ほそかわ・かずひこの BLOG

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アベノミクス総仕上げのため、消費増税は中止すべし~田村秀男氏

2018-11-01 13:31:10 | 経済
 独自のデータ分析をもとに主張するエコノミスト、田村秀男氏は、「安倍首相がアベノミクスの総仕上げを目指すなら増税中止を宣言すべき」と訴えています。
 平成30年9月23日付の産経新聞の記事において、田村氏は「平成9年度は消費税率が5%に、26年度は8%に上げられた。消費税増税の大義名分は財政再建のはずだが、惨憺(さんたん)たる結果である。純負債は143兆円から713兆円に膨らんだ。家計消費は増税のたび急激に落ち込んだあと、長期停滞局面に入る繰り返しだ」、「アベノミクスが本格始動した25年度に消費は勢いを取り戻したように見えたが、消費税増税がそれをぶち壊した」と指摘しています。
安倍首相は10%への税率引き上げを2度延期する決断を下しましたが、このたび来年10月の消費増税実施の方針を明らかにしました。増税による税収の一部を教育無償化の財源とするというのですが、これに対し、田村氏は「消費税増税によって中低所得層を最も痛めつけておいて、子弟の教育費負担を軽減するというなら、増税せずに景気を拡大させ、それによる税収増を無償化に充当するのが合理的というものだ」と批判しています。
 田村氏は、また現在の米中貿易戦争と中国・米国の経済情勢において、増税を急ぐのは「自殺行為同然」と警告しています。
 産経新聞平成30年10月20日付の記事で、田村氏は概略次のように述べています。
 「経済情勢からみれば、増税を急ぐのは自殺行為同然だ。米中貿易戦争は激化し、中国の金融市場不安は高まり、中国経済が今後急速に減速するのは火を見るよりも明らかだ。
 もっと問題なのは米国経済だ。これまではトランプ政権による大型減税、インフラ投資を柱とする積極財政が功を奏して力強く景気を拡大させてきたが、インフレ率の上昇とともに金利が上がる。右肩上がり一方だった米国株価は急落し、調整局面に入った」
「2014年度の消費税率8%への引き上げ後、家計消費が大きく落ち込んだまま低迷を続ける日本は、輸出頼みで何とか景気を維持してきたが、何よりも米国のトランプ景気のおかげである」
 「そのトランプ政権は日本との通商交渉で、「為替条項」を盛り込ませる強い意向を、ムニューシン財務長官が言明した」「トランプ政権の牽制で、輸出主導の日本は金融緩和による円安効果に頼れなくなる。となると、内需をデフレ圧力にさらす消費税増税はいよいよまずい」と。

 以下は、田村氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成30年9月23日

https://www.sankei.com/premium/news/180923/prm1809230012-n1.html
【田村秀男の日曜経済講座】安倍首相に物申す、消費税増税中止を 日本再浮上の好機逃すな
2018.9.23 08:00

 安倍晋三首相は自民党総裁3選を果たしたが、気になるのは来年10月に予定している消費税率10%への引き上げだ。増税で日本再浮上のチャンスを潰すべきではない。
 拙論はメディアでは少数派ながら、一貫して増税反対論を述べてきた。この際改めて安倍首相に増税再考を求める理由はほかでもない。首相周辺の増税延期派の異常なまでの沈黙ぶりだ。
 総裁選で、「予定通りの増税実行」を迫った石破茂元地方創生担当相を前にして、安倍首相は「自動車とか、住宅とかの耐久財の消費を喚起する、あるいは商店街等々の売り上げが悪い影響がないように、きめ細やかな対応をしていきたい」と述べた。当たるべからざる勢いの首相を見て、「増税はまずいと、安倍さんに諌言(かんげん)すれば嫌われ、遠ざけられやしないか」と恐れるスタッフもいる。
増税を既定路線と位置づけた首相を周辺が忖度(そんたく)するのはやむなしかもしれないが、政策に関与する者が優先すべきは首相個人ではなく国家・国民の利害であるはずだ。もちろん、消費税増税が日本再生を後押しするなら文句なしだが、現実は逆に動いている。



 グラフは地方自治体や厚生年金など社会保障部門を含めた政府全体の負債から資産を差し引いた純負債、金融機関を除く企業が設備や雇用に回さずに手元に留め置く利益剰余金、さらに消費税負担分を差し引いた過去20年間の家計消費の推移である。平成9年度は消費税率が5%に、26年度は8%に上げられた。消費税増税の大義名分は財政再建のはずだが、惨憺(さんたん)たる結果である。純負債は143兆円から713兆円に膨らんだ。
 家計消費は増税のたび急激に落ち込んだあと、長期停滞局面に入る繰り返しだ。ようやく回復しかけた19年度の後はリーマン・ショックの直撃を受けたが、9年度の増税・緊縮財政がもたらした慢性デフレのもと、家計の消費マインドは脆弱(ぜいじゃく)だった。
 そ してアベノミクスが本格始動した25年度に消費は勢いを取り戻したように見えたが、消費税増税がそれをぶち壊した。安倍首相は10%への税率引き上げを2度延期する決断を下したが、重なる失敗から学ばない財務官僚、有名大学教授そして大手全国紙論説委員たちに安倍首相は包囲されている。
 増税による税収の一部を教育無償化財源とするという首相の考えは方便同然ではないか。消費税増税によって中低所得層を最も痛めつけておいて、子弟の教育費負担を軽減するというなら、増税せずに景気を拡大させ、それによる税収増を無償化に充当するのが合理的というものだ。
 増税が招き寄せるデフレ圧力は金融経済構造をいびつにする。利益剰余金は20年間で300兆円以上も増え、名目で15兆円余りしか拡大しなかった国内総生産(GDP)とは対照的だ。日銀は超低金利政策を通しており、アベノミクス開始後は異次元緩和政策、さらにマイナス金利にも踏み込んだが、デフレ圧力は去らず、2%のインフレ目標達成のメドはさっぱり立たない。銀行は国内融資より中国など海外向けに血道を上げ、リーマン後の10年間で150兆円も対外融資を増やした。外貨を見せ金にして勢力圏拡張を狙う「一帯一路」の中国は同じ150兆円を国際金融市場から借り入れできた。
1年余り後の消費税増税の結末は火を見るよりも明らかだ。デフレの継続、国民が消費を抑えてためたカネの多くが米英の金融市場を経由して、習近平中国国家主席の野望達成に貢献する。日本が成長を続けるための頼みは輸出であり、支えるのは異次元緩和に伴う円安と景気好調の米国市場だが、「米国第一主義」のトランプ政権が立ちはだかりかねない。トランプ氏はすでに安倍首相に対し、2国間交渉を通じて対米貿易黒字大幅削減を迫ると明言している。ホワイトハウスがその手段としてもくろむのは、為替条項付きの日米貿易協定締結だ。同条項は日銀の金融緩和政策を制約しかねない。
 固より、米中貿易戦争は日本再生の絶好の好機になりうる。中国はトランプ政権の強硬策の直撃を受け、成長市場幻想がはげ落ちている。日本企業の多くは北京の反発を恐れてひそかに、対中投資の縮小、撤退を検討している。だが、国内市場はデフレ、需要減というなら、投資の転換先は米国、中国以外のアジアということになりかねない。企業の有り余る巨額資金は国内で行き場がないままになる恐れがある。
 安倍首相がアベノミクスの総仕上げを目指すなら増税中止を宣言すべきなのだ。(編集委員)

https://www.sankei.com/premium/news/181020/prm1810200007-n1.html?fbclid=IwAR3XxKMRf7aN-vGYYCIk_DG4AW_lXM474LHSE2iX5BAuHJEadlkQ7qm8hTE
【田村秀男のお金は知っている】それでも「消費税増税中止」は避けられない
2018.10.20 10:00 田村秀男のお金は知っている

安倍首相の「最終決断」はまだ先だ
 拙論は再三再四にわたって、来年10月からの消費税増税は凍結または中止すべきだと論じてきたが、安倍晋三首相は15日、「予定通り実施」を表明した。「田村も観念せよ」との周りの声が聞こえるが、とんでもない。安倍首相が反対論に耳を傾け、今回も先送りする可能性は十分ある。
 首相発言や菅義偉官房長官の同日の発言を詳細にチェックしてみればよい。首相は「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ばさないよう全力で対応する」と、増税による反動不況を警戒している。ということは、対応が不十分で経済への悪影響が不可避とみれば、躊躇(ちゅうちょ)なく増税予定を撤回する腹積もりとも読める。
 さらに菅官房長官は「リーマン・ショック級のことがない限り」と改めて増税の条件を示し、「状況を見ながら最終判断する」と語った。何のことはない。15日の「表明」は消費税増税の最終判断ではないのだ。
 経済情勢からみれば、増税を急ぐのは自殺行為同然だ。米中貿易戦争は激化し、中国の金融市場不安は高まり、中国経済が今後急速に減速するのは火を見るよりも明らかだ。
 もっと問題なのは米国経済だ。これまではトランプ政権による大型減税、インフラ投資を柱とする積極財政が功を奏して力強く景気を拡大させてきたが、インフレ率の上昇とともに金利が上がる。右肩上がり一方だった米国株価は急落し、調整局面に入った。
 保守系エコノミストを代表するマーティン・フェルドスタイン教授は金利高が株価の下落を招き、米国の景気後退局面に入ると、9月28日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿した。米株価の下落はその警告通り、起きた。
 米株価の変調には世界の株価が共振し、増幅するが、日本については株価だけでは済まない。日本の実体景気を左右する最大の要因と言っていい。2014年度の消費税率8%への引き上げ後、家計消費が大きく落ち込んだまま低迷を続ける日本は、輸出頼みで何とか景気を維持してきたが、何よりも米国のトランプ景気のおかげである。
 そのトランプ政権は日本との通商交渉で、「為替条項」を盛り込ませる強い意向を、ムニューシン財務長官が言明した。日本側は9月26日の日米共同声明でうたった日米物品貿易協定(TAG)では為替は含まれていないとしているが、英文の共同声明では「TAG」の表現は一切なく、「日米はモノばかりでなく、サービスなど早期に成果を生み出す重要分野についての貿易協定を交渉する」となっている。米側としては「早期に成果を生み出す重要分野」として為替を位置づけているのだ。
 トランプ政権の牽制(けんせい)で、輸出主導の日本は金融緩和による円安効果に頼れなくなる。となると、内需をデフレ圧力にさらす消費税増税はいよいよまずい。通商問題で対米関係にヒビが入るようなら、まさに習近平氏の思うツボにはまる。首相に予定通りの増税を催促するメディア、官僚も財界も自国の利益を無視している。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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