ルーツな日記

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グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional Blues Album』

2017-02-12 19:34:08 | ブルース
Bobby Rush / Porcupine Meat

この期に及んでまだやっている当ブログのグラミー賞ノミネート特集。でもこれをやらねば終われない。という訳で『Best Traditional Blues Album』部門です。気になるノミネートは以下の5作品。

Lurrie Bell / Can't Shake This Feelingg  
Joe Bonamassa / Live At The Greek Theatre  
Luther Dickinson / Blues & Ballads (A Folksinger's Songbook: Volumes I & II)  
Vasti Jackson / The Soul Of Jimmie Rodgers  
Bobby Rush / Porcupine Meat  


私が思う”トラディショナル”とは少々赴きが違うのですが、まあ、それはさておき、ここは何と言ってもボビー・ラッシュでしょう!! 昨今の精力的なアルバム・リリース頻度と言い、その濃密な内容と言い、歳を重ねるごとにアクを増すかのキャラと言い、全てが真っ黒に脂ぎってギラギラしている、現役最強のファンキー・ブルースマンこそ彼のことなのです。

チトリン・サーキットの帝王と呼ばれたボビー・ラッシュが、メジャー・レーベルのラウンダーへ移籍したというだけで、マニアの間では結構なニュースになっていましたが、だからと言って、いきなり新しいことをする訳でもなく、ましてや突然売れ線になる訳ではない、それがボビー・ラッシュ。つまり、どんなに環境が変わろうとボビー・ラッシュはボビー・ラッシュであり、あのアクと臭みに塗れた南部ブルースは、相変わらずファンキーなのであります。

では、毎回同じか?と言われれば、そうでもない。今作のキモはニューオーリンズ録音。プロデューサーは、これまでにアーマ・トーマスやジョニー・アダムス、ダーティ・ダズン・ブラス・バンド等を手掛けてきた、ラウンダーの敏腕スコット・ビリントン。バック・メンバーには、かの地の重鎮鍵盤奏者デヴィッド・トウカノフスキー(kbd)、ジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンのリズム隊、コーネル・ウィリアムズ(b)とジェフリー“ジェリービーン”アレクサンダー(ds)、近年様々なセッションに引っ張りだこの売れっ子ギタリスト、シェイン・テリオット(g)、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドからカーク・ジョセフ(sousaphone)とロジャー・ルイス(baritone sax )等、ニューオーリンズの名手達が集められています。

そしてそんなニューオーリンズ軍団の中、ただ一人ボビー・ラッシュ陣営から参加したと言えるのがヴァスティ・ジャクソン。この人はミシシッピのギタリストで、ソングライター、プロデューサーとしても活躍ししている方。ボビー・ラッシュの過去作はもちろん、Z.Z. ヒル、デニス・ラサール、ジョニー・テイラー、ケイティ・ウェブスターなどの諸作品に参加し、個人名義のソロ作品もリリースしています。なんと昨年リリースした「The Soul Of Jimmie Rodgers」で今回の当部門『Best Traditional Blues Album』にボビーと並んでノミネートされている Vasti Jackson その人です。

絶妙にタメの効いた、いなたくもファンキーなギターリフからゾクゾクする1曲目「I Don't Want Nobody Hanging Around」、そこにハープが乗り、脂ぎった歌声が響けば、そこはもう完全にボビー・ラッシュの世界。タイトル・トラック「Porcupine Meat」のメロウなグルーヴも強烈なサザン臭で覆ってしまうのがボビー流。南部特有のいかがわしいノリが最高の「Catfish Stew」や、ファンキーな「Snake In The Grass」、「Funk O' De Funk」が格好良いのはもちろん、濃密この上ないスロー・ブルース「Got Me Accused」も絶品。

ヴァスティ・ジャクソンとシェイン・テリオットのギターの絡みも格好良いですし、デヴィッド・トウカノフスキーの鍵盤も良い味わい。ベースはコーネル・ウィリアムズとカーク・ジョセフとで分け合ってますが、特にカーク・ジョセフのバウンシーなスーザフォンがユニークなファンクネスを生み出しています。絶妙のタイム感で繰り出すジェリービーンのビートを中心に、間を活かしながら腰にくるグルーヴは流石ニューオーリンズであり、そのファンクネスをボビー流のミシシッピ産ファンク・ブルースに引き込むボビー・ラッシュ&ヴァスティ・ジャクソン。彼らによる圧倒的なブルース臭。結局のところボビー・ラッシュはボビー・ラッシュであり、環境の違いをものともしない強烈なアクと個性を思い知らされるのです。

でも実はボビー・ラッシュも生まれはルイジアナだったりするんです。なので今作は複雑にミシシッピとルイジアナ/ニューオーリンズが絡み合っている。でもそれこそ、ボビー・ラッシュの本質なのかもしれません。文句無しの傑作。ちなみに、ケブ・モや、当部門にノミネートされているジョー・ボナマッサなどもゲスト参加しています。


さて、誰もが認める現役最高のブルースマン、ボビー・ラッシュ。これまで数々のブルース系アワードに輝いてきましたが、グラミー賞は獲っていないはずです。ノミネートはあるんですけどね。なかなか…。しかし機は熟したでしょう。そろそろ彼の番です!!



そして対抗は? ヴァスティ・ジャクソン!と言いたいところですが、知名度的に難しいでしょう。やはりここは現行シカゴブルースを背負って立つ漢、ルリー・ベルを挙げたいですね。彼の一音一音に重みのあるブルースギターは痺れますね!!




さあ、明日の朝はいよいよグラミー賞授賞式です。という訳で、当ブログのグラミー賞ノミネート特集もこれにて最終回です。本当はまだまだ書きたいアルバムがあったんですけどね。コンテンポラリー・ブルースのファンタスティック・ネグリートとか、ワールド・ミュージックのヨー・ヨー・マとか、カントリーのスタージル・シンプソンとか、それらはまた、受賞したら紹介しますね。


では、明日の授賞式、楽しみましょう!!




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