぜなら異なる時代を生きる女たちと家族を描くとともに、戦前・戦後、そして現代の荒波の中で形を変える日本社会の一断面をも切り取る本作において、登場人物たちの生き様は、我々自身のものでもあるためだ。
 ――ふるさとというのは、刹那(せつな)的なものなのかもしれない。
 令和を生きる都は、恋人の故郷を襲った豪雨災害に接して、そう感じる。永遠にそこにある保証はないとしても、「でも、守りたい」場所なのだ、と。
 社会の変化、そして様々な災害によって、多くの人の故郷が変化する今だからこそ、必要とされる物語だ。
    ◇

— 著者インタビューの一部抜粋 —

女性の生き方、避けては通れず

 略

 本作は、大学生の都、定年退職を控えた雅枝、ダム湖の底に沈んだ瑞ノ瀬という故郷を愛し続けた佳代という、異なる時代を生きる3世代の女性にスポットを当て、ふるさとへの思いとは何なのかを問う物語だ。時代が変われば価値観も変わり、今はなき故郷への想いも全く異なる。辻堂さん自身、親の仕事の関係で引っ越しが多く、「ここが故郷」と呼べる場所がない。そのため、「故郷」への強い思い入れを自分ごととして実感できないところがあったという。

 「この作品ではダムに沈んだ村が登場します。計画が進んでしまっていて、もう元の村を取り戻すことなんてできないのに、強硬に反対し続けている人たちの存在をニュースなどで目にした時、なんでこの人たちはこんなにその土地に執着するんだろう? と、理解できませんでした。一つの場所に長く暮らし、その土地に愛着があって、という幼少期を過ごしていなかったからだと思うんです。でも、ふるさとの土地を強く愛する人たちがいるのは事実で、そういう人たちの人生や内面を書いてみたいという気持ちがありました

  略

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