お城でグルメ!

ドイツの古城ホテルでグルメな食事を。

エルヴィッテ水城

2021年10月31日 | 旅行

ハノーファーからデュッセルドルフに行く途中の小さな町に、エルヴィッテ城はある。この城の名が歴史的資料に現れるのは1273年であるが、現存する水城は17世紀の初頭に、すでに存在した建物のすぐ近くに建造された城であるらしい。ヴェーザー川沿いに栄えた、いわゆるヴェーザー・ルネッサンス様式だ。19世紀に所有者となった人物は、1934年、ナチズム国家に譲渡した。そして国の建物として使われた時代に、大規模な改築が行われたり数々の付属建築物が建てられたそうである。第2次大戦後は駐屯軍に使用されたり、養護施設になったりした。1976年、エルヴィッテ市が購入した後に一個人が買い取り、1999年からホテルとして営業を始めた。2006年に別の個人が取得して、この水城を4っ星ホテルに拡充整備したそうである。

エルヴィッテ城公園の敷地内には、散歩道と池の他に病院や老人ホームがある。病院は、通りがかりに整形外科と泌尿器科の看板が見えた。散歩する老人夫婦や子供が自転車で通学する姿がよく見かけられ、城が町に溶け込んでいる印象を受ける。 „オラがお城” と町民は呼んでいるらしい。あまり大きくない城で、絡まる蔦の葉っぱが一部赤い。まだ紅葉は進んでいない季節だから元々赤い葉っぱなのだろう。

  

正面 ・ 水城の裏手と掘割

建物の裏手に石橋を渡した鴨が泳ぐ堀があり、水路に繋がっている。

階段を上がってそれ程重厚でない木製の扉を開けると、ごく普通のおばさんがごく普通の態度でチェックイン業務をしている。いかにものんびりした雰囲気である。

 

フロントとロビー

なんと、古い城のホテルには稀なエレベーターがあるではないか。鉄製の両開き扉の旧式エレベータで表面に木を貼り付けて木製の扉のごとく見せている。よく使い込んだ床と階段は手入れが良くピカピカだが、ギシギシと音がする。全体的にほの暗い。

  

階段 ・ 階段の踊り場

客室はシングルルームなので狭いが、ベッドはダブルが入っているのが嬉しい。天井も壁も絨毯もクリーム色で、家具は安っぽいが古くて趣がある。部屋を見る限り何処かの小さなホテルと殆んどかわらないのであるが、二つの窓の前とバスルームの一角が1m程の不自然なニッシェになっていて壁の厚さが1mあることが分かり、ここが城の一室であることを実感する。バスルームは広くしっかりした造りで湯船があるのは良いのだが、窓がなく、換気扇があるにもかかわらず空気がムッとするのには閉口だ。たいへん面白いことに、机上の平たい入れ物に事務用具一式が入っている。列挙してみると、鉛筆、消しゴム、定規、のり、はさみ、ホッチキス、セロテープ、クリップ、鉛筆削り、ホッチキスの針、穴あけ器具、通常の封筒と便箋の他にメモノート。こんなのは初めてである。まるで自宅に居るような気分にさせられる。家族経営だからであろうか。卓上ランプも面白く、金属部分に触ると点き、もう一度触ると明るくなり、また触るとさらに明るくなる。そして4回目に触ると消える。こんなランプがあるのは知っていたが、実際に使うのは初めてだ。狭いのと机が小さいのが玉に傷だが、宿泊客が少ないらしく静かで落ち着き、居心地はいい。

  

私の部屋 1 & 2

 

机上の事務用具一式

レストランは丸天井で穴倉風であるのだが、その雰囲気とナプキンが紙製であることからすぐにグルメレストランではないのに気がついた。

  

レストラン 1 & 2

何をもってグルメレストランとするのか。専門的定義は知らないが、私個人の定義では、食事自体が美味しいのは勿論のこと、食事するという行為を芸術に高めていなければならない。„舞台“としてのレストランとテーブルを、視覚的にも聴覚的にも、そして嗅覚的にも気持ち良く食せるように設えてあり、サーヴィスは、必要なことはすべて行うが控えめで決してでしゃばらない。コースメニューの流れに意味があり、筋書きを感じる。劇場で観劇をする流れに似ている。日本では懐石料理が最もそれに近いと思う。

さて、このお城レストランはグルメではないが、まぁ良いではないか。給仕はレセプションに居たおばさん。気取ったところがないごく普通のサーヴィスで目が親しげに笑う。コース料理はないのでアラカルトで3品頼み、ワインは頼まなくてもいい雰囲気のレストランということで、飲み物はミネラルウォーターだけにした。

厨房からの挨拶は、揚げライスボールにごく薄いカラシソースがかけてあり、粗挽きの赤い胡椒を散らしている。特別なものではないが空腹だったせいか美味しく感じた。

前菜は冷菜で、鱒の燻製を食べやすいように細長く切っていて木苺のクリームをかけてあり、横には赤と白のキャベツと葉サラダの甘酢和えが添えてある。クリームの甘さ優位の甘酸っぱさと甘酢の酸っぱさ優位の甘酸っぱさが絡み合って、かつ野菜が新鮮で旨かった。ただ多すぎた。

メインは、豚の背肉のシュニッツェル(トンカツの類)に炒めシャンピニオンをのせ、濃厚なクリームソースをかけて表面をオーブンで少し焦がしてある。皿の空白にはトマトとパセリの千切りを散らしている。視覚的に良い。別の皿に新鮮なミックスサラダ、また別の鉢にフライドポテトが供される。自己主張の強い味であまり美味しいと思わない。町の普通のレストランみたいである。クリームソースを半分程こそげて肉を食べ、フライトポテトを少し残した。

給仕のおばさんがやってきた。

「美味しかったですか。」

「はい、でも少し多すぎました。」

旨くなくても "はい" と答え、残すときは無難な理由を付けなければならない、と思い、私はいつもそうしている。

「それでは少し間をおいてデザートを持って来ましょうか。」

「どうでしょう。デザートを部屋に持っていって後で食べてもいいですか。」

「後で部屋までお持ちしてもいいですが、ご自分で持っていかれるとおっしゃるならどうぞ。」

 ということで、„お城の夢“ と名付けられたデザート、自家製ティラミスの木苺と食用ホオズキ添えは、時間をおいて部屋で食した。甘すぎなく繊細な味で楽しめた。このようなことは、いわゆるグルメレストランではしにくいし、するべきではないと思う。グルメコースの開始から完結までの流れを壊してしまうから。

21の客室しかない小さな古城ホテルの割には沢山ホールがあって、結婚式やミーティングなどを誘致している他に、いろいろな催し物をしているようだ。レストランのテーブルに今年の秋から冬にかけてのパンフレットが2、3置いてあった。コンサートやグルメ・フェスティバルがあるらしいが、面白いのは „恐怖ディナー“ と呼ばれるもので、身の毛もよだつ話をコミカルにアレンジした作品を観劇しながらコース料理を食するらしい。全5幕で4品のコースメニューとある。来年の2月にかけて „ドラキュラ“、 „フランケンシュタイン博士“、そして„ジャック・ザ・リパー“の出し物があるそうだ。

昨晩のレストランで朝食。イージーリスニングのピアノ曲が流れる。4星ホテルのスタンダードなものは不足なくあるが、特に見新しいもの無し。

このホテルは、私の部屋が狭いし趣がないから全体のイメージが悪くなったが、良いホテルだと思う。私の好きな、 „人里離れた“ 立地ではないしグルメレストランでないのが残念だ。昔住んでいた殿様の格が低かったか、あまり金持ちでなかったかして、装飾品や調度類が安っぽい。

チェックアウトの時、別のフロント係りの女性と。

「静かな良いホテルですね。」

「そうですねん。静かで居心地が良くて、、、。」

「事務的じゃなくて家庭的な雰囲気ですね。」

「そう思いますわ。家族でやってるホテルですし、従業員も開業時から居る人が沢山いますし、皆家族みたいなもんです。」

「そうですね。客としてそれを肌で感じます。また来ますね。」

「おおきに。さいなら。」

 

〔2011年9月〕〔2021年10月 加筆・修正〕

 

 

 

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パークホテル アンホルト水城

2021年10月29日 | 旅行

ドイツ西部にあるノルトライン・ヴェストファーレン州のオランダとの国境に隣接して、パークホテル・アンホルト水城と付属の施設が広がっている。付属の施設とは、領主であったツウ・サルム・サルム家の絵画コレクションを中心とした博物館、大公園、バロック庭園、ゴルフ場、そしてビオトープ・猟獣保護区域である。アンホルト水城は14世紀以降次第にバロック様式の宮殿に拡充整備されて行ったが、12世紀に建造された太い塔は今でもこの水城のシンボルである。第2次世界大戦の末に城の70%が破壊され、領主の居城としての機能を失ってしまった。戦後の復興の中で、ニコラウス・レオポルド・ツウ・サルム・サルム候の主導により、宮殿は博物館の色合いを濃くしていく。ツウ・サルム・サルム候は1968年にパークホテルを開業しブルーネ家に賃貸した。以後改築や拡張や改装を繰り返し、現在に至るまでブルーネ家が3代に亘ってこの賃貸企業を経営している。アンホルト水城は今日では珍しくなった個人所有の宮殿である。

いくつかある昔の跳ね橋のひとつを渡り、城門をくぐってレセプションのある中庭に出る。モダンなロビーに犬が2匹うろついている。どちらも若くないが、1匹はいかにも年取った雰囲気でヨタヨタと人懐っこく寄ってくる。ホテルの経営者であるブルーネ家の飼い犬であるらしい。このホテルは犬に寛大で、一泊12ユーロ(約1400円)で犬も泊まれる、と料金表に書いてある。

  

登城門からお城を望む ・ 水城 1

 

水城 2 ・ ロビー

私の部屋にはレセプションの脇の狭い廊下を通って行く。突き当たりの部屋だ。入るとすぐ右の壁に大きな窓があり、向かいの左面にも窓がある。入り口の対角に扉があり、浴槽付きのバスルームになっているのだが、バスルームの中のドアの向うは便器とビデがあるトイレの小部屋である。人が城に近づいて跳ね橋を渡るのを寝室とバスルームの窓から、城門をくぐるのはトイレの窓から、中庭での挙動は寝室のもう1つの窓から良く見ることが出来る。ということで、この私の部屋には 〈門番〉 という名前が付いている。実際に、車や自転車の音や人の声がすると自然に窓のほうに目が行き、誰が来たのかチェックしてしまう。本当に私はこの城の門番兵になってしまった。同じ並びにあと2つ部屋があるのだが、1つは 〈マリー・クリスティーネ〉 という名のスイート。昔ここに住んでいたお姫様の名前であろうか。スイートと私の部屋の間にある小さな部屋は 〈鴨〉 だ。宮殿を取り巻く堀が鴨を初めとする水鳥の生活に場になっているからだろう。他にも公園の動植物相や城の歴史にふさわしい名前の付いた部屋があり、例えば公園の大きな池の中にあるシャクナゲ島が見えるダブルルームには 〈シャクナゲ〉 という名前が付いているらしい。もっともこの島が見える部屋は沢山あると思われるが、、、、。

  

跳ね橋 ・ 中庭

  

私の部屋 1 & 2

 

バスルーム

このような客室が31あり、レストラン、ワインセラー、バー、そしてよく手入れの行き届いた歴史的意義のある広大な公園と2つのバロック庭園を持つ水城4星ホテルである。

私の部屋は広く、バスルームも広くて快適に過ごせるが、バスローブとスリッパがジュニア・スイートに付いていないのは意外な気がする。部屋は現代風に改装してあり、書斎机の上に置かれた昔の鉄兜と、17世紀から18世紀の人物画数枚のみが、ここが城中の一室であるのをうかがわせる。家具は古く見せてはいるが比較的新しいものだと思える。部屋のサーヴィスが良く、連泊でもタオルチェンジをしてくれるし、飲んだ無料の水も食べた果物も別の種類で補充してくれる。

レストランは、ほぼ360度ぐるりと水に囲まれてた、堀に張り出すように増築された一角で 〈水上パビリオン〉 という。総ガラス張りで大変明るく公園を見渡す位置にあるが、城の雰囲気は全く無い。食事をしながら水上を滑っていったり餌をついばんだりする水鳥達を観察できる。バロック音楽が静かに流れる。お城ホテルとしては外国人客が大変に多い。オランダ人、アメリカ人、多分地中海沿岸のヨーロッパ人、得体の知れない言語を話すマナーの悪い白人、、、、。オランダ人が多いのは地理的要素によるのであろう。他にはイギリス人が比較的多く、日本人は稀であるらしい。給仕の小柄なおじさんはサーヴィスが速くて丁寧であるが、紋切り型の印象を受ける。ひと皿ごとに途中で美味しいかどうか訊きに来て、皿を下げるときにまた満足したかを訊く。アペリティフにバラ・リンゴ・ジュースを飲んだが、リンゴにバラの味がしっかり混ざっていて旨かった。厨房からクリーム味の野菜に暖かいスモークサーモンをのせた料理のサーヴィスがあった。結構美味しいが見新しいものはない。

  

レストラン 1 & 2

水上パビリオン・メニューとサマー・メニューとヴェジタリアン・メニューがあるが、このレストランは本来ア・ラ・カルト・レストランで、メニューは元々ある料理を組み合わせただけに過ぎなく、メニューとして新しくクリエイトしたものではない。

5品のサマー・メニューにした。

最初の料理はカルパッチョみたいで、生のイカに何かのすり身と野菜を混ぜた料理を詰めたのと火を通したウサギの肉で薬味を包みこんだものを極薄切りにしている。付け合わせとしてアボカドとピーマンの „タルタルステーキ“ と白いバルサミコ・アイスクリームがあり、レモンゼリーが数箇所にのる。手の込んだ繊細な味の料理で美味しい。アイスクリームの甘さとレモンの酸っぱさのコントラストもよろしい。

次はポテトレモンスープ。真ん中のマッシュポテトの山に、茹でて生姜の味を淡く付けた海老数匹を串刺しにして立ててある。軽く火を通しただけの海老が生々しくて、しかし生臭くなくて旨い。海老に生姜の味が良く合うとは知らなかった。

そして口腔をリフレッシュするシャンペン・シャーベットが供されたが、量が意外と多くて酔っ払ってしまった。

メインデュッシュは、焼いたホロホロ鳥の胸肉にバジリコで味付けした精白大麦と松の実を混ぜた溶解トマトが付いている。繊細さはないが美味しく食せた。

デザートとして、砂糖水に浸けたいろいろな種類のイチゴをアーモンドで作った小鉢に入れ、その上にオレンジ・バジリコ・シャーベットをのせてある。イチゴ各種が楽しめて大変結構だ。

この 〈水上パビリオン〉 の料理は、自宅があるハノーファーからそう遠くない、先日行ったミシュラン1つ星に迫るほどのレベルだと思う。

朝食も昨晩の明るいレストランで取る。ビュッフェ形式で4星スタンダードなものはすべてある上に、飲み物の種類が豊富だ。コップに注いであるココア色の飲み物は何であるか、給仕のおばさんに聞くと、

「Oと✱とΩと∑の果物をフレッシュにプレスしたミックスジュースです。」

と果物の種類まで口にするほど教育が行き届いている。シャンペンもあり、玉子料理やソーセージを頼むと料理して熱々を持ってくる。有名なロンネフェルトの紅茶を出すし、銀食器を使っている。満足の行く朝食であった。

最初、このホテルのスタッフは無愛想だという印象を受けた。普通ビジネスホテルではなくてこのような遊びのホテルでは、到着時に

「ご旅行はいかがでしたか。」

と愛想笑いを添えて聞かれるし、ビジネスホテルさえも

「明日の朝食は7時から10時半までです。」

などと必ず言うのであるが、ここでは一切無し。ところが何回か顔を合わすと、愛想が良くなるという程ではないが、次第にニコッと笑ったりする。無愛想なのはこの地方の人の特徴なのか、それとも初めはみんな警戒心が強いのだろうか。ドイツ人には心配性の遺伝子があるそうだから警戒心が強いのは仕方がないにしても、それを接客のプロとして克服すべきではないか。 

公園には3本の遊歩道が複雑に交差し、最も長いコースは一周するのに2時間かかる、と書いてあるが少々オーバーなようだ。森の地域、芝生の地域、野生の草花の地域がある広大な公園の中は、いろいろな水鳥が遊ぶ大小の池が小川で繋がっていて、遊歩道には所々に木製のベンチを置いている。バロック庭園には多種多様な花が咲き乱れ、4月から9月までいろいろな花を楽しめるそうである。

  

庭園 1 & 2

 

庭園 3 ・ お城の遠景

2日目の夜は前日よりレストランの客が多い。隣の大きなテーブルにオランダ人の中年おじさんが9人。ゴルフ仲間であるらしい。大きな声でしゃべって、オランダ語は私には汚く聞こえる言語なので、耳障りで落ち着けなかった。少し離れたテーブルには10人ぐらいのドイツ人おばさんのグループが。どこの国のおばさんもかしましい。

今夜は水上パビリオン・メニューから魚料理を省いて、4品のメニューにしてもらった。キッチンからは肉詰めラビオリと煮パプリカにこげ茶色のソースがかかったスナックが供される。ラビオリの表面は薬味草の緑色でハムの赤い縞が見て取れる。美味しいし、サーヴィスの料理に手間をかけているのが嬉しい。

1品目はオリーヴオイルで煮た赤パーチ(淡水魚)のマンゴとメロンとウイキョウのサラダ添え。魚は塩を少しかけて美味しくなったが、少しオリーヴオイルにまみれ過ぎている。

そして次は、アーモンド味の泡をかけた葱スープが入ったコップの回りに、アーモンドの欠片とヤギのチーズを散らしてある。少し奇抜な料理でなかなかいけるが、スープが食べにくく、スプーンですくうのに熱いコップを傾けなければならない。

主菜は地元産子牛のフィレのマッシュポテトと桃の切片のラグー(シチュー)添えで、傍らにシャキシャキした歯ごたえの海草の一種と杏タケの炒め物を付け合わせている。フィレの焼き具合がメディウムとウェルダンの中間で、私好みだ。海草の一種が少々塩辛いが、肉の味が薄くてソースも少ないので一緒に食べるとちょうどいい。もし意図的にそうしているのなら素晴らしいコックであると思う。

デザートはイチゴにシャンペンを絡めている。その横にシャンペン・シャーベット、シャンペン・ムース、シャンペン・ゼリーが並ぶ。口腔がさっぱりするが、イチゴの切片が細長いコップに入っていて、取るために又してもコップを傾けなければならない。ここのシェフは客が食べやすい盛り付けということは考えないのだろうか。

全体的に、やはり昨晩と同じレベルで美味しいと感じた。

オランダの国境に近いせいでオランダ人客が多いし、他の外国人客も多いようで、私がドイツ語が出来るとわかるまではいつも英語で声を掛けられる。城郭や山城とは違ったバロック調の宮殿生活が楽しめるホテルである。

 

〔2011年8月〕〔2021年10月 加筆・修正〕

 

 

 

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エルプホフ宮殿

2021年10月14日 | 旅行

自宅のあるハノーファーから北西に車で約1時間程のテディングハウゼンという町に、エルプホフという宮殿風の豪壮な屋敷があります。17世紀の中頃、ヴェーザー・ルネッサンス期の終わり頃に建造されました。

 

入り口

 

宮殿 1 & 2

 

宮殿 3 & 4

 

宮殿 5 & 6

ところで、エルプホフという名が初めて古書に現れるのは13世紀中頃です。ここには城塞がありました。そしてそのテディングハウゼン城塞が老朽化して住めなくなったので、エルプホフ宮殿に建て替えられたのです。いち応ヴェーザー・ルネッサンスの様式ということですが、すでに初期バロック様式の特徴を明らかに呈している、ということです。(私にはよくわかりませんが、、、、、。)

 

中庭 

 

中庭の一角 1 & 2

 

中庭にあるレストラン 1 & 2

宮殿に隣接して、樹木園を含んで11ヘクタールの広さの公園が広がっています。

 

公園の中の道

19世紀の前半から何度か所有者が代わり、この文化史的に比類のない建造物は現在テディングハウゼン町の所有になっています。今世紀早々に 〈エルプホフ振興会〉 が立ち上がり、この文化遺産を末永く保持することを目指しています。2011年から2014年にかけて大規模な修復工事が行われ、再び公開されるようになったのです。

さて、武漢肺炎がまだ収束していないので、ワクチン接種をしていない我々は、レストランで食事をしようと思うと検査の陰性を証明しなければなりません。検査に行くのも面倒だし、ここ数年、(本当に美味しい高級レストラン以外では)自宅での食事が気楽でいち番おいしい、と思うようになってきたので家に帰って夕食です。

 

ピーマンの肉詰め 1 & 2

家でとれたピーマンに肉を詰めてみました。

まず合い挽き肉に玉ねぎのみじん切りと卵を混ぜてフライパンで焼き、そこに赤ワインを入れます。さらに水で戻した干しポルチーニ茸を戻し汁と一緒に入れて、生のアンズ茸も加えて少し煮込むのです。最後に醤油とトマトピューレで味を調えます。肉詰めピーマンの上に茸を載せてみました。旨いけど、少々味が濃すぎたかな?

 

ジャガイモとタコの炒め物 1 & 2

ドイツ人はほとんどタコを食べませんが、業務用スーパーに行けば手に入ります。

ニンニクをみじん切りにして炒め、鷹の爪を入れてすぐに取り出します。茹でたジャガイモをニンニクの所に入れて、一緒にさらに炒めます。焼き色が付いたら茹でタコをひと口大に切って入れ、塩コショウをします。最後にパセリをふりかけたら出来上がりです。

 

ブッラータとトマトのサラダ 1 & 2

トリュフ入りのブッラータに家の庭でとれた新鮮トマトと自分で作った半乾燥トマトを合わせてサラダにしました。バジリクムを載せ、バルサミコ酢と塩で食べます。私たちは最近、ブッラータの方がモッツァレッラより美味しいと思っています。

食器はすべて妻の作品です。

 

〔2021年10月〕

 

 

 

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城砦山の塔

2021年10月11日 | 旅行

自宅のあるハノーファーから30分ほど走った所のゲールデンという小さな町に、海抜155mの高さの城砦山があります。今年の初め、雪が積もった時にこの山に登り、先日また行って来ました。

 

登山道

山には、アルミニウスという名の族長に率いられてローマ軍を破ったといわれる、ゲルマンの一部族であるヒェルスカー(ケルスキー)人が築いた古代の半環状防塁の残余があるのですが、立ち木や灌木に覆われているので、一部しか見ることが出来ません。この施設の機能と年代の推定は、まだ研究の対象になっているようです。

半環状防塁の位置関係 (立て看板より) ・ 石碑

時は過ぎて19世紀の末、城砦山の頂上に21mの展望塔を備えた行楽地の飲食店が建てられ、第一次世界大戦までは保養を求める近隣の住民達に人気の遠足地でした。その後、第二次世界大戦の一時期に野戦病院や戦争難民の宿舎として使われた以外は、1961年まで複数の学校の別荘として子供たちが時々滞在しました。そしてだんだんと荒廃していきましたが、1985年にゲールデン町の所有になって修復され、現在 〈城砦山の塔〉 として文化財保護の対象になっています。塔は月に二回、いずれも日曜日に2時間だけ開いており、無料で登ることが出来るようです。当時の宿舎の方は荒れ放題のままです。

 

城砦山の塔 1 & 2

城砦山の塔 3 & 4

 

塔への鉄扉

さて、この日の夕食の一部です。妻が作りました。

 

春雨サラダ 1 & 2

春雨サラダは比較的簡単にできるようです。湯がいた春雨の上に、細かく裂いた鶏胸肉とキュウリの細切り、そしてワカメとニンジンの細切りを載せ、甘酢 + ゴマ油をかけて食べます。さっぱりしていて旨い。

コールラビのべったら漬け 1 & 2

当地では、かぶも売っていますが、コールラビの方が手に入り易いのでよく使います。普通の漬物にしたりべったら漬けにしたりするのです。まず皮をむいて薄切りにして塩をし、しばらく置いて水を出します。そして甘酢、昆布、レモンの皮を入れて漬け込みます。2、3日後から美味しくなるようです。

 

鶏手羽とネギの炒め物 1 & 2

鶏手羽とネギの炒め物では、手羽先と手羽元を塩麹とワインに漬けておきます。そしてフライパンで焦げ目を付けてから、ネギと共に炒め、最後にバターとニンニクと醤油を入れます。家では、鶏はトウモロコシで育てられたのを使います。コクがあって美味しいのです。当地のネギは日本に比べて少し硬いようです。

食器はすべて妻の作品です。

 

〔2021年10月〕

 

 

 

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シュタインブルク宮殿

2021年10月04日 | 旅行

13世紀に、ヴュルツブルクの郊外のシュタインベルク (石山) のほぼ山頂にひとつの城塞が築かれたが、攻撃に備えた防御設備が十分でなかった為、たった10年後の市民暴動の際に完全に破壊されてしまったそうである。

そしてシュタインベルクは、16世紀の中頃、エプラハ修道院の僧たちが白ワイン用のシルヴァーナ種の葡萄を初めて植えて、ヴュルツブルクの町とマイン谷を望む葡萄山になって行った。

それから300年以上経って、以前城塞があった場所にペーター・シュナイダーという人が宮殿を建てさせて „シュタインブルク・レストラン“ を開いたが、すぐ売りに出され、それをあるワイン業者が買ってシュタインブルク宮殿でワインの醸造と販売を始めた。その後何回か所有者が替わった後、1937年にハンス・ベツォルトという人物が „レストラン&ワイン酒場“ を開業した。そしてその息子であるフランツが引き継いで何度も改装と増築を繰り返し、2001年に3代目ローター・ベツォルト氏のもとで客室、プール、そしてサウナを充実させた。2005年に客室の歴史的雰囲気を壊さずに最新の技術を施す完全な改装と再構成を行い、今はそれぞれ内装の異なる個性的な客室を擁するホテルになっている。 

歴史から判断するに、君主や貴族が一度も住んだことがない宮殿ということになる。

 

宮殿ホテルの建物 ・ 入り口

ヴュルツブルクの中央駅から葡萄山にある宮殿が見えるのであるが、正面からは行けず、山の背後から斜面にへばりついた村の狭い蛇行道を経て、それ程大きくない100年くらいしかたっていない割には古めかしく感じる城館に着く。テラスから市街、マイン河、そして周囲の丘を見おろす景色がすばらしい。例によってエレベーターはなく、狭い階段を昇って行くゲストルームは完全に現代風にリニューアルされている。部屋と家具は赤茶色を基調に統一してあり、大きくはないが2壁面に窓があるのがいい。壁に鏡を多用しているからか、実際より広く感じる。懐古調の照明は光量をスライド式に調節出来る。バスローブ、スリッパ、CDなど各種の媒介を使えるミュージックプレイアー、金庫や電動式よろい戸が備えてあり、冷蔵庫の飲み物とスナック類が無料であるのは高級ホテルのスイート並みである。しかし、古色の額縁にテレビの画面を入れ込んで絵画に見立てているのは良い趣味ではないと思う。2重ドアの間には等身大の鏡と棚とバスルームがある。バスルームも赤茶色で窓があり、各種の備品も申し分ない量と質である。 

  

我々の部屋 1 & 2

 

我々の部屋 3 ・ 洗面台

もっとも、この部屋は特別室で、他はごく普通の客室であることをチェックアウトの時に知った。

すべての従業員が押し並べて明るく、よく挨拶するのが印象的だ。

レストランはレセプションの向かいにあり、100年足らずしか経ってない割には古色蒼然としている。天井には装飾を施した明るい茶色の木板を無数に貼り付けてあり、テーブルと椅子に骨董美を認める。大きな窓には重厚なカーテンが掛かり、アップライトピアノの上に古い暗い肖像画がある。甲冑が2体、ホールを警護するかのように立っている。天気が良いので他の客はもちろんヴュルツブルクの町を見下ろすテラスで食事をしていて、レストランの中にいるのは私たちだけだ。テラスへの出入口から気持ちの良い風が入る。耳を澄ますと、聞こえるのは趣味のいいジャズ。いい雰囲気だと思ったが、最初に案内を乞うたウェイターが良くなかった。全てのテーブルが空いているのに入口のすぐ横のテーブルをくれようとする。それを拒否して暖炉の前の席にしてもらう。有名なヨーロッパの観光地に多いのだが、中にはワザと悪い席を割り当てるレストランもある。しかしこの給仕のお兄さんはそうではなく、単に客扱いの修行が出来ていないだけだと思われる。しゃべるのもサーヴィスも早すぎて、ゆっくり夕食を楽しもうとする雰囲気がぶち壊しになる。まだアペリティーフを飲んでいるのにもうワインを持ってくる、といった具合だ。このウェイターはプロの給仕には程遠いが、人なつっこくて愛想が良い。まるで旧東ドイツの給仕の仕方であると思っていたが、訊いてみると、東独のケムニッツから2ヶ月前に来たばかりだと言う。テーブルの担当が決まっていなくて複数のスタッフがサーヴィスをしてくれるが、他はスタンダードな仕方である。

 

レストラン ・ レストランの一角

さて食事であるが、厨房からの挨拶として、スモークサーモンを薄い生地で巻いたスナックにサラダ菜少しとミニトマトが添えて供された。トマト意外は旨くない。以前2箇所のレストランで同じ物を食べたことがあるが、いずれも美味しくなく、小麦の生地とスモークサーモンの組み合わせは良くないとの個人的な結論に達していた。 

„塩実験メニュー“ というコースを選んだ。フランスの食卓塩、海草が入っているという緑色の塩と溶岩が混ざった赤色のハワイの塩、そして „塩の花“ の4つをそれぞれの調理に振って、違いを楽しむという趣向になっている。

 このコースは、ノロジカとホロホロ鳥のミートロールにアンズ果実の甘煮とアンズ茸入りの平たいパンケーキを添えた料理で始まった。美味である。どの塩がどうだ、と言える程私の味覚は繊細ではないが、塩をかけるとその美味しさの輪郭が見えて引き立つような気がする。

次は、ホタルジャコのすり身、カワカマス、ウナギなど地元で捕れる魚のブイヨンスープに、トマトとニンニク味の白パンの切片が浮いている。庶民的な味で美味しいし、塩でもっと味が印象深くなる。 

3品目は、黒いパスタを鳥の巣のように盛り付けて、アンズ茸の混ざった子牛のテイルシチューをかけてある。フッとシナモンの香りがして、この料理もなかなか旨い。麺のゆで方も良い。

口直しに、桃のリキュールがかかった木苺のシャーベット。軽い酸っぱさが口内の粘膜を引き締めて結構であるが、深いワイングラスに入っていて何とも食べにくい。

メインは雄鴨の胸肉に甘サクランボ酢ソースで、アンズ茸とエストラゴン風味のポテトグラタンが添えてある。熱々で美味しいのだけれども、サクランボの生々しい味が強すぎてソースがまろやかでないと感じる。

デザートに、甘いマージョラムゼリーとキャラメルエクレアと苺が添えられたアンズとサフランのパフェが供された。味のバラエティーと組み合わせが大変に結構である。

いつもの食後のエスプレッソは無し、で締めくくった。

このホテルレストランの料理はドイツ料理とフランス料理の中間で、標準より少し繊細な美味しさを味わえると思う。

朝食はテラスにした。非常に良い天気だが、糸杉の陰になったテーブルで直射日光を避けられる。眼下の景色がすばらしい。朝食の内容はごく普通のビュッフェで、これといって印象に残るものは何もない。

全部で5人の邦人を見ていたので、チェックアウトの時に、日本人客は多いのか訊いてみると、大変に多い、という答えである。日本のある旅行会社が、週に2回、それぞれ5人から25人の宿泊客を送り込むし、フランクフルトにある日本の旅行会社もよく客を紹介するのだそうだ。ヴュルツブルクはロマンチック街道の出発点なので、日本からの旅行者にとって旅程に組み込みやすいのだろう。

〔2011年7月〕〔2021年10月 加筆・修正〕

 

                                                                                                                    

 

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