廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

変なサウンドの意味

2018年02月24日 | jazz LP (Atlantic)

John Coltrane / My Favorite Things  ( 米 Atlantic 1361 )


とにかく変なサウンドである。 私が初めてこれを買って聴いた18歳の時もそう思ったし、今聴いてもそう思う。 名盤100選に当然のように載っていたから
買ったわけだけど、本当にこれが名盤なのかどうか未だに私にはよくわからない。 

でも、このアルバムはたまに無性に聴きたくなる。 この変なサウンドがどうしても聴きたくなる。 どうやら自分の中でクセになっているらしい。
つまり、この「変であること」に重要な意味があるようだ。 そこには何かのコードが隠れているのをはっきりと感じる。 だから聴きたくなるらしい。

これはコルトレーンがスタンダードを美しく演奏することを完全に放棄した最初の作品と言っていいかもしれない。 プレスティッジ時代は一人前になるために
ひたすらスタンダードを上手く演奏しようとした。 プレスティジ最終期に残したスタンダードの演奏は無骨ながらも独特の美しさに貫かれた世界を創り上げる
までに至っている。 ところが、アトランティックに移籍して、彼は変わる。 ようやく楽器を思うように吹けるようになったこともあり、再現ではなく
創造に踏み出すようになる。 このアルバムに何か意味があるのだとすれば、それは「美しさを放棄する」と宣言したことかもしれない。

コルトレーンのロリンズ・コンプレックスは相当なもので、"Giant Steps" なんていうロリンズ・コピーの極北のような作品を作るほどそれは凄まじかった。
晩年になっても、欧州へ演奏旅行に出かけている間は妻にロリンズの動向を調べさせてはその内容を欧州にいる彼に逐一報告させたりしていて、
ちょっと病的な感じだった。

ただ、ソプラノを吹くようになってからは、落ち着いて自分の音楽をやることができるようになったように見える。 このアルバムも出来上がったサウンドは
異化されて聴き手を緊張させるような雰囲気になっているけれど、コルトレーン自身はリラックスして演奏している。 それまでのテナーのフレーズは
ワンパターン(ロングトーンの後にクシュクシュっと駆け上がる)で、聴いていてうんざりするところがあったけれど、ソプラノを吹き出した頃から
その悪しきワンパターンは影を潜めるようになった。 そういういろんな変化が顕著に始まったのもこの辺りかもしれない。

そうやってつらつらと変なサウンドの意味を考えていくと、それなりにいろんなことに気が付くけれど、やっぱり変であることには変わりはない。
そして、その変なサウンドは私の無意識下で長年に渡って私を虜にしているのもこれまた変わりはないのだ。


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2 コメント

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Unknown (cotton club)
2018-02-26 06:33:30
私もATLANTICのコルトレーンについては良さがわからない一人です。音も演奏も。
ところがUSENのジャズをバックグラウンドミュージックとしている民宿で寛いでいるとき、ATLANTICのコルトレーンが小さい音量で流れていると、これ以上相応しい音楽はないと思えるほどすごくいい。そういう聴き方を想定したレコードなのでは?と思っています。
Unknown (ルネ)
2018-02-26 09:10:41
Atlanticのコルトレーンを聴くために、いちいちひなびた民宿に通うわけにもいきませんよね。 (笑) ステレオ盤だともうちょっとマシな音なのかなあと思ったりしますが、未確認です。

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