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ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

欧州債務危機対応を急げ~田村氏

2012-06-12 10:27:56 | 経済
 私は6月4日朝、「欧州債務危機とフランスの動向」をサイトに掲載した。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12l.htm
 その日、欧州債務危機の再燃がきっかけとなり、東京株式市場を始め株価が急落し、世界同時株安となった。続いて、ユーロ圏第4位の経済規模を持つスペインの経済情勢の悪化が、大波を起こす気配を醸し出している。
 田村秀男氏は5日の産経の記事で、世界の経済状況を大局的に解説し、わが国の取るべき施策を提案した。田村氏は、政府・財務省におもねらず、日銀にへつらわぬ硬骨のエコノミストである。
 その記事の大意を書くと、欧州債務危機の元凶は「米欧の対外債務(借金)依存型経済モデルの破綻」にある。米国は基軸通貨ドルの力で、世界中からカネを集めて住宅バブルを生み、住宅を担保にした借金で米国民は消費生活を謳歌。独仏はドルに対抗してユーロを編み出したが、ギリシャ、スペインなどの貯蓄不足国がユーロの信用で海外から借金して消費生活を楽しんだ。だが借金依存の経済が長続きするわけがない。リーマン・ショック後、回復しかけたアメリカ経済は、ギリシャ、スペイン等の危機のたびに株価が下がり、消費意欲を冷やし、失業率も高止まりし、景気は後退している。リーマン後、世界を引っ張ってきた新興国も失速し始めている。中国では不動産バブルの崩壊が始まった。ユーロ危機で欧州への輸出が減りし、地方政府は債務が膨らみ、返済の繰り延べが相次いでいる。インド、ブラジルも投資が低迷している、と田村氏は見る。
 田村氏は、「行き場を失った余剰資金は世界最大の債権国日本の国債市場へと殺到し、円高・デフレを加速させる。やっと出始めた東日本大震災からの復興需要を帳消しにしてしまう」と日本経済の現状を分析する。そして「日銀が政策を大転換し、明確な量的緩和政策に踏み出すしか、超円高を止める方法はない」と主張する。
 「日本は政府債務こそGDPの約2倍と大きいが、大半は国内貯蓄で賄われ、対外純債権は約250兆円に上る」「政府保有の米国債など外貨資産を日銀資産に移管するだけでも、日銀は難なく巨額の資金を政府に提供できるのだ」とし、田村氏は、日銀に対し、大胆に量的緩和を宣言するよう求めている。
 田村氏の言い様は控えめだが、私は、日銀の「宣言」だけではだめだと思う。速やかに大胆な量的緩和を行い、デフレからの脱却と円高の阻止を実施しなくてはならない。政府と日銀が一体となって、積極策を打たなければいけない。欧州から押し寄せる波が本格的に高くなってからでは、日本の国富と雇用は守れない。
 以下、その記事の全文を掲載する。

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●産経新聞 平成24年6月5日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120605/fnc12060508520005-n1.htm
世界同時株安 借金経済破綻、ツケは日本に 編集委員・田村秀男
2012.6.5 08:52

 一発の銃弾ではない、バルカン半島南端の小国ギリシャの有権者の一票一票が地球規模で経済危機を引き起こす時代になった。元凶は突き詰めると、国民を安住させてきた米欧の対外債務(借金)依存型経済モデルの破綻にあり、3年半前のリーマン・ショックはその始まりでしかなかった。回復しかけた米景気は押し戻され、リーマン後の世界を牽引(けんいん)してきた新興国景気も失速し始めた。不動産バブル崩壊が始まった中国では、地方政府が巨額の債務を払えなくなってきた。
 行き場を失った余剰資金は世界最大の債権国日本の国債市場へと殺到し、円高・デフレを加速させる。やっと出始めた東日本大震災からの復興需要を帳消しにしてしまう。日本の苦難はカネからくるのだから、カネでしか解決できない。日銀が政策を大転換し、明確な量的緩和政策に踏み出すしか、超円高を止める方法はない。
 ユーロ圏の問題5カ国(ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランド)合計の政府対外債務は、昨年末時点で日本円換算約130兆円に上る。
 1990年代初めにバブル崩壊した日本の不動産融資と同規模だが、ユーロ圏の場合日本と違って貸し手はグローバルだから、危機もグローバル化する。市場不安封じの決め手は借り手の信用回復のための緊縮財政しかないが、財政支出が国内総生産(GDP)の5割に上るギリシャの国民は耐乏生活にノーと叫ぶ。借金依存症の禁断症状は続く。
借金主導型モデルは金融の国境を取り去った米欧主導の「グローバル化」のなれの果てである。「リーマン」もユーロ危機も同じく借金モデルの副産物だ。米国は基軸通貨ドルの座をてこに世界からカネを集めて住宅バブルを生み、国民は住宅を担保にした借金で消費していた。独仏はドルに対抗する欧州共通通貨ユーロを編み出し、ギリシャ、スペインなど地中海の貯蓄不足国がユーロの信用をてこに思う存分海外から借金して消費生活を楽しむ。
 だが借金モデルはしょせん、市場の強欲に左右される。わずかな市場の揺らぎの瞬間に崩壊し、世界全体を巻き込む。

◆日銀政策の転換不可欠 大胆に量的緩和宣言を
 中央銀行は慌ててお札を刷って焦げ付いた金融資産を買い上げるのだが、対症療法でしかない。逆にカネの洪水を引き起こし、あふれ出す。
 行き場のないカネは安全とおぼしき日本、米国、ドイツの国債市場に殺到する。中でも日本だけはデフレなので円の資産価値がずばぬけて高い。
 投機資金は国債相場と超円高の円相場をさらにぐいと押し上げる。企業収益が下がるので、株が急落する。国内の銀行は融資を減らして国債を買い、投資家は株をわれ先にと売る。企業は国内への設備投資を諦め、金融資産を減らした家計は財布のヒモを締める。外需、内需とも縮むのだ。

◆新興国にも打撃
 新興国でもカネに翻弄される。中国の場合、リーマン後、米連邦準備制度理事会(FRB)が以前よりも3倍も刷ったドルの8割相当の外貨を買い上げ、人民元を増刷し、その多くは地方政府による不動産開発投資に向けられた。にわか投資ブームで国内総生産(GDP)は2桁成長を維持したが、不動産はバブルと化し、今年から崩壊が始まった。輸出は最大の相手欧州がユーロ危機に伴う不況で低迷し、内需は伸びず、国内生産設備の過剰がひどくなっている。地方政府の債務残高はユーロ問題国合計と同水準の約130兆円で、返済繰り延べが相次いでいる。不動産価格の急落につれて、銀行の不良債権は今後さらに膨れ上がるはずだ。
 インドでは、外国資本がコンピューターソフトや自動車産業などへの投資を大幅に減らしている。ブラジル株式市場への海外からの投資も低迷しがちだ。ブラジルはこの1~3月の実質GDPが前年比で0・75%増まで落ち込んだ。
 残る頼みの綱は米景気なのだが、個人消費も設備投資もニューヨークの株価次第だ。ギリシャ、イタリア、スペインなど危機が多発するたびに株価が下がり、消費意欲を冷やし、失業率を高止まりさせる。

◆国富喪失40兆円
 日本は超円高を是正しない限り活路を切り開けない。
 ところが、安住淳財務相が口にするのは効果が乏しい外為市場での円売り介入だけである。しかも、現行介入方式は金融機関から資金を調達して政府債務を増やし、為替差損ですでに40兆円もの国富を喪失した。国家としてあるまじき自傷行為である。
 強力な手段はある。日銀資金の活用である。日本経済研究センターの岩田一政理事長は最近、50兆円に上る日銀資金による外為市場介入基金の創設案で米国の超党派シンクタンク、米戦略国際問題研究所(CSIS)の賛意を取り付けた。「同盟国日本のこれ以上の弱体化は中国との力関係上、好ましくない」(CSIS関係者)のだ。
 日本は政府債務こそGDPの約2倍と大きいが、大半は国内貯蓄で賄われ、対外純債権は約250兆円に上る。対外債務依存モデルの米欧とは根本的に違う、世界の投資家の安全地帯である。政府保有の米国債など外貨資産を日銀資産に移管するだけでも、日銀は難なく巨額の資金を政府に提供できるのだ。
 日銀はこれまでデフレ以上にインフレを警戒するあまり、米欧のような量的緩和への同調を拒んできた。じゃぶじゃぶのドルとユーロに比べて円の供給量が少ないから、円の価値が上がり、投機筋を引き寄せてきた。2月14日には控えめに「物価上昇率1%のめど」を発表して市場関係者を驚かせ、ひとまずは円高に歯止めをかけたが、効果は2カ月でうせた。白川方明(まさあき)総裁が量的緩和に消極的なためだ。
 日銀ははっきりと大胆に量的緩和する方向に転換すると宣言するだけでもよい。すでに、70兆円もの特別枠を設けるなど、量的緩和の態勢を整えているではないか。量的緩和を否定する白川氏のメンツは潰れても、多くの企業や働く世代は円高・デフレの重圧から解放されるだろう。
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