ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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中国で夜逃げ事件が多発している~石平氏

2014-12-29 08:53:40 | 国際関係
 現在の中国事情を知るのに、石平氏の記事に優るものはないと思う。氏の中国レポートは、政治・経済・外交・軍事・社会・文化等、あらゆる分野・方面にわたっている。このブログでは、氏の文章で特に注目すべきものをたびたび紹介している。
 今回は、産経新聞【石平のChina Watch】11月27日版について書く。キーワードは、「失聯(しつれん)」である。
 失聯は、中国の新聞に今、頻繁に登場する新造語であり、「連絡を絶つ」という意味という。石氏によると、多用されるのは「倒産寸前の企業の経営者が突然連絡を絶って夜逃げする」場合である。今や企業の借金や未払い賃金などが踏み倒される失聯事件が、中国各地で世間を騒がしている。
 多くの業界で経営者たちによる夜逃げ事件が多発している大きな原因には、経済環境全体の悪化とともに、「高利貸」と呼ばれる闇金融の氾濫がある。石氏は、次のように書いている。「金融不安が高まってきている中で、保身に走る国有銀行が民間中小企業への融資を渋った結果、多くの中小企業が生き延びるために闇金融に手を出すことになった。だが、借りた金の法外な高金利に耐えられなくなると、経営者たちは結局、元本を踏み倒して失聯を選んでしまうのである」と。
 夜逃げが多発すると、高利貸をやっている民間金融業者が、貸金を踏み倒される。今度は、破綻に追い込まれた民間金融業者が失聯する。ドミノ現象である。こうした悪循環が始まっている。石氏は、言う。「民間金融から大量の資金を調達しているのは不動産開発業者だから、現在進行中の不動産バブル崩壊はまた、悪循環に拍車をかけることとなろう。バブル崩壊後にやってくるのは金融の崩壊であるから、中国経済の末日が確実に近づいてきているのが分かる」と。そして、次のように結論する。「習近平国家主席がアピールしてきた『大国中国』の経済という名の土台はすでに崩れかけている」と。
 不動産バブルの崩壊が進行する中で、企業の倒産が多発し、これに連動して民間金融業者の破綻が広がっているとすると、バブルの崩壊が金融業界にも及んできているということだろう。今はまだ地方の中小の民有金融業者の破綻だが、それがより広域的でより大規模な金融機関へと波及していくだろう。波及の先には、シャドーバンキングがある。金融規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当する「影の銀行」、信託会社やファンドなどのノンバンクである。  
 10月8日の「中国経済に死期の前兆が現れている」と題した日記に、次のような石氏の言葉を掲載した。
 「経済全体が既にマイナス成長となっているかもしれない、という深刻な状況の中で、不動産バブルの崩壊が目の前の現実となっていれば、それが成長率のさらなる下落に拍車をかけるに違いない。しかも、不動産バブルの崩壊で銀行が持つ不良債権の急増も予想されるが、それはまた、中国の金融システムが抱えているシャドーバンキングという『時限爆弾』を起爆させることになるかもしれない。そうなると、中国経済は確実に破綻という名の『死期』を迎えるのであろう」と。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6114d7de9f61d6da850d49bcc10f78d9
 上記の中国各地で多発する失聯事件は、この「時限爆弾」の時計の音が段々、高くなってきていることの証だろう。
 以下は、石氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成26年11月27日

http://www.sankei.com/column/news/141127/clm1411270009-n1.html
2014.11.27 08:56更新
【石平のChina Watch】
金融不安、貸し渋り、ヤミ金融…「失聯=夜逃げ」ドミノに見る中国経済の末日

 中国の新聞に今、頻繁に登場する新造語に「失聯」というのがある。「連絡を絶つ」という意味だが、多用されるのは企業経営者の場合である。
 倒産寸前の企業の経営者が突然連絡を絶って夜逃げする、それが失聯事件となって世間を騒がすのだ。もちろんその際、企業の借金や未払い賃金などが踏み倒されるのは普通である。
 たとえば最近、新聞に報じられた失聯事件を拾ってみよう。
 10月22日と24日、広東省にある2つの照明器具企業の経営者が相次いで失聯した。そのうちの1つの企業の場合、踏み倒された借金は7千万元(約13億4千万円)に上る。
 23日、陝西省の企業経営者が数億元の借金を踏み倒して失聯。25日、山東省でも企業経営者が従業員の未支払い給料45万元を踏み倒して失聯。
 11月5日、雲南省では、不動産開発会社の経営者が県の「重点開発プロジェクト」の工事の途中で失聯している。13日、中国中古車のトップブランドとされる「易車匯」の経営者が失聯、全国に点在する数多くの店舗が閉鎖された。
 同じ13日、河南省の物流大手「東捷物流」の経営者が失聯、同社に商品を供給している数百の企業は売掛金の回収ができなくなってしまった。
 そして14日、大連市で前代未聞の失聯事件が起きた。中之傑物流と邁田スーパーという2つの会社の経営者が同時に失聯したのだが、この2人は実は夫婦だったのである。
 このように多くの業界で、経営者たちによる夜逃げ事件が多発しているが、経済環境全体の悪化以外に、「高利貸」と呼ばれる闇金融の氾濫も、失聯事件を多発させた大きな原因である。
 金融不安が高まってきている中で、保身に走る国有銀行が民間中小企業への融資を渋った結果、多くの中小企業が生き延びるために闇金融に手を出すことになった。
 だが、借りた金の法外な高金利に耐えられなくなると、経営者たちは結局、元本を踏み倒して失聯を選んでしまうのである。
 このような現象が広がると、窮地に立たされるのは高利貸をやっている民間金融業者である。貸金が踏み倒された結果、破綻に追い込まれるのは彼らの方だ。そうすると今度は、民間金融業者の失聯も始まる。
 たとえば、四川省の成都市では10月20日、民間金融業者、創基財富会長の段家兵氏の失聯が発覚したが、それに先立って、9月4日には聯成●という民間金融の経営者が姿をくらまし、同12日には、内江聚●融資理財公司の経営者が飛び降り自殺した。
 そして10月初旬、地元民間金融大手の四川財富聯合が破綻して、経営者の袁清和氏は夜逃げ先で拘束された。9月からの一連の破綻・失聯事件で焦げ付きとなった融資総額は百億元にも上ったという。
 かくして今の中国では、多業界にわたる「失聯」が各地で広がり、そのドミノ現象で民間金融の破綻を誘発するという悪循環が始まっている。
 民間金融から大量の資金を調達しているのは不動産開発業者だから、現在進行中の不動産バブル崩壊はまた、悪循環に拍車をかけることとなろう。バブル崩壊後にやってくるのは金融の崩壊であるから、中国経済の末日が確実に近づいてきているのが分かる。
 習近平国家主席がアピールしてきた「大国中国」の経済という名の土台はすでに崩れかけている。

●=晶の三つの日を金に
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