我々の家から車で10分の所に、興味をそそるレストランがあります。その建物には以前〈四季〉というレストランが入っていて数回行ったことがあり、結構良い味の料理を提供していました。そしてその建物に比較的最近〈ヤンテ〉という名前の、ミシュラン2つ星をもつレストランが入ったのです。これは行くしか無いでしょう、、、ということで、行って来ました。
入り口
入り口の位置が変わっていましたが、内装は根本的に同じです。古い建物で、趣のある入り口です。近年高級レストランで普通になって来た、格式にこだわらないサーヴィスをここでも採用しているようです。一言でいうと、自然体での接客ですね。サーヴィスに関して面白い発見がありました。高級レストランでは通常料理ごとに新しいカトラリー(洋食で使うナイフ・フォーク・スプーンなど、料理を口に運ぶための食器)をテーブルに並べてくれるのですが、ここではテーブルに作り付けの引き出しから次の料理に必要なカトラリーを自分で取り出すのです。給仕スタッフの負担が減るし、我々も自分勝手が出来て合理的だと思いました。それから、テーブルの水差しからは必要に応じて自分で水を注ぐように言われました。
テーブルセッティング ・ パン と バター
さて料理ですが、7品メニューひとつしかありません。しかしながら、個人の事情や好み(食材とか量とか)を色々考慮してくれるとのことです。
まず自家製のパンとバターが出てきました。
〈ワイン旅行〉という、各料理に合うように厳選されたワインを約100mlずつ7種類供するアトラクションは、アルコールを飲まない私たちには合わないので、〈ジュース旅行〉にしてもらいました。ジュースと言っても市販のそれでは無いし、市販のそれのミックスでもありません。シェフが色々な、普通はジュースにしない材料も使って作ったオリジナルのジュースです。
レストランのホームページには、次のように書かれています。
〔シェフのトニー・ホールフェルドは、シンプルと洗練された要素を組み合わせて、印象的で革新的な料理を生み出します。どのお皿にも、生き生きとした色とりどりの味が盛り付けられています。ソムリエのモナ・シュレーダーが、厳選されたワインで独創的な料理を盛り上げ、料理体験を完成させます。この二人が、お客様がゆっくりとリラックスできる場所をハノーファーの真ん中に造りました。ワインの伴奏付きのメニューでは、思い出と新しい発見を同時に行うことができます。〕
アペリティフ ・ 突き出し 1
さて、アペリティフもさわやかな自家製ジュースです。
実は料理もジュースも、その材料と作り方を詳しく説明してくれたのですが、その口調が早いのと内容が複雑なのでよく分かりませんでした。
突き出し 2 ・ 突き出し 3
この3種の突き出しはどれも工夫を凝らしていて旨いのですが、味が濃いのです。寿司を食すとき、まず白身の魚のような薄い味、そして終わりの方にトロや鰻のような濃い味を食べるように、西洋料理のコースもまず薄味から始めるべきではないか、と思うのですがどうでしょう?
ジュース 1 ・ 海老 + ルバーブ + 生姜
ジュースと料理のソースの両方にルバーブを使うことで、相性の良い組み合わせにしたのでしょう。合点のいく発想ですね。日本食の影響でしょうか、海老が生に近い。見た目に美しく美味しい料理ですが、突き出しと同様に味が濃いのです。
ジュース 2 ・ イワナ + スイバ属の野菜 + クルマバソウ
ここでもジュースと料理の両方にクルマバソウを使っています。(クルマバソウ: ドイツなどではヴァルトマイスター(Waldmeister)と呼ばれ、クマリンの芳香があるためビール、リキュール、ジュースに入れて飲むこともある。またアイスソース及びアイスクリーム、ケーキ、ゼリー、グミ菓子、キャンディなど菓子類の風味付けにも使われる。)ジュースにはキュウリも入っているそうです。魚は半生で、これも旨い。
ジュース 3 ・ アスパラガス + うなぎ + えんどう豆
意外にもチコリとハイビスカスを使ったジュースです。料理には、アスパラガスを縦に裂いて鰻とえんどう豆を包み込む、という手間をかけています。少々塩辛いのが残念です。
ジュース 4 ・ ロブスター + 行者ニンニク
この料理は特別注文でコースの中に入れて貰いました。全部で8品のコースになった形です。ジュースに生姜と何かの柑橘類を使っています。ロブスターは外をカリッと焼いていて中は半生です。行者ニンニクのディップソースつけて食べます。それにロブスターの頭部で出汁をとった、煮つまったようで辛いスープが付きました。
ジュース 5 ・ 仔牛 + サラダ + りんご
なんだか忘れましたが、赤いジュース。料理はサラダの下に隠れた仔牛の胸腺です。あまり味がしません。普通の肉の方が良かったなー。
ジュース 6 ・ 鳩 + セイヨウニワトコ + キュウリ
レッドビートと麦芽を使ったジュースで、シェイクしてあるので泡がたっぷりです。鳩の肉はメディウムに焼いています。その他、肝臓風味のゼラチンと手で持って食べられる焼いた腿の部分が供されました。キュウリを板状に切って巻いてあります。
ジュース 7 ・ レタス + ヤマドリタケ(ポルチーニ)+ ミルク
このジュースもシェイクして泡立っています。ここからはデザートで、レタスのシャーベットが印象的でした。盛り付けが美しい。
ジュース 8 ・ イチゴ + スイートシスリーの根 + ライラック
灰緑色の、何であったかを忘れた、でも美味しかったジュースです。軽くてさっぱりしたデザートでした。
この後好きなコーヒー豆を数種類の中から選んで、テーブルでコーヒードリッパーを使って入れてもらえるのですが、もう腹一杯だったので丁寧にお断りしました。それでもやはり3種類の焼き菓子が出て来たので、一部は持って帰ったのです。
焼き菓子
4時間かかった食事でしたが、満足した時間でした。このレスランの料理は芸術性満載で意外性があり、新しい味を発見出来ました。特に料理とジュースの組み合わせが絶妙で、後でシェフと話したのですが、将来パティシエのような、料理に合うオリジナルなジュースを作る職人が出てくるのではないかと思いました。
提供されるメニューは4から6週間で変わるそうなので、また時期を見て行こうと思っています。ただ、確かに美味しい料理だとは思うけれど、我々の味覚には全体的に味が濃いのが残念です。フォルクスワーゲンの本社があるヴォルフスブルク市のミシュラン3つ星レストランの味を思い出しました。この二つのレストランに何らかの関係があるのかどうかは知りません。
〔2024年8月〕