読書な日々

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大学図書館の思い出

2024年03月31日 | 日々の雑感
大学図書館の思い出



私は高校生の頃から読書(とくに日本文学)が好きだったが、もっぱら商店街にある本屋で文庫本を買って読むタイプで、図書館にはまったく行かなかった。というか、図書館で本を借りるという発想がなかった。だから高校3年間で高校の図書館に入ったのは一回か二回しかない。それも本を調べるとか本を借りるためではなくて、三年間ずっと同じクラスだったI君と、理由は覚えていないが、図書館で待ち合わせしたからだ。

そんなこんなで、図書館というものにまったく縁がなかった私だが、大学に入るとそうもいかなくなった。現在のK大図書館は、関西でも最大規模の蔵書を誇る図書館を有しているが、私が入学したころは、戦後すぐに建設されたものがそのままであった。ワンフロアが狭いので、そのぶん何階もあって、書庫に入って(と言っても、それは大学院生になってからの話しだが)、複数階を上がったり下りたりすることがよくあった。図書館員たちは大変だったろう。

閲覧室(自習室)によく出入りするようになったのは、二年生になってからだ。一年生の期末テストは散々だった。もともと英語をやりたくなくてフランス語を履修したのだが、英語の授業はつまらないなりになんとか単位は取れた。問題はフランス語であった。英語は二年でおしまいだが、フランス語は四年間使うことになる。こんな調子では、四年間持つまいと反省した私は、二年生になってから真面目に勉強するようになった。

一年生の夏休みは二ヶ月のうちの一ヶ月を阪急デパートでアルバイトしたが、二年生になると、そんなことはしていられないほどの成績だったので、田舎暮らしの祖父母の家に籠って、あらゆる誘惑を排除してフランス語の勉強をした。

とにかく動詞の活用がまったく分からないので、直説法現在形、複合過去形、半過去形、単純過去形、単純未来形、条件法現在形、接続法現在形などを必死で丸暗記していった。夏休みでは完全に終わらなかったので、後期に入ってからもその続きをやることにしたが、当時は大学の近くの、三畳一間の下宿屋(5000円の家賃)に住んでいたので、机もなかったこともあり、大学の図書館で勉強するようになったのだ。

恐る恐る入り込んだ閲覧室(自習室)は、昔の大学図書館のイメージそのままであった。昼間にも行ったはずだが、思い出すのは、煌々と灯る明かりの下で、勉強している学生たちの姿だ。相変わらず本を借りるということはあまりなかった。もっぱら勉強をしに行っていた。

本を借りるようになったのは、大学院生になって、結構な量の本を読まなければならなくなってからだ。その頃には、自分で研究書を買うだけでは不十分なので、図書館にある蔵書を借りる。そしてそれを院生に与えられた無料カードで全部コピーして、これまた大学院に備えられていた製本機を使って、簡易製本する。するとなんだか読んだような気になるものだった。

しかし本当の意味で大学図書館を縦横無尽に使うようになったのは、非常勤講師になって、自分の専門の研究を真面目にやるようになってからだろう。大学院生時代にやっていた研究主題とはまったく違う分野の研究をするようになったこともあって、大学図書館が非常に便利だった。古いものでも全集が揃っているし、関連分野の文献も豊富にある。さらにこの大学図書館に所蔵されていない文献は他大学の図書館から取り寄せたり、紀要などなら、論文コピーを送ってもらえるサービスもある。

現在は、非常勤講師を辞めたので、校友カードで本を借りることができるだけで、書庫にも入れないし、文献複写のサービスもしてもらえない。まったく不便なので、図書館長に手紙を書いて訴えたのだが、けんもほろろに拒否された。もっぱら市立図書館を利用することが多い。



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