読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『香月泰男』

2023年08月08日 | 評論
安井雄一郎『香月泰男』(東京美術、2017年)

「何でも鑑定団」で紹介されていて初めて知った画家の一人がこの香月泰男という人。シベリア送りになって1年半を過ごしたあと、帰国して、シベリアで死んだ人々の怨念のようなものを描く画家として強い印象を私のなかに残した。

この本は副題に「シベリア・シリーズを読み解く」とあるので、香月泰男の画業はシリーズ・シリーズだけではないようだが、シベリア・シリーズがあまりに強烈だったので、この本を手に取った。

ところが残念なことに、「何でも鑑定団」を観た時のような強烈な印象が今回は感じられないのはなぜなのだろうか?鑑定団のときの紹介映像や解説があまりに上手だったせいだろうか?香月泰男の画業はシベリア・シリーズだけではないのに、こればかり見たせいだろうか?それともA4版の本の片面だけの写真では、そのリアルさが伝わってこないのだろうか?

いくら解説によって習作との関係や香月泰男の精神状態をしることができても、絵そのものが発する強烈な印象はもう感じられない。

しかし私はもともとあまり絵に感動するたちではないのだが、「鑑定団」を見ているうちに、絵の良さが感じられるようになってきて、最近では各地の美術館を温泉とセットで回るのもいいなと思い始めている。

このシベリア・シリーズはすべて山口県立美術館が所蔵しているらしいが、全部を常設展示しているわけではないとのことだ。企画展でもなければ、全部を一気に見ることはできない。その他、香月泰男の個人美術館が山口県長門市三隅町にあるという。まぁ香月泰男を見るならこの二つが必須のようだ。

10年くらい前に山口に行ったのにな。県立美術館の向こうにある瑠璃光寺にも行ったから、もっと早くに知っていたら、中原中也記念館の他にも見るべきところがあったのにな。今度は山口市と長門市の両方に行けばいいんだ。温泉はどこがいいのかな。楽しみが増えた。

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