経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

主義に殉ずる経済運営

2011年12月09日 | 経済
 ECBの利下げと国債購入の一蹴は予想どおりのものだろう。どうして、ここまで頑ななのか良く分からんがね。財政規律至上主義がいかに強い思想かを示している。思い返せば、本コラムは、4月、7月の利上げのときにも強く批判していたが、結果的に、その誤りが証明された形となった。

 昨日のFTでは、M・ウルフさんが、危機の原点は財政問題ではない、国際収支危機だという分析をしている。本コラムは、ギリシャ危機が始まったときから、輸出や観光収入を増やすことを考えなければダメだとしていたから、これには、まったく同感だ。リスクを、日本の財政当局がお得意の債務比率で計ることはできないのである。

 昨日は、ムーディーズが日本国債へのコメントを発表したが、ロイターによれば、経常黒字の背景となっている、多額の国内貯蓄と対外純資産を理由として、日本国債の調達危機は短期的には非常に考えにくく、長期的には圧力が高まる可能性があるとしただけだった。日経は「悪い金利上昇」を期待したようだが、こういう見方は、プロには当たり前のものであり、国債金利は若干の低下で終わっている。 

 経済運営に焦りは禁物であり、ECBのように、一巡すれば収まる資源価格の高騰に驚き、ギリシャという爆弾を抱えているのに、利上げに走るというのは、まさに拙速であった。むしろ、物価上昇は、債務を消化していく上で悪くない環境であっただろう。間違った政策は、無用なリスクを生み出し、経済パフォーマンスを低下させる。これが今の状態である。

 今日の日経によれば、消費税引き上げの際の条件として、財政当局は数値目標を設けたくないようである。要すれば、2%以下の低成長率であっても、成長増加分をすべて吹っ飛ばすのような消費税アップをしようというわけだ。正直、常軌を逸している。そんなギャンブルをしなければならないほど、日本は追い込まれていない。そうした無理は、経済と財政の自殺行為になるだけである。

 12月8日は、真珠湾攻撃から70年目ということで、各紙では歴史を回顧する記事が多かった。ジリ貧の心理的重圧に耐えられなくなり、乾坤一擲の危険な行為に打って出るのは、昔も今も変わらない日本人の体質のようだ。1997年のハシモトデフレに懲りず、何の工夫もせずに、失敗の正当化ばかりに注力するのは、ノモンハンの敗戦を隠蔽した日本陸軍とそっくりである。

 人間というのは、幸福を追求するのではなく、主義に殉ずることを喜ぶものだとつくづく思う。まあ、それも生き方なのかもしれない。
 
(今日の日経)
 欧州中銀が連続利下げで1.0%に。国債購入の市場の期待一蹴。ドル調達、緊張続く。三菱自、岡山で1ライン停止。財務省は数値目標に否定的。東電が外資と契約、保険料10倍に。東電資本注入・値上げや原発再稼動焦点。政府保証枠5兆円に増。台湾輸出、欧州向け急減。コマツ・中国で値上げ、鉱山用強化。仙台で温室野菜栽培。積水ハウス・太陽光住宅が好調、純利益83%増。経済教室・混合診療解禁・上昌広。

※民が取れないリスクは公が取るべき。保険料を外国に流出させてどうするね。※日経が東電の今の経営体制を守ろうとするのは、なぜなのかな。値上げは経済界にとっても重荷だろうに。東電解体は、今回も財政当局主導のようだね。これも値上げで、消費増税を邪魔されないためだ。大好きな消費増税のためなのだから、日経も協力してはどうか。

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1 コメント

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Unknown (ur)
2011-12-10 11:52:29
国際収支危機となると、需要は供給側の賃金と生産量という事になるのではないのですか?

収支の面でプラスが無ければお金をどんなに注ぎ込もうともう建て直す事は出来ません。
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