シナ系評論家の石平氏は、中国のアジアインフラ銀行(AIIB)創設の動きについて、次のように言う。
「習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである」と。
まったくその通りである。石平氏は、産経新聞「石平のChina Watch」の欄に、中国経済の深刻な状態を克明に書いてきている。私は、しばしばブログとMIXIで石氏の記事を紹介している。
2013年6月24日に中国上海株が急落し、中国金融市場がパニックに陥った。石氏は、既にそれが中国経済崩壊の「ドミノ倒しの始まり」と見た。
今日、中国経済に重大な影響を与えているのが、「影の銀行(シャドーバンキング)」である。「影の銀行」は信託会社やファンドなどのいわゆるノンバンクである。金融規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当し、総融資額は約24兆元(約383兆円)にものぼると見られる。銀行の預金金利が年利基準3%と定められる中で、年率10%前後の高利回りをうたった財テク商品「理財産品」などで資金を集め、金融当局の監視下にない簿外で運用。資金の行き先の多くは、採算性の低い地方政府による建設ありきのインフラ整備などへ向かう。そのため不良債権化の懸念がある。中国は金利上昇によって中小の金融機関や企業の資金調達が難しくなっており、政府が「影の銀行」をつぶそうとすれば、中国経済全体が崩壊しかねない状況にある。
石氏はこれに加えて「不動産バブルの崩壊は当然、さらなる金融危機の拡大とさらなる実体経済の衰退を招くから、経済の果てしない転落はもはや止められない」と述べた。石氏によると、2013年後半から不動産バブルの崩壊が現実となり、2014年2月あたりから本格化した。不動産価格の暴落は2月半ばから浙江省の中心都市の杭州で始まった。3月10日には、大都会の南京で2つの不動産物件が25%程度の値下げとなった。例年「花の五一楼市(不動産市場)」といわれるほど不動産がよく売れる5月1日を中心とした期間も、惨憺たる結果だった。全国54の大中都市における不動産販売件数は、昨年同時期と比べて32・5%減。首都の北京では前年同期比で約8割も減った。不動産価格も当然下落しており、重慶市最大の不動産開発プロジェクト「恒大山水城」は3割以上値下げ、杭州市ではある分譲物件を予定価格の3分の1程度に値下げ、広州市ではある業者が史上最高価格で取得した土地に作った大型不動産物件が3割程度の値下げをした。
中国全土に広がりつつある不動産開発企業の破産あるいは債務不履行は、そのまま信託投資の破綻を意味する。それはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招く。「影の銀行」が破綻すれば、経済全体が破滅の道をたどる以外にない、と石氏は、2013年後半から予想している。
シナ大陸は、広大である。それゆえに、バブルの崩壊は一気には進まない。地方都市から各地域の主要都市に波及し、徐々にしかし確実に全土に広がっていくだろう。そして、全土の規模でバブルが崩壊した時、中国経済はどん底に落ちる。 わが国及び日本人は、その時が近いことを警戒し、しっかり備えをしておくべきである。
石氏は、2014年時点で中国経済は、既にマイナス成長になっているかもしれないと指摘した。そう推察される根拠として、「今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1・45%と1・54%の減となった」というデータを挙げる。この物差しで見ると、今年上半期の中国経済の成長率は政府公表の「7・4%増」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある、というのである。これに加えて、次のような情報を伝えた。「今年上半期の全国工業製品の在庫が12・6%も増えた」「今年上半期において全国百貨店の閉店件数が歴史の最高記録を残した」「7月の全国100都市の新築住宅販売価格は6月より0・81%下落し、4、5月以来連続3カ月の下落となった」「全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの『悪性競争』が既に始まっている」と。
さて、本年4月2日の記事で、石氏は「足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めている」中国経済の現状について、大意次のように書いている。
「中国財政省は今年1~2月の全国財政収入の伸び率は「前年同期比で3.2%増であった」と発表した」「2006年から10年までの5年間、中国の財政収入は年平均で21.3%の伸び率を記録しており、11年のそれは25%増という驚異的な数字であった。しかしその3年後の14年、伸び率は8.6%となり、ピークの時の約3分の1に急落した。そして前述の通り、今年1~2月の伸び率はさらに落ちて3.2%増となったから、中国政府にとって実に衝撃的な数字であったに違いない」
「地方政府の財政も大変厳しい状況下にある」「この20年間、長期にわたる不動産ブームの中で、各地方政府は国有地の使用権を不動産開発業者に高値で譲渡するという錬金術を使って何とか財政収入を確保できた。だから各地方政府の財政収入に占める『土地譲渡金』の割合は平均して4割程度に上っていた。しかし昨年から不動産バブルの崩壊が進む中で、『土地譲渡』という地方政府にとってのドル箱が危うくなってきている」「今年1~2月の全国の『土地譲渡収入』は前年同期比で36・2%も激減した」
「今まで、中国の各地方政府は乱開発のために国有銀行やシャドーバンキング(影の銀行)から莫大な借金をつくった」「地方政府の財政事情が悪化していくと、彼らは当然、借金を返すことができなくなる。同じ財政難に陥っている中央政府もその肩代わりができるはずはない。そうすると、日本円にして数百兆円規模の地方債務が焦げ付くことになりかねないが、その結果、一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻は避けられない。場合によっては、中国経済の破滅を招く金融危機の発生が現実のものとなるのである」と。
これが、石氏が「習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである」と書く理由である。
以下は、記事の全文。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成27年4月2日
http://www.sankei.com/column/news/150402/clm1504020009-n1.html
2015.4.2 12:30更新
【石平のChina Watch】
アジア経済支配強める中国 その内実は財政危機で一触即発
先月16日、中国財政省は今年1~2月の全国財政収入の伸び率は「前年同期比で3.2%増であった」と発表した。日本の感覚からすれば、「3.2%増」は別に悪くもないだろうが、中国の場合は事情がまったく違う。
たとえば2006年から10年までの5年間、中国の財政収入は年平均で21.3%の伸び率を記録しており、11年のそれは25%増という驚異的な数字であった。しかしその3年後の14年、伸び率は8.6%となり、ピークの時の約3分の1に急落した。そして前述の通り、今年1~2月の伸び率はさらに落ちて3.2%増となったから、中国政府にとって実に衝撃的な数字であったに違いない。
数年前まで、毎年の財政収入は急速に伸びてくれていたから、中国政府は2桁の国防費増加を図り、思う存分の軍備拡大ができた。また、国防費以上の「治安維持費」を捻出することによって国内の反乱を抑え付けて何とか政権を死守してきた。
その一方、潤沢な財政収入があるからこそ、中国政府はいつも莫大(ばくだい)な財政出動を行って景気にテコ入れし経済成長を維持できた。言ってみれば、共産党政権の安泰と中国政府の政治・外交および経済の各面における統治能力の増強を根底から支えてきたのは、高度成長に伴う急速な財政拡大であった。
だが「お金はいくらでもある」というハッピーな時代は終わろうとしている。
もちろん、今後の財政収入が伸び悩みの状況になっていても、今の習近平政権は軍備拡大のテンポを緩めるようなことは絶対しないし、政権を死守するためには「治安維持費」を増やすことがあっても、それを削ることはまずない。それゆえ、中国政府の財政事情がますます悪化していくこととなろう。
中国にとっての財政問題はもちろんそれだけではない。地方政府の財政も大変厳しい状況下にある。今の財政制度では、全国の税収の大半は中央政府に持っていかれているから、各地方政府は常に慢性的な財政難にある。
そしてこの20年間、長期にわたる不動産ブームの中で、各地方政府は国有地の使用権を不動産開発業者に高値で譲渡するという錬金術を使って何とか財政収入を確保できた。だから各地方政府の財政収入に占める「土地譲渡金」の割合は平均して4割程度に上っていた。
しかし昨年から不動産バブルの崩壊が進む中で、「土地譲渡」という地方政府にとってのドル箱が危うくなってきている。先月16日の中国財政省の発表によると、今年1~2月の全国の「土地譲渡収入」は前年同期比で36・2%も激減した。そのままでは、地方政府の財政が危機的な状況に陥るのは必至であろう。
地方財政が悪くなると、もう一つの深刻な問題が浮上してくる。地方政府の抱える債務問題だ。
今まで、中国の各地方政府は乱開発のために国有銀行やシャドーバンキング(影の銀行)から莫大な借金をつくった。2013年6月の時点では既に17兆9千億元(約348兆円)に上っていたこの借金は、今はさらに膨らんでいるはずだ。
しかし、地方政府の財政事情が悪化していくと、彼らは当然、借金を返すことができなくなる。同じ財政難に陥っている中央政府もその肩代わりができるはずはない。そうすると、日本円にして数百兆円規模の地方債務が焦げ付くことになりかねないが、その結果、一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻は避けられない。場合によっては、中国経済の破滅を招く金融危機の発生が現実のものとなるのである。
習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである。
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石氏はこの記事以外に、中国経済の深刻な状態について、様々な角度から書いてきている。本稿の前半にその要約を書いたが、ここ1年ほどの間に私が紹介した石氏の経済記事の主なものを改めて下記にてご案内する。中国はAIIB創設で地域的な覇権を獲得しようとしているが、その足元を見れば、経済と財政の土台が既に崩れ始めていることが、一層よく分かるだろう。
関連掲示
・拙稿「今度こそ中国バブルの崩壊が始まった~石平氏
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/df23966d7c58055c15c278029659bd3a
・拙稿「中国経済は破滅の道を進んでいる~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/2a4648f3f584dc37f86adc41d64b0785
・拙稿「中国不動産市場は氷山衝突寸前のタイタニック号~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/8919baa4f5a21c515e65cc015e742212
・拙稿「中国経済に死期の前兆が現れている~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6114d7de9f61d6da850d49bcc10f78d9
・拙稿「中国で夜逃げ事件が多発している~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6f3574108b626a7ff0fc3e15a2dadc06
「習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである」と。
まったくその通りである。石平氏は、産経新聞「石平のChina Watch」の欄に、中国経済の深刻な状態を克明に書いてきている。私は、しばしばブログとMIXIで石氏の記事を紹介している。
2013年6月24日に中国上海株が急落し、中国金融市場がパニックに陥った。石氏は、既にそれが中国経済崩壊の「ドミノ倒しの始まり」と見た。
今日、中国経済に重大な影響を与えているのが、「影の銀行(シャドーバンキング)」である。「影の銀行」は信託会社やファンドなどのいわゆるノンバンクである。金融規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当し、総融資額は約24兆元(約383兆円)にものぼると見られる。銀行の預金金利が年利基準3%と定められる中で、年率10%前後の高利回りをうたった財テク商品「理財産品」などで資金を集め、金融当局の監視下にない簿外で運用。資金の行き先の多くは、採算性の低い地方政府による建設ありきのインフラ整備などへ向かう。そのため不良債権化の懸念がある。中国は金利上昇によって中小の金融機関や企業の資金調達が難しくなっており、政府が「影の銀行」をつぶそうとすれば、中国経済全体が崩壊しかねない状況にある。
石氏はこれに加えて「不動産バブルの崩壊は当然、さらなる金融危機の拡大とさらなる実体経済の衰退を招くから、経済の果てしない転落はもはや止められない」と述べた。石氏によると、2013年後半から不動産バブルの崩壊が現実となり、2014年2月あたりから本格化した。不動産価格の暴落は2月半ばから浙江省の中心都市の杭州で始まった。3月10日には、大都会の南京で2つの不動産物件が25%程度の値下げとなった。例年「花の五一楼市(不動産市場)」といわれるほど不動産がよく売れる5月1日を中心とした期間も、惨憺たる結果だった。全国54の大中都市における不動産販売件数は、昨年同時期と比べて32・5%減。首都の北京では前年同期比で約8割も減った。不動産価格も当然下落しており、重慶市最大の不動産開発プロジェクト「恒大山水城」は3割以上値下げ、杭州市ではある分譲物件を予定価格の3分の1程度に値下げ、広州市ではある業者が史上最高価格で取得した土地に作った大型不動産物件が3割程度の値下げをした。
中国全土に広がりつつある不動産開発企業の破産あるいは債務不履行は、そのまま信託投資の破綻を意味する。それはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招く。「影の銀行」が破綻すれば、経済全体が破滅の道をたどる以外にない、と石氏は、2013年後半から予想している。
シナ大陸は、広大である。それゆえに、バブルの崩壊は一気には進まない。地方都市から各地域の主要都市に波及し、徐々にしかし確実に全土に広がっていくだろう。そして、全土の規模でバブルが崩壊した時、中国経済はどん底に落ちる。 わが国及び日本人は、その時が近いことを警戒し、しっかり備えをしておくべきである。
石氏は、2014年時点で中国経済は、既にマイナス成長になっているかもしれないと指摘した。そう推察される根拠として、「今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1・45%と1・54%の減となった」というデータを挙げる。この物差しで見ると、今年上半期の中国経済の成長率は政府公表の「7・4%増」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある、というのである。これに加えて、次のような情報を伝えた。「今年上半期の全国工業製品の在庫が12・6%も増えた」「今年上半期において全国百貨店の閉店件数が歴史の最高記録を残した」「7月の全国100都市の新築住宅販売価格は6月より0・81%下落し、4、5月以来連続3カ月の下落となった」「全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの『悪性競争』が既に始まっている」と。
さて、本年4月2日の記事で、石氏は「足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めている」中国経済の現状について、大意次のように書いている。
「中国財政省は今年1~2月の全国財政収入の伸び率は「前年同期比で3.2%増であった」と発表した」「2006年から10年までの5年間、中国の財政収入は年平均で21.3%の伸び率を記録しており、11年のそれは25%増という驚異的な数字であった。しかしその3年後の14年、伸び率は8.6%となり、ピークの時の約3分の1に急落した。そして前述の通り、今年1~2月の伸び率はさらに落ちて3.2%増となったから、中国政府にとって実に衝撃的な数字であったに違いない」
「地方政府の財政も大変厳しい状況下にある」「この20年間、長期にわたる不動産ブームの中で、各地方政府は国有地の使用権を不動産開発業者に高値で譲渡するという錬金術を使って何とか財政収入を確保できた。だから各地方政府の財政収入に占める『土地譲渡金』の割合は平均して4割程度に上っていた。しかし昨年から不動産バブルの崩壊が進む中で、『土地譲渡』という地方政府にとってのドル箱が危うくなってきている」「今年1~2月の全国の『土地譲渡収入』は前年同期比で36・2%も激減した」
「今まで、中国の各地方政府は乱開発のために国有銀行やシャドーバンキング(影の銀行)から莫大な借金をつくった」「地方政府の財政事情が悪化していくと、彼らは当然、借金を返すことができなくなる。同じ財政難に陥っている中央政府もその肩代わりができるはずはない。そうすると、日本円にして数百兆円規模の地方債務が焦げ付くことになりかねないが、その結果、一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻は避けられない。場合によっては、中国経済の破滅を招く金融危機の発生が現実のものとなるのである」と。
これが、石氏が「習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである」と書く理由である。
以下は、記事の全文。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成27年4月2日
http://www.sankei.com/column/news/150402/clm1504020009-n1.html
2015.4.2 12:30更新
【石平のChina Watch】
アジア経済支配強める中国 その内実は財政危機で一触即発
先月16日、中国財政省は今年1~2月の全国財政収入の伸び率は「前年同期比で3.2%増であった」と発表した。日本の感覚からすれば、「3.2%増」は別に悪くもないだろうが、中国の場合は事情がまったく違う。
たとえば2006年から10年までの5年間、中国の財政収入は年平均で21.3%の伸び率を記録しており、11年のそれは25%増という驚異的な数字であった。しかしその3年後の14年、伸び率は8.6%となり、ピークの時の約3分の1に急落した。そして前述の通り、今年1~2月の伸び率はさらに落ちて3.2%増となったから、中国政府にとって実に衝撃的な数字であったに違いない。
数年前まで、毎年の財政収入は急速に伸びてくれていたから、中国政府は2桁の国防費増加を図り、思う存分の軍備拡大ができた。また、国防費以上の「治安維持費」を捻出することによって国内の反乱を抑え付けて何とか政権を死守してきた。
その一方、潤沢な財政収入があるからこそ、中国政府はいつも莫大(ばくだい)な財政出動を行って景気にテコ入れし経済成長を維持できた。言ってみれば、共産党政権の安泰と中国政府の政治・外交および経済の各面における統治能力の増強を根底から支えてきたのは、高度成長に伴う急速な財政拡大であった。
だが「お金はいくらでもある」というハッピーな時代は終わろうとしている。
もちろん、今後の財政収入が伸び悩みの状況になっていても、今の習近平政権は軍備拡大のテンポを緩めるようなことは絶対しないし、政権を死守するためには「治安維持費」を増やすことがあっても、それを削ることはまずない。それゆえ、中国政府の財政事情がますます悪化していくこととなろう。
中国にとっての財政問題はもちろんそれだけではない。地方政府の財政も大変厳しい状況下にある。今の財政制度では、全国の税収の大半は中央政府に持っていかれているから、各地方政府は常に慢性的な財政難にある。
そしてこの20年間、長期にわたる不動産ブームの中で、各地方政府は国有地の使用権を不動産開発業者に高値で譲渡するという錬金術を使って何とか財政収入を確保できた。だから各地方政府の財政収入に占める「土地譲渡金」の割合は平均して4割程度に上っていた。
しかし昨年から不動産バブルの崩壊が進む中で、「土地譲渡」という地方政府にとってのドル箱が危うくなってきている。先月16日の中国財政省の発表によると、今年1~2月の全国の「土地譲渡収入」は前年同期比で36・2%も激減した。そのままでは、地方政府の財政が危機的な状況に陥るのは必至であろう。
地方財政が悪くなると、もう一つの深刻な問題が浮上してくる。地方政府の抱える債務問題だ。
今まで、中国の各地方政府は乱開発のために国有銀行やシャドーバンキング(影の銀行)から莫大な借金をつくった。2013年6月の時点では既に17兆9千億元(約348兆円)に上っていたこの借金は、今はさらに膨らんでいるはずだ。
しかし、地方政府の財政事情が悪化していくと、彼らは当然、借金を返すことができなくなる。同じ財政難に陥っている中央政府もその肩代わりができるはずはない。そうすると、日本円にして数百兆円規模の地方債務が焦げ付くことになりかねないが、その結果、一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻は避けられない。場合によっては、中国経済の破滅を招く金融危機の発生が現実のものとなるのである。
習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
石氏はこの記事以外に、中国経済の深刻な状態について、様々な角度から書いてきている。本稿の前半にその要約を書いたが、ここ1年ほどの間に私が紹介した石氏の経済記事の主なものを改めて下記にてご案内する。中国はAIIB創設で地域的な覇権を獲得しようとしているが、その足元を見れば、経済と財政の土台が既に崩れ始めていることが、一層よく分かるだろう。
関連掲示
・拙稿「今度こそ中国バブルの崩壊が始まった~石平氏
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/df23966d7c58055c15c278029659bd3a
・拙稿「中国経済は破滅の道を進んでいる~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/2a4648f3f584dc37f86adc41d64b0785
・拙稿「中国不動産市場は氷山衝突寸前のタイタニック号~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/8919baa4f5a21c515e65cc015e742212
・拙稿「中国経済に死期の前兆が現れている~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6114d7de9f61d6da850d49bcc10f78d9
・拙稿「中国で夜逃げ事件が多発している~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6f3574108b626a7ff0fc3e15a2dadc06
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