経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

法人減税だけが政策ではない

2011年09月05日 | 経済
 円高に対する政府の動きが早いね。野田首相の誕生により、予定していたことができたのだろうし、三次補正に間に合わせるには時間もない。そして、日経のトップにあるように、円高対策として、立地補助金を選択したということは、復興増税は法人税が選択されるサインではないか。

 他方、実哲也さんは、相も変わらず、法人減税を求めていて、主張が単調だ。そもそも、法人減税は、政策として筋が良くない。設備投資の促進効果を、立地補助金と比較した場合、法人減税は、それで設備投資をすると思えない銀行や電力なども対象になるし、M&Aや海外投資にも使われる。はっきり言って、子ども手当以上のバラマキ産業政策である。

 また、実さんは、財政再建の先送りで国債利回りが急上昇すると心配するが、法人税は、2007年度の水準からすれば、あと10兆円の自然増収が期待でき、3~4年は、2%程度の成長でも2.5兆円は増える。実際、2010年度はそうなった。これを減税することは、すなわち、財政を壊すことになる。本当に大幅な法人減税をやったら、プロは、確実に日本国債を売ってくるから、心したらよい。

 実さんによれば、成長戦略の会議で、ある経営者が「何度同じことを言わせるのか」と怒りを爆発させたらしいが、財政当局は、法人減税をエサに消費税増税の支持をもらおうと、「優しく」対応しているだけのこと。それにつけ上がる経営者はピエロである。経済界のリーダーともなったら、日経を読んで済ますだけでなく、景気や政策を分析できる経済コンサルを雇うことをお勧めする。

 先週のJMMで北野一さんが指摘したように、経済界が円高で騒ぐのは、単に円高だからではなく、景気が悪いからである。財政当局は、それに敏感に反応にし、経済対策が広がらないよう、迅速に対応策を打ち出してきた。立地補助金だけで数千億円になるようだが、これを復興債の対象にするなら、企業向け施策なのだから、当然、法人税で返せということになろう。減税どころの話ではあるまい。

 ここで一つ知恵を出しておこう。予備費の扱いである。2011年度当初予算では、経済予備費が8100億円も用意されていた。通常の予備費3500億は別途ある。この枠を復興費の返済に充てればよい。少なくとも、10年で8.1兆円になる。さらに、通常の予備費にも余りが出る。これで、復興増税をかなり圧縮できるはずだ。千年一日で法人減税を叫ぶのでなく、少しは財政の中身を見てはどうかね。

 日経は、社説で「政策総動員」としているが、国内の需要管理をいい加減にし、デフレを長引かせていては、総花的なパッケージなど意味がない。企業立地や設備投資は、その国における需要が最重要であることを忘れてはならない。韓台やASEANでも輸出に頼る国は、米欧景気の停滞で、成長が減速し始めている。論説陣は実報をしっかり読むべきだ。これからは、時代が反転し、インドネシアのように内需を大事にする国が優位になろう。日本は、その中に入る可能性を持つ。チャンスを活かせるかは、政策的センスにかかっている。

(今日の日経)
 企業の国内立地補助拡充、円高・空洞化に対応。早急な円高対策必要・経済4閣僚会合。成長と財政両立・実哲也。公明・除染費に2.3兆円。社説・政策総動員し産業空洞化を回避しよう。増税圧縮へ歳出減徹底、償還期間で意見分かれる、郵政株も。原発耐用年数に新基準。政権の方程式教えます・芹沢洋一。台湾EMS苦境。サムスン管理職削減。米太陽電池、消耗戦に。アジア事業、量のマジック・後藤康浩。除染技術・産学官が知恵。経済教室・7人に1人が貧困の虚実・大竹文雄。

※除染費は対象が5万戸なら1戸4600万円。※芹沢さん、方程式はヒットだよ。※後藤さんも、いい指摘だ。※25~45歳の貧困率の高まりは尋常ではない。社会保障で高齢者の極端な貧困は減ったが、若年層がデフレによる雇用悪化で貧困化している。

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