映画の方はちょっと前に観たが、漠然と原作のほうが面白いのではと思った。そして当たっていた。
いや〜、やはり名作だけあって面白いし、登場人物のパワーが凄い。全員呪われているのではないかというくらいに取り憑かれた生き様だ。
例として、映画でも印象的であったキャサリンのセリフをひとつ取り上げてみる。
「どうして愛しているのかというと、ハンサムだからじゃなくてね、ネリー、あの子がわたし以上にわたしだからよ。人間の魂がなにで出来ていようと、ヒースクリフとわたしの魂はおなじもの。リントンの魂とは、稲妻が月明かりと違うくらい、炎と氷が違うぐらい、かけ離れているの」
この「あの子がわたし以上にわたしだからよ」という言葉が特に強烈。純愛だとか偏愛だとか言葉では言い表せないものが詰まっていると思う。もちろん、言葉だけでなくそれまでの過程や、物語のゴシックな雰囲気も相まってのことだが。
その後も以下の台詞が続く。
「けど、ほかのすべてが残っても、あの子が消えてしまえば、宇宙は赤の他人になりはてるでしょうね。」
宇宙まで出てくると閉口するしかない。他にも色々あるが、ここまで言葉の力強さを感じる作品は他にあるだろうか。
物語の舞台となるのは嵐が丘と鶫の辻のみと非常に限定されている。にもかかわらず非常に奥行き、スケールを感じるのは、前述の通りの登場人物のパワーと時代を経ているという点だろう。
映画では語られていないが、ヒロインであるキャサリンが死んでからも物語は続く。しかし、登場人物の中にはキャサリンの影が色濃く残っている。いい例えではないだろうが、ディオが死んでもジョースター家との因縁は続くようなものか。
恋愛小説ではあるが決して美しくはない、それどころかひねくれて残酷でもある。しかし、そんな中にも美しさは必ず存在していると思う。