経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・4-6月期消費はマイナス圏

2015年06月28日 | 経済(主なもの)
 今月は主要な経済指標が土日をまたぐので、暫定版だと思っていただきたい。家計調査を見る限り、4-6月期の消費は未だマイナス圏にある。その他の需要項目にも、今のところ、特に強いものは見当たらない。したがって、4-6月期GDPはマイナスからゼロになるという見通しである。アベノミクスは再失速し、経済はノロノロとしか進んでいない。

………
 5月の家計調査は、二人以上世帯の実質消費支出(除く住居等)の季節調整済指数が前月比+2.0と大きく伸びたものの、これは4月がかなり低かったためであり、4,5月平均は、1-3月期平均より-1.1も低い水準にとどまる。これを6月単月だけでゼロまで盛り返すのは、なかなか厳しい。このように、4-6月期の消費はマイナス圏にあり、GDPの6割は消費なのだから、悲観的にならざるを得ないわけである。

 消費が増えない最大の理由は、勤労者世帯の実質実収入が伸び悩んでいることにある。5月はプラスだったが、一進一退の範囲だ。実質実収入は、10-12月期に前期比が+1.9だったのに、1-3月期には+1.0へ下がり、4,5月平均は-1.0でしかない。5月の消費性向は74.3と「並み」の水準であり、消費マインドが冷え込んでいるわけではなく、実収入の問題だ。今後、ボーナス支給の開始や年金給付の改定がある6月に、どれだけ伸びるかであろう。

 やや気になるのは、消費者物価指数が予想されたほど下がっていないことである。原油安は電気ガスのエネルギーへ波及しているが、代わりに食料品が値上がりしている。ここでメリットが食われてしまっている。名目実収入が伸びずとも、物価が下がれば、実質の消費は押し上げられる。これが1-3月期には奏功したが、同じだけの効果を4-6月期に望むのは、難しいようである。

(図)



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 雇用については、わずかに改善したが、鈍い状況にある。労働力調査を見ると、就業者の季節調整値は、3月が-10万人、4月が-28万人だったものが、5月は+19万人と戻し、完全失業率は3.3%と横ばいだった。対前年同月比では、自営業主・家族従業者が減り続けていて、これを雇用者が埋める形である。その雇用者は、正規が4,5月とあまり増えず、非正規によって確保されている。

 職業紹介では、新規求人倍率が1.78と最高値を更新したものの、新規求職者の減に因るところが大きい。そこで新規求人数を前年同月比で見ると、4月の+0.1%に続き、5月は-4.4%と低調だった。確かに、労働需給は引き締まった状態にあるが、もう勢いは失われている。有効求人倍率の更新は、昨年12月に1.77を記録してから、5か月経ってからの到達なのである。

………
 さて、消費の供給側を見ようにも、鉱工業指数生産や商業動態統計は、週明け月曜の公表であり、賃金や労働時間については、火曜に公表の毎月勤労統計を待たなければならない。それにしても、前年度比7兆円増という絶好調の国の税収とは、何とも対照的な経済の行き詰まりぶりである。いや、あまりに税収を揚げ過ぎて、自ら景気回復の好循環を断ち切ってしまったのであろう。

 また、いつもの風景である。そうこうしているうちに、海外の経済に異変が生じ、せっかくの金融緩和の成果が無に帰すというのを、これまで何度も繰り返してきた。今回の金融緩和については、異次元なだけに、無では済まず、不都合なものも残している。そうした中、上海株は2週で19%も落ちた。これは「急ブレーキ」じゃなく、「バブルが弾けた」と言うべきではないかね。そのあたりも、来週を待つとしよう。


(昨日の日経)
 雇用保険料を来年度下げ。異次元緩和・迫る過熱信号。5月家計調査は増税後初の増加。上海株に急ブレーキ、2週で19%安。税収・昨年度7兆円増で54兆円。

(今日の日経)
 ギリシャ支援の延長拒否。中国が追加利下げ、株急落に危機感。不動産向け融資最高。

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1 コメント

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Unknown (はるこ(ます族))
2015-06-28 14:03:23
毎月勤労統計に使われる帰属家賃を除く総合の物価指数が前年比で+0.7%なのは意外でした。

増税の剥離が完全になって、さらに前年の5月は4月と比べ0.5%も違うのである意味前年比では数値上のボーナス的な物価上昇率を勝手に予測していたのですが。
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