ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

安倍晋三の態度にいらついている右翼はそれなりにいるようだ

2013-09-19 00:00:00 | 社会時評

過日産経新聞にきわめて興味深い記事が掲載されました。お読みになった方も多いかと思いますが、とりあえず全文を(こちら魚拓)、こちら魚拓)、こちら魚拓)、こちら魚拓)、こちら魚拓))。

>河野洋平氏を提訴へ 「国民運動」談話撤回求める署名も3万超
2013.9.16 12:00

 慰安婦問題とは直接関係ないはずの米国に慰安婦の碑が建てられるなど、韓国・中国による慰安婦問題を題材とした日本バッシングが繰り広げられる中、今年7月に発足した「慰安婦の真実」国民運動(加瀬英明代表)が10日、参議院議員会館で記者会見し、騒動を泥沼化させた根源といえる「河野談話」の撤廃を求める署名3万867人分を同日、国に提出したことを報告。また近く河野洋平氏個人を提訴する考えも明らかにした。(溝上健良)

会見で、加瀬代表は「慰安婦問題をめぐっては、全世界で日本はぬぐいがたい深刻な汚名を着せられている。これはひとえに平成5年、河野官房長官が出した談話に発している」と、河野談話の罪深さに言及。続いて松木国俊幹事長がアピール文を読み上げた。問題の全体像と深刻度を確認するためにも、ここではその全文を紹介しておきたい。

「慰安婦の真実」に関する国民へのアピール

 いわゆる「従軍慰安婦」問題をめぐって、日本バッシングの風潮が世界的に広がっています。日本の慰安婦は代価を払わない「性奴隷」であったとか、「20世紀最大の人身売買事件」だったとか、ナチスのユダヤ人虐殺に匹敵するホロコーストだったとか、事実無根の途方もない言説がばらまかれています。アメリカの公共施設に朝鮮人慰安婦の像や碑が建てられ、地方議会の非難決議も行われています。韓国、中国、アメリカにロシアまで加わって日本批判を展開しています。

アメリカでの慰安婦問題は1990年代初頭から在米中国、韓国人のロビー活動で始まり、2007年にはアメリカ議会下院での日本非難決議がなされ、引き続いてオーストラリア、オランダ、フランス、EU、フィリピン、台湾と続き、今や日本はこの問題で、四面楚歌ともいうべき深刻な状況に置かれています。

 このような事態がもたらされた最大の原因は、日本政府が、何一つ証拠がなかったにもかかわらず、慰安婦の「強制連行」を認めたかのように読める「河野談話」を平成5年(1993年)に発表したことにあります。「河野談話」は、慰安婦の強制連行さえ認めれば事は収まるという韓国側の誘いに乗って、事実を曲げて政治的妥協をはかって作成された文書です。しかし、その結果は全く逆に、「河野談話」こそが強制連行の最大の証拠とされ、各国の日本非難決議の根拠となり、韓国人の妄言に見せかけの信憑性を与えることになったのです。

 あるアメリカの有識者は、「古今東西、軍隊と売春婦はつきものであり、それについて謝罪したのは有史以来日本政府だけである」と指摘しました。そして「そのような当たり前の事に謝罪したのは、本当はもっと悪いことをしていて、それを隠すためではないかとさえ勘ぐられている」と言います。日本を貶めようとする外国の謀略に乗せられ、国益を無視して安易に発した「河野談話」が、慰安婦問題で日本を苦境の縁に立たせた元凶なのです。

 日本国民がこのいわれのない屈辱に対して怒らないとしたら、それは日本国家の精神の死を意味します。私たちはどんなことがあってもこの汚名を私たちの子々孫々に負わせることはできません。

 今年7月、この問題を憂慮する個人・団体が集まり、私たちは〈「慰安婦の真実」国民運動〉を結成しました。今後は日本国内外の多くの同志と広く連携をとり「河野談話」の撤回運動を初めとする、日本の汚名をそそぐための様々な運動を展開していきます。

 国民の皆様には、我々の救国運動に深いご理解をいただき、深甚なるご支援を賜りますよう、心よりお願いいたします。

 平成25年9月10日 「慰安婦の真実」国民運動 代表 加瀬英明


国家への裏切り行為


 慰安婦問題がここまで反日勢力に利用されることになった元凶は、「韓国側の誘いに乗って、事実を曲げて政治的妥協をはかって作成された文書」である河野談話にある、というわけで、当然ながら出席者からは河野洋平氏に対する厳しい声が相次いだ。藤岡信勝幹事は「政治家としての国家に対する裏切り行為を、司法の場で問う意義はあるのではないか」として、河野洋平氏に対する民事訴訟を起こす考えを示した。

 河野談話氏をめぐっては、石川県在住の諸橋茂一氏がかつて、東京地検に河野氏を刑事告発したものの「時効」を理由に却下された経緯がある。今回は民事で責任を問う方針で準備が進められており、年内にも提訴できる見通しという。

 さらに国民運動としては慰安婦問題をあおってきた研究者との公開討論呼びかけも含め、講演会の開催や意見広告の掲載、全国に40以上ある「慰安婦決議」をした自治体への抗議といった活動を進めていく方針が示された。「なでしこアクション」の山本優美子代表は、慰安婦像が設置された米カリフォルニア州グレンデール市に住む日本人女性が肩身の狭い思いをしている現状を報告し、外務省の無策ぶりを告発した。

 それにしても、米ニューヨークの街路を「慰安婦通り」と命名しようとするなど、反日勢力の活動は尋常ではない。もしかして、日本のみならず米国に対しても「軍隊と性」の問題に向き合うよう促しているのかもしれない。それを止めるつもりはないが、その前に韓国は自らを省みる必要があるはずだ。その内容については『悪韓論』(室谷克実著、新潮新書)に詳しいのでここでは繰り返さない。あわせて『面白いけど笑えない中国の話』(竹田恒泰著、ビジネス社)、『日本人が知っておくべき「慰安婦」の真実』(SAPIO編集部編、小学館)もお勧めだ。

ジャーナリストの大高未貴氏は、慰安婦問題をあおっている“司令塔”は在米の中国勢力であることを指摘し、「おかげさまで中国・韓国の常軌を逸した嫌がらせによって、普通の日本人も『これはおかしい』と気づきはじめました。今こそ自虐史観から脱却するチャンスを中国・韓国から与えていただいたと感謝して、日本再生のために頑張っていきましょう」と訴えた。中国・韓国は図らずも、日本人の目を覚まさせようとしているのかもしれない。

 実は第1次安倍政権の平成19年3月、当時は社民党に所属していた辻元清美衆院議員の質問主意書に答えて、政府は「河野談話」に関連し「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定している。閣議決定は官房長官談話よりも重いものであり、この時点で根拠が崩れた河野談話は空文化しているはずなのだが、いまだにその亡霊が猛威をふるっている。

国民運動では、この閣議決定の再確認や、河野談話の撤廃ないし新談話の発表などを、国や政治家に働きかけていくことにしている。反日勢力の悪質なデマを許さないためにも、その根拠となっている河野談話の「最終処分」が急務だろう。


読んでいて、加瀬らの、そしてこんなことを肯定的に報道する産経新聞のあまりのめちゃくちゃぶりにあきれかえりますが、しかしそもそも河野氏を提訴して何をどうしようって言うんですかね?

河野氏は個人の立場で談話を出したわけでなく、官房長官という政府高官の立場で談話を発表したわけで、河野氏個人をたとえば名誉毀損で訴えるなんてできるわけがないでしょう。日本政府を訴えるのならともかく(しかし、名誉を毀損されたのは誰なんでしょうか? 裁判を提訴する原告だとしたら、訴訟の要件にそぐわないんじゃない? 日本政府に行政訴訟を起こすというのも無理筋で難しそうですが)、裁判所だって訴訟の入口から相手にしないんじゃないの。あるいは名誉毀損でなくちがうことで裁判にするのかもしれませんが(たとえば公金の不法支出とか)、どっちみち勝ち目はありません。

ていうか、そんなことは万が一にも億が一にもありえませんが、かりに河野氏敗訴になったところで、それは日本政府とは直接関係ない話だから、河野談話破棄という目的には、なんの役にもたたないんですけど。河野氏へのいやがらせとしてならともかく、っていうより、たぶんそれが目的の一つですね。inti-solさんもご指摘のように、政治ショーにするんでしょう。

だいたいこんな裁判、誰が原告側の代理人になるんだよ(笑)。さすがに本人訴訟ではないでしょうから、誰かが代理人になるんでしょうが、まともな弁護士なら恥だから引き受けないでしょう。やっぱり極右の弁護士ですかね? 極右であっても、よほど非常識でなければ引き受けるのを躊躇するような案件でしょう。

しかし河野氏もお気の毒ですね、こんなクズな訴訟を起こされたら。新聞でここまでぶちあげたんですから、やっぱり裁判にするんでしょうねえ、きっと。最高裁まで(先方が)争うかどうか不明ですが、河野氏からすれば迷惑にもほどがあるというものです。あきれた連中です。

でですよ、この裁判は、けっきょくのところ「河野氏への提訴」という形を借りた、安倍晋三と現日本政府への異議申し立てだと私は思います。こんな裁判、勝ち目があると考える馬鹿はいない(いたらいたで、そんなやつは相手にする価値もない)。けっきょく一部極右が、安倍に対して「河野談話を破棄しろ」と求めているということでしょう。つまりは、一部右翼が、安倍はあてにならん、こちらでも積極的に動いて、安倍内閣でなにがなんでも河野談話破棄を実現させると考えての行動です。あれだけ安倍に甘い右翼がです。

しかし安倍にとっても迷惑な話だよね(苦笑)。安倍だって心情的にはともかく、この件で現状できることは少ないでしょう。いまさら「やはり河野談話は破棄する」というのは無理でしょう。もちろんこの男が迷惑するとか不快な思いをするとか挫折するとかは私にとって最高の喜びですから、右翼のおかげでこいつが迷惑するということは、私としては腹をかかえて笑っているというものですが、そういった私の個人的な見解はともかくとして、安倍にとっては最高レベルの迷惑、顔をつぶされる、っていうものでしょう。たとえばぶら下がり取材とかで記者からこの裁判について談話を求められたところで、適当に言葉を濁して逃げるしかないでしょう。そもそも安倍が河野談話を破棄していればこんな裁判は提訴されないんだから。つまりは右翼の側が、安倍のあいまいな態度にしびれを切らしたというか、もう我慢できないっていうことを表明したというところじゃないんですか。

たとえば、最近何かと話題の内閣法制局長官交代による(外交官を法制局長官に任命するというのもかなりむちゃくちゃですが)9条の集団的自衛権解釈変更だって、これってつまりは近々の改憲は困難であると安倍が認識しているっていうことですからね。9条改憲を熱望している人たちからすれば、それはきわめて生ぬるい手法ということになるでしょう。また靖国神社参拝も(予想通り)見送ったし。完全に自民党が勝った参議院選挙の直後に見送ったのだから、たぶん支持者からすれば相当な裏切りってことじゃないですか。あからさまな批判はしないまでも。

で、私が興味深いのは、これを加瀬英明みたいないかにも安倍を絶対支持していそうな男がこのような安倍の顔をつぶす行動をでて、そしてこれまた安倍絶対支持の立場の産経新聞がこれを大々的に報じたということです。なにしろ加瀬といえばwikipediaの記述を借りれば

>日本会議代表委員・東京都本部会長、「史実を世界に発信する会」の代表委員を務める。新しい歴史教科書をつくる会の賛同者でもあり、歴史論争、歴史教科書問題にも積極的にコミットしている。同会の分裂で、八木秀次らが設立した日本教育再生機構の代表委員となったが、一方で、つくる会の新たな教科書発行元として自らが役員を務める自由社をつくる会に紹介。2008年9月、同名の別会社・自由社の社長に就任し、つくる会支持を鮮明にした。

 とあるくらいで、本来なら安倍絶対支持のはずの男です。しかしそのような安倍に異常に甘い右翼ですら、安倍にいつまでも甘い顔はし続けられないくらいの認識でいるんじゃないんですか。おそらく現安倍政権下でないと(そしてたぶん今のタイミングでないと)日本政府が河野談話を破棄するのは不可能だというくらいの認識でいるんじゃないんですかね。私は、現段階では、どっちみちそれは不可能なところに来ていると思いますが、彼らも「不可能」とは言わずとも、現段階で何とかしないと非常に厳しいという認識でいるんでしょう。

それでですよ、やはり安倍に甘い右翼の典型である島田洋一の発言を見てみましょう。これもなかなか興味深いですよ。9月5日の彼のツイッターより。

>早く民主党を分裂させ、公明党に代わる保守的理念の補完集団を得るためにも、安倍首相には、憲法改正運動に乗り出してもらいたい。

 ツイッターですからもちろん短い記述ですが、島田の考えがいろいろ伺えますね。

>安倍首相には、憲法改正運動に乗り出してもらいたい。

つまり島田の認識としては、安倍は改憲にまともに動いていないということですね。私もそう考えます。

>早く民主党を分裂させ、公明党に代わる保守的理念の補完集団を得るためにも

現在自民党と公明党の連立与党は衆参両院ともに過半数を得ているわけだから、安倍を支持している島田がこんなことを主張するのも変な話です。つまりは、島田は自民党と公明党の現状は甘すぎる、他野党の極右議員をひっくるめて、「補完集団」を形成したいと考えているのでしょう。つまりbogus-simotukareさんの表現を借りれば

>島田が安倍や自民党を評価してれば「極右新党が出来れば」なんて夢みたいなことは言わないだろう。出来る保障はどこにもないし、仮に出来なくても「衆参両院で自民が過半数を抑えてる」以上、島田に今の自民や安倍に不満がなければ何の問題もないからだ。またそんな事はないだろうが「極右新党が安倍寄りも高い支持を得てしまったら」、安倍信者・島田の立場上困ったことにもなる。

 「今の安倍や自民」に不満を感じるからこそ「極右新党の夢」を語るわけだ。であるにもかかわらず島田が正面切って安倍批判しないのも実に面白いところだ。「安倍が好き」というより右翼の世界に「安倍批判できない同調圧力」でもあるのではなかろうか?

ということです。

おそらくこれからも右翼の主流は安倍をかばい続けるでしょうが、安倍の弱腰に我慢できなくなる右翼も確実に増え続けると私は思います。阿比留瑠比氏のような狂信者はともかく、その他の人たちの中には安倍に完全に失望する人も増え続けるだろうと思います。それに安倍はどう対応するんですかね。極右支持層を取るか自分の政権延命を取るかという選択になれば、安倍は絶対(笑)政権延命をねらうでしょうから、実質的には極右支持層を切り捨てる方向になるんですかね。いろいろポーズをとって支持をつなぎとめるという方針になるのでしょうか。けっきょくのところ、安倍というのは、右翼にとっても当てにならん男だということです。もちろん当てにならん方が、私みたいな人間にはずっといいんだけどね。

inti-solさんの記事とbogus-simotukareさんの記事の、上にリンクした島田の記事とこちらの記事を参考にしました。いつもながら感謝を申し上げます。

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