社民党 京都府連合 野崎靖仁 副主席語録
社会民主党 中央規律委員 野崎靖仁、55歳。
日々の思いを綴ります。
 



石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)を読む。



ヒトラーの伝記的要素は最小限に抑え、ヒトラーが権力を握り、
独裁者としての地位を固めるプロセスを丹念に追っています。

「第一章 ヒトラーの登場」では、
ヒトラーがミュンヘン一揆に失敗するまでを描き、
「第二章 ナチ党の台頭」では、
ナチ党が第一党に成長するまでを追っています。
「第三章 ヒトラー政権の成立」では、
第一党でありながら三分の一の議席しかなかったナチ党が、
様々な思惑の中で保守派の連合政権で
首班を獲得する過程を明らかにします。
「第四章 ナチ体制の確立」では、
右派連立政権から独裁権力を固めるまで、
「第五章 ナチ体制下の内政と外交」では、
ナチ党政権が第二次大戦に至るプロセスを簡潔にまとめています。
そして「第六章 レイシズムとユダヤ人迫害」
「第七章 ホロコーストと絶滅戦争」では、
ユダヤ人迫害にスポットを当て、ナチ党政権下での迫害と、
第二次大戦で加速するホロコーストの実態について克明に記しています。

・ナチ党は選挙で圧勝して首相ポストを手にしたのではなく、
選挙での退潮で「御しやすし」と判断した保守勢力に
「取り込まれる」形で政権参加。
政権参加後に巧みな手腕で独裁権力を手にした。

・ヒトラー政権の成果として喧伝された
「アウトバーン建設による雇用回復」は、
プロパガンダで誇大に宣伝されたものであった。

・徴兵や勤労奉仕で青年層を労働市場から遠ざけ、
女性を家庭に縛る政策によって、
統計上失業者にカウントされない人数を増やした。

など、順風満帆に政治的成功を収めたとされる
「神話」の裏側を暴いているのも面白く読めるところです。

そして、ユダヤ人だけでなく障碍者などを社会から排除し、
物理的に抹殺するに至るナチ党政権の非人道性を、傍観者、
いや「受益者」として容認したドイツ国民の姿を交えて
クールに描いています。

石田氏はナチ党やヒトラーを称賛も非難もしておらず、
歴史的事実を淡々と客観的に記述しているだけなのですが、
その冷徹さが、読者にヒトラーとナチ党が否定されねばならない理由を
強く印象付けています。

そして「受益者」としてヒトラーを容認したドイツ国民の問題点も。

濃い内容でありながら平易な文章であり、おススメの一冊です。

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