ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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消費増税⇒デフレ⇒余るカネは中国へ~田村秀男氏

2018-11-19 06:53:03 | 経済
 産経新聞の有名エコノミスト・田村秀男氏は、消費増税を中止すべきと繰り返し主張しています。平成30年10月28日の記事では、概略次のように書いています。
 「デフレの主因は緊縮財政にあり、緊縮の最たるものが消費税増税である」。安倍政権は14年度には消費税率を5%から8%に引き上げ、さらに財政支出も大幅に削減した。「その結果、日本のインフレ率はゼロ%前後で推移し、いまだにデフレから抜け出せない」。
 「消費税増税がもたらすデフレ圧力と、日銀の異次元金融緩和政策が組み合わされる結果、カネが回らないので、金融機関は国内ではもうけられない。海外融資に重点を置くしかない」「それは国内の中小企業設備投資を押さえつけ、賃上げの抑制、デフレという悪循環をもたらす」
 こうしたところに、米中貿易戦争が勃発し、中国は窮地に立たされ、日本にすり寄ってきている。「トランプ米政権の対中制裁関税は中国の主力外貨源である対米貿易黒字を大幅に減らすことが確実」である。そこで「外貨難に苦しむ中国が「日中友好」の甘い言葉をささやき続け、通貨スワップ協定に日本を誘い込んだ」。さらに、わが国の経済界は、「経団連は技術とカネ両面の対中協力に前のめりで、野村証券などの金融機関大手も中国と共同での投資ファンド設立に走る」。
 このような状況で、安倍政権は来年10月の消費増税実施を約束している。それを実施すれば、「デフレ圧力は強まり、国内資金需要低迷は確実、余ったカネは中国へと流れる」と田村氏は警告しています。

 私は、正しい選択は、消費増税を中止し、財政出動を含む積極財政を行って、デフレ脱却に徹すること。米国の制裁で窮地に陥っている中国を中途半端に助けるようなことは、決してしないことだと思います。

 以下は、田村氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成30年10月28日

https://www.sankei.com/premium/news/181028/prm1810280008-n1.html
【田村秀男の日曜経済講座】消費税増税はだれのためなのか デフレで余るカネは中国に
2018.10.28 08:00

 世界が同時株安に揺れる。国際金融市場安定の鍵を握るのは世界最大の貸し手である日本だが、もっぱら中国に吸い寄せられる。なぜなのか。



 いきなりだがグラフを見よう。ことし6月末の邦銀の対外融資残高などをアベノミクスが始まる前の2012年6月末と比べた増減額である。その額は1兆1167億ドル(約125兆円)で、国際金融を総覧する国際決裁銀行(BIS)加盟国の銀行融資の合計増額1兆1161億ドルとほぼ一致する。米銀の対外融資額は2681億ドル増、英国の銀行は6182億ドル減。邦銀が国際金融市場を全面的に支えてきたのだ。
 同期間の大半は、異次元金融緩和の日銀が373兆円の資金を国内金融機関に流し込んだが、実にその3分の1相当額がニューヨーク、ロンドンなどの主要国際金融市場に流れ込んだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金を大量発行する量的緩和政策を14年秋に打ち止めたあと利上げに転じている。ドル金利上昇は新興国や発展途上国から米国への資金還流を促す。FRBの金融引き締めに伴う世界への衝撃を和らげるのが日銀緩和で、融資を担うのが邦銀だ。
 融資は債務と表裏一体である。国際金融市場からの最大の借り手は中国であり、中国側統計によればその対外債務増加額は1兆848億ドルに上る。邦銀の対中直接融資増加額は300億ドルにとどまるが、カネに色はない。中国は国際市場経由で日本発の資金を存分に調達してきた。
 それにしても、なぜ日本の金融機関はこうも外向きなのか。日銀統計によれば、同じ期間の国内銀行の国内向け貸出増加額は61兆円、BIS統計が示す対外融資増の半分にとどまる。メガバンクの融資担当は「国内の資金需要がない」と口をそろえるが、需要がないのは、国内経済がデフレ圧力にさらされているからだ。
 デフレの主因は緊縮財政にあり、緊縮の最たるものが消費税増税である。アベノミクスは当初こそ、財政支出を増やして金融緩和と連動させて内需を喚起したが、政府は14年度には消費税率を5%から一挙に8%に引き上げた。3%分の増税は毎年の家計消費の8兆円に相当する。
 安倍晋三政権はさらに財政支出も大幅に削減した。増税後もこの緊縮財政路線を堅持しているので、家計消費水準は停滞を続けている。その結果、日本のインフレ率はゼロ%前後で推移し、いまだにデフレから抜け出せない。
 消費税増税がもたらすデフレ圧力と、日銀の異次元金融緩和政策が組み合わされる結果カネが回らないので、金融機関は国内ではもうけられない。海外融資に重点を置くしかないわけだが、それは国内の中小企業設備投資を押さえつけ、賃上げの抑制、デフレという悪循環をもたらす。せっかくの異次元緩和は国内のためになっているとは言い難いのだ。
そんな中、米中貿易戦争の余波で国際金融市場が荒れている。中でも、流入するドル資金をベースにした異形の金融システムによって成り立つ中国経済の不安は高まるばかりだ。トランプ米政権の対中制裁関税は中国の主力外貨源である対米貿易黒字を大幅に減らすことが確実なので、金融制度の根幹が危うくなる。
 上海株式市場は一本調子で下落し、外国為替市場では大量の人民元売りが続く。トランプ大統領は対中貿易制裁をさらに強め、対中輸入品すべてに高関税をかける準備を指示しているから、中国の習近平国家主席はますます窮地に追い込まれる。
習氏が熱望してきたのが、日本の対中金融協力だ。安倍晋三首相は今回の訪中で、3兆円規模の通貨スワップ協定に応じた。通貨スワップは通貨危機時に2国間で自国通貨を融通し合うという建前で、中国は韓国とも結んでいる。しかし、韓国ウォン、人民元ともローカル通貨に過ぎず、国際金融市場ではドルとの交換が難しいので、中韓協定の実効性は限られる。その点、円はいつでもどこでもドルに換えられる正真正銘の国際通貨だ。外貨難に苦しむ中国が「日中友好」の甘い言葉をささやき続け、通貨スワップ協定に日本を誘い込んだ。
 政官ばかりではない。経団連は技術とカネ両面の対中協力に前のめりで、野村証券などの金融機関大手も中国と共同での投資ファンド設立に走る。安倍政権のほうは来年10月からの消費税増税実施を約束している。デフレ圧力は強まり、国内資金需要低迷は確実、余ったカネは中国へと流れる。いったい、増税はだれのためなのか。(編集委員)
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