岸本聡子『水道、再び公営化!』(集英社新書、2020年)
人間が生きていく上で絶対に必要なものの一つである水を民営化から再び公営化することによって、すべての市民に水を安価に確実に提供するという自治体としての責任を問う本がこれである。
話の多くは民営化から再公営化に舵取りをしたヨーロッパの事例が書いてあるのだが、本の冒頭には2017年安倍内閣時代に行われた民営化法の成立に麻生副総理が大きく関わっていることが書かれている。
麻生副総理は世界では民営化の流れにあるなどと嘘を言って、多くの国では民営化されていると言っているが、実は多くの国で民営化かから再公営化の流れになっているという。当然のことながら、民営化してもいいことがなかったからだ。
そしてこの再公営化への潮目が変わったのが2010年で、麻生副総理が上の発言をして水メジャー会社を日本に誘致しようとしたのは、まさに2010年にフランスのパリの水道が再公営化されて水メジャーが大きな痛手を受けたので、その穴埋めを日本にさせようとしたのだということを、著者は示唆している。
パリ市の事例はこうだ。パリ市は1985年にシラクが市長の時に水道事業全体をヴェオリア社とスエズ社のニ社と25年間のコンセッション契約を結んで民営化した。この25年間で水道料金は265%も値上がりした(物価上昇率は70%)。財務報告書もずさんで、平均利益率は7%と報告されてきたが、それを確かめる方法はなかった。なぜなら水メジャー会社が示すデータを鵜呑みにするしかなかったからだ。
取水と送水はSAGEP社、配水と給水は右岸がヴェオリア社、左岸がスエズ社、料金徴収は両者が出資するGEI社が行った。しかしどの会社も水メジャー二社の子会社のようなもので、株の持ち合いが複雑に絡んで、財務は不透明になっていた。パリ市は、「企業の経営を監督できる」という条項があるからと安心していたが、まったく機能していなかったという。(p.41)
2001年に社会党のドラノエが市長になって、水道事業の問題を取り上げ10年の歳月をかけて、「オー・ド・パリ」という公営会社と作って、2010年に再公営化に成功した。その結果、自治体が公営事業として行うほうが、ずっと効率的であることが分かったという。しかも実際には利益率は15%もあったことがわかり、水メジャー二社が嘘を報告していたこともわかった。
公営会社「オー・ド・パリ」はメーターや水道料金徴収のITシステム構築などに多額の初期費用がかかったにもかかわらず、初年度から42億円もの経費節約を実現し、翌年には水道料金を8%も下げることができた。公営化によって、組織の簡略化や最適化が可能になる、株主配当や役員報酬の支払いが不要になる、収益を親会社に還元する必要がない、納税も不要などが大きな理由だという。(p.47-48)
水メジャー二社は契約終了によって大きな収入源をなくしたことは言うまでもない。それを埋めるためにその触手を今度は日本の水事業に伸ばしてきたのだ。その先導役となったのが麻生なのだ。なんという売国奴か!
なんでも、女壻が水メジャーの役員をしているという話だ。これが事実なら本当に許せない。
麻生って、今のコロナ問題でも再度の給付金をしないとあたかも自分の金でもあるかのようにうそぶくような政治家だ。
水道民営化のウラに…麻生財務相“身内に利益誘導”の怪情報
この本は最後に日本の現状を報告して、改正水道法が民営化へ地方自治体を動かすための様々なアメとムチを盛り込んでいることを危険な仕掛けとして注意を呼びかけている。民営化してもまた公営化すればいいではないかというような安易な民営化は、人材的にも財政的にも不可能になることを明記しておこう。こんな危険なものを、水という社会資本について、作り上げた安倍内閣は本当に売国奴だ。
とくに怖いのは、契約書である。ベルリンの例が書いてあるが、契約書は経営の秘密を理由に公開されなかったために、住民投票で過半数の賛成を取る必要があり、公開されて分かったことは、非常に複雑な所有形態が取られており、再公営化に必要な株の買取りをするために1560億円もの代金が必要になったという。(p.173)
水メジャーの代理人は巨大コンサルタント会社で、国際会計基準のプロで、企業の交渉アドバイザー業務もこなす百戦錬磨の相手に、企業法務のプロはいない日本の地方自治体が太刀打ちできるわけがない。再公営化をしようにも、その壁は目もくらむほど高い。
つまり水道民営化は絶対にしてはならないものであり、水道料金値下げなどという口当たりのいい言葉を選挙公約に使って当選しようとする候補者にはとくに要注意だ。
『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』 (集英社新書)へはこちらをクリック
<2月21日追加分>
ついに日本で初めての水道民営化が行なわれた。やっちゃいけないのに、宮城県人はこの本を知らなかったのかね。
こちら
人間が生きていく上で絶対に必要なものの一つである水を民営化から再び公営化することによって、すべての市民に水を安価に確実に提供するという自治体としての責任を問う本がこれである。
話の多くは民営化から再公営化に舵取りをしたヨーロッパの事例が書いてあるのだが、本の冒頭には2017年安倍内閣時代に行われた民営化法の成立に麻生副総理が大きく関わっていることが書かれている。
麻生副総理は世界では民営化の流れにあるなどと嘘を言って、多くの国では民営化されていると言っているが、実は多くの国で民営化かから再公営化の流れになっているという。当然のことながら、民営化してもいいことがなかったからだ。
そしてこの再公営化への潮目が変わったのが2010年で、麻生副総理が上の発言をして水メジャー会社を日本に誘致しようとしたのは、まさに2010年にフランスのパリの水道が再公営化されて水メジャーが大きな痛手を受けたので、その穴埋めを日本にさせようとしたのだということを、著者は示唆している。
パリ市の事例はこうだ。パリ市は1985年にシラクが市長の時に水道事業全体をヴェオリア社とスエズ社のニ社と25年間のコンセッション契約を結んで民営化した。この25年間で水道料金は265%も値上がりした(物価上昇率は70%)。財務報告書もずさんで、平均利益率は7%と報告されてきたが、それを確かめる方法はなかった。なぜなら水メジャー会社が示すデータを鵜呑みにするしかなかったからだ。
取水と送水はSAGEP社、配水と給水は右岸がヴェオリア社、左岸がスエズ社、料金徴収は両者が出資するGEI社が行った。しかしどの会社も水メジャー二社の子会社のようなもので、株の持ち合いが複雑に絡んで、財務は不透明になっていた。パリ市は、「企業の経営を監督できる」という条項があるからと安心していたが、まったく機能していなかったという。(p.41)
2001年に社会党のドラノエが市長になって、水道事業の問題を取り上げ10年の歳月をかけて、「オー・ド・パリ」という公営会社と作って、2010年に再公営化に成功した。その結果、自治体が公営事業として行うほうが、ずっと効率的であることが分かったという。しかも実際には利益率は15%もあったことがわかり、水メジャー二社が嘘を報告していたこともわかった。
公営会社「オー・ド・パリ」はメーターや水道料金徴収のITシステム構築などに多額の初期費用がかかったにもかかわらず、初年度から42億円もの経費節約を実現し、翌年には水道料金を8%も下げることができた。公営化によって、組織の簡略化や最適化が可能になる、株主配当や役員報酬の支払いが不要になる、収益を親会社に還元する必要がない、納税も不要などが大きな理由だという。(p.47-48)
水メジャー二社は契約終了によって大きな収入源をなくしたことは言うまでもない。それを埋めるためにその触手を今度は日本の水事業に伸ばしてきたのだ。その先導役となったのが麻生なのだ。なんという売国奴か!
なんでも、女壻が水メジャーの役員をしているという話だ。これが事実なら本当に許せない。
麻生って、今のコロナ問題でも再度の給付金をしないとあたかも自分の金でもあるかのようにうそぶくような政治家だ。
水道民営化のウラに…麻生財務相“身内に利益誘導”の怪情報
この本は最後に日本の現状を報告して、改正水道法が民営化へ地方自治体を動かすための様々なアメとムチを盛り込んでいることを危険な仕掛けとして注意を呼びかけている。民営化してもまた公営化すればいいではないかというような安易な民営化は、人材的にも財政的にも不可能になることを明記しておこう。こんな危険なものを、水という社会資本について、作り上げた安倍内閣は本当に売国奴だ。
とくに怖いのは、契約書である。ベルリンの例が書いてあるが、契約書は経営の秘密を理由に公開されなかったために、住民投票で過半数の賛成を取る必要があり、公開されて分かったことは、非常に複雑な所有形態が取られており、再公営化に必要な株の買取りをするために1560億円もの代金が必要になったという。(p.173)
水メジャーの代理人は巨大コンサルタント会社で、国際会計基準のプロで、企業の交渉アドバイザー業務もこなす百戦錬磨の相手に、企業法務のプロはいない日本の地方自治体が太刀打ちできるわけがない。再公営化をしようにも、その壁は目もくらむほど高い。
つまり水道民営化は絶対にしてはならないものであり、水道料金値下げなどという口当たりのいい言葉を選挙公約に使って当選しようとする候補者にはとくに要注意だ。
『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』 (集英社新書)へはこちらをクリック
<2月21日追加分>
ついに日本で初めての水道民営化が行なわれた。やっちゃいけないのに、宮城県人はこの本を知らなかったのかね。
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