読書な日々

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『永続敗戦論』

2015年11月29日 | 評論
白井聡『永続敗戦論』(太田出版、2013年)

日本の右翼はなぜ反共一点張りで、アメリカによって皇国を打ち倒されたのに、反米でなく、アメリカに従順なのか、と誰しも思うことだが、この素朴な疑問に答えてくれるのが、この本である。

ずばり、日本はアメリカに敗戦した結果、戦後70年もたつのに、いまだ外国軍が駐留した半占領状態にあるのに、それをずっと国民に隠蔽し続けてきたということにあるという。もっとはっきり言えば、アメリカ軍に駐留していてくれ、そうでなければ共産勢力に支配されて、国体が護持できないと自分から申し出たことによるという。しかし国民も馬鹿ではないから、そんなことをストレートに明らかにしたら、国民の感情を逆なですることになる。そこで隠蔽が始まった。

敗戦なのに終戦、米軍の一系統軍なのに自衛隊、占領状態なのに日本を守ってくれている米軍、アメリカの従属国にすぎないのに独立国、などなど隠蔽をあげればきりがないだろう。

こうした隠蔽が可能になったのは、朝鮮半島のおかげで、日本が冷戦における最前線にならずにすんだからだという。もし朝鮮半島が全部真っ赤になっていたら、アメリカも日本にこんな自由は残しておかなかっただろう。その時日本は韓国の戦後史と同じで、軍政がしかれ、自由と民主主義を勝ち取るために多くの血を流さねばならなかったことだろう。

この根本のところに日本人が気づいて、もう一度そこから再出発しないかぎり、日本は永遠に敗戦したままだというのが、この著者のいいたいことだ。私も著者と同意見だが、はたしてそんな日が来るのだろうか?

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