ルーツな日記

フジロックが終わり、サマソニ ブログと化しておりますが、
よろしくお願いいたします。

グラミー賞 ノミネート 『Best Roots Gospel Album』

2017-02-05 20:27:19 | ゴスペル
V.A. / GOD DON'T NEVER CHAGE: SONGS OF BLIND WILLIE JOHNSON

我が「ルーツな日記」によるグラミー特集も、いよいよ佳境を迎え、奥の方へと分け入って行きます。まずは『Best Roots Gospel Album』部門。気になるノミネートは以下の5組。

Gaither Vocal Band / Better Together  
The Isaacs / Nature's Symphony In 432
Joey+Rory / Hymns
Gordon Mote / Hymns And Songs Of Inspiration
Various Artists / God Don't Never Change: The Songs Of Blind Willie Johnson


注目は何と言っても「God Don't Never Change: The Songs Of Blind Willie Johnson」です! こちらは1927〜1930年という短い間にたったの29曲、30テイクしか残していないという、テキサスが生んだ伝説のギター・エヴァンジェリスト、ブラインド・ウィリー・ジョンソンのトリビュート盤。ギター・エヴァンジェリストとは、辻説法のごとくギター弾き語りでゴスペルを歌う人達のこと。音的には、神のことを歌っている以外ほぼブルースと変わらないので、ブルースの範疇で語られることが多いですね。ブラインド・ウィリー・ジョンソンも、その強烈なダミ声と泥臭さいスライドギターにより、ブルースに多大な影響を与えました。彼が初録音した1927年というと、ロバート・ジョンソンより早く、ブラインド・レモン・ジェファーソンや、チャーリー・パットン、サン・ハウス辺りと同時代ですね。

さてこの作品、プロデュースはボブ・ディランのゴスペル・サイドをトリビュートした「Gotta Serve Somebody - The Gospel Songs Of Bob Dylan」(2003年)の制作で知られるJeffrey Gaskill。トム・ウェイツがジョンソンと同郷テキサスのスミス・ケイシー「Country Rag (East Texas Rag)」のサンプリングに載せて、本家をも凌ぐ異様なダミ声で歌う「The Soul Of A Man」に始まり、ルシンダ・ウィリアムスが「It's Nobody's Fault But Mine」を、デレク・トラックス&スーザン・テデスキが「Keep Your Lamp Trimmed And Burning」を、さらにカウボーイ・ジャンキーズが「Jesus Is Coming Soon」、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマが「Mother's Children Have A Hard Time」、ルーサー・ディッキンソンが「Bye And Bye I'm Going To See The King」をと、それぞれが各々の個性でブラインド・ウィリー・ジョンソン縁の曲を綴っていく。

そしてブラインド・ウィリー・ジョンソンと言えばスライド・ギターな訳で、デレク・トラックスが「Keep Your Lamp Trimmed And Burning」で聴かせるドロッとしたカントリー・スタイルが素晴らしいのはもちろん、ルシンダ・ウィリアムスでは彼女のバックではお馴染みのダグ・ペティ ボーンが、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマでは元ドライヴ・バイ・トラッカーズのジェイソン・イズベルが、見事なスライド・プレイを聴かせてくれます。またルーサー・ディッキンソンが「Bye And Bye I'm Going To See The King」で自ら弾く鄙びた感じのスライドがまた良い塩梅なんです。ちなみにこの曲ではオサー・ターナー の孫娘SHARDE THOMASのファイフも良い味出しています。

また、この並びで元ローン・ジャスティスのマリア・マッキーが参加していることが、個人的に凄く嬉しい! 最近は表立った音楽活動をあまりしていない彼女なので、こういう作品に録音を残してくれること自体かなり貴重だったりします。彼女が歌うは「Let Your Light Shine On Me」。ブラインド・ウィリー・ジョンソンが残した録音のなかでもかなりゴスペル然とした1曲で、マリア・マッキーの瑞々しくも突き抜けた歌声が、歌の持つ自由な力と共にポジティブに響きます。

さらに、このメンツの中では異色と思われるシネイド・オコーナーによる「Trouble Will Soon Be Over」も神聖な空気感がとても良い。最後を締めるリッキー・リー・ジョーンズが歌う「Dark Was The Night, Cold Was The Ground」は、消え入りそうな弾き語りがスピリチュアルに終焉を物語りつつ、トランペットの音色が静かに幕を引く。


このアルバムは、ハウス・バンドにゲスト・シンガーを招いたものではなく、アーティスト各々がそれぞれのバンド・メンバーなどで録音したものを集めたものです。レコーディング場所もそれぞれ違います。それでもブラインド・ウィリー・ジョンソンのトリビュート作として、一つの流れを生み出し、一枚のアルバムとして不思議なオーラに包まれているような統一感を感じさせられます。まるでブラインド・ウィリー・ジョンスンの伝説が、アルバムに魂を宿したかのように。

ブラインド・ウィリー・ジョンソンの伝説や謎の数々を、まるでタイムスリップするかのように辿るライナー・ノートも素晴らしいです。


さて、本命に熱くなりすぎましたが、では対抗は?と聴かれますと、恥ずかしながら私、残りの4組についてはよく存じ上げないのです。『Best Roots Gospel Album』とは言え、いわゆるアーバンなゴスペルに比べれば、確かにカントリーではありますが、私が連想するルーツなゴスペルとは大分赴きが違うんですよね〜。なので、対抗は選べません…。すいません。でも Joey+Rory はちょっと良いな。




↓宜しければこちらもぜひ!


グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional R&B Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best R&B Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best Urban Contemporary Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional Pop Vocal Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Song』
グラミー賞 ノミネート ビヨンセ!!
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グラミー賞 ノミネート『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』

2016-02-13 19:06:07 | ゴスペル
The Fairfield Four / Still Rockin' My Soul

グラミー賞ノミネート特集も7回目。かなりマイナーな部門から始めて、さらにマイナーな部門へと分け入っている感じになりつつある今回は、ゴスペルです。ゴスペルと言ってもグラミーの場合、その多くがアーバンなゴスペルだったり、クリスチャン・ミュージックという括りだったりする訳ですが、あるんです!ゴスペルにもルーツの世界が!という訳で『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』のノミネートは以下の3作品。

The Fairfield Four / Still Rockin' My Soul
Karen Peck & New River / Pray Now
Point Of Grace / Directions Home (Songs We Love, Songs You Know)


「あるんです!」なんて強調した割にはノミネートが3作品しかなくて、内2組については個人的な印象として”ルーツ・ゴスペル”と呼ぶには???な感じなので、来年には無くなっちゃうんではないか?という不安もよぎる当部門ですが、注目は何と言ってもフェアフィールド・フォー!!ナッシュビルが誇る100年近い歴史を持つゴスペル・カルテットです。1999年の来日公演はもはや伝説ですよね。場所は九段会館。味わい深いハーモニーと、アイザック・フリーマンのバス・ボイスに酔いしれたステージ!!あの至福の時間が思い出されます。

誕生は1921年、ナッシュビルのフェアフィールド・バティスト・チャーチに集まる子供達で結成されたと言われています。今から95年も前ですね。そこから波瀾万丈の歴史があった訳で、もちろん現在のフェアフィールド・フォーに当時のメンバーはいるはずもありません。初吹き込みをした42年頃のメンバーもいません。というより90年代にリユニオンし来日した時のメンバーもいないでしょう。ある意味、まったく別のグループと言っても良いぐらいですが、紛れもないフェアフィールド・フォーなのです。メンバーの変遷を繰り返しながら、その伝統を絶やさずに歌い繋いで行く姿に、ゴスペル・グループの神髄を感じませんか?

1曲目、BOBBY SHERRELLの朗らかなテナー・ヴォイスを黒いゴスペル・コーラスがグイグイと引っ張って行く「Rock My Soul」からその世界に引き込まれます。テナー×2、バリトン、バスの4声と手拍子のみで表現されるアカペラ・コーラス。言わずもがなですが、凄まじく良い声なんですよ! 人間味に溢れた、暖かく、艶やかな歌声。そしてハーモニーのふくよかなこと! 溢れ出るブラック・フィーリングにもやられます。2012年に亡くなられたアイザック・フリーマンがここにいないのは残念ですが、現在のバス・ボイス、JOE THOMPSONも素晴らしい! 各曲で独特のグルーヴを生み出す低音ヴォイスの唸りもさることながら、「Baptism Of Jesus」でのリード・ヴォーカルも旨味たっぷり。また彼がゲストのリーアン・ウーマックとリードを分け合う「Children Go Where I Send Thee」がまた絶品。またLEVERT ALLISONがいぶし銀のテナーを聴かせる「I Got Jesus And That's Enough」あたりは教会の一場面が目に浮かんできそうですし、ゴスペル・コーラスならではのスピード感が堪らない「Don't Let Nobody Turn You Around」には思わず体か揺れてしまいます。

こういうのを聴くと、人間の声って凄いな、と思わされてしまいますね。ハードなシャウターはいませんが、そこが良いんです! ナッシュビルの教会から生まれた至宝。これぞ黒人ゴスペル・カルテットです!




この部門はもうフェアフィールド・フォーで決まりで良いんじゃないでしょうか?正直な話、また個人的な印象で申し訳ありませんが、Karen Peck & New Riverも、Point Of Graceも、モダン過ぎてゴスペルに聴こえないんですよね…。私が年を取り過ぎなのか、本場のシーンを知らな過ぎなのか…。ただフェアフィールド・フォーが好き過ぎるだけなのか…?





よろしければ、こちらもどうぞ。奥の方つっついてます。

グラミー賞 ノミネート『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUEGRASS ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST COUNTRY ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』
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ヴァレンタイン・デー

2014-02-14 22:09:06 | ゴスペル
THE FAIRFIELD FOUR AND FRIENDS / LIVE FROM MOUNTAIN STAGE

ハッピー・ヴァレンタイン・デー!!

皆様、ヴァレンタインの夜をいかがお過ごしですか?

今夜の東京はホワイト・ヴァレンタインですね。

せっかくなのでヴァレンタインにちなんだ曲を。スティーヴ・アールの「Valentine's Day」です。しかも伝説的なゴスペル・グループ、フェアフィールド・フォーのライヴ盤「LIVE FROM MOUNTAIN STAGE」(写真)から。スティーヴ・アールはゲストで登場しこの曲を歌っています。スティーヴ・アールのギター弾き語りに、フェアフィールド・フォーがバック・コーラスを付けてるんですが、両者の枯れた味わいが心に滲みます。フェアフィールド・フォーのいたって控えめなコーラスが絶妙なんですよ。これは名演。

こちらで聴けます↓
http://www.youtube.com/watch?v=VQvxXYF-5lU


では、皆様、良いヴァレンタイン・デーを!!
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メイヴィス・ステイプルズ

2011-04-10 00:29:15 | ゴスペル
MAVIS STAPLES / YOU ARE NOT ALONE

グラミー賞『Best Americana Album』部門を受賞したメイヴィス・ステイプルズの「YOU ARE NOT ALONE」。近年、ライ・クーダーがプロデュースした「WE'LL NEVER TURN BACK」や、ホームタウンであるシカゴでのライヴ録音盤「LIVE: HOPE AT THE HIDEOUT」など、話題作を続けてリリースしているメイヴィス・ステイプルズ。バック・ボーンとなるゴスペルを、含蓄のある深い歌声でソウルフルに、ブルージに歌う。そしてその彼方に芳醇なアメリカン・ルーツを浮かび上がらせる。そんな作風の背景はやはりアンタイ・レコードの存在無くして語れないでしょう。

アンタイ(ANTI)・レコード。その名の通りアンチ精神を軸に、ジョー・ストラマー、ブラッカリシャス、マイケル・フランティ、ワン・デイ・アズ・ア・ライオンなど、個性的な作品をリリースしてきたレーベル。そして我々ルーツ愛好家にとっては、何と言ってもトム・ウェイツが所属することで知られていますね。やはりトム・ウェイツこそアンタイの音、というイメージは確かにあるように思います。さらに近年はジョー・ヘンリーの躍進が著しく、彼のソロ作はもちろん、ソロモン・バーク、ベティ・ラヴェット、ランブリン・ジャック・エリオット、モーズ・アリソンなど、彼の手がけた作品の多くがアンタイからリリースされています。ベテランの味わいと、ルーツ解釈を、いかに現代に響かすか?という手法にも、産業化する音楽界において、計り知れないアンチ精神を感じさせてくれますよね。

さて、メイヴス・ステイプルズです。彼女もジョー・ヘンリーとの愛称は良さそうですが、今作「YOU ARE NOT ALONE」でプロデュースを務めたのは、なんとウィルコのジェフ・トゥウィーディー。これは意外でしたね。オルタナ・カントリーから今やアメリカン・ロックの雄となったウィルコですよ! ジェフはメイヴィスのファンだったそうで、彼からのラヴ・コールによりこのコラボが実現したそうです。

オープニングを飾る「Don't Knock」のイントロを聴いた瞬間、やられました。揺れるエレキ・ギターの響き、まさにヴィー・ジェイ時代、ステイプル・シンガーズの再現。堪りませんね。メイヴィスの歌声も流石に深い。1960年の若く溌剌とした歌声とは違う、まろやかに包み込むような歌唱が素晴らしい。ゴスペルの歴史すら感じさせるこの響きはやはり特別!

録音はウィルコのスタジオ「ウィルコ・ロフト」で行なわれ、ウィルコからは鍵盤奏者のパトリック・サンソンが全面参加。もちろんジェフも主にアコギでバックアップ。しかし核となるメンバーは、リック・ホームストローム(g)、ジェフ・タームス(b)、スティーヴン・ホッジス(ds)、ダニー・ジェラード(vo)。彼等は現在のメイヴィスのツアー・バンドだそう。こういった人選には現在進行形のリアルなメイヴィスを捉えようというジェフの意思が感じられます。

タイトル曲「You Are Not Alone」はジェフによるオリジナル曲。陰影の深いフォーキーな質感と抑制の効いたメイヴィスの歌声が秀逸。そしてもう1曲のジェフのオリジナル「Only The Lord Knows」はジェフ自身がファズのかかったギターを弾くロック色の濃い楽曲。メイヴィスのナチュラルに重く艶やかな歌唱が印象的。「In Christ There Is No East Or West」や「Creep Along Moses」といったトラディショナルをジェフがアレンジしたナンバーも面白い。前者はアコースティックでオーガニックな空気感の中、メイヴィスが柔らかく朗らかな歌声を聴かせてくれる。一方で後者はよりゴスペル色が強く、メイヴィスとコーラス隊のコール&レスポンスと、そこに割って入るロックなギターが格好良い!

さらに特筆すべきは絶妙なカヴァー曲。まずはアラン・トゥーサンの「Last Train」。これは意外な選曲でしたが、ことのほかハマってます。曲の持つ独特なもっちゃり感とメイヴィスならではのゴスペル感がいい具合に混ざり合ってるんですよね~。そしてCCRの「Wrote A Song For Everyone」。今作中最もカントリー色の濃いナンバーと言えそうですが、重厚なギター・リフと高揚感のあるゴスペル・コーラス、そして言葉を噛みしめるように歌うメイヴィス。これは感動的ですよ!間違いなく今作のハイライトでしょう。先の「Last Train」もそうなんですけど、土っぽいメイヴィスの歌声が堪らなく良いですね! そしてもう1曲、ランディ・ニューマンの「Losing You」。これも素晴らしい。まるで語り聴かせるようなメイヴィスの歌声に引き込まれます。その深い響きからは喉の震えまで伝わってくるよう。名唱!!

他にもレヴァレンド・ゲイリー・デイヴィスの「I Belong To The Band」や、ステイプル時代の「Downward Road」などゴスペル曲が素晴らしいのは言わずもがな。そしてメイヴィスがアレンジしたトラディショナル「Wonderful Savior」。これはコーラス隊とのアカペラで歌われる。これも良いですね~。さらに最後の「Too Close/On My Way To Heaven」のメドレーへ繋がる。ブルージーなギター・イントロにダニー・ジェラードの艶やかな歌声が絡み、メイヴィスを中心にした重厚なコーラスがさらなる深みへと誘う「Too Close」から、メイヴィスとコーラス隊との掛け合いが徐々に高揚感を増していく「On My Way To Heaven」へ。どちらもステイプル・シンガーズのヴィー・ジェイ録音で親しんできた曲。やはり現在のメイヴィスには、あの頃とはまた違う苦みと暖かみがありますよね。それにしても、アルバムのオープニングとエンディングにこういう曲を配するというのは、なかなか憎い演出ですね~。

しかしジェフ・トゥウィーディーがプロデュースしても、アンタイらしいアメリカーナなサウンドになっているところは興味深いですね。もっともっと風通しの良い音になるかと思いきや、以外と陰影の濃いサウンドに仕上がってます。特にギタリストのリック・ホームストロームの健闘は特筆すべきでしょうね。独特の揺れを持つサウンドと、ブルース/ゴスペルとロックの狭間を行き来するようなプレイは全体の印象を決定付けてると思います。

まさに第2の全盛期を迎えたようなメイヴィス・ステイプルズ。いや~、来日して欲しいですね。私は数年前のブルース・カーニバルで一度観ていますが、やはり現在のメイヴィスを観たい! ウィルコも来ることですし、今年のフジとかダメですかね?


さて、ちなみに、「ルーツな日記」的に熱過ぎるグラミー賞「Best Americana Album」部門のノミネート作品は以下の通りでした。これホントどれが受賞しても納得でした。

Mavis Staples / You Are Not Alone
Rosanne Cash / The List
Los Lobos / Tin Can Trust
Willie Nelson / Country Music
Robert Plant / Band Of Joy



~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

グラミー賞受賞作品
 11.03.05 『Best Traditional Blues Album』部門
 11.02.27 『Best Contemporary Blues Album』部門
 11.02.24 『Best Contemporary Folk Album』部門
 11.02.19 『Best Traditional Folk Album』部門
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アーロン・ネヴィルの新作

2010-11-13 12:20:51 | ゴスペル
AARON NEVILLE / I KNOW I'V BEEN CHANGED

ニューオーリンズの至宝、アーロン・ネヴィルの最新作「I KNOW I'V BEEN CHANGED」。プロデュースはあのジョー・ヘンリー。

アーロン・ネヴィルのソロ作というと、極上カントリー&ソウルなサウンドに麗しのヴェルヴェット・ヴォイスが乗るというイメージがありますが、ジョー・ヘンリーは近年、独特の陰影に富んだルーツ解釈で数々の名盤を演出してきた奇才。この二人の組み合わせどんな作品を生み出したのか?しかもその内容はゴスペル・アルバムと言いますから、これは期待するなと言う方が無理な話ですよね~。

ジョー・ヘンリーがバックに集めたのは、ジェイ・ベルローズ(ds)、デヴィッド・ピルチ(b)、パトリック・ウォレン(kbd)、グレッグ・リーズ(Dobro & Weissenborn)、クリス・ブルース(g)という、まさにジョー・ヘンリー・バンドと言っても良いような布陣。さらにここへアラン・トゥーサン(p)が加わる。アラン・トゥーサンと言えば、言わずと知れたニューオーリンズ・レジェンドですし、アーロン・ネヴィルの初期シングルのプロデュースも手がけてきた人。その一方で、最新作「THE BRIGHT MISSISSIPPI」やエルヴィス・コステロとの共演作「THE RIVER IN REVERSE」はジョー・ヘンリーのプロデュースで製作されるなど、両者と深い繋がりがあったり。まあ、とにかくここでのアラン・トゥーサンの存在というのは相当大きいい。

今作は、あくまでもアーロン・ネヴィルのソロ作である一方で、ジョー・ヘンリーによる米ルーツ・ミュージック解釈の旅路の一つという見方も出来ます。ランブリン・ジャック・エリオットの「A STRAGER HERE」でブルースを、アラン・トゥーサンの「THE BRIGHT MISSISSIPPI」ではニューオーリンズ・ジャズを、キャロライナ・チョコレート・ドロップスの「GENUINE NEGRO JIG」ではオールド・タイムな黒人ストリング・バンドを。そして今作ではゴスペルな訳です。しかもアーロン・ネヴィルと共にゴスペル作を作るにあたって、自身のサウンドの中にアラン・トゥーサンを加えるというこのさじ加減。やはりジョー・ヘンリーですよ!

1曲目「Stand By Me」のオープニングからジョー・ヘンリー・ワールドが炸裂します。チャールズ・アルバート・ティンドレイの古~いゴスペル。スピリチュアルなアーロンのゴールデン・ヴォイスから始まり、そこにアラン・トゥーサンの特徴的なピアノが絡む、コーラスが低く唸り、グレッグ・リーズのリゾネーター・ギターがグワワワ~ンと響く。素晴らしい!!! この独特の深い陰影を感じさせるアンサンブルはさすがジョー・ヘンリー。アーロンは神への救いをファルセットに込める。それはこれまでにない程に土っぽいフィーリングを感じさせ、アーロンでしかあり得ない小節回しが聴くものを異次元へ誘います。テンポが速くなってからのアーロンとコーラス隊との歯切れの良いコール&レスポンスも良いですね~。

ジョー・ヘンリーがプロデュースということで、ちょっと暗い感じになるかと思いきや、意外と陽性な曲が多いですね。「I Done Made Up My Mind」や「Don't Let Him Ride」など、アップ・テンポな曲が目立ちます。トラディショナルな息吹と、ジョー・ヘンリーらしいミクスチャーなルーツ指向がいい具合にブレンドされています。そしてこれまでにないほど生々しく響くアーロンの歌声にはうっとりですよ!まさにゴールデン・ヴォイス。全盛期に比べたら衰えたかもしれませんが、それすらも繊細な味わいとして響かせている。歳を重ねてまた新たな輝きを増しています。

そしてベルローズ&ピルチとアラン・トゥーサンが奏でる表情豊かなリズムが良いですね~! ここでのこの組み合わせはトゥーサンのソロ作とはまた違うふくよかな魅力を感じさせてくれます。特にアラン・トゥーサンは全体を通してフューチャーされてまして、なんとも言えない愛らしいピアノを披露してくれてます。タイトル・トラックの「I Know I've Been Changed」なんて、間奏になると急にトゥーサン流R&Bな世界になってニヤけてしまいます。「I Want To Live So God Can Use Me」もイントロからそんなトゥーサン流が炸裂していて最高!

選曲もゴスペル集でありながらなかなかひねりが利いていて興味深いです。黒人フォーク歌手、オデッタの名唱で知られる「Meetin' At The Building」。オデッタは有名なカーネギーホールでのライヴ盤で、ただベースと手拍子のみをバックにこの曲を歌っていますが、今作でも序盤、アーロンのバックはベースと手拍子のみ。途中からギターが入ってきますけどね。でもこれはあきらかにオデッタへのオマージュでしょうね。飾り気のないフォーキーなアーロンの歌声が堪らなく滲みます。

ローリング・ストーンズがカヴァーしたことでも知られるフレッド・マクダウェルの「You've Got To Move」。マクダウェルはデルタ・ブルースの大物ですが、この曲は彼のスピリチュアルズ作品にも収録されている曲なので、ブルースでありながら、ゴスペルと共通する部分もあるんでしょうね。悪魔の音楽と神の音楽とは言え、スピリチュアルズ、ブルース、ゴスペル、この辺の線引きは結構微妙だったりしますし、そんな微妙な境界線を行ったり来たりするあたり、流石はジョー・ヘンリー! で、この「You've Got To Move」、雰囲気やメロディーは原曲とは全然違い、もっと明るい感じ。アラン・トゥーサンのピアノが良いんですよ!遊び心を感じさせる変わったソロを弾いていて。もちろん 跳ねる伴奏も素晴らしいです!

カントリー・ギターの巨匠マール・トラヴィスの「I Am A Pilgrim」。バーズがロデオでカヴァーしてるのでロック・ファンにも同じみの曲ですね。やっぱりカントリーを歌うアーロンは良いですね。暖かい地声の響きと、ここぞというタイミングで切り替わるフワッとしたファルセット。グレッグ・リーズのスライドもまろやかで良い感じですね。ゴスペル作品にカントリーなリゾネーター・ギターという味わいは、この曲に限らず、今作全体で独特なムードを醸しています。ビッグ・ビル・ブルーンジーの「Tell Me What Kind Of Man Jesus Is」なんかも良いですね~。

必殺のスロー・ナンバー「Oh Freedom」。これも古い黒人霊歌なんでしょうけど、なんとなくプロテストソング的なイメージもありますよね。 私なんかは60年代にオデッタやジョーン・バエスなんかが歌ってた曲という印象なんですけど。アーロンは過去にボブ・ディランの曲も歌ってますし、なんかそんなことを考えたり。まあ、どちらにしろ大スタンダードですよね。言葉一つ一つに深い感情を込めるかのようなアーロンの歌声が素晴らしいですね。トゥーサンのピアノソロも良いし、グレッグ・リーズのスライドも効いてます。

ソウル・スターラーズでも知られる「I'm So Glad (Trouble Don't Last)」。アーロンはサム・クックが好きなんでしょうね。カントリー曲「I Am A Pilgrim」についてもライナーで「サム・クックが昔この曲を歌っているのを聴いた」的なことを語ってますし。で、いかにもゴスペルな高揚感たっぷりな「I'm So Glad (Trouble Don't Last)」で盛り上がった後、ラストを締める「There's A God Somewhere」。これはもうソウルフル!素晴らし過ぎるトゥーサンのピアノと、もうほとんど神がかってるとしか言えないアーロンのゴールデン・ヴォイス。最高です!

嗚呼、このメンバーで来日してくれないですかね~。






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グラミー特集:OH HAPPY DAY

2010-01-30 15:00:44 | ゴスペル
VA / OH HAPPY DAY

『Best Traditional Gospel Album』部門にノミネートされたコンピレーション・アルバム「OH HAPPY DAY」。まず参加メンバーが凄い。アル・グリーン、ジョス・ストーン、アーロン・ネヴィル、メイヴィス・ステイプルス、クラーク・シスターズ、ロバート・ランドルフ、パティ・グリフィン、ジョニー・ラング、ジョン・ボン・ジョビ、マイケル・マクドナルドなどなど。これにさらに全米各地の教会聖歌隊が加わるという豪華さ。曲目も「I Believe」や「Oh Happy Day」などのゴスペル・ナンバーに限らず広くソウル/ロックの名曲を取り上げています。ジョン・ボン・ジョビなんてボン・ジョビの曲歌ってるしね。さて、このアルバムがトラディショナルなのか?という疑問はさて置き、まずこの部門のノミネート作品は以下の通り。

Ashley Cleveland / God Don't Never Change
Donald Lawrence & Co. / The Law Of Confession, Part I
(Various Artists) / Oh Happy Day
The Williams Brothers / The Journey Continues
Vickie Winans / How I Got Over

この中で気になるのはアシュリー・クリーヴランドですね~。彼女もサザン・フィーリング溢れる良い声してしてますよね。あとTHE WILLIAMS BROTHERSは黒人3人組のコーラスグループのようですが、試聴してみましたらなかなか良かったです。

さて、本題の「OH HAPPY DAY」です。ジョニー・ラングによる「I Believe」からスタート。ジョニー・ラングというと若きブルース・ギタリストなイメージがありますが、前にもゴスペル部門でグラミーにノミネートされていたように思うので、今はゴスペルの人なんですかね? それはそうと彼が弾く骨太なギターが格好良いです。共演のFISK JUBILEE SINGERSの分厚い合唱も圧巻。

良心的なアメリカン・ロック・バンド、3ドアーズ・ダウンはブラインド・フェイスの「Presence Of The Lord」。前半は割とストレートなカヴァーなれど、後半にSOUL CHILDREN OF CHICAGOが入ってくると一気にゴスペル色を増します。このクワイアにはリード・ヴォーカリストが居まして、多分子供なんでしょうが凄い歌を歌う!痺れまくりです。この曲は個人的なハイライトの一つ。

セイクレッド・スティールのロバート・ランドルフは、アーバン・ゴスペル姉妹のクラーク・シスターズとの共演でスティーヴィー・ワンダーの「Higher Ground」を、ジョン・ボン・ジョビはTHE WASHINGTON YOUTH CHOIRをバックに自身の「Keep The Faith」を。これも案外良いんですよ!アル・グリーンはヘザー・ヘッドリーとのデュエットでインプレッションズの「People Get Ready」。アル・グリーンの渋い歌声が染みます。そしてマイケル・マクドナルドは「Storm Before The Calm」でアップテンポに弾けます。これ自作曲ですか?熱いです!

そしてやはりこの中で最もゴスペルらしいのはメイヴィス・ステイプルス。流石に深い歌声ですね。曲は「Waiting For My Child To Come Home」で、私はよく知らない曲ですが、THE CONSOLERS というデュオによる古いゴスペル・ソングのようですね。デュエットはカントリー界からパティ・グリフィン。メイヴィスとのデュエットだと、妙に可愛い声に聴こえてしまいます。そこがまた良いんですけどね。

そして個人的なハイライト第2弾がアンジェリック・キジョーが歌うボブ・マーレーの大名曲「Redemption Song」。レゲエ+アフリカ+ゴスペル。なんか大地の恵みと言うか、この地に生まれてきたことの喜びと言うか、心に染みる勇気をくれるような歌声とアレンジです。素晴らしい!!

そして個人的ハイライト第3弾! アーロン・ネヴィルの「A Change Is Gonna Come」。もうこの人の歌うこの曲は何度も聴いてますけどね。何度でも素晴らしいものは素晴らしい。しかも今回はバックにMT. ZION MASS CHOIR という聖歌隊が付いている。さらにジム・ホーンの率いるホーン隊がまた良いんです。アーロンは相変わらずのゴールデン・ヴォイスだし。うっとりです。

クイーン・ラティファの「Oh Happy Day」に続いてジョス・ストーンとBUICK AUDRA のデュエットで「This Little Light Of Mine」と、最後はゴスペルの定番曲で締めてますね。このBUICK AUDRAという人はよく知らないのですが、どういう人なんでしょうか? セッション風なラフな録音がなかなかいい雰囲気を醸しています。

ガチガチにゴスペルに拘らない作りから、反ってゴスペルの素晴らしさを身近に感じることが出来る作品。そして大物達の歌唱や共演もさることながら、クワイアの魅力を感じさせてくれる一枚です。それとこの面子では不利なのではないか?と思われたジョン・ボン・ジョビとマイケル・マクドナルドの健闘に拍手です!

ちなみにこのアルバムからロバート・ランドルフとクラーク・シスターズの共演による「Higher Ground」が『Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocals』部門に、ジョニー・ラングの「I Believe」が『Best Gospel Performance』部門にノミネートされています。
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アイラ・タッカーを偲ぶ 2

2008-10-04 20:22:12 | ゴスペル
THE DIXIE HUMMINGBIRDS / DIAMOND JUBILATION

前回からの続きです。

08年6月24日に亡くなられたアイラ・タッカー。享年83歳。伝説的なゴスペル・カルテット、ディキシー・ハミングバーズのリード・ヴォーカリストでした。

その全盛期は、ゴスペル・カルテット黄金期と呼ばれる50年代か、さらにグラミー賞を受賞した70年代辺りまででしょうか。ですが今回は晩年と言える03年の作品を紹介します。それは結成75周年記念作「DIAMOND JUBILATION」(写真)。実はこれ、私が大好きなアルバムなのです。

もちろん、創設メンバーのジェイムズ・デイヴィスや、屈指のベース・シンガーだったウィリアム・ボボなど、初期メンバーはもう居ません。ですがアイラ・タッカーはまだまだ健在でした。この時既に70代後半。ですがほとんどの曲でリード・ヴォーカルを務めています。そして彼を支える4人(5人?)のメンバーも流石の歌声。男性コーラスの魅力を存分に堪能させてくれます。

しかもこのアルバムの魅力はそれだけではありません。バック・メンバーが魅力的なんです。リヴォン・ヘルム(ds)、ガース・ハドソン(key)のザ・バンド組と、ラリー・キャンベル(g)、トニー・ガーニエ(b)、ジョージ・レシル(per)のボブ・ディラン・バンド組。ある意味、新旧ボブ・ディラン・バンドの共演な訳であります。そして“ゴスペル meets ルーツ・ロック”とも言えるコラボレーション。コアなゴスペル・ファンの方々には薄味に感じられるのかもしれませんが、私は大歓迎です!

ラリー・キャンベルのマンドリンが軽快にリズムを刻む1曲目「God's Radar」。ガース・ハドソンのアコーディオンが入ると一気にケイジャン風味を増します。枯れた味わいの中にも力強さの宿るアイラ・タッカーの歌声がまた素晴らしい。そして間を埋めるかのように挟まれるラリー・キャンベルの土っぽいエレキ・ギター・フレーズがまた格好イイ!

ラリー・キャンベル作の4曲目「Someday」は彼のアコギ・テクニックも光りますが、アイラ・タッカーのキレのあるヴォーカルと、それを後押しするハミングバーズのコーラスワークが素晴しい。たとえメンバーが変わってもゴスペル・カルテットのトップ・グループである地位は揺るがないでしょう!

そんなハミングバーズの魅力はキャンベルのギターのみをバックに歌われるスピリチュアルな5曲目「When I Found Jesus Christ」で最も光ります。こういう曲は本当に素晴らしい。男性コーラスならでは低音の魅力は荘厳ですらあります。

つづくブルーズン・ソウルな「When I Go Awey」では他の曲とはまた違うタッカーのコクのある歌声が楽しめます。またブレイク部分でのコーラス・ワークはカルテットの腕の見せ所。そしてこの曲でエレピを弾いてるのはドクター・ジョン。

そしてやっぱりなボブ・ディラン曲「City Of Gold」。ハミングバーズのメンバーがリードを繋いでいくスタイルで歌われ、それぞれソウルフルで美しい喉を披露。そんな歌声をバック・アップする幸福感が溢れるような演奏も最高。特にガース・ハドソンのオルガンが堪りません。ちなみにこの曲は映画「MASKED AND ANONYMOUS(邦題『ボブ・ディランの頭のなか』)」のサウンドトラック盤にボーナス・トラックとして収録されました。

さらにキャンベルのスライド・ギターが冴えるカントリー・ブルース・ゴスペルな「Nobady's Fault」も格好良いですし、暖かい質感の「I Bid You Goodnight」ではいぶし銀のタッカーのヴォーカルに心が和みます。そしてゴスペルらしいシャッフルのアップ・ナンバー「Rasslin' Jacob」がラストを締めます。

総評として、まずプロデューサーを務めたラリー・キャンベルに拍手。ゴスペル・カルテットの魅力を芳醇な南部フィーリングで見事に纏め上げました。そして土っぽくも躍動感溢れるノリを演出するリヴォン・ヘルムとトニー・ガーニエのリズム隊にも拍手です。そしてもちろんアイラ・タッカーを中心にした人間味溢れるハミングバーズの歌声! バックの演奏に見事に溶け込みながらも圧倒的な存在感です。それはバック・ミュージシャンのハミングバーズに対するリスペクトと、早くから様々なコラボを経験してきたハミングバーズの経験値のなせる業でしょうか。さらに当たり前ながら米ルーツ・ミュージックって地続きなんでだな~、としみじみ思ったり。そしてやっぱりゴスペルって良いですね! 名盤です。

あ、ちなみにディキシー・ハミングバーズはこの後、07年にアルバム「STILL KEEPING IT REAL』がグラミー賞「Best Traditional Gospel Album』部門にノミネートされましたが、残念ながら受賞は逃しています。


アイラ・タッカーさん、安らかに。
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アイラ・タッカーを偲ぶ 1

2008-09-29 12:08:04 | ゴスペル
THE DIXIE HUMMINGBIRDS / THE DIXIE HUMMINGBIRDS 1939-76

08年6月24日、伝説的ゴスペル・カルテット、ディキシー・ハミングバーズのリード・ヴォーカリスト、アイラ・タッカーが心不全のためフィラデルフィアで亡くなられました。享年83歳。

ディキシー・ハミングバーズは、戦後のゴスペル及びソウル・ミュ-ジックに与えた多大な影響力から、かのサム・クックを擁したソウル・スターラーズと双璧を成す存在と言われています。特に中心人物でありリード・ヴォーカリストであるアイラ・タッカーの荒々しさの中にも黒人の気高さを感じる迫力のヴォーカルが後のソウル・シンガーに与えた影響は計り知れません。

写真のアルバムはそんなハミングバーズとアイラ・タッカーの魅力がたっぷり味わえる日本企画のベスト盤「THE DIXIE HUMMINGBIRDS 1939-76」。このアルバムが発売されたのは98年。実はそれまでハミングバーズは、その実力と評価に反し何故か日本では満足に紹介されてこなかったようで、このCDのリリースは決定版アンソロジーの登場と当時大変話題になりました。代表曲が多少漏れていたりもするようですが、年代順に全盛期の熱い歌声を堪能できる素晴らしいアルバムです。

1925年サウスカロライナ州スパータンバーグ生まれのアイラ・タッカー。彼のハミングバーズへの加入年月については諸説あるようですが、このアルバムの解説ではハミングバーズが1939年9月にデッカへ初録音を行った直後ではないかと言うことです。その時タッカーはまだ10代前半でした。ちなみにハミングバーズ自体はその10年程前、1928年にサウスカロライナ州グリーンズヴィルにある教会の少年コーラス隊が母体になり結成されたそうです。

やはりハミングバーズの全盛期と言えば50年代ですかね。このアルバムでももちろんその時代の名唱を聴くことができます。スローナンバーの「I'll Keep On Living after Die」でのタッカーの太く低い声からシャウト、ファルセットまで自由自在な表現力が素晴らしい。そして何よりその声自体の存在感が堪らない。もちろんカルテットならではのハーモニーも素晴らしい!

また、ソウル・スターラーズやブラインド・オーイズ・オブ・ミシシッピ、ベルズ・オブ・ジョイなど当時のライヴァル達の曲を小気味良く繋げるアップテンポの「Let's Go Out To The Programs - no.1」では、そのショーマンシップから彼等のエンターテイン振りが窺えます。実際、彼等のライヴはジェイムズ・ブラウンに通じるような、派手なアクションで失神者が続出する程の熱狂的なものだったとか。一度そんな映像を見てみたいです…。

さらに悲しみを湛えたスピリチュアルな「Poor Pilgrim Of Sorrow」も感動的。ハワード・キャロルのセンス抜群のギターも素晴らしい。こういった静かな曲をじっくりと聴かせるのも、男性カルテットの魅力ですよね。

そして60年代になるとハミングバーズは、BSR誌29号のゴスペル・カルテット特集曰く『公民権運動の時代を先頭を切って走った』そうです。タッカーの作となる65年の「If Anybody Ask You」は人種差別下での黒人の“自己確認”の歌だそうで、彼の力強い歌声にしびれます。

70年代では、何と言っても73年にグラミー賞『Best Soul Gospel Performance』部門を受賞した「Loves Me Like A Rock」です。この曲はポール・サイモンの曲で、もともとポール・サイモンのアルバム「ひとりごと」にハミングバーズが参加しバック・コーラスを務めたもので、あらためてハミングバーズ自身が録音したヴァージョンが、グラミー受賞しました。

ちなみにポール・サイモンの「ひとりごと」は、マスル・ショールズ録音を含む傑作として知られ、彼の米南部路線にハミングバーズも一役買ったといったところでしょうか。 それにしてもハミングバーズを招いたポール・サイモンは流石ですね。

76年にはタッカーと共にグループの要だったベース・パートのウィリー・ボボが亡くなります。彼の歌声は短い曲ですがアカペラの「Ezekiel Saw The Wheel」で堪能できます。

このアルバムが76年で終わっているように、ウィリー・ボボを失ったことがハミングバーズにとって一つの時代の終焉だったのかもしれませんね。しかしハミングバーズは80年代も、90年代も生き続け、アイラ・タッカーは歌い続けていたのだと思います。残念ながらその間の活動について私は良く知りません。ですが、2003年に、私の大好きなアルバムがリリースされます。

ですが、それについてはまた次回ということで。
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ブラインド・ボーイズ・オヴ・アラバマ

2008-03-28 13:03:02 | ゴスペル
BLIND BOYS OF ALABAMA / DOWN IN NEW ORLEANS

前回からの続きです。

さて、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマの新作「DOWN IN NEW ORLEANS」です。近年のロック・フィールドとの邂逅で第2の全盛期を築き上げたアラバマですが、次はタイトル通りニューオーリンズです!

第一線で活躍するゴスペル・カルテットとしてはおそらく現役最古のブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマが、南部ブラック・ミュージックの聖地ニューオーリンズで製作した米ルーツ・ミュージック・ファン垂涎の一枚です。

現在のブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマは7人編成のようですが、ジャケットには5人の絵が描かれています。以前はファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマと名乗っていただけあり、5人にこだわりを持ってるんでしょうかね?

バックにはDAVID TORKANOWSKY(key)やSHANNON POWELL(ds)といったニューオーリンズの腕利きが参加し、スペシャル・ゲストにアラン・トゥーサン、プリサベイション・ホール・ジャズ・バンド、HOT 8 BRASS BAND、をフューチャーしています。

この豪華になり過ぎない絶妙な人選に深みを感じます。ニューオーリンズ・ミュージックのマイスターに、かの地の伝統を守るジャズ・バンド、そして新進気鋭のブラスバンドです。このバランス感覚が素晴らしいですね。これは近年の様々なコラボで培ったものでしょうか。

ただ残念なことにオリジナル・メンバーの一人、ジョージ・スコットは既に故人となり、最後のオリジナル・メンバーにして中心人物だったクラレンス・ファウンテンの名も今作にはクレジットされていません。今、このアラバマを引っ張るのは80年代頃から参加したジミー・カーター。

結成は1939年まで遡ると言われるアラバマの歴史と、ジミーカーターのアラバマ在籍年月、そらに加入前はライバルであるファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピにも在籍していたという彼の経歴を考えれば、もはや違うグループになってしまったと思われるかもしれません。ですが近年のアラバマの顔はファウンテンと共にこのジミー・カーターであり、彼の小柄な身体から発せられる強力無比なシャウトと客席を練り歩くパフォーマンスこそアラバマの魂と言えるものでした。

しかもジミー・カーターは、実はクラレンス・ファウンテンやジョージ・スコットと同じ盲学校出身の仲間なのです。つまりある意味結成母体の一員なのです。そんなことから彼がオリジナル・メンバーの一人と数えられることもままあり、実際ブルース&ソウル・レコーズ誌のインタヴューで、何故ミシシッピに参加したのか?という問に対して彼は「元々はアラバマに参加していた」と語っています。

そんなジミー・カーターがここでも素晴らしい喉を披露しています。一曲目「Free At Last」から彼の十八番であるロング・シャウトを決めています。もちろん相当なお年ですから、声自体は衰えていますが、まだまだ元気、とんでもない爺さんです。枯れた魅力の中にしっかりとした力強い芯が残っています。もちろんジミー・カーター以外のシンガーも味わい深い歌声を聴かせてくれますし、芳醇なコーラス・ワークも素晴らしいです。

曲目はトラディショナルを中心に、アール・キングやカーティス・メイフィールドのカヴァーなんかもあり、一筋縄ではいかないアラバマの魅力を引き出しています。

そしてやっぱり今作のキモはバックとのコラボにあります。出だしから間を生かしたニューオーリンズ・ファンキーな演奏で始まるのも嬉しいですし、全体の色彩としてデヴィッド・トーカノウスキーの素晴らしい鍵盤さばきに拍手です。

プリザベーション・ホール・ジャズ・バンドがトラディショナルな息吹を伝える「Across The Bridge」や「Uncloudy Day」も素晴らしい。今年2月に亡くなられたプリザベーション・ホール・ジャズ・バンドのリーダー、ジョン・ブルニアスも参加しています。ひょっとしてこれが遺作になったのかな~?

そして、HOT 8 BRASS BANDの弾力溢れるホーンがもっちゃりとした魅力を際立たせる「Make A Better World」。さらにプリザベーション・ホール・ジャズ・バンドのバンジョー奏者CARL LeBLANCとHOT 8 BRASS BANDのチューバ奏者BENNIE PETEの共演でバックをつける「You Got To Move」も面白い。

しかしハイライトは何と言ってもアラン・トゥーサンがピアノでバックをつける「If I Could Help Somebody」。これはニューオーリンズが生んだ不世出のゴスペル・シンガー、マヘリア・ジャクソンのカヴァー。アラン・トゥーサンのしっとりとしながらエレガントにそしてエモーショナルに転がるピアノにもうっとりですが、その上でソウルフルに絞り上げるような歌声に心打たれます。おそらくジミー・カーターでしょうね、この歌は! 感動的です。

そして最後を締める「I'll Fly Away」。この曲は50年代のスペシャリティ時代にも素晴らしい録音を残していますが、こちらのHOT 8 BRASS BANDがバックをつけたニューオーリンズ・ヴァージョンもまた違った魅力で良いですね~。

いや~、これは傑作ですよ!いつまでもブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマには続いて欲しいです。そしてまた来日して欲しいですね。それと、クラレンス・ファウンテンはどうしたんでしょうか? ネットで調べてみても英語が分からないせいか情報を得られませんでした。脱退したんですか? 引退でしょうか? 身体の具合が悪いとか? まさか亡くなった訳ではないですよね? 心配です。


~関連過去ブログ~ お茶のお供にどうぞ。

 08. 3.26 オリジナル・ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オヴ・アラバマ(THE ORIGINAL FIVE BLIND BOYS OF ALABAMA / THE COMPLETE SPECIALTY SESSIONS)
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オリジナル・ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オヴ・アラバマ

2008-03-26 21:05:57 | ゴスペル
THE ORIGINAL FIVE BLIND BOYS OF ALABAMA / THE COMPLETE SPECIALTY SESSIONS

ゴスペル・カルテットの現役最高峰であり老舗中の老舗、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ。アラバマ州の盲学校生徒達によりその前身グループが結成されたのは1939年と言いますから、とんでもない長寿グループです。

当初はハッピーランド・シンガーズと名乗っていたそうですが、彼らがファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマに名を変えたいきさつはもはや伝説めいています。

それは48年頃。この頃、ミシシッピ州の盲学校が生んだジャクソン・ハーモニアーズというゴスペル・カルテットが活躍していました。このカルテットがファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピと改名します。彼らの人気に対抗して、ハッピーランド・シンガーズはファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマと名を改め、両者はコンテストで対決したり、ライバルとしてしのぎを削りながら人気を博して行った…。これが定説のようです。

一方、95年のブルース&ソウル・レコーズ誌のインタビューで、アラバマの中心人物クラレンス・ファウンテンはこう語っています。『1948年、ニュージャージーでのことだった。6千人の聴衆が集まった。二つのブラインド・ボーイズの対決ということで。その日に二つのブラインド・ボーイズができたんだ。それまでは別の名前でやっていたから。我々はハッピーランド・シンガーズ、彼らはジャクソン・ハーモニアーズだった』と。つまり対決を機に両者が名を変え、二つの“ブラインド・ボーイズ・オブ・~”が誕生したということですね。こっちの説の方が夢がありますけど、どうなんでしょうね?

ま、どちらが真相か私には分かりませんが、どちらにしろこの二組はゴスペル・カルテットの代表に数え上げられるグループですから、その改名のいきさつには何やら歴史のロマンのようなものを感じますね。

さて、ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマと名乗った彼ら、全盛期は50年代のスペシャリティ時代でしょうか。この頃の録音は2枚組「THE COMPLETE SPECIALTY SESSIONS」に纏められていますが、これが素晴らしい! 力強く情熱的なシャウトに、暖かい広がりとスピード感のあるコーラス・ワーク。そして独特の泥臭さ。ある種野性的にすら感じるディープさはこの頃から現在へ繋がるアラバマの魅力ですね。これぞゴスペル・カルテット! やっぱりゴスペルはこの時代が良いですね。

さて、私がこのグループを知ったのは93年にWOWOWか何かで彼らがその年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演した際の映像を見た時でした。ある意味カルチャー・ショックでしたね。その歌声の素晴らしさはもちろんですが、得体の知れない濃密なエネルギーにやられました。フロントマンは3人。3人ともいい歳でしたがこれが強烈。二人は座って歌いますが、興奮してくると立ち上がって踊りだしてしまいます。するとお付の人が「まあまあ、」みたいな感じで椅子に座らせます。一人が座るとまた一人が立ち上がる。また座らせる、また立ち上がる。それの繰り返し。そのうち立って歌っていた一人は観客席に降りシャウトしながら延々と練り歩きます。そして観客を目の前にして「イエーイ!」だの「ヘーイ!」だのやたら煽りまくる。何だこの人達は?目が見えないんでしょ? と私はただただ唖然として見るばかりでした。

その座っていた二人がオリジナル・メンバーのクラレンス・ファウンテンとジョージ・スコット、客席を練り歩いたのが80年代から参加したジミー・カーターです。この3人が近年のブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマの中心でした。

彼らは何度か来日しているようですが、私が初めて見たのは95年。渋谷「ON AIR」でした。ゴスペルのライヴを見に行くのはこれが初めてだったので、「キリスト教徒じゃないけど大丈夫なのか?」とか、本気で心配しながら行きました…。もちろんそんな心配は必要ありませんでしたけどね。残念ながら詳しいことは殆ど覚えていませんが、その感動は初のゴスペル体験として深く私の胸に刻まれています。

そのアラバマが俄かにジャム・バンド・シーンで注目され始めたのは2000年に入ってからでしょうか? 正直02年にジャム・バンドの祭典「ボナルー・フェスティヴァル」にアラバマが参加していると知った時はビックリしました。もちろんこれはジャム・バンド・シーンの裾野の広がりと、ルーツを大切にする姿勢の表れでもあります。しかもそんな彼らのルーツへのリスペクトがアラバマを第2の全盛期へと導いたのです。2000年以降のアラバマの作品では、彼らの柔軟性が伝統的なスタイルを現代の音楽として見事に花開かせています。

ジョン・ハモンドやデヴィッド・リンドレーが参加した01年の「SPIRIT OF THE CENTURY」、ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドをバックに従えた02年の「HIGHER GROUND」。豪華ゲストを向かえ、ジョン・メデスキーが全面バックアップした03年の「GO TO THE MOUNTAIN」。極めつけはベン・ハーパーとの共演アルバム「THERE WILL BE A LIGHT」(04年)。(ちなみにこの4枚で4年連続のグラミー賞に輝きました。)さらにベン・ハーパーとは感動的なライヴ盤も発表しましたね。もちろんこの間、ジャム・バンド・シーンに限らず、ピーター・ガブリエルをはじめ、様々なアーティストからラヴ・コールを受け、共演を果たしています。

そしてそんな流れで04年にはフジロック・フェスティヴァルにも出演しました。残念ながらジョージ・スコットの顔は見えませんでしたが、初日のグリーン・ステージでジミー・カーターがステージからフィールドへ降り、練り歩きながらシャウトしたのは嬉しかったですね~。まさかまだやるとは!しかもフジロックで! 恐ろしい爺さんです。クラレンス・ファウンテンも声の衰えは感じたものの、多くの曲でリードを取り、元気な姿を見せてくれました。

しかし残念なことに05年の「ATOM BOMB」の発表を前にしてジョージ・スコットは亡くなられてしまいました。彼の低音がもう聴けないのは残念でなりません。しかしアラバマは活動を止めませんでした。今年に入り、かつての中心人物であり名シンガーのクラレンス・ファウンテンすらクレジットされていないながら、素晴らしいアルバムを届けてくれました。それは「DOWN IN NEW ORLEANS」。アラバマ meets ニューオーリンズです! 悪いわけがありません!

実は今回、このアルバムについて書きたかったのに、そこにたどり着くまでが異様に長くなってしまったので、続きはまた次回。




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