経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

金融緩和の病・規制緩和の病

2012年12月08日 | 経済
 金融緩和は必要だし、規制緩和には意味がある。しかし、需要管理の代わりにはならない。ちょっとした緊縮財政をしただけで、それらは無に帰してしまう。なまじ効果があるために、代替物になるという幻想を持ってしまのは危険だ。今週のJMMの金融緩和を巡る各エコノミストの論考を並べて読んでみて、そんな気がしたね。

 いつもながら、真壁昭夫先生の論考はまとまりが良い。金融緩和の効果には限界があるとする「肌で感じた」経験は価値あるものだと思う。結論は、企業や国民の「将来不安」があると、お金は回らないから、規制や税制の改革が重要というものだ。筆者注目の中島精也さんも、「将来不安」を「成長期待の低さ」に言い換えているが、ほぼ同趣旨である。

 本コラムの主張は、規制や税制の改革をしたところで、不安や期待は大して変わらないというものだ。企業は、お上の作る「成長戦略」なんて、御題目だと思っている。信用するのは、目の前の需要が増えつつあるという事実だけである。結局、規制や税制の改革は歓迎するものの、設備投資を始めるのは、需要という政策効果の「証拠」を確かめてからになる。

 今年、日本は、子ども手当の削減と年少者控除の廃止で、1兆円のデフレ圧力をかけた。他方で、巨額の復興予算は組んだものの、狭い地域での執行がボトルネックとなり、カバーできずじまいである。こんな調子では、いくら日銀がインフレ目標を掲げ、金融緩和で期待を抱かせようとしても無理があろう。

 緊縮財政に代わり、規制緩和によって1兆円の投資需要を作るのは、途方もないものになる。原発停止によって、発電部門への参入規制の緩和が期待されているが、100万kwの火力発電所を10か所も建設しなければ、1兆円にならない。メガソーラー発電なら、100か所以上もの積み増しが必要になる。現存もしくは計画中のメガソーラーは80か所程度に過ぎない。

 期待のITにしても、情報通信産業の設備投資額は約4兆円である。いかに勢いのある産業と言っても、規制緩和で1兆円の需要を確保するために、25%増しの設備投資を実現するなんて、ありえない話だ。国民がすぐに忘れてしまうような、たった1兆円の緊縮財政を補うには、こんな「成長戦略」を用意しなければならない。

 金融緩和も、規制緩和も、効果はある。ただし、それは、緊縮財政とは比較にならない弱々しいものだ。「財政破綻」に心を悩ませる必要のない「二つの緩和」に頼りたくなる気持ちも分かるが、逃げてはいけない。需要を安定させるために、財政がリスクを取らないということは、企業や国民にリスクを押し付けているということなのである。

(今日の日経)
 米雇用14.6万人増、失業率7.7%、消費底堅く、政府部門の悪化に歯止め。定着しない中国の製造現場、変わったのは意識。太陽光の受け入れ満杯迫る。景気ミニ後退の兆し、先行指数は上向きに。コマツ・減産期に競争力蓄え。日本車現地化・ガラスの天井はない。超長期金利が急低下。自殺者3万人下回る水準に。篠原三代平氏が死去。真珠湾攻撃の通告に新事実。

※米国は回復を見せているね。負担増で消費を悪くし、政府部門叩きに余念がない国とは、結果が違うのも当然かな。※これがコマツの強さ。逆に言えば、凡百は需要に従って投資しているということ。

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