ルーツな日記

ルーツっぽい音楽についてルーズに綴ります。

ホワイトデー

2012-03-14 23:52:55 | カントリー
CAROLINA CHOCOLATE DROPS / LEAVING EDEN

今日はホワイトデーでしたね。ヴァレンタインのお返しにチョコレート・ドロップなどいかが?

はい、若干意味不明な感じに書き初めて見ましたが、要はキャロライナ・チョコレート・ドロップスの新譜が凄く良い!と言うことなのです。今時非常に珍しい黒人ストリングス・バンド。メンバーはRHIANNON GIDDENS(vo、fiddle、banjo)、DOM FLEMONS(vo、banjo、guitar、ds、bones、jug、quills)、HUBBY JENKINS(vo、banjo、mandolin、guitar、bones)のトリオ編成。前作「GENUINE NEGRO JIG」は、あのジョー・ヘンリーがプロデュースを務めたことでも話題になり、グラミー賞の『Best Traditional Folk Album』部門も受賞しました。それまでもマニアックな人気は集めていたことでしょうが、この前作で俄然注目を浴びた印象はありますね。そしてその注目を受けての最新作がこの「LEAVING EDEN」。期待をまったく裏切りません!!

カロライナの山中に伝わるマウンテン・ミュージックや、アーリー・カントリーの息吹を感じさせる素晴らしきオールド・タイムなサウンド。バンジョー、フィドル、マンドリン、ギター、の絡み合いは素朴ながら瑞々しい躍動感に溢れている。プリミティヴな歌声も素晴らしい。そんなストリングス・バンドの魅力溢れる楽曲が並ぶなか、手拍子のみをバックにアカペラで歌われる一風変わった曲があったり、現代的なメロディーを持つ歌物曲があったり、さらにサポート・メンバーのADAM MATTAによるビートボックスが良い案配だったりと、ヴァラエティ豊かな曲群が織りなす世界観は、古き良き時代へのタイム・スリップ感と同時に、現代に生きる黒人ストリングス・バンドとしての個性を感じさせてくれます。

ちなみにプロデュースはバディ・ミラー!! ジョー・ヘンリーに続いて今度はバディ・ミラーがプロデューサーを務めているという点からも、このグループの特異な立ち位置が伺い知れますよね〜。



ちなみにこちらは私が妻にあげたホワイトデーのチョコレート。(どうでもいいですね…)
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キャロライナ・チョコレート・ドロップス

2011-02-19 13:38:02 | カントリー
CAROLINA CHOCOLATE DROPS / GENUINE NEGRO JIG

グラミー賞『Best Traditional Folk Album』部門を受賞したキャロライナ・チョコレート・ドロップスの「GENUINE NEGRO JIG」。現代では非常に珍しいと思われる黒人ストリング・バンドです。メンバーはジャスティン・ロビンソン、ドム・フレモンズ、そして紅一点のリアノン・ギデンスのトリオ編成。カロライナ/アパラチアの伝統音楽を中心に、バンジョーやフィドルの音色が踊る古き良き時代の息吹を甦らせるような演奏を聴かせてくれます。この3人、数年前からタワーレコードなんかで見かけて気にはなってたんです。前々作にあたる「HERITAGE」なんかを試聴して、これ凄いな、とか思いつつも何となく買いそびれてたんですよね〜。で、この最新作ですよ!なんとジョー・ヘンリーがプロデュース。これは迷わず買いですよね!

ソロモン・バークの「DON'T GIVE UP ON ME」や、ベティ・ラヴェットの「I'VE GOT OWN HELL TO RAISE」、エイミー・マンの「THE FORGOTTEN ARM」など、その独特なルーツ解釈と陰影に富んだサウンドで名を轟かせたジョー・ヘンリー。近年もランブリン・ジャック・エリオットの「A STRAGER HERE」でブルースを、アラン・トゥーサンの「THE BRIGHT MISSISSIPPI」でニューオーリンズ・ジャズを、さらにアーロン・ネヴィルの「I KNOW I'V BEEN CHANGED」でゴスペルをと、彼独特のルーツ探訪を進めますます鋭意盛んな制作活動を進めています。そしてこのキャロライナ・チョコレート・ドロップスではオールド・タイムな黒人ストリング・バンドですよ!

しかしこのトリオは貴重ですよね。少なくとも日本に輸入されるようなCDをリリースしている黒人ストリング・バンドはこの人達だけでしょうからね。おそらくアメリカ広しと言えど、この形態はほとんど絶滅危惧種のようなものなのではないでしょうか? でもカントリー・ミュージックのルーツとしてアパラチア地方で生まれた黒人ストリング・バンドがあることは間違いないことでしょうし、例えばバンジョーなんかは今ではカントリー/ブルーグラスの楽器として知られますが、元々はアフリカ系アメリカ人によって作られ親しまれた楽器で、そのルーツはアフリカにあるそうですしね。そんな古き良き伝統を甦らせるこの人達、しかも人間国宝的なお爺さんお婆さんではなく、若手3人組と言うのが素晴らしい!

この3人の出会いなどにつきましては中川五郎さんの「グランド・ティーチャーズ」に詳しいですが、それによりますと、3人はインターネットの「ブラック・バンジョー:昔と今(Black Banjo: Then & Now)」というサイトを通じて知り合ったそうです。これだけオールド・タイムの音楽をやっていながら、知り合ったきっかけがネットというのも面白いですよね。そしてこのバンドが結成されたのが05年、バンド名は1930年代に活躍した黒人兄弟バンド、テネシー・チョコレート・ドロップスに敬意を表しつけられたそうです。この辺にもこのバンドの真っすぐな姿勢が伺えますよね。そして06年「SANKOFA STRINGS」でアルバム・デビュー。最新作「GENUINE NEGRO JIG」は通算5作目にあたるそうです。

1曲目「Peace Behind The Bridge」からジャスティンの鄙びたフィドルが良い味わいですね。リアノンが5弦バンジョー、ドムが“bones”、直訳すると“骨”ですね。そんなパーカッションをならしてる。3人の織りなす空気はまさにオールド・タイム! スピード感のある「Trouble In Your Mind」ではドムがネイティブ・インディアン的(よくわかりません、私のイメージです。すいません…)な喉を鳴らす“throat singing”を聴かせる。「Your Baby Ain't Sweet Like Mine」ではドムがジャグを、リアノンがカズーを吹くなど、ジャグ・バンド的な風合いが楽しい。他にも「Cornbread And Butterbeans」や「Cindy Gal」、「Sandy Boys」といったトラディショナルでの、軽やかでノリの良い演奏に惹かれます。

一方でリアノンがフィドルを弾くタイトル曲「Snowden's Jig (Genuine Negro Jig)」のような独特な影のある曲も秀逸。どこか素朴なスピリチュアルを感じさせますね。ドムのギターをバックにリアノンがブルージーに歌う「Why Don't You Do Right? 」はカンサス・ジョー・マッコイのカヴァー。ジャスティンの惹くオートハープの音色が寂し気な情緒を醸す「Kissin' And Cussin' 」はそのジャスティンによるオリジナル曲。リアノンの美しいアカペラ独唱による「Reynadine」はおそらくイギリスの古いバラッド。さらにトム・ウェイツのカヴァー「Trampled Rose」があったり、「Hit 'Em Up Style」ではドムがビートボックスでリズムを演出してる!この曲のリアノンの歌唱も見事!

それにしても面白い3人ですね。一見、ただただ真摯なオールド・タイム探求者のようでありながら、彼等ならではのミクスチャー感と冒険心を持っている。新旧と明暗のバランス感覚により絶妙な立体感を演出させた影にはジョー・ヘンリーの手腕もあるでしょう。今回はグループのプロデュースと言うことで、お馴染みのジョー・ヘンリー・バンド的な面々が参加していないため、彼らしい魔術的なサウンドは聴かれませんが、やはり流石ジョー・ヘンリーと唸らされる作品ですね。


ちなみに、今回『Best Traditional Folk Album』部門にノミネートされていた作品は以下の5作品でした。

Carolina Chocolate Drops / Genuine Negro Jig
Luther Dickinson & The Sons Of Mudboy / Onward And Upward
The John Hartford Stringband / Memories Of John
Maria Muldaur / Maria Muldaur & Her Garden Of Joy
Ricky Skaggs / Ricky Skaggs Solo: Songs My Dad Loved

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グラミー・ノミネート:ウィリー・ネルソン

2011-02-13 14:24:54 | カントリー
WILLIE NELSON / COUNTRY MUSIC

もうすぐグラミー賞、今回は「ルーツな日記」的に避けては通れない『Best Americana Album』部門です。気になるノミネート作品は以下の通り。

Rosanne Cash / The List
Los Lobos / in Can Trust
Willie Nelson / Country Music
Robert Plant / and Of Joy
Mavis Staples / You Are Not Alone

ジョニー・キャッシュを父に持つロザンヌ・キャッシュの最新作「THE LIST」は、ブルース・スプリングスティーン、エルヴィズ・コステロ、ジェフ・トゥイーディー、ルーファス・ウェインライト達をゲストに向かえたバック・トゥ・ルーツなカントリー作品。バックの暖かいサウンドもさることながら、ロザンヌの穏やかな中にもハリのある美声が良いですね。 特にスプリングスティーンとデュエットしたドン・ギブソンの「Sea Of Heartbreak」が素晴らしい!

ロス・ロボスの最新作「IN CAN TRUST」も流石のアルバムですね。スタジオ作としては通算14作目だそう。やっぱりこのゴツゴツとした感じのギターが良いですね。全体的にラティーノなやさぐれた哀愁を感じさせる作風の中、ガレージなラテン・ブルース・ロックとでも呼びたい「Do The Murray」が、彼等らしいスパイスが効いてて私は好きですね〜。

メイヴィス・ステイプルズの「YOU ARE NOT ALONE」。先のロザンヌ・キャッシュの作品にも参加していたウィルコのジェフ・トゥイーディーがプロデュース。アラン・トゥーサンの「Last Train」なんかカヴァーしてます。あとCCRの「Wrote A Song For Everyone」とか。やはりゴスペルに根ざしたメイヴィスの歌声は素晴らしいですね。

そしてロバート・プラント。バディ・ミラーが全面参加した力作なんですが、実はこの部門でプラントとウィリー・ネルソンのどちらを取り上げようか迷ったんです。で、結局プラントは次回に回すことにしました。という訳で今回の注目はウィリー・ネルソンです。


ウィリー・ネルソン、カントリー界の大レジェンドですね。普通、これ程の人なら寡作になってもおかしくはないのですが、近年も充実した作品を次々にリリースしているから凄いです。盟友アスリープ・アット・ザ・ウィールと組んでウェスタン・スウィングを取り上げた前作「WILLIE AND THE WHEEL」も素晴らしかったですが、最新作「COUNTRY MUSIC」も流石の傑作。プロデューサーはT・ボーン・バーネットですからね。このアルバムが『Best Country Album』部門ではなく『Best Americana Album』部門にノミネートされている所以はその辺りにあるのかもしれません。

ウィリーのペンによるオリジナル「Man With The Blues」で始まり、トラディショナルを初め、マール・トラヴィスの「Dark As A Dungeon」や、レイ・プライス「You Done Me Wrong」、ハンク・ウィリアムスの「House Of Gold」などカントリーの名曲を取り上げているこのアルバム。バックはアコギ、ベース、バンジョー、マンドリン、フィドルなど、アコースティックな楽器が中心、そして肝はドラムレスであること。デニス・クロウチのベースを中心に土の温もりを感じるリズムが素晴らしい! バンジョーやマンドリンが奏でる朗らかなブルーグラス的音色に、バディー・ミラーのエレキ・ギターがアウトローな香りを注入する。この辺りのさじ加減は流石はT・ボーン・バーネットですね。

バック・メンバーは楽曲によって必ずしも一定ではないのですが、例えばフィドルでスチュアート・ダンカン、バンジョーにはライリー・ボーガス、ハーモニカにミッキー・ラファエル、マンドリンにはデル・マッコーリー・バンドのロニー・マッコーリーなど、名手が揃っていてる。バック・ボーカルにはジム・ローダーデイルも。彼等が奏でる土っぽくも麗しいカントリー・タッチが素晴らしいですね。名曲「Satisfied Mind」や「I Am A Pilgrim」の味わいなどは特に格別。またウィリーの渋みと甘みがブレンドされたような歌声がまた滲みるんですよ〜。

一方で「Satan Your Kingdom Must Come Down」や「Nobody's Fault But Mine」などが与える、暗い陰影がこの作品を濃厚なものにしています。このブルージーな味わいは堪らないものがありますね。ウィリーの歌がまた深い! さらにアル・デクスターの「Pistol Packin' Mama」が微妙にリズム&ブルースっぽい味を醸していることも効いていますね。やはり一口にカントリー・ミュージックと言えど、それを一つの作品として立体的かつ奥行きのある作品に仕立て上げるT・ボーン・バーネットの手腕には恐れ入りますね。そしてそれを独自の語り口で自分の世界に昇華させるウィリー・ネルソンにも脱帽。

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グラミー特集:サラ・ジャロス

2010-01-31 10:48:54 | カントリー
SARAH JAROSZ / SONG UP IN HER HEAD

グラミー賞ノミネート特集、今回は『Best Country Instrumental Performance』部門です。カントリー、しかもインストゥルメンタルというマニアックな部門です。ノミネート作品は以下の通り。

Alison Brown / Under The (Five) Wire
The Greencards / The Crystal Merchant
Sarah Jarosz / Mansinneedof
Steve Wariner / Producer's Medley

この中で私が気になるのはSARAH JAROSZ です。サラ・ジャロスと読むのでしょうか? まだ歳10代の女性シンガーです。ノミネート曲「Mansinneedof」は彼女のデビュー・アルバムとなる「SONG UP IN HER HEAD」からの1曲。女性シンガーと書きましたが、もちろん曲も作ります。アルバムのほとんどの曲が彼女のオリジナル曲です。しかもギター、マンドリン、バンジョー、ピアノを弾きこなすマルチ・プレイヤーです。「Mansinneedof」は彼女のマンドリンをフューチャーした開放感溢れる逸品。

彼女の操る楽器からも想像出来るように、そのベースにはブルーグラスがあります。しかしそのアコースティックな楽器が織りなす音の重なりはコンテンポラリーな広がりを待ってます。そしてシンガー・ソング・ライター的な知性を感じさせつつ、ジャム・グラス的な展開もある。飾り気のないフォーキーな歌声には、10代とは思えないトラディショナルな感性と若く瑞々しい魅力が同居しています。

そしてこのアルバム「SONG UP IN HER HEAD」を支えるバック・メンバーが凄い! バンジョーやフィドルなどでスチュアート・ダンカン、スライド・ギターにジェリー・ダグラス、マンドリンでマイク・マーシャル、ベースに MARK SCHATZ 、さらにダレル・スコットやティム・オブライエンまで顔を出しています。彼らが入れ替わり立ち代わりで彼女をサポート。若き新人アーティストのデビュー作にこの世界の大家達がこぞって参加している事実に驚かされます。もちろん若手も多数参加しています。中でもフィドルの ALEX HARGREAVES とチェロの BEN SOLLEE のプレイは光っていますね。


フォーキーな香りにジェリー・ダグラスのスライドがブルージーに絡む「Song Up In Her Head」。神秘的な雰囲気の「Edge Of A Dream」に、ロック的なダイナミズムを持った「Broussard's Lament」など、ヴァラエティ豊かな曲が並びます。トラディショナルな色彩の濃い「Tell Me True」ではサラ・ジャロスにはもるティム・オブライエンのバック・ボーカルが良いですね。そして「Mansinneedof」ではサラ・ジャロスとマイク・マーシャルによる2本のマンドリンと若きALEX HARGREAVES のフィドルとの絡みが美しい。この曲はカントリーというより室内楽のような麗しさを感じさせます。

スリリング且つ哀愁溢れるサラ・ジャロスのバンジョーが秀逸なカントリー・インスト「Fischer Store Road」も格好良い。スピード感が爽快な「Left Home」では瑞々しいサラの歌声にスチュアート・ダンカンのフィドルとジェリー・ダグラスのドブロが爽やかに絡む。 サラがピアノを弾き語るスロー・ナンバー「Long Journey」も味わい深い。さらにトム・ウェイツのカヴァー「Come On Up To The House」も面白い。そして全編を通してサラの柔らかくも凛とした歌声が良いですね。

それにしても古きフォークやカントリーの息吹を感じさせながらも多彩な広がりを持つ素敵な楽曲達とその表現力は末恐ろしい10代です。ベテラン勢がサポートしたくなる気持ちも分かりますね。これからのカントリーをポップスとは違う方向への新しい世界へと道く可能性を多いに秘めた逸材だと思います。これからの活躍が楽しみですね。最後の「Little Song」、癒されます。
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グラミー特集:ルシンダ・ウィリアムス

2010-01-29 15:29:22 | カントリー
LUCINDA WILLIAM / LITTLE HONEY

今回も前回に引き続き『Best Americana Album』部門です。なにせ「ルーツな日記」的にあまりにも激熱な部門なんで。しつこいようですがノミネート作は以下の通り。

Bob Dylan / Together Through Life
Levon Helm / Electric Dirt
Willie Nelson & Asleep At The Wheel / Willie And The Wheel
Wilco / Wilco (The Album)
Lucinda Williams / Little Honey

もう5組全てが注目どころなのですが、今日はルシンダ・ウィリアムスです。実はルシンダのこのアルバム「LITTLE HONEY」は、当ブログの08年年間ベスト・アルバム第4位としておきながら、これまで内容にはいっさい触れてこなかった、って言うかその機会を逸していた作品なのです。よくぞノミネートしてくれました!

オルタナ・カントリーの女王、ルシンダ・ウィリアムス。って言うか最近はオルタナ・カントリーという言葉もあまり聞かなくなりましたけどね…。彼女の前作「WEST」は、落ち着いたトーンによって、アメリカ大陸の持つ荒涼としたロマンティシズムを描いたようなサウンドで、彼女の最高傑作とも呼びたい素晴らしい作品でしたが、今作はその世界観をさらに深めるものになるのでは?と予想していただけに、1曲目「Real Love」のロッキンなギター・リフを聴いて驚きました。しかも1度やり直すという生っぽさ。え?っと思っているうちにドライヴしまくるイントロから爽快なロック・チューンが始まります。

ジャンル的にはカントリーのシンガーとは言え、ルシンダのささくれ立った声はロックそのもの。タイトル曲「Honey Bee」なんてカントリー界のパティ・スミスと評したいほどパンキッシュ。って言うかもはやカントリーではないですけどね。さらに後半スペーシーな広がりを見せるドラマチックな大作「Little Rock Star」など、全13曲中12曲がルシンダ自身のオリジナル。唯一のカヴァーがAC/DCの「It's A Long Way To The Top」ですから! AC/DCですよ! 今作におけるルシンダのモードが伺い知れますね。

しかも今作のバックを務めるのは彼女のツアー・バンドというBUICK 6ですからね。このことからもこのアルバムがライヴ感を重視して作られたことが想像出来ますよね。瑞々しいリズムと2本のエレキ・ギターを核にしたタイト且つロッキンなサウンドが気持ちよいです。もちろんただロッキンなだけではありません。バック・メンバーそれぞれが多彩な楽器を操り、奥行きの深いサウンドを聴かせてくれます。

そして何より、やはりルシンダの歌が素晴らしい。上記曲での弾けぶりも最高ですが、スロー・ブルースとカントリー・バラードが混ざったような「Tears Of Joy」や、ミシシッピ・デルタな「Heaven Blues」などで聴ける彼女ならではのブルース感覚は特に印象的。元々ルシンダは79年のデビュー・アルバムで、アコギをバックにブルースを歌っていたんですからね。

そして「Jailhouse Tears」ではエルヴィス・コステロとデュエット。初めて聴いた時は唐突にコステロの声が響いて、ちょっと雰囲気崩れるな〜、なんて思ったものですが、聴き込んでいくにつれ、彼の声がなかなか効いてるなと。さらに今作中で最もカントリーなナンバー「Well Well Well」ではチャーリー・ルーヴィンとジム・ローダーデイルがホンキー・トンクなコーラスで盛り上げます。この曲も良いですよね〜。こういう曲でのルシンダの土っぽい感覚もたまりません。

なんとなくロックやブルースに耳を取られがちですが、前作の雰囲気を引き継いだフォーキーなナンバーももちろん収録されています。「If Wishes Were Horses」、「Knowing」、「Rarity」といったスロー・ナンバーでは、現在のルシンダならではの深淵な風景を感じとれます。やはりこういう曲でのルシンダの歌唱は特に神がかってますね。本当に素晴らしい!!「Circles And X's」のようなセンチメンタルな感じも味わい深いですし、極めつけはルシンダがアコギを弾き語る「Plan To Marry」。自然なエコーを伴ったルシンダの柔らかい声に惹き込まれますね。

で、最後はAC/DCでガツンと終わる。カッコイイです! 姉御〜!!!って感じです。最後の声なんてボン・スコットに似てますし、って言うか真似したんじゃない? どちらにしろ痛快。

ロックな衝動と、オルタナ・フォークな抑制の利いた感情表現が同居した傑作です。『Best Americana Album』部門をサクッと受賞し、これからは名実共にアメリカーナの女王と呼ばれるようになるかも。
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ウィリー・ネルソンのアメリカン・スタンダード

2009-11-19 13:21:31 | カントリー
WILLIE NELSON / AMERICAN CLASSIC

最近のウィリー・ネルソンは傑作揃い。07年のマール・ハガード、レイ・プライスとの豪華共演ライヴ盤「LAST OF THE BREED」、08年のウィントン・マルサリスとのブルース作「TWO MEN WITH THE BLUES」、今年始めにリリースされたアスリープ・アット・ザ・ウィールとのウエスタン・スウィング「WILLIE AND THE WHEEL」。それぞれが違ったコンセプトに沿った豪華共演盤でありながら、ウィリー・ネルソン以外にあり得ない味わい。ベテランならでは懐の深さを感じさせられました。そして先日リリースされた最新作「AMERICAN CLASSIC」はそのタイトル通り、スタンダード集です。そう来ましたか。正直、もっとカントリー寄りの作品を期待していましたが、なんだかんだで即買いでした。

ウィリー・ネルソンのスタンダード集と言えば78年の大名盤「STARDUST」が有名ですね。あれはプロデューサーをブッカー・T が務め、バックもカントリー系のミュージシャンが中心だったこともあり、スタンダード特有のドリーミーな甘さの中に南部的な愛嬌を感じさせてくれるサウンドでした。それに比べると今作はもっと都会の洗練を感じさせられる、アダルトな雰囲気。もちろん録音技術の進歩もあるでしょうけど、その違いは製作陣の顔ぶれを見れば明か。今作のプロデューサーはナタリー・コールやダイアナ・クラールの諸作で敏腕を振るう、近年ジャズ・ヴォーカルを録らせたらこの人って感じのトミー・リピューマ。06年のグラディス・ナイトのスタンダード作もこの人でしたね。そしてバックにはトミー・リピューマ周辺の鉄壁ジャズ・メンが並びます。ピアノにジョー・サンプル、ドラムスにルイス・ナッシュ、そしてベースはクリスチャン・マクブライド。ギターはダイアナ・クラール・バンドのアンソニー・ウィルソン。そしてそのダイアナ・クラールはゲストで1曲ウィリーとデュエットしています。

だからと言ってウィリーの個性が消されるかと言うとそうではないのが御大ウィリー・ネルソンの凄みか、それともトミー・リピューマのプロデュース力か? とにかく麗しのアメリカン・スタンダードを歌うウィリーの渋くも暖かみのある歌声が素晴らしく、それをしっとりとソウルフルにサポートするバックの演奏も流石の一言! 聴けば聴くほど染みて来る大人のアルバムです。

1曲目「The Nearness Of You」。ホーギー・カーマイケルの曲ですね。正直、冒頭のシンフォニーの音を聴いた瞬間、「あ〜、こういう方向ね…」とがっかりしてしまいましたが、素朴な中に深みをたたえるウィリーの歌声に引き込まれます。ジョー・サンプルのピアノがまた良いですね。また「Come Rain Or Come Shine」や「I Miss You So」でのジョー・サンプルも素晴らしい。しっとりとした味わいの中にほのかにR&Bの香りを立たせ、ウィリーのヴォーカルを引き立てています。またウィリーの歌声がソウルフルで良いんですよね〜。ダイアナ・クラールとのデュエット「If I Had You」はダイアナ・クラール自らがピアノを弾き、極上の雰囲気を作り上げています。それにしてもダイアナ・クラールの声はトロトロです。

ジム・コックスのオルガンがリードする「Fly Me To The Moon」やミッキー・ラファエルのハープをフューチャーした「Angel Eyes」などはブルージーな味わい。ミッキー・ラファエルは「STARDUST」にも参加していたウィリー人脈の名手ですね。ウィリー人脈と言えばノラ・ジョーンズがゲスト参加した「Baby It's Cold Outside」。「水着の女王」という映画の主題歌だそうです。ウィリーはノラが好きですよね。これで何度目の共演でしょうか?でもだからこそこういった“じゃれ合い”のような曲を絶妙な呼吸で歌い合えるんでしょうね。ノラと歳の離れたウィリーという組み合わせの妙も面白いですね。素敵なデュエットです。

コンビネーションと言えば、小気味良いファッツ・ウォーラー曲「Ain't Misbehavin'」でのウィリーの歌に軽やかに呼応するジョー・サンプルのピアノもやっぱり流石ですね。またこの曲は突然切り込んで来るジム・コックスのオルガン・ソロも秀逸。私の大好きな「Since I Fell For You」ではウィリーの歌にミッキー・ラファエルのハープが絡む。ジャジーなサウンドの中で、なんとなくハープの音には落ち着きと郷愁を感じてしまいます。

ラストを締めるはプレスリーで有名な「Always On My Mind」。まさか最後にこんなベタな曲が用意されているとは。80年代に既にカヴァーして大ヒットさせている曲ですから、ウィリーの歌うこの曲が素晴らしいのは百も承知ですが、なんでまた?という疑問もふっとぶ名唱です。これは男の哀愁です。素晴らしい!!!


全く違うコンセプトとは言え、土臭さが濃厚という点では共通していた「TWO MEN WITH THE BLUES」と「WILLIE AND THE WHEEL」でしたが、それらとはまたあきらかに違う方向性の今作品。ですが案外、このスタンダード集は、ニューオーリンズ&ブルースの「TWO MEN WITH THE BLUES」と、エウェスタン・スウィングの「WILLIE AND THE WHEEL」に続く、ウィリー・ネルソンのルーツ3部作と捉えることも出来るかもしれません。サウンドの方向性を概ねトミー・リピューマに任せてしまっているであろう点も面白い。今後の展開がますます楽しみなウィリー・ネルソン、来日してくれないですかね〜。





WILLIE NELSON WINTON MARSALIS / TWO MEN WITH THE BLUES
ニューオーリンズを代表するトランぺッター、ウィントン・マルサリスと共にブルースの世界へ。


WILLIE NELSON AND ASLEEP AT THE WHEEL / WILLIE AND THE WHEEL
現代ウェスタン・スウィングの雄、アスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演で、その道の開祖ボブ・ウィルスをトリビュートした作品。エグゼクティヴ・プロデューサーにジェリー・ウェクスラー!
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ルーツ&トラディショナル館とトムス・キャビン

2009-05-08 10:07:32 | カントリー
FLATT & SCRUGGS / BEST OF THE FLATT & SCRUGGS TV SHOW VOL.8 (DVD)

ディスク・ユニオンの新宿ルーツ&トラディショナル館が5月24日をもって閉店となるそうです。ここ数年、私にとっては新宿に行ったらほぼ必ず立ち寄るスポットとなっていただけに、これは寂しいですね。しかも移転ではなく今後「カントリー/ブルーグラス音楽等のアメリカン・ルーツ音楽の専門的な取扱いは終了」となるそうですので、ちょっと信じられない感じです。やっぱり日本でこのジャンルは難しいんでしょうね。そして先日5月5日は「アメリカン・ルーツ音楽中古CDセール!!」ということでしたので、ちょっと覗いてきました。 色々特価になっていましたが、さんざんCDを物色したあげく、結局DVDを買ってしまいました。最近ルーツ&トラディショナル館に行くたびに気になっていたフラット&スクラッグスのDVDです。これは彼らの50年代後半から60年代初頭にかけてのTVライヴ映像を収めたDVDシリーズで、第何集までリリースされているのか知りませんが、私が手に入れたのはその第8巻。

いや〜、良いですね、ブルーグラス。レスター・フラットとアール・スクラッグス。この二人はかのビル・モンローがブルーグラスという音楽スタイルを確立したと言われる45年に、彼のバンドのメンバーとして在籍し、その原動力となった人達です。特にアール・スクラッグスのスリー・ファンガー奏法による5弦バンジョーがブルーグラスに果たした役割は計り知れません。そんなアール・スクラッグスが余裕の表情で弾くバンジョーが素晴らしいのはもちろん、レスター・ヤングのギターと歌もホント味わい深い。さらにジョシュ・グレイヴスのドブロも凄いし、ポール・ウォーレンのフィドルも最高! ただ全体的に和やかな曲が中心なのがちょっと残念。もちろんそれはそれで味わい深いのですが、「Flint Hill Special」のようなスリリングでスピード感のある曲をもっと沢山聴きたかったとも思ったり。でも当時のブルーグラス・シーンのトップ・バンドであり、伝説的なグループの動く映像がたっぷり観れるだけで貴重ですよね〜。画質はもちろん白黒ですけど…。

こんなDVDがズラ〜っとディスプレイされていた新宿ルーツ&トラディショナル館は素敵なお店でしたね。5月7日にはカントリー/ブルーグラスの中古CDを大放出するという噂もあるので、また行ってこようと思います。


それにしても寂しいですね。先日エイモス・ギャレットの素晴らしいライヴを提供してくれたトムス・キャビンさんも、最近の観客数の減少によりコンサート・ツアーの企画が難しくなっているとか…。このままスポンサーが見つからなければ、5月下旬から始まるダン・ヒックスの公演で最後になるそうです。これも本当に残念ですね。とはいえ私もトムス・キャビンさん関連では過去に行きたいライブが沢山あったものの、結局はエイモス・ギャレットとフリッツ・リッチモンド・トリビュートぐらいしか行けなかったので、申し訳ない気持ちでいっぱいです。でもこの2公演は本当に素晴らしかった! トムス・キャビンさんのようなこだわりを持った会社は貴重です。新しいスポンサーがついて、復活してくれることを祈っています。



〜関連過去ブログ〜 お茶のお供にぜひ!

 06.04.03 フリッツ・リッチモンド・トリビュート
 08.04.16 エイモス・ギャレット@渋谷クラブ・クアトロ
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グラミー特集:エミルー・ハリス

2009-02-09 12:38:15 | カントリー
EMMYLOU HARRIS / ALL I INTENDED TO BE

グラミー賞ノミネート特集、最終回。エミルー・ハリスです。例年、当ブログのグラミー特集はブルース部門をメインに持ってきていたのですが、今回はエミルー・ハリスです。なぜならエミルー・ハリスのこのアルバム「ALL I INTENDED TO BE」は、08年の当ブログ年間ベスト・アルバムに選ばせていただいた作品だからです!

エミルー・ハリスがノミネートされたのは『Best Contemporary Folk/Americana Album』です。気になるノミネート作品は以下の5組。

Joan Baez / Day After Tomorrow
Ry Cooder / I, Flathead
Rodney Crowell / Sex & Gasoline
Emmylou Harris / All I Intended To Be
Robert Plant & Alison Krauss / Raising Sand

ここにもロバート・プラント&アリソン・クラウスが居ますね〜。そしてライ・クーダーの「I, FLATHEAD」も素晴らしいアルバム。もしエミルーがなければライ・クーダーを取り上げたいところだったのですが、やっぱりエミルー・ハリスなのです。

マーク・ノップラートのデュオ作を挟みましたが、ソロ作としては5年振りの新作「ALL I INTENDED TO BE」。とにかくエミルーらしい気品の中に温かさと優しさが滲み出てくるような大傑作。こういうのを聴いていると、カントリーだのオルタナだのアメリカーナだのという、ジャンルはどうでも良くなってきますね。とにかく良い曲と良いサウンド、そして良い歌がある。ただそれだけです。

プロデューサーはエミルー初期のカントリー・ロック名盤「ELITE HOTEL」に携わったBRIAN AHERN。バックにはバディ・ミラー、グレン・D・ハーディン、ビル・ペイン、パトリック・ウォーレン、フィル・マデイラ、などなど。曲はエミルーのオリジナル曲の他、パティ・グリフィンやマール・ハガード、トレーシー・チャップマンなどの曲もあり、それぞれが落ち着いた佇まいで、ず〜っと昔からそこにあるように、収まっています。

中でも秀逸なのはケイト&アナ・マクギャリグルが参加した2曲「How She Could Sing The Wildwood Flower」と「Sailing Round The Room」。この2曲はエミルーとマクギャリグル姉妹との共作。前者はエミルーの微妙に枯れた味わいの歌声に姉妹のハーモニーが乗る。もううっとりです。ケイトの弾くバンジョー・ソロも味わい深い。そして後者はメロウな曲が最高! これは私が昨年聴いた中でもベストの1曲ですよ。そしてやっぱり姉妹のハーモニーが素晴らしい!

ハーモニーと言えば「Gold」ではドリー・パートンとヴィンス・ギルという豪華な二人がコーラスを付ける。これも良い味わい。グレッグ・レイツのスティール・ギターがまた良いんです。そして「Old Five And Dimers Like Me」と最後を締める「Beyond The Great Divide」ではSELDOM SCENE の JOHN STARLING とデュエット。さらにこの2曲にはマイク・オルドリッジがハーモニー&ドブロで参加。マンドリンとフィドルを弾くのはスチュアート・ダンカン。そしてフィル・マデイラのアコーディオンがまた渋い〜!

ま、なにはともあれ、やっぱりエミルー・ハリス。良い声してますよ。良い歌唄いますよ。朋友、グラム・パーソンズに先立たれて以来、なんとなく孤高のシンガー的な雰囲気がありますが、そんな気高さと今まで歩んできた道のりの末にたどり着いた桃源郷のようなアルバム。もちろんここが到達点ではないでしょう。まだまだ彼女の旅は続きます。祈、来日。


〜関連過去ブログ〜 お時間有ったらぜひ!

グラミー賞ノミネート特集(あくまでもノミネート作です。受賞作ではありませんよ〜!)
 08.12.04 グラミー賞ノミネート発表!
 09.01.20 グラミー特集:アデル『Record Of The Year』
 09.01.23 グラミー特集:エステル『Song Of The Year 』
 09.01.27 グラミー特集:ジャズミン・サリヴァン『Best New Artist』
 09.01.30 グラミー特集:ロバート・プラント&アリソン・クラウス『Album Of The Year』
 09.01.31 グラミー特集:スティーヴ・クロッパー&フェリックス・キャバリエ『Best Pop Instrumental Performance』
 09.02.01 グラミー特集:ジェイムス・テイラー『Best Pop Vocal Album』
 09.02.01 グラミー特集:ナタリー・コール『Best Traditional Pop Vocal Album』
 09.02.03 グラミー特集:アリシア・キーズ『Best Pop Collaboration With Vocals』
 09.02.05 グラミー特集:ジェニファ・ハドソン『Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocals』
 09.02.07 グラミー特集:アル・グリーン『BEST R&B ALBUM』
 09.02.07 グラミー特集:アーマ・トーマス『Best Contemporary Blues Album』
 09.02.07 グラミー特集:B.B.キング『Best Traditional Blues Album』
 09.02.07 グラミー特集:アール・スクラッグス『Best Bluegrass Album』

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グラミー特集:アール・スクラッグス

2009-02-09 02:08:14 | カントリー
EARL SCRUGGS WITH FAMILY & FRIENDS / THE ULTIMATE COLLECTION LIVE AT THE RYMAN

グラミー特集第13弾! ブルーグラス・バンジョーの神様、アール・スクラッグスです!

今回のグラミー賞ノミネート・リストを見て、興味をそそられた作品がいくつかありました。例えばチャーリー・ヘイデンの「RAMBLING BOY」とか、チェリーホルムズの「CHERRYHOLMES III: DON'T BELIEVE」とか、デル・マッコーリー・バンドやボーソレイユのニューオーリンズ・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ盤など、色々あったのですが、悩みに悩んだ末に買ったのがアール・スクラッグスの「THE ULTIMATE COLLECTION LIVE AT THE RYMAN」だったのです。ま、買いたくても現物がなくて買えない物もありましたけどね…。

で、アール・スクラッグスのこの作品がノミネートされたのが『Best Bluegrass Album』部門。ノミネート作は以下の通り。

Cherryholmes / Cherryholmes III: Don't Believe
Del McCoury Band / Del McCoury Band ― Live At The 2008 New Orleans Jazz & Heritage Festival
Earl Scruggs With Family & Friends / The Ultimate Collection Live At The Ryman
Ricky Skaggs & Kentucky Thunder / Honoring The Fathers Of Bluegrass: Tribute To 1946 And 1947
Dan Tyminski / Wheels

私、ブルーグラスは結構好きなんですけど、でもなかなか新作CDは買わないんですよね〜。なので、このノミネート5作品のCDは一つも持っていませんでした。デル・マッコリー・バンドは新作が出る度に出来るだけ買うようにしていますが、いかんせんこのライヴ盤は日本で売ってませんから。タワーレコードにもありませんでしたからね〜。バッファローさん、何とかなりませんか? それとチェリーホルムズは前から気になってはいたんです。現代を代表するブルーグラスのファミリー・バンドですよね。来日経験もあるとか。MySpaceやYouTubeで調べたらかなり良かったんですけど…。もしグラミー賞を獲ったら買いますね。

さて、アール・スクラッグスです。ブルーグラスの祖と言われるのはビル・モンロー。彼は1930年代から活動を始めますが、彼のバンド、ザ・ブルー・グラス・ボーイズがカントリーの一形態"ブルーグラス”の語源となったとは言え、彼らの音楽が“ブルーグラス”になったのは、45年に革新的なバンジョー奏者、アール・スクラッグスが加入してからなのです。

強烈なスピード感で華麗且つスリリングな旋律を生み出すバンジョーの3フィンガー奏法、もはやブルーグラスの代名詞と言っても良いほどですが、これを確立したのが誰あろうアール・スクラッグスなのです。50年代にはギタリストのレスター・フラトと共にフラット&スクラッグスでブルーグラスの全盛期を築きました。しかしその後、飽くなき好奇心と探究心ゆえか、ポップスやロックに浮気し、純粋なブルーグラス・ファンからは白い目で見られたりもしたそうです。70年代に制作されたドキュメンタリーではボブ・ディランやバーズ、ジョーン・バエスなどとのセッションに加え、もう殆ど意味不明なシンセサイザーとの共演までしています。70年代にですよ! ま、私はそんなアール・スクラッグス先生が大好きですけどね。

で、現在85歳?のアール・スクラッグスです。最新作「THE ULTIMATE COLLECTION LIVE AT THE RYMAN」はその名の通りライヴ盤。“With Family & Friends"は、息子のランディ・スクラッグス以下、ブルース・ファンの私には馴染みのない名前ですが、それぞれソロ作や自身のバンド、もしくはセッション活動で活躍しているカントリー界の猛者達のようです。経歴を遡ればアリソン・クラウスやエミルー・ハリスのバック・メンバーだったり。

曲目はフラット&スクラッグス時代のレパートリーが中心ですが、ボブ・ディランの「You Ain't Goin' Nowhere」や前回紹介したB.B.キングが取り上げたブルース古典「Sitting On Top Of The World」も演っています。1曲目の「Salty Dog Blues」が始まった瞬間からバンジョーの軽やかな音色にもう“ヤッホ〜イ”って感じです。ブルーグラスって良いな〜と。そしてドブロのソロがまた格好良い!もちろんマンドリンもフィドルもアコギも最高。そして高らかにこだまするコーラス。言うことなしですね!

高速の「Earl's Breakdown」では3フィンガーの神業と醍醐味を存分に味わえますし、次々とソロを回していく代表曲「Foggy Mountain Breakdown」も興奮間違い無し。もちろん和み系の曲もありますし、ルーツを垣間みる土着のストリング・バンド的な曲もあります。また、普通ブルーグラスには入らないドラムスが入っていたり、曲によってはエレキ・ギターまで入っているところも面白い。形にとらわれない楽しさがあり、それこそ音楽の醍醐味ですよね。いや〜、ブルースも良いけど、たまにはブルーグラスもね!って感じです。あ〜、こんなの生で観てみたい! それにしてもこの弦捌きで85歳は信じられません!



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グラミー特集:ロバート・プラント&アリソン・クラウス

2009-01-30 16:44:49 | カントリー
ROBERT PLANT & ALISON KRAUSS / RAISING SAND

グラミー特集第4弾は『Album Of The Year』。授賞式当日一番最後に発表される、グラミー大賞とでも言いたい、年間最優秀アルバム賞です。昨年、並みいる“旬”なアーティスト達を押しのけ、ベテランのハービー・ハンコックが受賞し世間を驚かせたのも記憶に新しいこの部門。果たして今年はどんなドラマが生まれるのでしょうか? 気になるノミネート作品は以下の通り。

Coldplay / Viva La Vida Or Death And All His Friends
Lil Wayne / Tha Carter III
Ne-Yo / Year Of The Gentleman
Robert Plant & Alison Krauss / Raising Sand
Radiohead / In Rainbows

ちなみに過去5回の受賞者は、アウトキャスト、レイ・チャールズ、U2、ディクシー・チックス、ハービー・ハンコック。見事にバラバラです。傾向も何もあったものではありません。ただ、そろそろ来そうなのがヒップ・ホップ。実はアウトキャストの5年前はローリン・ヒルでした。そして今年はアウトキャストから5年後。このローテーションに従えば、リル・ウェインですか? ちなみにリル・ウェインは今回最多の8部門でノミネートされている、台風の目です。

そして注目は2大UKロック・バンドのコールドプレイとレディオヘッド。アメリカ以外のロックバンドと言う意味では過去にアイルランド出身のU2が2度受賞していますが、ロック大国のイギリスに限って言えば、バンド単位で受賞したのはこれまでビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」とフリートウッド・マックの「噂」ぐらいしかありません。ストーンズもフーもツェッペリンも獲っていないのです。ですが昨年のエイミー・ワインハウス以来、UK組に追い風が吹いているような気がするグラミー。しかもこの2組は受賞式でパフォーマンスすることが既に発表されています。これはあるかもしれません!

ですが、案外ロバート・プラントが受賞したらどうですか? 昨年はツェッペリンの再結成ツアーで話しが持ちきりでした。ひょっとして日本にも来るのか?という淡い期待と、世界中のファンの思いやジミー・ペイジの幻想を尻目に、アリソン・クラウスとのデュエット・ツアーを続けていたロバート・プラント。再結成の夢は儚く散りました。そしてそのツェッペリンが全盛期に残した名盤ですら果たせなかった『Album Of The Year』をもしプラントが獲ってしまったら…。皮肉と言えば皮肉ですし、ジミー・ペイジは何を思うでしょうか?

ま、彼らにとってグラミー賞を獲るか獲らないかなど些細な問題でしかないでしょうけどね…。とにもかくにも、そんな訳で今回の注目はロバート・プラント&アリソン・クラウスです。しかも今回は2つの主要部門を含む5部門にノミネートされています。

さて、アリソン・クラウスにとってプラントは大先輩。何せツェッペリンが「Stairway to Heaven」を含む4作目(通称「FOUR SYMBOLS」)を発表した71年に彼女は生まれたのですから。そしてロック・ファンから見たこのツー・ショットには、歴史的超大物シンガーがカントリー畑から美人歌手を見つけてきた、みたいなイメージがあるかもしれませんが、いやいや、プラントを5部門ものグラミー・ノミネートに導いたのはこの女性の方かもしれないのです。アリソン・クラウス、ブルーグラス界の歌姫であり、ブルーグラスを広くポップスの領域まで押し広げたアメリカの国民的歌手。まだ30代ながら、過去に受賞したグラミーの数はサントラ参加やプロデュースを含め20個を越えるというグラミー賞常連中の常連であり、グラミーに愛されたシンガーの一人なのです。

さて、そんな二人のアルバム「RAISING SAND」です。04年に行われたレッド・ベリーのトリビュート・コンサートでの共演がきっかけだったというこの異色デュオ。カントリーを歌うプラントってどうなのか?とは思いましたが、そのミスマッチ感がこのプロジェクトにしかない魅力を生み出し、さらに思いのほか二人のハーモニーの相性が良いことに驚かされます。囁くように歌われるプラントの声は艶やかで若々しく、そこに透明度の高いクラウスの声が溶け込んでいきます。

収録曲は全てカヴァー。メル・ティリス、エヴァリー・ブラザーズ、タウンズ・ヴァン・ザント、ジーン・クラーク、トム・ウェイツなど、カントリーやオールディーズ、ルーツ・ロックを中心に掘り下げ、リル・ミレットやアラン・トゥーサンといったニューオリンズものまで。さらにペイジ&プラント時代のセルフ・カヴァーもあったりしますが、有名な曲よりも隠れ名曲的なものを多く取り上げた選曲が作品に深みを与えています。特にマッドエイカーズの「Killing The Blues」には感激です!

サウンド的にはカントリーをベースにした情緒豊かな作風でありながら、決してストレートなルーツ解釈ではありません。カントリー的とは言えクラウス色は薄く、プラントのプラント以外何者でもない声の存在感が大きい印象ではありますが、どちらかというとプロデューサーのT・ボーン・バーネット色が濃い作品と言えるかもしれません。何処か幻想的でノスタルジックでありながら、そのゆったりとした流れに、単なる懐古趣味だけではない刺激を孕んでいます。

バックは鬼才マーク・リーボウ(g)を中心に、ジェイ・ベルローズ(ds)、デニス・クロウチ(b)といったおそらくT・ボーン・バーネット人脈の人達が核となり、豊穣かつ歪んだ南部フィーリングを醸し出しています。特にバーネットの右腕とも言えるマーク・リーボウの存在は絶大。さらに彼とジェイ・ベルローズの二人は同じくT・ボーン・バーネットがプロデュースした昨年の矢野顕子の作品「akiko」にも参加していまして、よりフリーキーなそちらと聴き比べてみるのも面白いかも。さらに同年リリースのT・ボーン・バーネット自身のソロ作「TOOTH OF CRIME」も関連作と言えるでしょうね。マーク・リーボウも参加したそのアルバムにはT・ボーンの(元?)奥方サム・フィリップスもヴォーカルで参加。彼女はシンガー・ソング・ライターとしても活躍し、本作「RAISING SAND」にも1曲「Sister Rosetta Goes Before Us」を提供しています。

ちなみに今回のグラミー賞『Best Traditional Blues Album』部門にノミネートされているBBキングの最新作「One Kind Favor」もT・ボーン・バーネットのプロデュース作で、ジェイ・ベルローズも参加しています。やっぱり独特の雰囲気がありますよね。この辺の作品には一連の繋がりを感じずには居られません。

でも私の個人的趣味ではアルバム最後を締める、マーク・リーボウの参加していないトラディショナル「Your Long Journey」に最も心が和んだり。ノーマン・ブレイクやマイク・シーガーというカントリー/フォーク・シーンの大物が参加しているのも特筆物ですが、何と言ってもこういう曲でのアリソン・クラウスのヴォーカルが堪らなく心に染みるのでした。

ま、何はともあれ、こういったサウンドの中にプラントの声を活かし切ったT・ボーン・バーネットの手腕に拍手です!



矢野顕子 / akiko 
「RAISING SAND」と地続きのアルバム。ここに「Whole Lotta Love」のカヴァーが収められているのも何やら暗号的。それにしても「Whole Lotta Love」は格好良すぎ!



B.B.KING / ONE KIND FAVOR
T・ボーン・バーネットのプロデュースによる最新作。こちらにつきましては後日ゆっくりと…。
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