昨年のクリスマスから新年にかけて久し振りにスペインのマヨルカ島で過ごしました。過去に比較的頻繁に行った時期があり、今回は7か8回目ぐらいです。ドイツでフィンカと呼ばれるかつての農家を賃借して10日間過ごしたのです。近くに住む大家の犬と猫がしょっちゅう遊びに来たり隣の農場の羊やロバたちが寄って来たりして、 たいへん楽しく過ごしました。
フィンカ ・ フィンカの広大な庭
マヨルカ島滞在の主な目的はトレッキングだったのですが、その土地の文化に触れることも忘れませんでした。その一環としてエルス・カルデラーズを訪れたのです。
館の外観 ・ その入り口
立派な犬小屋
外庭 ・ 中庭
エルス・カルデラーズはマヨルカ島のかつての邸宅で、現在は野外博物館として利用されており、当時の部屋を見学することができます。
この邸宅は13世紀の後半にカルデラー家の邸宅ということで初めて歴史書に登場しましたが、すぐに貴族のヴェリ家に引き継がれました。現在の本館の建設は18世紀中頃に始まり、建物は19世紀初頭まで継続的に拡張されていきました。黄色い石灰岩で造られた3階建ての建物は、マヨルカのカントリーハウススタイルの特徴的な例と考えられています。本館の中庭には井戸 (システルナ) があり、今でも淡水を提供しています。
廊下 ・ ホール (長椅子の前に置かれた火鉢!)
幾つもある居間のひとつ ・ 礼拝堂
図書室の入り口 ・ その内部
住人の寝室
女性住人の部屋 ・ 男性住人の部屋
住人の食堂 ・ 外で働く使用人たちの食堂
主席使用人の仕事部屋 ・ アイロンかけ部屋
20室以上ある本館に加えて、この邸宅全体にはいくつかの別棟、厩舎、耕地が含まれます。家畜では馬や羊や黒豚などが飼われています。とりわけ、特産品であるマヨルカソーセージが作られる黒豚は特筆に値します。その他歴史的な道具を備えた鍛冶屋、大工の工房、パン屋、大きな納屋、洗濯場など、さまざまな工房もあります。
音楽室
本館にある音楽室は古典主義様式の内装だそうです。良く見て行くと、短いマヨルカのフルートなど、マヨルカの伝統的な楽器やマヨルカ島でしか使われない多くの楽器を展示しています。さらにヴァイオリン製作もマヨルカ島には長い伝統があるとのことです。
ワインの醸造場 ・ ワインセラー
本館の地下にはワイン醸造場とワインセラーがあります。当初ブドウ栽培はこの家にとって最も重要な収入源でした。しかし19世紀初頭、ブドウ畑の破壊につながったフィロキセラ (19世紀に世界中のブドウを襲った害虫) に襲われ、ブドウ畑のほとんどが取り除かれて小麦畑に置き換えられたのです。それ以来、穀物の栽培が最も重要な収入源になりました。こんにちワイン生産者は再び新たなスタートを切ろうとしているそうです。
このワインセラーで訪問者は自家栽培のワインを試飲することが出来るので飲んでみました。少しとろみがあって甘く、リキュールかと思いましたが、売店のオバさんによるとまぎれもないワインだそうです。
私たちはまだ見たことがありませんが、2月にはマヨルカ島のあちこちで桜に良く似た薄桃色のアーモンドの花が開花して、それはそれは美しいのだそうです。それでこの島にはアーモンドを使ったトゥロンというお菓子があるのです。トゥロンの中で一番伝統的で知られているのは、ドゥロとブランドの2種類です。
1775年からの伝統を守ってきたメーカーのドゥロ 1 & 2
他のメーカーのドゥロ 1 & 2
ドゥロは、しっかり煮詰めて練った砂糖、はちみつ、卵白に炒ったアーモンドを混ぜ合わせて板状に伸ばし、オブラート (硬質オブラート又はせんべいオブラート) で挟んでそのまま固めた硬いお菓子です。歯で噛んでガリッと割るおこしのような感覚なのです。妻も私もこれが好きで、マヨルカ島のみならずスペインに行った時はよく食べます。
1775年からの伝統を守ってきたメーカーのブランド
ブランドは焙煎したアーモンドをミル(石臼など)で粉砕し、ハチミツ + 砂糖 + 卵白と混ぜて火を入れて固めたあと、さらに粉末にして練ったもの。通常、軟らかいそれを板状に成型しています。これは味が単調で甘すぎて、我々はあまり好きではありません。
〔2024年3月〕