世界変動展望

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東邦大を諭旨退職となった藤井善隆(Yoshitaka Fujii)、論文193編で捏造疑惑、史上最高の撤回論文数達成か?

2012-05-28 00:07:00 | 社会

『日本麻酔科学会員の麻酔科医が国内外の専門誌に発表した論文に捏造(ねつぞう)の疑いがあるとして、学会が調査していることが23日、わかった。対象は共著のものを含め23の学術誌に掲載された193の論文。この医師が准教授として在籍していた東邦大学は2月、8本の論文に関する研究について倫理規範違反があったとして、諭旨退職処分にした。

 学会が調査しているのは、元東邦大学准教授の藤井善隆医師の論文。海外の複数の専門誌が「データに捏造の疑いがある」との論説を掲載したことを受け、学会が3月に調査特別委員会を設置。藤井医師が1991年以降に在籍した医療機関に聞き、論文の根拠となった症例が実在したか調べている。藤井医師は不正を 否定しているという。[1]』

藤井善隆が倫理規範違反で諭旨退職処分になった件は大学が公表したし、Retraction Watchなど海外のサイトで藤井の193編の論文に捏造疑惑があり撤回の必要があると報じられたことがあるので、この事件については知っている人も珍しくないと思う[2][4]。なぜなら、撤回論文数が193編にのぼるというのは達成すれば世界最高記録になるからだ。これまでの最高記録はドイツ人麻酔専門医であるJoachim Boldtの89編。藤井はこれを100編以上も大幅に更新する見込みで、日本人がこれを達成するのはとても恥ずかしい。

藤井は別件ですでに諭旨退職処分になっているが、全容が解明されれば空前の不正事件となるだろう。諭旨退職処分は甘すぎるので懲戒解雇相当になるだろう。それにしても193編の論文で捏造等の不正とは、倫理意識の欠如が甚だしい。これまでも東北大学・上原亜希子、琉球大学・森直樹、独協医科大学・服部良之、名古屋市立大学・岡嶋研二・原田直明、滋賀大学・宮田仁など数十件に及ぶ捏造や改ざん事件は発生したが、ここまで酷いのは極めて珍しい。不正をするものは自分の利益のためには周りにどれだけ迷惑をかけても構わないという人格破綻した者が多く、長期間反復して不正を行うので事件が発覚すると大規模だと判明するという構図がわかるだろう。藤井の場合はそれが最も顕著に表れた。

研究不正の根本原因として研究者の著しい倫理意識の欠如があると繰り返し述べてきたが、この事件ほどその原因が顕著に出た例は過去にないだろう[6][7]。それだけでなく、なぜこれほど極めて大規模な不正事件をこれまで発見できず発生を防止できなかったのか。組織的な問題もきっとあるだろう[5]。例えばなぜこれほど大規模に不正論文を発表したのに、大学は藤井を雇ったのだろうか。研究者の能力をきちんと調べるには論文の質を審査するのは必要不可欠だろう。不正論文を193編も発表したら論文の質をきちんと審査すれば藤井が極悪人であることはわかっただろうし、不採用にできただろう。雇用期間中の不正もなかったに違いない。東邦大学は明らかに論文の質を審査せず藤井を雇ったに違いない。こういう採用・昇進人事は珍しくなく、東邦大だけでなく他の研究機関でもよく行われている。無論、藤井が著しく倫理意識が欠如した人格破綻者だったことを採用選考で見抜けなかったことも問題で、人物面の評価を全くしていなかったことも原因だろう。藤井を採用した人事担当者の責任はかなり重い。

私は藤井のような人物は医師免許や博士号を剥奪してもいいと思う。こんな人物には医師や博士の資格はない。あなたが患者だったとして藤井のように自分の利益のためには他人にどれだけ迷惑をかけても構わないという人格破綻した医師に診察や治療をしてもらいたいですか?私は絶対に嫌だ。獨協医大の服部のように大規模な不正をやっても退職金を与え民間病院で部長待遇で悠々と過ごさせているようでは制裁が軽すぎる。史上空前の捏造をしたというベル研のシェーンは捏造事件で博士号を剥奪された。日本もそれくらいの罰則があってよい。もっと致命的な罰則が必要だ。

研究機関だけでなく文部科学省や経済産業省など大学や国立研究所を所管する機関は事態を重く見なければならない。犯人の処分やお決まりの不正防止策の発表など研究機関の決まりきった対策だけでは不正を防ぐことはできない。東北大学の井上明久事件のように、「研究機関に任せる」という無責任な対応では済まされない[5]。

懲戒解雇の当然化、刑事罰、研究費の全額返還、博士号や医師免許の剥奪などの不正行為者への罰則強化や研究機関の競争激化への対策、人事などで論文の質をチェックしたり、人格破綻者を採用しないような対策が絶対に必要だ。

参考
[1]asahi.com 2012.5.23
[2]"193 papers could be retracted: Journal consortium issues ultimatum in Fujii case" Retraction Watch 2012.4.10
[3]"Joachim Boldt retraction tally drops by one, editors say (but record’s still safe)" Retraction Watch 2011.3.4
[4]東邦大学の懲戒処分公表写し) 2012.3.12
[5]世界変動展望 著者:"研究不正が起きる根本原因について" 世界変動展望 2012.4.16
[6]世界変動展望 著者:"研究不正を防ぐための罰則強化策について" 世界変動展望 2012.5.15
[7]世界変動展望 著者:"研究不正の動機について" 世界変動展望 2012.4.28



2 コメント

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Unknown (siodaihu9)
2012-05-25 16:25:29
訪問ありがとうございました、お返事させていただきました。



>日本人がこれを達成するのはとても恥ずかしい。

激しく共感します!


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アドレス変更について (世界変動展望 著者)
2012-05-25 23:03:58
そちらのブログでもコメントしましたが、そちらのブログで私のブログへは

http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism?fm=rss

というアドレスでリンクされています。これを

http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism

に変更していただけないでしょうか。どちらでも同じページにアクセスされますが、下の方が正式なアドレスなので。

よろしくお願いします。
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