ルーツな日記

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グラミー賞 ノミネート 『Best Roots Gospel Album』

2017-02-05 20:27:19 | ゴスペル
V.A. / GOD DON'T NEVER CHAGE: SONGS OF BLIND WILLIE JOHNSON

我が「ルーツな日記」によるグラミー特集も、いよいよ佳境を迎え、奥の方へと分け入って行きます。まずは『Best Roots Gospel Album』部門。気になるノミネートは以下の5組。

Gaither Vocal Band / Better Together  
The Isaacs / Nature's Symphony In 432
Joey+Rory / Hymns
Gordon Mote / Hymns And Songs Of Inspiration
Various Artists / God Don't Never Change: The Songs Of Blind Willie Johnson


注目は何と言っても「God Don't Never Change: The Songs Of Blind Willie Johnson」です! こちらは1927〜1930年という短い間にたったの29曲、30テイクしか残していないという、テキサスが生んだ伝説のギター・エヴァンジェリスト、ブラインド・ウィリー・ジョンソンのトリビュート盤。ギター・エヴァンジェリストとは、辻説法のごとくギター弾き語りでゴスペルを歌う人達のこと。音的には、神のことを歌っている以外ほぼブルースと変わらないので、ブルースの範疇で語られることが多いですね。ブラインド・ウィリー・ジョンソンも、その強烈なダミ声と泥臭さいスライドギターにより、ブルースに多大な影響を与えました。彼が初録音した1927年というと、ロバート・ジョンソンより早く、ブラインド・レモン・ジェファーソンや、チャーリー・パットン、サン・ハウス辺りと同時代ですね。

さてこの作品、プロデュースはボブ・ディランのゴスペル・サイドをトリビュートした「Gotta Serve Somebody - The Gospel Songs Of Bob Dylan」(2003年)の制作で知られるJeffrey Gaskill。トム・ウェイツがジョンソンと同郷テキサスのスミス・ケイシー「Country Rag (East Texas Rag)」のサンプリングに載せて、本家をも凌ぐ異様なダミ声で歌う「The Soul Of A Man」に始まり、ルシンダ・ウィリアムスが「It's Nobody's Fault But Mine」を、デレク・トラックス&スーザン・テデスキが「Keep Your Lamp Trimmed And Burning」を、さらにカウボーイ・ジャンキーズが「Jesus Is Coming Soon」、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマが「Mother's Children Have A Hard Time」、ルーサー・ディッキンソンが「Bye And Bye I'm Going To See The King」をと、それぞれが各々の個性でブラインド・ウィリー・ジョンソン縁の曲を綴っていく。

そしてブラインド・ウィリー・ジョンソンと言えばスライド・ギターな訳で、デレク・トラックスが「Keep Your Lamp Trimmed And Burning」で聴かせるドロッとしたカントリー・スタイルが素晴らしいのはもちろん、ルシンダ・ウィリアムスでは彼女のバックではお馴染みのダグ・ペティ ボーンが、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマでは元ドライヴ・バイ・トラッカーズのジェイソン・イズベルが、見事なスライド・プレイを聴かせてくれます。またルーサー・ディッキンソンが「Bye And Bye I'm Going To See The King」で自ら弾く鄙びた感じのスライドがまた良い塩梅なんです。ちなみにこの曲ではオサー・ターナー の孫娘SHARDE THOMASのファイフも良い味出しています。

また、この並びで元ローン・ジャスティスのマリア・マッキーが参加していることが、個人的に凄く嬉しい! 最近は表立った音楽活動をあまりしていない彼女なので、こういう作品に録音を残してくれること自体かなり貴重だったりします。彼女が歌うは「Let Your Light Shine On Me」。ブラインド・ウィリー・ジョンソンが残した録音のなかでもかなりゴスペル然とした1曲で、マリア・マッキーの瑞々しくも突き抜けた歌声が、歌の持つ自由な力と共にポジティブに響きます。

さらに、このメンツの中では異色と思われるシネイド・オコーナーによる「Trouble Will Soon Be Over」も神聖な空気感がとても良い。最後を締めるリッキー・リー・ジョーンズが歌う「Dark Was The Night, Cold Was The Ground」は、消え入りそうな弾き語りがスピリチュアルに終焉を物語りつつ、トランペットの音色が静かに幕を引く。


このアルバムは、ハウス・バンドにゲスト・シンガーを招いたものではなく、アーティスト各々がそれぞれのバンド・メンバーなどで録音したものを集めたものです。レコーディング場所もそれぞれ違います。それでもブラインド・ウィリー・ジョンソンのトリビュート作として、一つの流れを生み出し、一枚のアルバムとして不思議なオーラに包まれているような統一感を感じさせられます。まるでブラインド・ウィリー・ジョンスンの伝説が、アルバムに魂を宿したかのように。

ブラインド・ウィリー・ジョンソンの伝説や謎の数々を、まるでタイムスリップするかのように辿るライナー・ノートも素晴らしいです。


さて、本命に熱くなりすぎましたが、では対抗は?と聴かれますと、恥ずかしながら私、残りの4組についてはよく存じ上げないのです。『Best Roots Gospel Album』とは言え、いわゆるアーバンなゴスペルに比べれば、確かにカントリーではありますが、私が連想するルーツなゴスペルとは大分赴きが違うんですよね〜。なので、対抗は選べません…。すいません。でも Joey+Rory はちょっと良いな。




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