ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

「56年宣言」を基礎とする北方領土交渉は危うい

2018-12-21 09:31:18 | 時事
 11月14日安倍首相とプーチン大統領が会談し、昭和31年(1956)の日ソ共同宣言を基礎に今後3年以内の平和条約締結を目指すことで合意しました。安倍首相は最後の任期にあって、日露問題の解決を実現したいという強い思いを持っていると見られます。
 産経新聞は、ウエブサイトに、北方領土交渉の特集ページを設けています。よくまとまっていますので紹介します。
https://www.sankei.com/politics/news/181116/plt1811160024-n1.html?cx_fixedtopics=true&cx_wid=d5ac4456c4d5baa6a785782ef4e98f6eb01bb384#cxrecs_s
 私は、領土問題に妥協はあり得ないという考えであり、この点で産経が四島返還の原則を貫くべきという姿勢で一貫していることを評価しています。産経は16日の社説(主張)でも、この姿勢から「56年宣言」を基礎とする交渉は危ういと指摘し、四島返還の原則を揺るがすなと主張しています。
 特に目を引くところを抜粋します。
 「日ソ共同宣言には、平和条約の締結後に、北方四島のうち色丹島と歯舞群島を引き渡すと記されている。このため、安倍首相が「2島返還」を軸にした交渉に舵を切ったとの見方が出ている。そうだとすれば、共同宣言以降の60年余り、四島の返還を目指して日本が積み上げてきた領土交渉をないがしろにしかねない」。
 「日露両国の首脳は1993年に、択捉島、国後島、色丹、歯舞の「四島の帰属」を「法と正義」の原則によって解決するとした東京宣言に署名している。プーチン氏自身が署名した2001年のイルクーツク声明は、日ソ共同宣言が交渉の出発点を記した「基本的文書」としつつ、東京宣言に基づいて四島の帰属問題を解決するとうたっている。今回の安倍首相とプーチン氏の合意は、共同宣言が「格上」であるというロシア側の主張に迎合したものではないのか」。
 「共同宣言は、シベリアに不当に抑留されていた日本人の帰還や国連への加盟、漁業問題の解決という課題を抱えていた日本が、領土交渉の継続を約束させた上で署名したものだ。「人質」をとられてソ連と交渉した当時の厳しい状況を踏まえなくてはならない。苦肉の策で結んだ共同宣言を基礎に「2島返還」だけを目指すとすれば、ロシアの思うつぼである」。
 「日本の四島返還の対応を尖閣諸島の奪取を狙う中国や、竹島を不法占拠する韓国が注視している。ロシアとの拙速な交渉は中韓両国につけいる隙を与えるという意味でも後世に禍根を残す」。
https://www.sankei.com/column/news/181116/clm1811160001-n1.html
 上記の箇所は、よくポイントを突いていると思います。首脳会談後、プーチン大統領は、ロシアでの記者会見で、共同宣言で旧ソ連が引き渡すとした歯舞群島と色丹島について、引き渡し後の主権は協議の対象だと発言しました。これは、詭弁です。ロシアは北方四島を不法占拠しているのであって、もともと主権は日本にあります。引き渡しが行われれば、従来保有している主権を確認することになるのであって、協議の余地はありません。あたかもロシアが所有者で、ロシアが所有権を保ったまま、日本が借地するような状態になったならば、それを領土の返還とは言いません。
 次に、北方四島のうち、歯舞・色丹は領土の7%にすぎません。2島返還といっても、その時点で93%はロシアに占拠されているわけですから、4分の2が戻るのではありません。領海については、2島返還によって20%が戻ることになりますが、80%の海はロシアに占拠されている状態となります。ただし、もし2島の引き渡しはするが、主権は別問題だという詭弁に乗せられて、逆に事実上ロシアが主権を確保するような状態になれば、領土は引き渡されても、領海は戻ってこないことになります。世界三大漁場の一つといわれるこの海域における漁業権や資源に関する権利等は、戻ってこないことになります。領土とともに領海に関する主権の確認が欠かせません。
 ロシアとの領土交渉は、韓国との領土問題に重大な影響を与えます。尖閣諸島を「核心的利益」と主張する中国への対応においても同様です。プーチンの術中にはまってはなりません。