駒子の備忘録

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澄輝日記7~宙『王フェス』毎度の初日雑感

2017年02月07日 | 澄輝日記
 2月3日15時の初日と、翌4日11時会総見、6日13時を観て帰京しました。ハンパなのは形としては一応大阪出張で行ったからで、間にみっちり仕事をしてきたからです。
 『王妃の館』原作小説の感想はこちら、映画は見ていません。
 正直、そんなにおもしろい小説だとも思いませんでしたし、たとえば『銀河英雄伝説』『ルパン三世』『るろうに剣心』みたいなネームバリューがあるとも思えず、舞台化したからと言って話題になるとも思えなかったのですが、逆に言うと舞台の内容としてはなんとでもなるのではないかな、と実は最初は楽観していました。配役もなかなか興味深かったし、宝塚歌劇でやる以上、小説では単なる劇中劇パートみたいなルイ14世部分を現実の北白川先生たちともっと絡ませることにするのだろう、とかツアー客たちのエピソードの枝葉末節を整理して人情群像劇に仕立て上げることは簡単だろう、とかとか、なんとなく変更プランが見えている気になっていたくらいだったのです。
 なのに脚本の改訂が多くてお稽古が進まず、休みが多い…みたいな話が聞こえてきて、こんな企画ありきのものなんだから舞台化プランが完璧にできあがっていてそれがおもしろかったから通ったものなんじゃないの?と不思議でなりませんでした。というか仕事として集合日までに脚本の完成稿ができていて当然だし演出プランも頭の中にはすっかりできあがっているのが当然だろうよ、実際にお稽古してみて改訂したくなったってだけならいい方に考えるにしても、単にできてなくて生徒に負担と心労かけさせるとかホントやめて劇団ちゃんと考えてホントがんばれタブチくん!と古いネタをぶっこんで心配しまくることになりました。
 あたりまえですが、さすがに通すころには「通りましたよ、時間も収まりましたよ、ちゃんとできていますよ」という言葉が出たそうなので一安心、とは思っていましたが、やはりこの目で見るまでは信じられないし暴れる準備はできている、校舎裏に呼び出される覚悟しておいてよねタブチくん!くらいな気持ちで初日に出かけてきました。
 …ら。ほめたいときにはどこに呼べばいいのかわかりません。朝礼で表彰すればいいのかな?(笑)
 ともあれ、もんのすごく上質とかってことはないし、見たことないけど吉本新喜劇みを私は感じないこともないんだけれど(見たことないのにイメージで語るなと言われそうですが)、とにかくまあまあちゃんとした人情どたばたコメディに仕上がっていて、悪くなかった!と素直に思えたのですよ。ちゃんと笑わせて最後にちょっとホロリとさせて、本物の悪人は出てこないような群像劇。でも主人公の変化や成長もきちんと描かれている。
 みりおんのサヨナラ色はほとんどなく、まぁみりも大ロマンスを展開させたりとかはまったくしていないんだけれど、こういう関係性も楽しいんじゃない?と素直に思いました。最後にタルハーミネみたいに大きな役を書いてもらえたかのちゃんとは確かにちょっと差が付いちゃったかもしれないけれど、もうみりおんはすでに大きな役をけっこうやってきたしね、とこれまた素直に納得できたのです。
 これまた『金色の砂漠』みたいに高度な当て書きではまったくないんだけれど、適材適所というか生徒のニンをうまく生かした配役で組ファンは十分楽しいだろうし、作品としてよくまとまっていてバランスがいいので他組ファンが観てもヘンなストレスをあまり感じないのではないか、とも思いました。なんか評価のハードルが低いようですみませんが…まあ、それくらい私がわりと暴れる気満々で不安だったってことです。
 なのでちょっと肩すかしのような「意外といいんじゃない…?」に自分でもけっこう動揺していますし、自分の判断が今のところあんまり信用できていません。まあ私はそういうところがわりとあるのですが…
 なので整理するためにも語ってみましょう語らせてください。
 それもこれも要するに「こんクレが可愛かったからいいか!」ってことになっていないか自分!?って疑惑と動揺が大きいからなので、今回は特にそのあたりを主に語りたいと思います。もちろんネタバレ全開です、未見の方はご留意ください。あとホント毎度すみませんが、現時点でのごくごく個人的な所感です。
 あ、今さらですがこんクレってのはあきまこちゃんとりクレヨンのことです。つまり澄輝さやとさん演じる近藤誠と蒼羽りくさん演じる黒岩源太郎ことクレヨン、のことです。みんな大好きあきりくのことです。そら私が熱くならないわけがないわな!(開き直り)

 イヤでも先に言っておきますと、まぁ様のコメディのうまさとか超絶スタイルだからこその変人のおかしみとかそれでもなおチャーミングさとカッコ良さが出せる素晴らしさとかホント感動しますし、シャカリキガイドってのもみりおんのニンだと思うし、素が意外とほわわんとしているゆりかにはニンに合わせてというよりむしろこういうむやみとエラそうな役がハマるんだよねとか、いろいろ他も評価してるんです。
 まぁみりのラストにやっと訪れるような淡い恋の予感みたいなものもいいし、まぁまかのバディ感もみんな大好きですよね。
 ヒロさんの特出は私はやや贅沢に感じたけれど、奥さん役のきゃのんのおばあちゃんっぷりが衝撃的にうまいし、組長副組長夫妻も手堅い。
 愛ちゃんにお笑いばかりさせるのはやめてやってくれと以前の私はちょっと考えていたけれど、なんかもう本人が楽しそうだしこんなのこんな番手のころ限定のことかもしれないからいいのかなと思えてきたし、金沢さんって最終的にはけっこういい男だとも思うので、これもよかったかな(しかし男性は何故こうも頭髪ネタを愛するのだろうか…それだけこだわりがあるんだろうなあ、実はそこまで気にしない女性は意外と多いと思うんだけどなあ…)。愛人ではなく恋人…というか婚約者のミチルのまどかは、何故「パパ」呼びなのかとか特に説明がない分、もう少し芝居で埋められるといいかなとも思うけれど、現時点ではこれくらいはっちゃけてる役の方が本人もやりやすそう(と書いていて気づいたのですが、つまり私は彼女にはまだまだ娘役スキルが足りないのでこういう役の方がボロが出ないと考えているってことで、それってかのちゃんがたどった道と同じなんじゃないの?と思うと、ちゃんと育ててよ宙Pと劇団!と叫ばずにはいられません)にも見えたので、これもまあよかったのかな。
 玲子の元ダン設定がなくなったずんちゃんはリトル・チェリーってこんなだったなあって感じでちょうどいいと思いましたし、りんきらしーちゃん夫妻には実力があるのを知っているだけにホントはもう一活躍させたいのでちょっと歯がゆかったけれど尺としては仕方なかったかなと思いました。
 北白川先生の担当編集者でキャリアウーマンの早見くんせーこは、オールドミス呼ばわりされても「私はまだあきらめたわけではありませんよ」とか豪快に笑える人なのでこのNGワードがさほど引っかからなかったし、酔っぱらい姿とかが超キュート。で、クレヨンの元カレ設定をなくしたピエールのそらがまたいい感じにフランス野郎で胡散臭くて、彼と早見くんにロマンスを生まれさせるという改変もうまいと思いました。
 ルイ14世をオペラ座の怪人ならぬ館の怪人みたいにしたのもうまいと思いましたし、侍従ムノンの設定はだいぶ変わってしまったけれどまっぷーがまたいい味を出していて好感。アコーディオン弾きのモンチやホテル支配人のさお以下はアンサンブルなので気の毒とは言えるかもしれませんが、これから小芝居が深くなっていくだろうしファンは必ず観ているものなので、大丈夫と思えました。
 本舞台でのコミカルさから一転、シリアスな歌で銀橋を渡る、のが繰り返される場面転換の芸のなさとか、せっかくのディアナゆうりとプティ・ルイららがルイの回想の中のイメージ映像みたいな存在になってしまっていてほとんど芝居らしい芝居ができていないのが残念だったとか、傷はいろいろあるとは思っています。ラストに急にいい話にまとめようとするときの台詞の芸のなさとかはかなり許しがたいし、作家が自分の物語を書く云々みたいな展開も手垢が付きすぎてて、よく恥ずかしくないね?とつっこみたい。このあたりはもう少し練っていただきたかったです。それともまさか根本的にセンスがないのかしら…
 でも、トータルで見るなら、ハードル低いかもしれないけれど、平均点をきちんと超えている、手直ししようもない箸にも棒にもかからない作品とかではない、まあまあウェルメイドな人情喜劇ができている…と、私は思ったのでした。まあでも『Shakespeare』の方がもちろんもっとずっとちゃんとしていたとは思いましたけれどね。
 長々すみません。全部単なる言い訳ですすみません。全部このあとこんクレを語りたいだけ語るための前振りです。毎度ここが長くてホントすみません。テレてるんです、ハイ。


 …では。
 まずは毎度の懺悔から。
 どうして私はいつもいつも贔屓を見誤るのでしょう…
 でも今度こそわかりました、あの人は役を自分に引き寄せるタイプの芝居をしないのですね、ちゃんと自分が役になるんですよね。
 原作のまこちゃんはマッチョで古い昭和の中年男45歳警察官とかだったので、さすがにそれをまんまやるとは思えず、あの人がやるなら神経質で生真面目な堅物のエリート刑事とかにしてくるのかもしれない、とか勝手に想像しちゃってたんですよ、私が。お稽古場映像なんかでは黒のスーツか何か着てすごくシャープでしたし、クレヨンのりくを嫌そうに振り払ってはいたけれど、いかにも線が細かったし。
 だけど、幕が開いたら、ちゃんと原作のイメージを踏襲したまこちゃんがいました。つまりいつもの、あるいは簡単に想像できるようなあっきーはいなかった。ちゃんと新しい役になっていた。あたりまえのことなのかもしれないのですが私はそこに毎回感動するのでした…このバカさ加減をホント今度こそ改めたい…
 紺のダサいスーツに赤いシャツと黒いネクタイ、何故かサスペンター、オレンジと黒のボーダー柄の鬼太郎みたいなパーカーをインして白のスニーカー、学生が合宿に持っていくような紺のボストンバッグ。ちゃんと一見角刈りに見える髪型して、ちゃんと重心低くしてガニ股でドタドタ歩いてて、男子校出身で柔道やってて交番に勤めてて、モテなくて日々くさくさしてそうな冴えない警官にちゃんと見えました。すごい!
 で、りくがまた絶妙にいい感じにオカマなんですよ。とにかくデカくてデーハー。そもそも背が高いのにものすごいピンヒールを履いてるし、ピンクのメッシュを入れたロングヘアを盛ってるし、襟元と袖が黒レースでフューシャピンクのベロアのツーピースで胸元開いてて胸の谷間は描いててピンマイクがそこについてて、網タイツに銀のショルダーバッグ。綺麗だけど押しが強すぎて、ゴージャスな美女の枠には全然収まっていなくて、ちゃんとオカマ。黒岩源太郎、「お店」での源氏名はクレヨン。いかにもです。
 私は原作を読んだときに、ちょっと古い作品でもあるしそもそも男性読者向けのエンタメ中間小説なんだろうし、LGBTへの理解とか正確さとか繊細さかとを求めても仕方ないなとは思いました。クレヨンは女装癖がある男性で男性を好きな同性愛者、なのではなく、男性の体に生まれついたけれど性自認が女性の、男性が好きな異性愛者であり、いわゆるゲイではありません。体の一部を手術しているような描写もあるので(全部はすんではいないようでもありましたが)、なおさらきちんと女性として描いてあげてくださいよ…とは思っていたけれど、舞台ではそんな細かいことまでやってはいられないワケで、まあ私が甘いと言われればそれまでなんですけど、初日を観てみて、あきまこちゃんがりクレヨンを「寄るなオカマ!」みたく言ってもそれは差別語ではないというか、単にクレヨンのあまりの圧力とか厚かましさ馴れ馴れしさをまこちゃんがうっとうしがっただけで、罪のない罵倒語にすぎない、という気がしたんですね。だからここにフェミニズム・センサーみたいなものを発動させて怒らずにすみました。これが大きい。
 ちゃんと考えるなら、北白川先生とルイ14世が「秘密の恋人って、もしや男か?」「そんな趣味はない!」みたいな会話をする方がむしろ問題だと感じました。『太陽王』でベニーが演じていましたがルイ14世の王弟プチ・ムッシューは同性愛者だったはずですし、この時代にこの指向はそこまで嫌悪されていたわけではないのではなかったかしらん。それに同じ話の中で男(一応)が男を好きで云々って筋を展開中なんだから、それを悪しざまに否定するような台詞を入れてどーする、って感じがしました。もっとセンシティブに作っていただきたい。
 ただ、私は女に生まれた異性愛者なので本当のところはよくわかっていないのかもしれませんが、我々が女性だってだけで社会からいろいろ言われて負わされるものがあるように、クレヨンにも男に生まれたくせに女のつもりでいるなんて、オカマだ変態だみたいな外圧はいろいろかけられたはずで、そういう中で本人はあくまで自分を女だと思ってはいても、オカマという言葉で自分のアイデンティティが規定されてしまう部分はあったと思うんですよね。男であった自分、男として生きざるをえなかったころの自分を忘れられるものではないしなかったことにもできないし、そのあたりから自分をどうしてもオカマという言葉で規定せざるをえない、…とでも言いましょうか。
 だから、本人が自嘲として、あるいは卑下として、あるいは単なる自称として、自分をオカマ呼ばわりすることはある種自然なことなんだろうし、残念ながら言われ慣れてもいて、いちいち本気で怒っていたりはしないのでしょう。本当に悪意がある場合は、ちゃんとわかるものですしね。そういうとき以外は傷つかない準備がある程度はできているのではないでしょうか(だからそこに甘えてもいい、ということではもちろんないのですが)。
 りクレヨンは、そういう複雑な理屈が本当に根底にあるのかどうかは別にして、きわめて自然な存在というか、楽しそうに生き生きと、そしてきちんと現実を生きている、明朗快活でチャーミングなキャラクターに見えました。失恋旅行でパリ格安ツアーに参加して、ちゃっかりいい男を見つけてまとわりついて、でもちゃんと周りの空気も読めて齟齬を取りなしたり場を保たせたりできている、賢くて素敵な女性でした。そんな女性だからこそ、おどけて自分を悪く言うこともある。女だっておばさんと簡単に罵倒されたりするように、それがそこまで罪でない場合もあるように、クレヨンが言われるオカマという言葉に罪はほとんどなかった、それがよかったです。

 物語のクライマックスは、下田夫妻の心中を思いとどまらせようとみんなが不幸自慢(?)をするくだりでしょう。
 金沢さんはお金持ちだけれど人に言えない(頭髪の)悩みがあると打ち明け、まこちゃんは彼女いない歴30年だと打ち明け、早見くんは私なんて42年ですと乗っかり、そしてオチがクレヨンの「私なんてオカマよ!」でした。
 でも初日、ここが本当にテンポが良くて、ガンガン盛り上がってオチに本当にドッカン!でした。本当にウケたし、本当に全然嫌な気がしませんでした。
 クレヨンが優しいから、いい子だから言っている台詞だって伝わりましたし、単純に単なる事実だとも思えたからです。男役が演じるオカマ役って意外と難しいのではないか、と案じていたが…みたいなツイートを見かけましたが、今回はむしろそれが功を奏していたのかもしれません。
 というか本当に本当に、りくが温かい芝居をする、いい演技者だっていうのもあったんだと思います。主筋と関係ないっちゃ関係ないキャラクターなんだけれど、今回のMVPと言っていいのではないでしょうか。
 てかホントいい子だよねりく、じゃないやクレヨン。なんでまこちゃんに惚れちゃったんだろうね、やっぱり顔?(笑)クレヨンから比べたらまこちゃんはもっとずっと単純な役だと思うし、あっきーも相手役に助けられている部分が多分にあると私は思いました。ららといい、相手役に恵まれているな…!
 でもそうよそうなのよ、いい娘役は組む相手の男ぶりを上げてみせるものなのです。だから今回のりくは立派な娘役だってことですよね! てかタイトルの「王妃」ってクレヨンのことでもういいんじゃない!? タイトルロールですよ!!!(笑)

 でもね、やっぱりそれだけではなかったんですね。つまり、あきまこちゃんは基本的にりクレヨンが懐いて引っついて絡んでくるのをウザそうに振り払っているだけなんだけど、きちんと無骨で頭の固い古い男というキャラを演じてもいるのです。だからまこちゃんが理解がなくてハートがなくてひどい男だ、嫌なキャラクターだ、みたいにはならない。不慣れなだけなんだろうな、しょうがないよな、と思えるし、迷惑そうな様子がおもろくて、だんだんただいちゃついているようにしか見えなくなるふたりがとにかく可愛らしいのです。
 そんなまこちゃんは、でも、非常事態だ下田夫妻を捜索しなくちゃ!ってときには頓着せずぱっとクレヨンの手を取って走り出せちゃうのです。その単純さがすがすがしく、気持ちいいのです。そういう点でいい男なのです。
 そりゃみんな見守りますよ、こんなカップル。原作ではちゃんと(?)行くところまで行っているんですが、今回の舞台ではまさかそこまではという気もするし、でもじゃあどう決着つけるんだ、とみんな注目しちゃうに決まってるじゃないですか。
 で、どのカップルもみんな全部きれいに回収していくんだ、この芝居。そのベタで親切で真面目な様子がまたおもしろかったのです。順番にすべてオチをつけていくんだもん。馬鹿丁寧だし笑っちゃうんだけど、でもやっぱり嬉しいものですよね。

 下田夫妻が心中を思いとどまって、その支え合いを見て、とか夫婦の長い歴史を思って…なのかな? ふと失恋したことを思い出して悲しくなっちゃったクレヨンが、いつもひっついてたまこちゃんの背中から離れて、ふらっと歩き出してしまう。もう肩の重さに慣れちゃってたまこちゃんが「どうしたんだよ」って感じで追っかけて。
 ここで肩に腕を回すとかじゃなくて腰に手を当てちゃうのが、まこちゃんとしてはスマートすぎるのかもしれないので、演技としては減点なのかもしれません。でもここで俄然我々のときめきの導火線に火がついちゃいましたよね。で、うつむくクレヨンをまこちゃんが抱きかかえるようにしてふたりは一度ハケるワケですが、その後、って感じで、泣いているクレヨンをまこちゃんが追いかけてくるところからの一場面が始まります。
 なんかこの空気、シチュエーションがもうベタでたまらなくて、嘘でしょこのままやるのなんかいかにもラブシーンが展開されそうなベタな空気ベタな場所なんですけど?って奥歯噛み締めましたよね私。星空、欄干、泣く女と追う男のふたりきり。そんなの絶対ヤバいって!!!(笑)
 クレヨンは泣きます。もう誰も自分を愛してくれないんじゃないか、そんな人なんかもう二度と現れないんじゃないか…急にそんなふうに思えて悲しくなっちゃって、もう笑顔でなんかいられない、と泣きじゃくります。失恋旅行のきっかけになったその恋は、どんな相手でどんな出会いでどんな終わり方を迎えたのでしょうね…
 いつもにぎやかに笑ってる彼女しか知らないので、まこちゃんは面食らいます。口とんがらかして困ってる顔の可愛いこと! 失恋も何も、おそらく彼にはちゃんとした恋愛の経験がそもそもないのです。だからどう慰めていいのか、励ましていいのかさっぱりわからない。何より女性の涙が苦手なタイプなのでしょう(ここで彼がクレヨンをちゃんと女性だと認識しているかは別として)。
 で、「俺のために笑え、でないと俺が悲しい」みたいな無骨な言い方しかできない。もうたまりませんよ、脚本としてもベタすぎますよ! さっきの下田夫妻のやりとりのときの台詞をこんなふうに拾うんですよ!? もうもうニヤニヤしながら歯を食いしばり続けて舞台を見つめちゃいましたよ私。
 で、まこちゃんから意外にもそんな優しい言葉をかけてもらって、感極まったクレヨンは、思わずまこちゃんを抱きすくめてキスしてしまう。ジタバタ足掻くまこちゃん。で、ひっぺがして、でも手はつかんだままで、見つめ合って、何するねんみたいな嫌そうな顔からふと真顔になって、そうしたら今度はまこちゃんの方から、そのままその手を引き寄せて抱きしめて、ガバッとチューしたんですよ! しかもオープンマウスキスでしたよ!! てかあれはキスなんて可愛いもんじゃないな、食らいつくような「行為」でしたよ、ガバチューですよガバチュー!! 男気見せすぎだろう近藤誠!!!
 ぶつかり稽古か!みたいな勢いで。でも情熱があって、なんなら愛情だって見えちゃって。そして初日は、まさかそんな「やられたらやり返チュー」展開(と名づけてみた)になるとはみんな思ってもいなくて、客席から思わずどよめきが起きましたし、私も椅子から飛び上がりかけました。で、満場一致の拍手喝采が湧きました。マジで場外ホームランを指笛鳴らして大喜びするような歓声でした。もう驚いたわ笑ったわ!
 初日、そもそも全編あちこちでどっかんどっかん笑いが起きていましたが、間違いなく今日イチの盛り上がりでした。その後は拍手が出てませんもんね、この場面。あの熱狂はまさしく、あの初日の衝撃とともにあったものだったのでしょうか…でもホント、よかったねクレヨン!ってのとよくやったまこちゃん!!ってみんなの心の声が、ついつい自然と拍手になっちゃったんだと思うんですよね。
 実に幸せな瞬間でした。劇場がひとつになるとき、って長く観劇していれば何度か経験するものですが、こういうのはちょっとなかった。もう本当に感動しちゃったしにやけちゃったし幸せになっちゃいました。あんな一体感、ホントに、めったに、なかなかナイです!!
 中の人は出待ちで、拍手が出たことに驚いた、とかのんきに笑っていて、「みんなに祝福されてたねえ」とか冷やかされちゃいました、とニコニコしていました。いつもどおりで、あいかわらずで、ホントに役を引きずらない人で…なんて愛しいの! 冷やかしたのはまぁ様かしらん? 全ツであっきーのラブシーンなんて珍しいとはしゃいで冷やかしていた人が、今回のお稽古場であっきーの男役相手のラブシーンを見てどう思っていたのでしょうか。初日は着替え中でモニター越しにでも見ていたのかしら。てかそもそも初キスシーンの相手はアナタなんだし、ホント罪なトップスターだよ!(笑)

 初日はこの衝撃が大きくてそこで暗転していたのかな、くらいな記憶でしたが、その後もハケるまで実はちゃんと芝居がありました。
 身を離して見つめ合って、お互いなんか困っちゃって、クレヨンがうつむいて立ち尽くしてて、でもまこちゃんがまったくてらいなく手を差し出して帰ろうって促して、クレヨンが嬉しそうにその手を取って、盆が回ってその奥へ去っていって…それはもう幸せな、完全なラブシーンでした。男になったねあっきー!!!(激しく語弊アリ)

 チェックアウト前夜は、すべての事情が明かされた光ツアーと影ツアーとで、ダブルブッキングしていた部屋をシェアしてすごしたのでしょうか。北白川先生と早見くんが入った203号室は、ふたりはまさかツインやダブルベッドを使うような男女の仲ではないので、ツーベッドルームのスイートかコネクトだったのでしょうか。だとしたら予定どおりまこちゃんとクレヨンでこの部屋に入ってもまこちゃんは大丈夫だったのかもしれませんよね。
 ともあれ出立前夜、リビングで北白川先生は徹夜でバリバリ執筆していたのだとしたら、ふたつの寝室は、ひとつは早見くんとピエールで埋まり、もうひとつはまこちゃんとクレヨンで埋まったんじゃないでしょうね…!?とか考え出すとこっちが夜も眠れません!!
 一夜明けて、戸川くんに冷やかされても鷹揚に流すようにカップル然としちゃっているまこちゃんとクレヨン…何があったというのかしらん! なのにラスベガスでの結婚式提案は拒否するのね、あらあらテレやさん!!
 ここのあきりくがオフマイクで何をしゃべっているのか、お茶会で明かされたりするのかしらとか思うと今から楽しみでますます眠れません…!!!

 …そんな、あきりくだったのでした。
 完。
 …嘘です。


 ショー『VIVA!FESTA!』は…久々にダイスケ以外のショーが来て嬉しいっちゃ嬉しいんですが、わりと凡庸なショーだな、という印象です。ならバカみたいに盛り上がる分、凡庸なダイスケショーだった『ホッタイズ』の方がいいよな…と思わなくもありません。中詰めのソーラン節はすんごく盛り上がるからいいんだけどね。特にゆりかセンターになってからのリプライズね、あれは全ツ『ホッタイズ』の成果ですよね…!
 でも、他はけっこう問題がある気がします。主題歌が覚えやすいことは素晴らしい。でも、お祭りがテーマなんだからプロローグはまずはフェスタ!だからこその幕開きはまぁ様のソロでしっとりスタート…ってのはいいとしても、そこで本舞台にいるのがゆうりちゃんって…これが次期トップ娘役就任が発表されているならともかく、そうでないならなんなの?無神経すぎない??という気しかしません。
 プロローグのお衣装は男役のシャツの柄が世界観に合っていなくて、気持ちよいトンチキさに突き抜けきれていないのが残念。プロローグのあとのずんちゃんまいあまどかの場面はお祭りとなんら関係がなくて、箸休め場面にしてもナゾすぎます。いわゆる間奏曲…なのか?
 続くヴァルプルギスの夜はお祭りというより魔女の生け贄の宴、サバトなんだけれど、すっしぃの魔女の女王っぷりがすごいとか(でもホントはこういうところにりんきらの女装をぶっこむべきだと思う。中村Aホントそういうセンスないよなー…)あおいちゃんせーこきゃのんありさの魔女感ハンパないとかエビちゃんららたんのいけにえの娘なんてたぎりすぎるとかいろいろ素晴らしい点もありますが、でもストーリー仕立ての場面でカップルを組むのがゆりかとみりおんってどうなんだ、という…だってコレみりおんのサヨナラ公演なんですよ? まぁみりが見たい人が多いのではないの??
 牛追い祭りは最初のターンで下級生をがっつり起用しているのが目新しいし、評価したいです。りくをダンサーとしてこれまたがっつり起用して、まぁ様と対峙させる牛Sにしたのも素晴らしい。まあでも闘牛ってよくあるモチーフだからなー…てか牛追い祭りって闘牛で終わるものなんですか? 無知ですみません。
 韓流ひかるセブン(と名づけてみた)のところはね、コレは完全に個人的なことでアレなんですけど、私はこういうテイストをタカラヅカ(あえて)には求めていなくて、なんかテレちゃって笑っちゃってダメで苦手なんですよね…たとえばクリスタルズなんかもホントはダメだったし、薄笑いしながらむりくり楽しんでいたので、贔屓の出番としても実はけっこうつらいんですよ私はね…
 でも中詰めは本当に素晴らしい! 「ハイハイ!」「どっこいしょ!」「ソーラン宙組!」どんどん掛け声アリにしていくといいと思います!!
 そのあとの誇りと野心のなんちゃらみたいな場面がまた、まあ二大勢力がぶつかって誰かが死んで再生されてみんな一致団結して浄化…みたいな流れはショーではド定番のものなんだけれど、『フェニタカ』でさんざん観たのはそう遠くない昔だしそのときもまぁみりの構造はこんなだったじゃん、芸ないなあ…あとレーザーがダサいと私は思う。
 フィナーレの歌手にずんちゃんとシンメで起用していただいてセリ上がりからの銀橋渡りなんてそりゃありがたいことですわ、『カノン』でまゆえりが着ていた裾が紫と青になる白の飾り燕尾を、まゆたんが着た方ではない、組カラーの方を着させていただいているのも、セリは下手なんだけどクロスは前を通していただけたのも感謝感激感涙ですよ。でもそれだけでは…
 そのあとのみりおんを愛ちゃん以下若手男役8人が囲む場面も、お衣装がつい先日『アーサー王伝説』のフィナーレで見たばかりだけどね!?ってのはもちろん、振り付けががあまりイケてなくて残念に思えました。こういう、お姉さんというか格が上の娘役、トップ娘役を若手男役が囲むときの、なんかもっと色っぽくて女が強くてでも上品で…ってのがなんかもっとあるじゃないですか! なんかつまんないんだよーあっさりしてるんだよー、そんなにがっつりひとりひとりと絡むわけでもないしさ。
 娘役の群舞がないのも残念。みりおんがセンターでバリバリ踊るところとか見たかった。そういえばみりおんに歌らしい歌がないのも残念でした。
 代わりに、なのかロケットはSがゆうりちゃんでこれはもう素晴らしいし比べて言うのもなんですがホント先日までの花組公演のユキちゃんより断然扱いがいいワケじゃないですか。なのになんで次期じゃないの? 次期じゃないなら何故こんなにものすごくいい扱いをするの? 謎すぎます…
 あと、これまたごく個人的な好みなんですけど、今回の黒燕尾の振り付けが苦手。黒燕尾にしては激しめ、というのは聞いていましたが、私に言わせればこれは黒燕尾で踊る踊りではないのですよ…真ん中があまり見られていないので、まぁ様がすんごいカッコいいからええやろ、ってのがあるんだったらもう申し訳ありません、という感じなのですが…
 デュエダンはみりおんのドレスが素敵なのがいいですね。裾にフワフワのついた白のドレス、サヨナラ公演っぽくていいです。リフトも本当に素晴らしい。でもなんか組まずに、互いに触れずに、上体を傾け合うみたいな振りが、私はなんか…それぞれ独力でやってきましたみたいなことをまさか暗示してるのでも違うでしょ?みたいなモヤモヤした気持ちになり…うーむむむ、なんだよなあ。
 パレードはまあまあ妥当で、歌なしとはいえりんきらセンターでまっぷー、もんち、かける、さおをゆりかのあとに5人で下ろしたのはいいなと思いましたが、ラインナップでりくをすっしぃの外に出すってどういうこと!? まどかがうちの内に入るのは譲るにしてもさあ! どういうつもりなんだと激しく問いただしたいです。
 なので私はちょっとツボらないショーなんですよ…とだいたい書いたところで三度目の観劇をしたら、、もうほぼ贔屓の出入りと位置を押さえられていたので俄然楽しく観てしまいました。単純…所詮そこだけしか観ませんからね、すんません。きっと楽しく通ってしまうと思います。


 以上、初回遠征の、毎度ナンパな感想でしたすみません。今のところチケットはまだまだあるようなので、尻上がりに売れていくことを願っています。みなさんまずは観てみてください!
 寒い中の公演ですが、怪我なくみんなががんばれますように。祈りつつ、次の遠征までしばらく仕事がんばります…!





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4 コメント

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はじめまして (すまちゃん)
2017-02-08 06:38:22
いつも楽しく読ませていただいてます。
まこクレの名場面、5日の11時公演では拍手が起こりましたよ。
今回の澄輝さん、新境地を開いた感じがして、私は大好きです。
返信する
そうでしたか! (すまちゃんさんへ)
2017-02-08 09:03:42
コメントありがとうございました。
拍手がパラパラ湧く回があったりちゃんとどっかん湧く回があったり、静かに固唾を飲んで見守っちゃう回があったり(笑)
いろいろみたいですね!なんにせよ愛されてるなあ…
近藤誠役、確かに新境地だと思います!
早くまた観たい!!次の観劇が楽しみですー!!!

いつもお読みいただきましてありがとうございます、またいらしてくださいませ。

●駒子●
返信する
こんクレ、いいですね! (あんこ)
2017-02-09 19:22:10
駒子さん、大劇場ではお世話になりました。

まこちゃんのガバチュー、素晴らしかったです!ロドリーゴといい、経験値低そうに見えて案外できるキャラを演じる澄輝さんがたまりません。あの白いスニーカーは、まさか合田刑事に憧れてるの?とか、下がり眉にダサい私服、フラレる警官だなんて「恋する惑星」みたい…なんて、勝手に想像して盛り上がっております。

“こんクレ”は、何とも微笑ましいカップルですね。クレヨンがキュートでいじらしくって、思わずりくさんの牛Sまで応援してしまいました。

次回の観劇は、東京公演になります。早くソーランで掛け声したいな〜
またお会いできる日を楽しみにしています!
返信する
デビューお疲れさまでした! (あんこさんへ)
2017-02-10 18:27:45
大劇場ではどーもでした。
ローカルルールがいろいろあってアレですが、今後も楽しくキャッキャウフフしていきましょうね!

東京ではがっつり「ソーラン宙組!」の掛け声入れたいです!!
協力していきましょ-!!!

●駒子●
返信する

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