ドロミテから帰宅の中継地として、ミュンヘンの南50km、テーゲルン湖のほとりにある5つ星保養ホテルに一泊しました。若かりし頃はハノーファーまでいっきに走っていたのですが、途中で休むのが習慣になりました。
このホテルは20世紀の終わりに、優雅さと心地良さとバイエルン州の田舎風をお客さんに提供しようとして建てられたとのことです。
正面入口 ・ ロビー 兼 図書室
高級車が並ぶホテルの正面玄関を入ると、意外と質素なロビー兼図書室に驚きます。広大な庭のまわりにぐるりと客室棟が建ち並ぶ設計で、庭には礼拝堂があり、敷地の真ん中をかなりの水量の小川が流れています。われわれの部屋は思っていたよりシンプルで地味な、落ち着きのあるツインルームで、広さもわりとあるので住環境はたいへん結構です。
中庭 1 & 2
礼拝堂
実際に行くまでまったく知らなかったのですが、ちょうど一年前から日本文化を強調する方針にしたそうで、3000平方メートルもの広さを誇る〈MIZU ONSEN SPA〉と名づけられたリラクゼーション施設があります。そこにはサウナやプールがあり、マッサージなどの施術がおこなわれます。私たちはウエルネスに全く興味が無いので、詳しいことは紹介できません。その他宿泊客のためにいろいろな催し物やコースがありますが、日本のものに限っていうと〈お茶会〉、〈折り紙コース〉、〈寿司の料理コース〉、〈日本酒のテイスティング〉といったところです。
妻と私の興味はもっぱら食事なのですが、なんと、寿司レストランがあるではありませんか! 〈MIZU SUSHI BAR〉という、何だかわけのわからない名前ですが、本格的和食を食べさせるというふれこみです。
MIZU SUSHI BAR ・ オープンキッチン
夕食時に行ってみると男女の若い給仕がテキパキと仕事をこなしていて、ふたりとも料理をよく勉強している印象を持ちました。シェフともうひとりの料理人が日本人です。シェフは厨房で働いているようで、もう一人の日本人がオープンキッチンで簡単な料理を作ります。
テーブルセッティング ・ 厨房からの挨拶
まずレストランからの挨拶として寿司が一貫 (1個) 出てきました。寿司ご飯の裏巻き-ゴマまぶしに、ホタテの貝柱、ウズラの卵の目玉焼き、ベーコン、トリュフ、サラダの葉がのっていて、醤油の乳濁液が添えてあります。全部いっしょに口に入れると味の配合とその調和がすばらしく良い。今まで味わったことの無い味でした。ここのシェフの創作なので、世界で唯一の味なのでしょう。
メニューを見ると同様の寿司が並んでいます。たとえば〈子牛のタルタルステーキ、トリュフ、酢漬けのキュウリ、自家製マヨネーズ、白タマネギをのせたもの〉や〈揚げ海老、和牛、タマネギ、ゴマ、ネギを酢飯にのせてワサビクリームとポン酢で食べさせるもの〉などなど、、、、、。たいへん興味をそそられましたが、5品のメニューを注文していたのでそれらを食するのはかないませんでした。
さて、メニューの最初は蕎麦です。海老の天ぷらがのっていて、従来の蕎麦汁ではなくトマト味の泡クリームで食べます。上品な薄味で繊細な味わいです。
蕎麦 ・ マグロのマリネ
次はマグロのマリネで、下に敷いているのは (四角い形ですが) 焼きおにぎりなのです。添えられているのはサラダ菜、梨、アボカドのムース、そしてゴマです。ただただ美味しい。
そしてアンコウの料理なのですが、魚肉をまずシソで巻いて、それをパルマハムで巻いて衣をつけて揚げてあります。横にあるのはパイナップルの小片と枝豆のピューレです。旨い!
アンコウ料理 ・ フィレ肉ステーキ
メインにあたる料理は味噌ソースで食す牛のフィレ肉ステーキです。この料理のピューレにはアーティチョークを使ってあり、アンズタケとブドウを添えてあります。牛肉に味噌味もいいですね。
お菓子 と 黒胡麻アイスクリーム
デザートはリコッタチーズを練りこんで焼いたお菓子と黒胡麻アイスクリームです。それにピーナッツバターとイチジクが寄り添っています。
このレストランで供されるのは創作和食と寿司で、アッと驚くアイデアがあります。食材の味のバランスが素晴らしく、脂っこくないし量もいい。ただ、パンが出てこないこともあり、ドイツ人は量的に物足りないと思うかもしれませんね。
素材の純粋な味で食べさせる古典的和食と違い、味の融合を楽しませる料理で、妻も私もいたく気に入りました。自宅に遅く帰り着くことを覚悟でチェックアウトの時間を遅くして昼食に創作寿司を食べて帰ろうかと考えましたが、残念ながら夜しか営業していません。妻も私も邪道の寿司には批判的であったけれども、本来の寿司以外でも美味しい寿司ができるのだなぁ、と〈眼からウロコ〉の心境です。私と妻の感覚では、少なくともミシュラン1つ星のレベルには達していると思います。
朝食会場 1 & 2
朝食用に通常の部屋とバイエルン地方の農家風内装のそれとがあり、非常に多種類の飲食物が供されます。もちろん全部食することは出来ませんが、わりと豪華な朝食ができました。
朝食バイキング ・ 私の朝食
この国では5つ星ホテルの定番となっているウエルネスがあっても、私たちはプールもサウナもマッサージ施設も使わないので何となく損をしたような気になります。次回は近隣のランク下のホテルに宿泊して、夕食をとりに〈MIZU SUSHI BAR〉を訪れようと思います。
〔2018年8月〕〔2024年4月 加筆・修正〕