最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

出演者が麻薬で逮捕、でも芸術支援金は出せよ

2024-02-28 14:30:56 | 日記
令和4(行ヒ)234  助成金不交付決定処分取消請求事件
令和5年11月17日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所

独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長が、劇映画の製作活動につき文化芸術振興費補助金による助成金の交付の申請をした者に対し、上記劇映画には麻薬及び向精神薬取締法違反の罪による有罪判決が確定した者が出演しているので「国の事業による助成金を交付することは、公益性の観点から、適当ではない」としてした、上記助成金を交付しない旨の決定は、当該出演者が上記助成金の交付により直接利益を受ける立場にあるとはいえないなど判示の事情の下においては、上記理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。

NHKの報道です
『宮本から君へ』助成金不交付は不当 最高裁が公益性のあり方を初判断
麻薬取締法違反で有罪が確定した俳優が出演する映画『宮本から君へ』(2019年公開)に対する助成金を不交付とした国の外郭団体の決定の是非が争われた裁判で,11月17日,最高裁判所は「表現の自由に照らして見過ごすことはできない」などとして不交付の決定を取り消す判決を言い渡した。
国の外郭団体・日本芸術文化振興会は,交付すれば「国は薬物犯罪に寛容である」といった誤ったメッセージを発したと受け取られ,税金を原資とする助成金のあり方に対する国民の理解を低下させるおそれなどをあげ,「公益性の観点から適当でない」と主張した。これについて最高裁は,助成金交付の判断にあたって公益を重視できるのは「当該公益が重要なものであり,かつ,当該公益が害される具体的な危険がある場合に限られる」との判断を示した。そして,交付しても「公益が害される具体的な危険があるとはいい難」く,決定は,「重視すべきでない事情を重視した結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたもの」だと断じた。


この公益性が問題になった裁判のようです。

読売新聞の報道です
映画「宮本から君へ」、助成金不交付の決定を最高裁取り消し…製作会社の逆転勝訴が確定
同小法廷は「公益が害されることを理由に広く交付の拒否が行われると、表現行為に 萎縮いしゅく 的な影響が及ぶ可能性がある。表現の自由を保障した憲法21条1項の趣旨に照らして看過しがたい」と指摘。助成するかどうかの判断で公益を重視できるのは、「重要な公益が害される具体的な危険がある場合に限られる」との初判断を示した。
 その上で、助成により出演者が直接利益を受けるわけではなく、交付が「薬物に寛容」とのメッセージになることは想定できないと言及。「助成により公益が害される具体的な危険があるとは言えず、不交付の判断は裁量権の逸脱だ」と結論付けた。


事実確認を見ていきます。
被上告人は、独立行政法人日本芸術文化振興会法及び独立行政法人通則法の定めるところにより設立された独立行政法人である(振興会法2条)。・・・芸術の創造又は普及を図るための公演、展示等の活動に対し資金の支給その他必要な援助を行うこと等の業務を行う旨を規定する。

独立行政法人というのはなんちゃって公務員です。行政が直接支援するには問題がある、かといって放置するのも問題があるということから、この団体を通じて支援する団体です。要するにマネロン的位置づけのなんちゃって法人です。
以前から疑問に思っていたのですが、こういう新作の映画を事実上行政が支援するっていうのはどうなんですかね。こういうのは純粋に民間でやるべきだと思いますが。

(2)理事長は、「文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱」を定め、振興会法14条1項1号の業務として、文化庁長官から交付される文化芸術振興費補助金を財源に、劇映画の製作活動等を対象とする本件助成金を交付している。
ア 本件助成金の交付を受けようとする者は、・・・基金運営委員会は、その下に設けられた分野別の部会及び専門委員会による審査の結果を踏まえて理事長の諮問に対する答申を行うところ、劇映画の場合、企画意図に則した優れた内容の作品であること、スタッフ・キャスト等に高い専門性、新たな創造性が認められること等が上記審査の基準とされる。
イ 交付内定の通知を受けた者は、その内容等を受諾した場合には、助成金交付申請書を理事長に提出する。理事長は、上記申請書を受理したときは、その内容を審査し、本件助成金を交付すべきと認めたときは、その交付決定をし、上記の者に通知する。


思いっきりなんちゃって行政組織でしょう。それにそもそも、芸術性を判断する人ってどういう基準で選ばれているのでしょうか。ひろしまトリエンナーレのように醜悪なものを芸術だと感じる人もいますし、明らかに政治的意図をもって選んでくる人もいます。こういうのは喩えなんちゃって組織であっても行政は絡んではいけない案件だと思いますよ。ましてや時代が代われば、文脈上政治的な意図を持つ者もあり得ますから。それはそれとして

(3)上告人は、平成30年4月頃、本件映画の製作に着手し、同年11月22日付けで、本件映画の製作活動につき、助成金交付要望書を理事長に提出した。理事長は、平成31年3月22日、上記製作活動に係る要望を採択すべき旨の基金運営委員会の答申を受け、同月29日付けで上記製作活動を助成対象活動とする交付内定(以下「本件内定」という。)をし、上告人に通知した。
本件映画の出演者の一人は、コカインを使用したとして、同月12日に逮捕され、本件内定後の令和元年6月18日、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪により懲役1年6月、3年間執行猶予の有罪判決を宣告された。本件有罪判決は、その頃、確定した。


このせいでTVドラマもたまに再放送ができなくなったりしますよね。

理事長は、同月10日付けで、本件映画には本件有罪判決が確定した本件出演者が出演しているので「国の事業による助成金を交付することは、公益性の観点から、適当ではない」として、本件助成金を交付しない旨の本件処分をした。

最高裁は次のように判断しました
(1)本件助成金については、振興会法や補助金等適正化法に具体的な交付の要件等を定める規定がないこと、芸術の創造又は普及を図るための活動に対する援助等により芸術その他の文化の向上に寄与するという本件助成金の趣旨ないし被上告人の目的(振興会法3条)を達成するために限られた財源によって賄われる給付であること、上記の趣旨ないし目的を達成するためにどのような活動を助成の対象とすべきかを適切に判断するには芸術等の実情に通じている必要があること等からすると、その交付に係る判断は、理事長の裁量に委ねられており、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に違法となるものというべきである。

確かに不支給の要件を書いてませんからね。かといって、途中で作品そのものあるいは上映において不法行為や公序良俗に反するような行為があった場合が想定されていないというのは大いに問題があります。

(2)本件助成金を交付すると一般的な公益が害されると認められるときは、そのことを、交付に係る判断において、消極的な事情として考慮することができるものと解される。

そうなりますね。

(3)被上告人が「国は薬物犯罪に寛容である」といった誤ったメッセージを発したと受け取られて薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれが高く、このような事態は、国が行う薬物乱用の防止に向けた取組に逆行するほか、国民の税金を原資とする本件助成金の在り方に対する国民の理解を低下させるおそれがあると主張する。
・・・しかしながら、本件出演者が本件助成金の交付により直接利益を受ける立場にあるとはいえない


でもすでに出演料は発生しているんですよね。今問題になっていますが、再生回数に応じて出演料の支払いとかの問題はどうなるのでしょうか?今回はそういう契約はしていないようですが。

被上告人が上記のようなメッセージを発したと受け取られるなどということ自体、本件出演者の知名度や演ずる役の重要性にかかわらず、にわかに想定し難い上、これにより直ちに薬物に対する許容的な態度が一般に広まり薬物を使用する者等が増加するという根拠も見当たらないから、薬物乱用の防止という公益が害される具体的な危険があるとはいい難い。

裁判所としては刑が確定しているし服役中なのだから、これ以上の制裁は必要ないだろう。しかも、役者だけでなくその他の政策に関わった人が巻き込まれるのは宜しくないと判断しているのでしょう。

結論
以上によれば、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法というべきである。

第二小法廷全員一致でした。
裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

この判決に従うと、今後芸能人が麻薬で捕まってもTVドラマや番組はそのまま流してもよいことになりますね。なんか微妙だな。
というか、出演契約のときにこの問題を一部書き込むか保険に入れなければ駄目でしょうね。

で、この裁判に直接の論点になっていませんが、芸術の支援って国家・自治体が支援するってのは憲法89条違反だと思うんですよ。ただちにこの支援に関する法律は廃止すべきです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿