先日ハンブルクの小さな隣町ヴェーデルにあるトヨタ自動車の販売店で行われた〈日本デー〉という催しで、妻が自作の陶器を展示し、私が〈和陶器〉をテーマに講演をしました。
陶器の展示
その際に宿泊したホテルが思いのほか面白かったのです。ホテルの名前は〈ローラント像の脇にあるフライホフ〉といいます。
まずローラント像。
ローラント像
この、むき出しの剣を持った騎士の立像は北ドイツや東ドイツの中央広場や市役所の前に比較的頻繁に見られ、都市権(都市およびその市民に与えられる特権)のシンボルです。
フライホフというのは中世において貴族または聖職者が所有する中庭のある邸宅で、納税義務やその他の市民としての義務を免除されていました。このホテルの建物はヴェーデルの町で最初にできたフライホフのひとつで、16世紀前半のことだそうです。18世紀にいちど火災で破壊され、再建されました。
昔のフライホフ ・ レセプションの前に立つ豚像
客室はスカンジナビア風の軟質木材の家具でしつらえた質素な部屋です。
客室
さて、夕食はホテルから徒歩3分のところにある、ホテルと同じ経営の〈水車小屋〉というレストランでとりました。14世紀前半の古文書に現れるほど古い水車小屋で、20世紀中頃まで使われていたようです。その後別のことに使われ、5年くらい前から小ぎれいなレストラン・カフェになっています。ほぼ全部の食品が自家製だそうです。
レストランの内部
飲み物は、妻はフランスの白ワインで私はノンアルコール・ヴァイツェンビールを注文しました。
お通しとしてパンと2種のクリームに甘酸っぱい各種野菜の細切れが出ました。野菜で口腔がさっぱりしましたが、パンはまずかったですね。
お通し ・ 焼いた海老と桃 & ルッコラ
前菜のグリル海老と桃。焼いた桃というのは珍しい料理ですが、全体として美味しくいただけました。
もうひとつの前菜はアンズタケ入りオムレツと季節のサラダです。量が多くてオムレツの味がいささか単調になりましたが、サラダがパキパキと新鮮でした。
オムレツとサラダ ・ いろいろな魚の料理
私が頼んだメイン料理は焼いた鮭とホタルジャコと小海老の辛子ソースかけです。いろいろな魚類の味と食感が楽しめました。付け合せはジャガイモで、別の食器にキュウリサラダです。
キュウリサラダ ・ 焼きアバラ肉
もうひとつの主菜は米国産豚のアバラ肉の生クリーム添えで、ハーブをまぶした炒めポテトと野菜サラダが付きました。肉が少しパサパサでした。
炒めポテト ・ 野菜サラダ
いわゆる〈グルメレストラン〉ではありませんが、それなりに結構旨い料理を提供する店です。良い家庭の主婦のような初老の女性2人とひとりの若い女性で切り盛りしているし、客に子供もいる家庭的な雰囲気のレストランなのです。
朝食は、ホテルの本館に比べて昔の雰囲気が色濃く残る木造棟で食べました。
朝食室 ・ 朝食
食事の内容はごく普通ですが、個人のお宅で朝食をご馳走になっているような良い雰囲気です。
ハンブルクには時々来る機会があるので、そのときは隣のこの町に泊まろう、と思った宿でした。
〔2017年10月〕〔2023年8月 加筆・修正〕