く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<トケイソウ(時計草)> 花の幾何学模様を時計の針や文字盤に見立て

2014年07月02日 | 花の四季

【英名は「パッション・フラワー」=キリスト受難の花】

 トケイソウ科の常緑つる性植物。主な原産地はブラジル、アルゼンチンなどの中南米で、トケイソウ属の仲間は熱帯アメリカを中心に世界に500種以上が分布する。日本への渡来時期は享保年間(1716~36年)とする説のほか豊臣秀吉の時代(1582~98年)には既に来ていたとする説など諸説がある。トケイソウは1642年完成の比叡山延暦寺の根本中堂の天井画「百花の図」にも描かれているそうだ。いずれにしろ江戸時代前半までに渡来していたのは間違いない。

 花期は6~8月ごろ。個性的で不思議な幾何学模様が目を引くが、その派手な色と形は原産地の熱帯地方で昆虫を誘うためといわれる。日本では3本に分かれた雌しべを時計の時針・分針・秒針に、その下の雄しべと花被片(萼と花びら)を文字盤に見立てて「時計草」の名前が付いた。実に言い得て妙な命名だが、所変われば品変わる。英名では「パッション・フラワー」と呼ばれる。この「パッション」は「情熱」ではなくて、キリストの「受難」を意味する。

 英名は16世紀に布教のため南米に渡ったイエズス会の宣教師がこの花を見てラテン語で「受難の花」と呼んだことに由来する。属名の「パッシフローラ」もここから来ている。3本の雌しべを十字架に掛けられたキリストの姿、副花冠と呼ばれる細い花びらを後光、そして10枚の花被片を裏切り者のユダとペテロを除く10人の使徒たちと見立てた。果実が生食やトロピカルジュースになる「パッション・フルーツ」は和名では「クダモノトケイソウ(果物時計草)」と呼ばれ、沖縄や鹿児島で栽培されている。

 東経135度の日本標準時子午線上に立つ「明石市立天文科学館」では、阪神大震災が起きるまで毎年「時の記念日」(6月10日)にトケイソウの苗を配布していた。3年余にわたる復旧工事の間に栽培していたトケイソウはなくなったが、配布苗を育ててきた市民から株分けを受けて再び栽培している。今年の記念日には市民グループが育てた苗500株を配布した。記念日の6月10日は天智天皇の漏刻(水時計)が初めて時を刻んだ日。南米生まれのトケイソウが記念日が近づくと咲き始めるというのもなんだか不思議な気がする。「時計草雄しべと雌しべ交はらず」(大堀柊花)。

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